トリニダード・トバゴ 発祥の音楽カリプソって、元々は支配者イギリスにこの地に連れてこられた奴隷黒人が、お互いの言葉が分からないために音楽でコミュニケーションを取ったのが始まりだそうです。それが時事ネタを歌うニュース的なものとなっていき、その中から自分たちを働かせて搾取しまくる支配者を攻撃する政治風刺の歌が出てきて大人気に。
カリプソの黄金時代は最初の録音が行われた1910年代らしい ですが、これはそんなカリプソ黄金時代から50年代あたりまでの3枚組オムニバスCDです。こんなの音楽ファンなら絶対買っちゃいますよね。。
ディスク1は1912~29年までの録音。歌もの3にインスト音楽2ぐらいの割合。楽器編成はヴォーカル、ギター(たまにバンジョー?)、ヴァイオリン、ピアノあたりのバンド編成が定番のようで(もしかするとベースもいるかもだけど録音が悪くてよく分からない^^;)、インストになるとこういったバンドのフロントに弦が数本に合いの手を入れるクラリネットなどの管楽器が入るバンドが多かったです。詞は英語部分多し…なるほど、トリニダードは支配国がスペインじゃなくてイギリスだったからそうなんですね。コーラス部分に英語じゃないものがたまに出てくるんですが、これって元のアフリカの言語なのかな、それともスペイン語なのかな。。
音楽は長調のハートウォーミングでリラックスした音楽と、短調の切なげな音楽が半々ぐらい。
長調系の曲の心地良さは饒舌に尽くしがたいほど! 古い
キューバ音楽 もそうですが、中米の島々の音楽の心地よさと言ったらなかったです。短調系はブルースに通じるものがあるものの、違うのはビート・ミュージックである事で、そういう意味ではむしろタンゴに近いかも。あと、打楽器だけでみんなで合唱するアフリカの土着宗教音楽的なものも入ってました。
馬鹿に出来ないのが作曲法や演奏のレベルで、曲中で同主調転調する曲までありました。これ、イギリス側の音楽教師がいたバンドもあるんじゃないかなあ。ゴスペルやブルースみたいなリアル・ブラックだけが西洋音楽を参考に作り出した音楽って、演奏技術は凄いけど、作曲法はシンプルだったりするじゃないですか。でもカリブ海の音楽はこういう所が高度だと思います。そうそう、ピアノ演奏もレベルが高くて驚きました。左手でこんな強いバスフレーズを弾きながらメロディを弾くなんて、僕には無理です。
ディスク2は1930~39年、3は40~52年の録音。音楽は以前のものと同じ感じでしたが、ここから
Attilla 、
Tiger 、
Lord Invader といった僕でも知ってるカリプソニアンの名前が出てきました。マイナー調の割合が増し、マイナー調になるとキューバ音楽に近く聞こえてくる不思議。曲タイトルも「Treasury Scandal」とか「Money Is King」なんて感じになってきたので、このへんから白人支配者批判が増してきたのかも。「Roosvelt In Trinidad」なんて曲もあって、なるほどたしかにニュース的な役割を追っていたんだなあ、みたいな。カリプソは検閲を逃れるために暗喩を用いたりしたなんて言われますが、けっこう直球のものもありました(^^)。
こんな古い録音が残ってるって凄いです。カリプソは1910年代から50年代まであまり変わってなくて、最初から完成形だったんだなあと感じました。社会が大きく動いた1910-50の日本の歌音楽がすごく変化したことを考えると、トリニダードのこの頃は良くも悪くも社会が固定化されてたのかも知れません。とにかくホッコリして心地よくて、魅力的な音楽でした。
カリプソを聴いてみたいと思うなら、僕的おすすめナンバーワンはこのボックスです!
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このアルバムは持っておりませんが、ワタクシが持っている「カリプソ・パイオニアーズ1912-1937」及び「カリプソ・ブレイカウェイ1927-1941」と同じような内容なんでしょうかね~。アッティラ・ザ・フンが何故か女装しているジャケは、「カリプソ・ブレイカウェイ」と同じ写真が使わていますし。
何にしてもこのアルバム、欲しいです。