心に残った音楽♪

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小説『異邦人』 カミュ

Ihoujn.jpg フランスの思想家であるアルベール・カミュが、1942年に発表した小説です。当時のフランスの小説家って、小説を書くだけでなく、哲学者や思想家である人が多いですよね。サルトルもそうだし、バタイユもそう。
 主人公のムルソーは、ある事件に巻き込まれて人を殺してしまいます。相手が悪いやつだったし不幸な事故みたいなところもあったので、それ自体はそこまで問題じゃなかったのですが、彼が母親の死に際して涙ひとつこぼさなかった事や、殺人の理由を問われて「太陽がまぶしかったからだ」なんて答えちゃったもんだからさあ大変、彼は死刑宣告を受けてしまいます。そして彼は最後に、「自分が孤独でない事を感じるために、自分の処刑の日に大勢の見物人が俺に憎悪の叫びをあげる事を望む」と夢想、物語は幕を閉じます。

 この小説、フランスの熱い太陽光線を浴びて、日常生活がまるで白昼夢のように描かれている印象を覚えました。なんで自分への憎悪の叫びが、自分が孤独でない事に繋がるんでしょうか。私の解釈は的はずれかも知れませんが…それって、ママン(窪田啓作さんの訳では、母親をこう書いてあります^^)の死に対する、主人公の受け取り方に理由があるんじゃないかと。なぜママンは養老院から出なかったのかとか、なんで死ぬ前に許婚を持ったのかとか、そういう色々な事を考えて、ムルソーは(死を目前に控えた人生の)夕暮れは有終に満ちた休息のひとときであって、ママンはあそこで解放を感じたのではないか、そういう感覚にあるママンの気持ちをさておいて勝手に死を悲しい事として決めつけて泣く権利は誰にもないのではないか、と感じたんじゃないかと。だからママンが死の目前に感じたような感覚に同調するという事は、ひっくり返すとそういう所への無関心さにあふれている社会を拒絶しておきたいという意味で、だからそういう人たちからの「憎悪の叫びを望む」なんじゃないかなあ。この小説のテーマって、もしかしたらその人の方が社会よりも正しい考え方や感じ方をしているのかも知れない人が、社会ではある種の「異邦人」的な疎外感を覚えてしまうという、ある種の現代的な問題を扱った小説なんじゃないかと。久しぶりに読んで、ああ、なんて哲学的な小説なんだろうか、たまにはこういう本を読んで人生を考えないと、日常生活に流されちゃうなあと思った次第です。
 それにしても、ほんの70年ぐらい前までのヨーロッパはいいですね。アイドルというのは哲学者や思想家や音楽家であって、フロイトやドフトエフスキーやカミュ、音楽家でいえばルービンシュタインみたいな人がアイドルです。つまり、人に道を示す人たちだったんですよね。人の上にある人を、人々は尊敬していた、みたいな。それが、1次大戦後にアメリカが浮上したあたりからアイドルといったらムービースターとか売れた人みたいになって、下にいるような人が分かるものがアイドルで、下の人が分からないものは「マニアック」「でたらめ」「意識高い系」とかいって避けられてしまうという。今の日本なんて、もうね(^^;)…。文学の大名作「異邦人」、大人になってから読むとまた格別でした!


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コミック『風の谷のナウシカ』

KazenotaninoNausica_comic1.jpg 「風の谷のナウシカ」の原作コミック。僕が小学生の頃、「アニメージュ」というアニメ専門雑誌がありまして(今もあるのかなあ…)、それに連載されてました。当時のアニメというと松本零士さんのSF作品やガンダムなどのロボットアニメ、そしてうる星やつらあたりの美少女ものがメジャーで、その中にあって「風の谷のナウシカ」は、コミックも映画も異質でした。特にコミックは、独特の絵柄に、大人が読んでも難しいテーマやストーリー展開。僕はアニメージュという雑誌をたまに立ち読みしていたんですが、ナウシカの連載は内容がまったく理解できずに読まなくなってしまいました(^^;)。全部読んだのは、もう30歳を超えたぐらいの時。古本屋で全巻セットを見かけ、「あ、そういえば子供のころにアニメージュに連載されていたな、懐かしいな」な~んて軽い気持ちで手に取ったのです。そして…いや~~~~深かった!!

 映画に描かれていたのは物語の序盤も序盤、ほんのさわりだけで、設定も少し違います。映画は、背景にうっすらと色んなメッセージがあるものの、あくまでナウシカという主人公の描き出しがメインで、あくまでストーリーを追う娯楽映画という所を崩さずに作られていたと感じるんですが、このコミックはメッセージが思いっきり前。テーマは、命、人間、自然…ザックリ言ってしまえばこういう所で、それが自然賛美とかそういうのではなく、現代人に対する警鐘として描かれている所がグサッときます。僕の印象では、ナウシカというのは宮崎駿さんの作家としての生涯のテーマを凝縮したもので、「生命」とか「人間」という所に向いていると思います。人間というのも、心とか感情とか、主人公がどう感じたかとか、そういう小さい所じゃなくて、生命としての人間というところ。このテーマって、正直言って芥川賞や直木賞の受賞作品なんかの作品が取りあげているテーマなんかより、よっぽど重要なものと感じます。けっきょく、小説であるかマンガであるか音楽であるかなんていうものはあくまでも手段の違いであって、素晴らしいものというものは扱っているテーマが素晴らしいんだな、と思わされました。映画に大感動した僕だったので、映画とはずいぶん趣の違うコミックは最初は違和感だらけ、内容もちょっと複雑で、最初に読んだ時は「???」と理解できないところも結構あったんですが(ストーリーすら追い切れなかった(^^;ゞ)、何度も読んでいるうちに、「これはとんでもなくすごい本だな」と思うようになりました。極端に言うと聖書みたいな本で、こういう人類に対する重要なメッセージを正面から扱った本は絶対に読まないといけないと思ってしまいます。コミックだから、先入観でそう思われる事は少ないんでしょうが…。これは映画とは別の意味でとんでもなく重要な本、コミックだなんて軽く見たらいけない、現代人が一度は読まないといけない重要な本。映画しか見た事のない人は、ぜひ!


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コミック『みゆき』 あだち充

miyuki.jpg H2Oの「思い出がいっぱい」は、「みゆき」というテレビアニメのエンディングテーマでした。この曲は大好きだったんですが、アニメはまったく見てませんでした。でも、原作のコミックは子供のころに全部読みまして、面白かった!!

 小学校高学年から中学生ぐらいの時にクラスで人気のあった作家さんというと、小説では赤川次郎、マンガだとあだち充でした。でも僕にはどちらも軽すぎて合わず(>_<)。あだちさんは野球マンガが多かったんですが、高校の途中から野球を始めた奴が甲子園に出ちゃったりするので、いくらマンガだからってあまりのご都合主義がどうにもね( ̄ー ̄)。でも、「みゆき」というマンガは別でした。主人公が都合のよいスポーツ万能ヒーローじゃなくって、どこにでもいそうな普通の帰宅部の学生というのが、等身大で良かった!しかも、人がいいんですよね、ここに好感を覚えました。
 このマンガ、基本的にラブコメです。主人公の高校生の男の子が、同級生で美人のみゆきちゃんと、高校になってから久々に再会した腹違いの妹みゆきのふたりの間で揺れ動くというもの。で、基本的にドロドロしたものやシリアスな所はなく、でもちょっといい話や甘酸っぱい感じがあったりで、そういうところがポップで80年代的です(^^)。これが70年代の恋愛マンガだったら命を懸けた大恋愛のはずですからね(^^)。あとは、恋愛もののコミックの面白さ満載。
miyuki_1_92.jpgこういうのって、恋愛疑似体験的なかんじになるのがいいんでしょうね、きっと。特にドラマチックな展開の壮大なハナシというわけじゃないです。でも、かわいい子が、校門で自分を待っていてくれて、自分を見つけると笑顔で駆け寄って自分から手を組みに来るとか、そういうさりげない所にキュンと来る、疑似恋愛を楽しむマンガなんじゃないかと。さらっと読めて、嫌な気分になる事がありませんでした。それで、気がつくと一気に全部読んじゃう、読み終わった時には少しキュンと来る、的な(^^)。

 こういうポップさって、若い頃はどこかに軟弱さを感じて好きと嫌いが入り混じる感覚で読んでましたが、おとなになるとあんまり気にならなくなり、好ましく思えてきました。もっと力を抜いてもいいんじゃないか、みたいな感覚でしょうか。みゆき、ラブコメディの大傑作で、とても良かったです。



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コミック『翔んだカップル』 柳沢きみお

TondaCouple.jpg はっぴいえんどのデビュー作(70年)と大瀧詠一のアルバム(81年)を取りあげましたが、僕にとっての日本の70年代と80年代のイメージは、暗くシリアスでハードなのが70年代、明るく軽薄なのが80年代、といった感じ。そういう意味でいうと、頭脳警察矢沢永吉松田優作やあしたのジョーは70年代的で、山下達郎や松田聖子や角川映画は80年代的と感じます。まるで真逆ですが、じゃあその境い目って、どんな感じだったっけ?そのへんの空気をすごく感じる事が出来るものに、「翔んだカップル」というマンガがあります(^^)。映画やTVドラマにもなるぐらいヒットしましたが、原作のコミックが断トツで面白い!!

 このコミック、マセガキだった小学生の頃に、夢中で読んでました。主人公は男子高生の田代くんで、ドロッドロのメロドラマ(^^)。それなのに面白い。このマンガの場合、男1女2の三角関係が悩みの中心で、ヒロイン(圭ちゃん:画像左)じゃない方の女性(杉村さん:画像左から二人目)が異常に魅力的。ヒロイン圭ちゃんはおてんばでヒステリックで生意気なんだけど、ライバル杉村さんはクールで理知的で、主人公を好きでいてくれて、才女で、学年一の美女で、しかもエッチ(*゚∀゚)b。。男からすると申し分なし、恋してしまいそうなぐらい魅力的なキャラでした。読者心理としては、杉村さんとくっつけばいいのにという一心なんですが(きっと多くの読者がそう感じたんじゃないかと)、葛藤やら事件やら色々あって、なかなかそうはならず。

 なんでこのマンガに70年代と80年代の境いを感じるかというと、時代による人間の重要なテーマの移り変わりをそこに感じるから。「翔んだカップル」の前のマンガやTVドラマだと、テーマが生き方であったり人間ドラマであったりします。それが80年代になると、テーマのひとつに恋愛が加わったんじゃないかと。もちろん、70年代以前も恋愛は重要なテーマだったでしょうが、80年代以降の恋愛に対する切迫感や危機感は、前の時代のものと違う質のものの気がするんですよね。
Tondacouple_sugimura.jpg ダーティーハリーでも高倉健でも、70年代以前のヒーローはアウトローと相場が決まっていたのが、80年代で女性の地位が向上して、そうはいかなくなった。ついでに80年代で見合いも激減して、恋愛できないとパートナーの作りにくい時代になった。これで、恋愛が「たかが恋愛」では済まなくなったんだと思います。このマンガの主人公の勇介くんは青春で人間関係や部活や勉強など、悩みがいっぱいですが、悩みの大半は恋愛。これがマンガの中だけの話とは思えなくなってしまった所が、70年代と80年代の境い目あたりで起きた変化のひとつだったんじゃないかと。こういう恋愛的な危機感というのは、現在にまで繋がっているんじゃないかなあ。女性アイドルやタレントが、大人の美女から子供っぽい愛嬌ある子にシフトしているのも、「このぐらいなら」みたいな、今の男の子たちの自信のなさのあらわれにも思えます。少子化問題も、恋愛と無関係ではないですよね。恋愛が、軽く見ることの出来ないテーマになったんだろうな、と。

 まあでも、こんふうに感じるようになったのはずいぶん後になってから。子供のころは、単純に恋愛を克明に描き出したところが新鮮で面白かった。ファーストキスとか、同棲とか、初体験とか、そういうのが克明に描かれているこのマンガはドキドキでしたし、その恋愛の心理描写が実にリアルだったのが夢中になった理由だとおもいます。しかし主人公は残念だ、俺なら迷わず杉村さんを選ぶのに(^^;)。翔んだカップル、若い頃に面白くって夢中で読んだ人も多いと思います。久々に読んでみるのも面白いかも(^^)。



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小説『悪魔の手毬唄』 横溝正史

AkumanoTemari_book.jpg そんでもって、こちらが原作の「悪魔の手毬唄」です。「悪魔の手毬唄」も、金田一耕助の推理小説の中でも代表的なもののひとつ。あとは「八つ墓村」「獄門島」「犬神家の一族」「女王蜂」あたりが有名でしょうか。で、映画は、最初から犯人やトリックが割れたりしないように、犯人が変わっていたりと少し変化をつけられていることもあるんですが、「悪魔の手毬唄」は犯人やら何やらがそこまで大幅に違いません。僕は映画に感銘を受けたものだから小説まで読んでしまったクチです。ですから、この小説だけを読んで面白いかどうかは、今となっては自分では分かりません(^^)。ただ、映画を見た後に読んだという前提条件で話すと、面白かった!!

 映画版は、前の記事に書いたとおりに感動しまくったもので文句なし!では、その映画版と比べて、原作はどこが良かったか。まず、情景の描写が素晴らしかった!!舞台は田舎の温泉地なんですが、山のまわりに人気が少ない様、日本の原風景、夜道はちょうちんをともして歩くとか、昔の日本家屋の描写…こういったところが素晴らしくって、なんだか時間旅行している気分(^^)。。これは映画版ではあまり味わえなかった素晴らしさでした(^^)。
 次に、物語の軸になる手毬唄の読み解き。映画では、単に、昔からこの地に残る唄に沿って殺人が行われていく、という程度のものだった手毬唄が、原作だとその背景がかなり深く描かれていて、めっちゃくちゃ面白い(^^)。この辺りは、書いても犯人や動機のネタバレにならないと思うので、ちょっと書いてみると・・・原作では、冒頭から手毬唄に言及されてます。だから、手毬唄と事件の絡みが、昔の日本の風習や社会構造と絡み合うようで、これが独特のおどろおどろしさ。で、この手毬歌が凄い。これは数え歌(手毬歌なので、まりつきをしながら数が数えられるようになっている)なのですが、詞がえぐいのです。たとえば、その3番は…

 おらが在所の陣屋の殿様 狩好き酒好き女好き わけても好きなが女でござる
 女だれが良い錠前屋の娘 錠前屋器量よし小町でござる 小町娘の錠前が狂うた
 錠前狂えば鍵合わぬ鍵合わぬ 鍵が合わぬと返された


 この歌詞、パッと読むとただの歌に見えるんですが、実は隠喩になっていて、土地の暴君を揶揄する内容。こういう読みときをしていくと、めっちゃくちゃ面白いのです。すべての歌の韻になっている「かえされた」は「返された」。殿様に召されながら、気に入られないで「突き返された」、つまり「殺された」。錠前屋の下りは、「錠前と鍵が合わずに返された」、つまりセックスの相性が合わなかったので殺された、となるわけです。もう、こういう読みときからして推理小説のだいご味満載なのです!

 な~んて感じで、映画では犯人の悲しい動機を重点的に描いていましたが(時間的にこれは仕方がないし、それが成功していた)、小説は細部が見事!金田一ものの小説を初めて読むなら、僕は「獄門島」や「犬神家」よりも、これを推薦します(^^)。。



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プロフィール

Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです。音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度ですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

最近気になってるCDとか本とか映画とか
スゴイのが出る!King Crimsonの1970-1972年の間のスタジオとライブ音源!21CD+4BD+2DVD!リハーサルテイクとか、メッチャ聴いてみたい!2万円か、また貯金しないと。。 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!!
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