
幼いころ、北欧に憧れた事があります。バイキングのアニメや絵本を観たからなんですが、白夜があって、雪と氷の世界で、神話があって、クラーケンが出て…時代もゴチャゴチャ、現実と神話も入り乱れたデタラメなイメージでしたが、そういう世界だと思ってました。中学の時の社会の先生が
ノルウェーを「ノールウェイ」と発音していまして、その時に、「あ、なるほど、スカンジナビア半島の北側の道のように細い国だから、北の道という意味の国名なのかな」なんて思いました。本当にそうかどうかは分からないですけど。というわけで、これはノルウェーの民俗音楽のCDで、TOPIC原盤。フォークミュージックというタイトルだから、無伴奏の民謡か何かの楽器の弾き語りと思ってたんですが、意外にもインストが多かったです。
おおお~、これは本当にノルウェー独自のフォークミュージックという感じ、ドイツやオーストリアの音楽とは違った世界観でした!フィンランドやバルト3国のフォークミュージックや、ロシアのある時代のクラシックを聴いても、僕には西ヨーロッパの音楽との差が分からないものが多くて、それぐらいゲルマン文化の影響が強かったという事なんでしょうが、ゲルマン文化は西谷東には広がったけど北には届かなかったのかな?
東欧や北欧の素朴な民謡という空気感がビシバシあって、舞曲っぽいものがそれなりにあって、でも東欧の民謡に比べるとかなり透明感がありました。この透明感は口ではなんとも説明しにくいですが、クラシックでも北欧ジャズでも、あるいは家具でも、北欧のものって無駄がなくてスッキリしている感じがあるじゃないですか。あんな感じです(どんな感じだ?)。
いちばん目立ったのはフィドルの演奏でした。この地方のフィドルは
ハーダンガー・フィドル(現地ではハルディングスフィーレ。その他、他の呼び方もあるみたいなんで、次回のCDの感想文も参考にしてね^^)というものだそうで、アルバムのジャケットに写ってる楽器がそれ。
共鳴弦もついてるそうです。16世紀にはすでにあった楽器だそうです。いちばんポピュラーなチューニングはADAE(共鳴弦はDEF#A) だそうですが、これって日本の琵琶もこんな感じじゃなかったでしたっけ?なるほど弦楽器って初期のものになればなるほど基調を大事にする音楽を反映したような構造をしてるんですね。基本的に独奏なんですが、ダブルストップが大前提みたいで、素朴てスッキリしてるのに、実はものすごいテクニックを要するんじゃないかという気がします。
そして、このCDに入ってる
3曲目「Rotnheimsknut」4曲目「Gangar Etter Myllarguten」22曲目「ミラールグルッテンの結婚行進曲」は、グリーグが「スロッテル」作品72で取りあげた曲だそうです。なるほど~!
一方の歌。
歌は基本的に無伴奏の独唱。なるほど、東方正教会やバルト3国の合唱音楽が無伴奏ですが、そういう伝統がヨーロッパの寒い地域にはあるのかな?
スウェーデンも無伴奏独唱だったしな。男声も女声もありましたが、ファルセットで歌う女性の歌の透明感がスバらしかった!
個人的に、音楽としていちばん素晴らしく感じたのは、18~19目の2曲だけ入っていたランゲライクというツィター属の楽器の独奏。
フィンランドのカンテレにムチャクチャ感動したばかりですが、これはまさにあの匂い。音が重なって、こんなに美しく鳴り響いてしまうところに音楽の魔術を感じます。これはいい…。
他には、いかにも村のお祭りのためみたいな、たくさんのフィドルとアコーディオンとギターとコントラバスでの舞曲なんかも入っていて、ノルウェーを雰囲気を満喫できるCDでした。北欧の伝統音楽、素晴らしいっす。これもオススメ!