
1980年、英HR/HMバンドの
ジューダス・プリーストが発表した6枚目のアルバムです。剃刀を握っているジャケットがあまりに痛そうで先端恐怖症の僕は見てられませんが、なるほどこれは見事に音楽性の変化を視覚的にあらわしていたかも。僕の主観では、
このアルバムからジューダス・プリーストの音楽はわずかに変化したと感じるのですが、そのわずかが大きくて、ジャケットの剃刀みたいなキレッキレになったのでした。以前に78年発表の4thアルバム『ステンドグラス』を「肌に合わなかった」みたいに書いた事がありましたが、あれは産業ハードロック、このアルバムはヘヴィーメタルに感じました。この認識の差を生み出しているのが、ほんの少しの積み重ね、みたいな。
たとえば1曲目「Rapid Fire」のイントロのギターの8分音符で刻むザクザクしたリフは、以降のスラッシュ・メタルあたりに思いっきり影響与えたんじゃないかというほどガッツリ。キーボード無しのツインギターも硬派なメタル魂いっぱい。ギターソロも、『ステンドグラス』の時点ではどこか
ジミヘンっぽいネチっこさだったけど、こっちはタッピングを多用した高速フレーズになっていてメタルっぽい鋭さ。ドラムはツーバスじゃなくなったのに、印象はむしろこっちの方がヘヴィーメタル(ついてに言うと、フィルとかメッチャかっこいい^^)。でもって、
ギターとドラムの音がドンシャリで鋭いです。あーこれは70年代ハードロックじゃなくて80年代ヘヴィーメタルだ、みたいな。
似た事をやってるのに大きく変わって感じる理由の背景は、このドンシャリなサウンドメイクとガツガツ来る縦ノリ感の強調じゃないかと。その背景にはアイアン・メイデンらの登場があったんでしょうね。80年代前後というとニューウェイヴ全盛期で、ニューウィヴの人たちは60~70年代初頭のロックを「オールドウェイヴ」と呼んで軽くディスってたらしいです。そんな時代の空気があったもんだから、ハードロック系のバンドは、昔のハードロックと今の自分たちを区分けする必要があって、70年代末にイギリスから「ニューウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル」(略してNWOBHM…長い!)という名前をつけて区別したんだそうです。その先頭に立ったバンドが
アイアン・メイデンやデフ・レパードで、これがセンセーショナルなブームになったんだそうな。
この流れを掴まえて翌80年にジューダス・プリーストが発表したアルバムがこれ。このアルバムに入ってる「Steeler」のギターソロなんて、思いっきりアイアン・メイデンっぽいですしね。今となってはブリティッシュ・ヘヴィーメタルの重鎮といえばジューダス・プリーストとアイアン・メイデンみたいになりましたが、実際にはジューダス・プリーストは昔から活動していた先輩バンドで、その先輩バンドがうまいこと時流に乗った、みたいな(^^)。
僕は中学生の時に名盤の触れ込みで『ステンドグラス』を聴いて、ジューダス・プリーストを聴かなくなってしまいました。だからこのアルバムを聴いたのはけっこう後で、「これはカッコイイな」と思ったものの、その頃にはもうメタルを聴かなくなってました。もし出会うタイミングさえ間違えていなければ、愛聴盤になっていた1枚じゃないかと思っています。
僕的には、アイアン・メイデンのデビューアルバムに並ぶブリティッシュ・ヘヴィーメタルの名盤と思っています。
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