少し前に、ブログ友達の方がジャズギターでなかなかアドリブが取れるようにならない、らちが明かないと悩んでおられましたので、差し出がましいとは思ったんですが、練習の方法を少しだけアドバイスしました。私はピアノが得手なんですが、実は趣味でギターも弾いてたりするのです(^^)エヘヘ。ジャズバンドに参加させていただいていた頃、余興でギターとピアノを1曲だけ交代して演奏した事もあります。クラシックは四苦八苦ですが、ジャズはジョー・パスみたいな極端にすごいものでさえなければ結構いける(*^ー゜)v。思うんですが、
ジャズギターって、初心者向けの教科書が幅を利かせすぎて、本気で勉強したいと思ってる人がちゃんとしたメソッド本になかなか辿りつけない状況になってる気がします。他の音楽と比べてもさしてむずかしいとは思えないコード進行の上で、何年練習してもアドリブできるようにならないというのは、ほんとうはあり得ない事。それって、音楽を学ぼうとしている人の練習量が足りないだけではなくって、そもそも何を学べばいいのか、何を身につければいいのかが分からないままである事に原因があるんじゃないかと。というわけで、この記事が、ジャズギターの勉強をしているけどなかなか弾けるようにならないという人の助けになってくれれば幸いです(^^)。
(ジャズギターのアドリブの基本的な考え方とその練習)*ジャズのアドリブってアプローチが色々あると思うんですが、なにをするにもダイアトニック・ソロというものを演奏出来るのが大前提、その練習法です! (ツーファイブフレーズ丸覚えばかりではなくて)コードトーンとアヴェイラブルノートスケールで演奏する練習をしてみてはいかがでしょうか。曲のすべてをストックフレーズでまかなうというのは、理屈では不可能じゃないでしょうが無理があると思うし、そもそもそれは「ジャズを演奏する」というのとは違う気がしますし(^^;)、その練習を10年続けてもアドリブ出来るようにはならないと思います。アドリブ演奏ってどうやるものなのかというリクツを最初に理解して、次にそれを出来るようになるための基礎練習をひたすら繰り返す、これがジャズを含めた西洋のポップス曲の上でのアドリブをする練習だと思います。ジャズのアドリブシステムは、ベーシックな所はすごく単純です。今、ここに全部書けるぐらいです。まずはシステムのリクツを頭に入れて下さい。
一番最初に、ギターのフレットと実音を一致させます。3弦5フレットはCですよね?そういうやつです。もし覚えていらっしゃらないようなら、覚えて下さい。
ギターの人の場合、これを覚えるのを避ける人がいますが、これを避けるようではジャズ以前に音楽なんて無理と思って下さい。ここを大前提として… 最初に、コードの構成音で自由自在にアドリブ出来るようにします。1弦から6弦まで、どこにルートがあっても、△7、dominant7、m7、m7♭5、dim の5つのコードがすぐに演奏できるようにします。その時に
重要なのは、押さえているコードのどれが3度音程で、どれが5度音程で、どれが7度音程であるかをしっかり認識することです。形で覚えるだけでなく、その形のうしろに度数が透けて見えるようにします。こうしておかないと、m△7♭9♭13みたいなコードが出てきた時に、パッと演奏できるようになれません。例えば、3弦5フレットのCを押さえた時、セブンス音を表現したければ、一番押さえやすい所は1弦6フレットですよね?3度音程は5弦5フレット、5度音程は4弦5フレットか1弦3フレット…こういう構成音のインターバルを、すべての弦をそれぞれ基準にしてギターのフレット上で覚えて下さい。これを覚えていると、どの弦のどのフレットでルートを押さえたとしても、そこを基準に4つのコードトーンがパッと演奏できます。こうやって、まずは4つの構成音で自由自在に演奏できるようにします。
この段階まで出来ると、曲をアナリーゼできていなくても、書いてあるコードネームだけでまずは演奏できるようになります。
それが出来るようになったら、
次にアヴェイラブル・ノート・スケールでのアドリブ演奏を練習します。例の、トニックはionian、Ⅱm7はdorian・・・というあれです。練習方法ですが、ジャズの典型的なコード進行に従って行います。ご存じのように、ジャズのコード進行はクラシックと違って基本的にドミナント・モーションの連続ですので、いちばん遠回りをしてもせいぜい1→7→3→6→2→5→1(他は1→4→2→5→1も有名)という順で戻ってきます。というわけで、
日々のルーチン練習として、例えばCをトニックとしたら、Ⅰionian→Ⅶlocrian→Ⅲphrygian→Ⅵaeorian→Ⅱdorian→Ⅴmixo-lydian→Ⅰionian (1→4→2→5→1の練習はⅠionian→Ⅳlydian→Ⅱdorian→Ⅴmixo-lydian→Ⅰionian)、とスケールを上向と下降で練習します。この練習はまったく難しくないです、ひとつのkeyであれば、1週間もあれば自在に演奏できるようになると思います。練習する時に重要なのは、常に演奏している度数を意識することです。例えば、Gmixo-lydianで表現されている3度はB、短7度はFですよね?こういう所を常に意識して演奏します。これが出来るようになれば、いいアドリブかどうかはともかく、keyCの曲で手が詰まる事はなくなる筈です。
基本の
アヴェイラブル・ノート・スケールでの演奏が出来るようになったら、次にもう少しジャズ的なサウンドを持たせたスケールに入れ替えて練習します。先生に習っていると思いますが、ジャズの場合はドミナント7コードをストレートにmixo-lydianで表現することはあまりないです。構成音の幾つかを変化させて次のトニックへの繋がりにジャズっぽい色を出すんですが、最初はよく分からないと思うので、オルタード・スケールというのを使って練習します。また、ジャズではⅥm7というコードは実践ではあまり使わず、Ⅵ7に入れ替えて演奏します。このコードにもオルタード・スケールが使えます。というわけで、次の毎日のルーチン練習は、
Ⅰionian→Ⅲphrygian→Ⅵaltered→Ⅱdorian→Ⅴaltered→Ⅰionian、みたいな練習を日々のルーティンにします。 ジャズのアドリブって、基礎はたったこれだけで、ぜんぜん難しくないです。本番では、更にこれより簡単な方法で演奏できます。この練習がよどみなく出来るようになったら、はじめて曲を演奏してもいいです。ジャズの曲を転調に気を付けてアナリーゼして、曲のどこにどのコード/スケールを対応させるかをあらかじめ決め、そして日々のルーティンと同じように練習します。それが出来るようになったら、その曲の要所でカッコよくしたいところだけ、いま練習なさっている「決めフレーズ」を嵌め、アレンジを施して、曲を完成させます。
(具体的な練習メソッド) *「理屈は分かるけど具体的にどうやって練習していいか分からない」という質問への返答 練習メソッドは、クラシックだとピアノもギターもヴァイオリンもきちんとしたものがありますが、ジャズは少ない気がします。ピアノやサックスはまだいいんですが、ギターは…。
一応バークレーが出してはいます
が、あまり実践的じゃない(^^;)。だから、毎日ルーティンでやる練習メソッドは、ある程度自分で作るしかありません。というわけで、王道の方法としては…
コードトーンでのアドリブの練習ですが、まずは同じインターバルの動きで、一音ずつばらして(=コードフォームで演奏せずに単音で)Ⅰ△7→Ⅶm7-5→Ⅲm7→Ⅵm7→Ⅱm7→Ⅴ7→Ⅰ△7→Ⅳ△7→Ⅰ△を練習します。例えば、ひとつのコードで13757の順でフレーズを作ったら、その順のフレーズでコードプログレッションして下さい。例えばkeyCだったら、Ⅰ△7コードでの13757はCEBGBですよね。次のⅦm7-5での13757はBDAFAです。この時に、Bが1、Dが短3度、Aが短7度、Fが減5度…という事を意識して演奏してください。これをコードプログレッションにそって連続で演奏します。(これが把握できてないと、ジャズ的なオルタードがいつまでたってもできるようになれません。)それが
出来るようになったら、フレーズを2オクターブ、3オクターブに広げて下さい。こうすると、ギターの場合、ひとつのコードフォームだけで考えているとこれが演奏できない筈で、演奏するにはひとつのコードでもルートを次々に移動して捉えられないと演奏不可能、それを出来るようにするのがこの練習の狙いです。C△7コードでいえば、上向で5弦ルート、3弦ルート、1弦ルート…と目を移していきながらコードを押さえていく事になり、下降は1弦、3弦、5弦と、上向とまったく違う視覚的なインターバル感覚(例えば上向ならひとつ高い弦の2フレット上がP5ですが、下降だとひとつ低い弦の同一フレットがP5になる、など)が必要になる筈です。最初は少し手こずるかもしれませんが、1時間もやっていればできるようになる筈です。最初はルート音から始め、それが出来たら3度音程や7度音程から始めるフレーズを作り、練習してください(本番ではルート音を最初に演奏すると素人っぽくてけっこうカッコ悪いので^^;)。最後は、次のコードに行く前にリーディングノートを鳴らしてからチェンジする、先取音を鳴らす、経過音を挟むなどの工夫をして、アドリブの幅を広げて下さい。
これが出来るようになったら、間や隣の音を使うように拡張します。これがスケールです。ジャズを含めたポピュラー和声は1・3・5・7の順で積んでありますが、さらに9・11・13を足したものがスケールです。1・3・5・7・9・11・13を1オクターブ内に入れて並べ替えると、1・2・3・4・5・6・7になります。問題は、どれが♭するかですが、これは丸覚えで、コードプログレッションに準じて身につけます。例えば、ダイアトニックコード上にm7コードは3つありますが、Ⅱm7コードでは9・11・13がダイアトニック・テンション、Ⅵm7はここから13がフラット、Ⅲm7では9と13がフラットです。これはバラバラに覚えようとすると何年たってもなかなか身につきませんが、ジャズのコードプログレッションの36251の順で練習していれば、簡単に身につきます。この時のスケール練習も、コードと同じように同じ音型で練習する事で、インターバルの感覚を養うことができます。ギターの場合、9・11・13音は、最初のうちは和声音1・3・5・7を基準にポジションを把握して、慣れてきたらルートとの指板上での距離関係を単独で把握するようにしていってください。
練習段階では、ドミナント以外はトニックのスケールで一発なんて楽してたらコードプログレッションを表現するアドリブなんて出来るようにならないので(本番ではそれでもいいですが)、こういう練習を繰り返すといいと思います。もう分かると思いますが、これってコードプログレッション上でのソロアドリブに半分足を突っ込んでる状態なんですよ!そしてこれが出来るようになったら、ようやくジャズの醍醐味である様々な変化和音の世界へ(^^)。。
僕のギターは趣味程度ですが、ピアノはクラシックもジャズもプロとして活動させていただいた事もあるし、今でも教えているもので、メソッドを知らないばかりに一生懸命やってもうまくなれない人がいるというのを知っています。本当なら、アマチュアをだまし続けるようなメソッドとしてまるで完成してない本ではなく、『ジャズスタディ』とか『音楽の原理』とかジョーパスメソッドとか、ちゃんとした本を何冊も何冊も見て、自分にあった演奏システムと、それを完成させるための具体的な練習方法を確立した方がいいと思うんですが、それまでの間に合わせとして、参考にしていただけましたら!!
(でも、本当に僕がジャズギターを人に教えるなら…) *ここからが書きおろし! こんなふうに、とりあえずスリーコードとダイアトニック・スケール・コードを理解できている人がすぐに取り掛かる事の出来る練習をアドバイスしたんですが、これはジャズアドリブの勉強以前の準備運動という感じで、ほんとうは皆さん無意識にもこの先を勉強したいと思っていらっしゃるんじゃないかと思います。ほら、最初に「ジャズを演奏できるようになりたい!」って思った時って、きっと
ウェスなり
ジムホールなりローゼンウィンケルなりのシビれた演奏があって、そういうふうにアドリブ演奏できるようになりたいと思ったと思うんですよね。だから、潜在的にはこういう基礎じゃなくって、その先が出来るようになりたいと思ってらっしゃると思うんですよ。それが出来るようになるためには…いま僕が自分の生徒さんに教える時は(あ、これはピアノの話ですが)、こういう練習で基礎的な
ダイアトニック・ソロを出来るようになっていただいている間に、いちはやくジャズ和声を教えます。というのは、ジャズが演奏できないと悩まれる方って、技術的に指が動かないとか音がきれいに出せないとかよりも、和声が分かってないからどうやって演奏していいのか分からない…というわりあいが圧倒的に高いと感じます。たとえば、楽譜に書かれてるGm7が、ドリアンⅡm7なのかフリジアンⅢm7なのかエオリアンⅥm7なのかが分かってなかったら、アドリブしろって言われたって厳しいですよね。また、ドリアンやフリジアンやエオリアンが分かってなかったら、そもそもドリアンやフリジアンやエオリアンの練習なんて出来ないですよね?もっとジャズっぽくするためにそこはセカンダリードミナントにリハモしちゃう…ってアドバイスされたって、演奏技術以前に和声が分かってないと「なんじゃそりゃ」ですよね?だから、基礎練習をやってる間に、一日も早く和声を終わらせておくのが賢明と思います。
というわけで、ジャズギターを演奏できるようになりたいなら、簡単な初心者本が終わったら、また初心者本みたいなところを延々に巡り続けるんじゃなくって、あるいは「ローゼンウィンケルはこう」みたいに部分論ばかり書いてあって基礎的な所は学ぶことができない「J***L***」や「J** G*** B***」みたいな本を買い続けるんじゃなくって、基礎から応用までビッシリちゃんとメソッド化された和声法と演奏の教科書に取り組まれることをおススメしたいです。
これさえやっておけばジャズ和声は鉄板というちゃんとした本の中でいちばんのおススメは、「俺はひと通り理論らしいのはやったぜ」みたいに自信があるなら『
ザ・ジャズ・セオリー
』。これは絶対の一冊です。ただこの本は『ジャズスタディ』あたりはもう終わってるぐらいのひとじゃないと理解が難しいと思うので、自信がない人は本格的な鉄板本の中では非常に分かりやすい『
音楽の原理
』が推薦。
ジャズギターの演奏メソッドは、ジョー・パスの『
Joe Pass Guitar Method
』が王道。30ページ程度の本ですが、舐めちゃいけません、ジャズ演奏で大事なものはほとんど入ってると思います。何を体で覚えなきゃいけないのかと、その体に入れるルーティン練習の方法が分かる所が大きいです。ただし、和声法の勉強がある程度終わってないと、なんの練習をしているのかピンと来なくて練習のための練習になっちゃうかも…やっぱり和声が先ですね(^^)。あと、すこし独特のシステムになりますが、ギターで簡単にジャズアドリブを取る方法として合理的な方法を作り出してるパット・マルティーノの『
Creative Force
』は、実践的という意味で、個人的におススメです。ビバップ的な難しさから解放されるという意味でもいいかも。でも最初にやる本じゃないかな、ある程度演奏できるようになった後で、「なんか俺のジャズって古くさいな」と思い始めた時に取り入れると、目からウロコになるかも。
ジャズが演奏できないのって、じつは演奏がうまいとかヘタとかじゃなくって、和声が分かってない、または演奏と和声法が別々になってて一致してないのかも…一度、ここを疑われてみたら、突破口になるかもしれません。独学の人や、教えるのがうまい先生に習ってない人の場合(僕の経験でいうと、名選手名監督にあらずって本当に多い^^;)、ここに気づくことができないまま3年4年とすぎて、けっきょくジャズをあきらめるという人が多い気がします。こういう日々のルーティンがきちんと出来るようになったら、ジャズの場合は練習というのは、もうエクササイズはいりません、実践が練習になります!楽譜やCDとにらめっこして、自分でアナリーゼしてどういう演奏を組み立てるのかを考えて、五線譜にあれこれ書いてみて、オルタレーションの可能性を模索して曲を仕上げ、自分が目指すプレイヤーのソロをいくつもトランスクライブして理想とする人がどうやってソロを組み立てているのかを分析して、実践、実践、実践…みたいな道が、ジャズの道じゃないでしょうか。このへんまで来たときに、うまかろうがヘタだろうが、はじめてジャズを演奏してる実感がわくというか、ジャズ演奏を楽しいと思えるようになるんじゃないかと思います(プロはちょっと別)。僕はそうでした。
・・・って、なんかギタリストみたいな事を言ってますね、僕(^^;)。いや~、ギター好きなんですよ、特にクラシックギター。あのガット弦の美しい音と、楽器を抱きかかえる感じがたまりません。いま僕は、寝る前にセゴビア愛奏曲集をポロポロ練習するのが日課になってまして、これがいいんです。なかなか上手に弾けませんが、ギターの音がいい!ギターの上に猫が乗ってきてギターを弾いているボクの手をペシペシするのでなかなか進まないのがたまに傷ですが(^^;)。。あ、あともうひとつ。他の楽器に比べると、ギターの人って楽譜が読めない人が多いと感じます。いかにアドリブがおおいジャズでも、楽譜が読めないと、演奏はかなりしんどいです。演奏どうこう以前に、音楽の教科書が読めないという事になるので…。ギターの人がいつまでも初心者本から卒業しようとしない裏の理由のひとつには、楽譜が読めない事があるんじゃないかという気がします。音楽をやろうという人が楽譜を読まずにすまそうなんてムシが良すぎると諦め、すなおに楽譜を読む練習をしましょう(^^)。