2020年度のベスト・アルバム、後半戦です!振り返ってみると、ブログを始めた当初より民族音楽やクラシックをたくさん聴くようになってます。理由はふたつあって、ひとつは、このブログがたくさん持っているレコードや本の整理のために書き始めた備忘録のため、最初はロックやポップスから始めたものが、面倒くさくなってきて、順不同で整理するようになったから(^^;)。もうひとつの理由は、コロナで仕事のテレワーク化がさらに進んで、ながら聴きの難しいシンフォニーやコンチェルトを聴く暇が出来るようになった…いい事か悪い事か分からないですね(^^;)。
民族音楽を聴いて、昔とは聴き方が変わってきていると感じます。昔は自分が知らない文化にある音楽だから、楽器にしても音楽の構造にしても自分が知らないモノが多くて、いってみれば目新しい音の斬新さに興奮している感じ。ひと回りしてないから、地球全体の音楽区分という自分なりのマッピングが出来てなかった事もあるでしょう。それが、いろんな音楽を聴いたり演奏したり書いたり、音楽以外にもいろんな本を読んだり映画を観たりして、地域文化や美感の根底にあるものを聴きはじめている自分に気づいたりして。音楽だって、極端に言えば昔は効果音を聴いて喜んでいた程度のものだったものが、今では普通にアナリーゼして聴いていたり。けっきょくアマチュア向けな産業音楽に収監されてしまったタイプのプログレやジャズより何倍も面白いです。
前置きが長くなってしまいました。後半戦いってみよう!
第20位~11位
第20位:『R.シュトラウス:歌曲集《4つの最後の歌》 ほか ジェシー・ノーマン (soprano)、マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団』R.シュトラウスには好きな曲がそれなりにあるんですが、特に好きなのは「変容」と「4つの最後の歌」。後者は、ピアノ版よりもオケ版が好きで、なかでもこのジェシ・ノーマン歌のものに心が震えました。。そうそう、この曲はヘッセの詩がまたいいんですよ。。
第19位:『Cristina y Hugo / Padre Inca』アルゼンチンと言えばタンゴ、でも実はフォルクローレもなかなかすごい。クリスティーナとウーゴはアルゼンチン版演歌ぐらいにしか思ってなかったんですが、いざ聴いてみたら歌もギターも素晴らしすぎてのけぞった
第18位:『笠井紀美子 / Just Friends』笠井紀美子はアルバムを出すごとに駄目になってしまいましたが、このデビュー作は魂の入ったすばらしい歌、感動した…。ルパン三世の劇伴作曲家になる前の大野雄二のジャズピアノも素晴らしい
第17位:『イスラエルの音楽 Israël: Traditions Liturgiques Des Communautés Juives 1 / Les Jours Du Kippur』すべてがユダヤのスリホトの祈り。これほど自分が知らない世界の文化を感じるものも珍しい、聴いていて本当に祈りの壁の前に立っている気分になってしまった…音楽ってすごい
第16位:『Komitas Vardapet / The Voice of Komitas Vardapet』これはアルメニアの音楽というより、アルメニアの思想じゃないか…と思わされた、歴史的録音。なんと伝説のコミタス・ヴァルダペットの肉声が入っているんだからビックリ
第15位:『トルクメニスタン:バフシの音楽 Turkmenistan: La musique des bakhshy』子どもの頃にピアノ教室に通った行きがかり上でピアノ演奏をするようになりましたが、そうでなかったらリュート属の楽器を選んでいたでしょう。ギターから始めたに違いありませんが、そうしたらトルコやイランのセタールやサズの演奏に出会った時点でそっちに走ったんだろうな…な~んて思うぐらいにこのCDでのトルクメンの弦楽器演奏はすごかった
第14位:『エンデル・エ・ブレグティト ENDERR E BREGDETIT-O / アルバニア~ラパルダのポリフォニー ALBANIE Polyphonies de Lapardha』今年は民族音楽のCDをたくさん聴いたけど、特にバルカン半島からトルコを通過してコーカサス地方あたりまでの音楽をいっぱい聴いた気がします。このへんの音楽のレベルの高さはヤバいもんで、聴き始めたら止まらない(^^)。合唱で凄かったもののひとつがアルバニアのポリフォニー合唱。このCDも凄すぎて強烈でしたが、もうひとつ凄いものもあって…それは後ほど(^^)。
第13位:『Henry Clay Work: Who Shall Rule This American Nation? / Joan Morris (mezzo soprano), Clifford Jackson (baritone), William Bolcom (piano)』「大きな古時計」や「Come Home, Father」の作曲者の作品集はあったかくてレイドバックしていて心が本当にホッコリしました。ピアノのウィリアム・ボルコムとメゾソプラノのジョアン・モリスは夫婦で、ガーシュウィン作品集がこれまた素晴らしいので、いずれ書きたいと思います…持ってるCDの全レビュー、死ぬまでに終わる気がしねえ
第12位:『J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲全集 エガー(harpsichord)、エンシェント室内管弦楽団』バッハが書いた協奏曲はアレンジものが多いですが、オリジナルではチェンバロ協奏曲がヤバいぐらいに素晴らしい…そう思わされたのがこのCD。チェンバロとオケの音の混ざり方の美したといったらもう…
第11位:『Georgie: Chants de travail』グルジアやバルト三国は合唱音楽のレベルが主婦合唱団ですらすさまじくハイレベルでヤバすぎますが、これはすごかった。日本のビクターからリリースされていたグルジアの合唱のCDを聴いて「噂ほどでもないな」な~んて思っていた自分が馬鹿だった
本、漫画、ゲーム etc.性格上、難しかったりシリアスだったりするものの方が好きなんですが、人間は息抜きも大事だようねそうだよね。というわけで、硬派な哲学書や詩集や純文学ではなく、もっと軽い「遊び」に近い状態で読んだ本やゲームで、今年触れたもので心に残っているものを。
『野村克也 野球論集成』野村克也プロ野球のレジェンドであるノムさんが死んじゃったのも今年だったんですよね、ノムさん安らかに…。これを読んで野球の見え方が変わりました。素人が見ても「馬鹿じゃなかろかルンバ」と思わずにはいられない野球をしてソフバンに8連敗した巨人の監督コーチ陣は読んだ方がいいぜ
『バルサスの要塞』スティーブ・ジャクソン自分の選択でストーリーが変わるゲームブック。話も面白いが挿絵がまた見事!
『バイオハザード2』 プレステで遊んだホラーアクションアドベンチャーゲーム。昔の彼女とビビりながらやったあの頃が懐かしい
『1・2の三四郎』、『柔道部物語』小林まこと小学生の頃に爆笑したギャグマンガのバイブルが三四郎、その完成形が柔道部物語。名作すぎていまだにたまに引っ張り出して読んで笑っておるのじゃ
第10位~4位第10位:『フォーレ:ピアノ五重奏曲 第1番、第2番 ジャン・ユボー(p)、ヴィア・ノバ四重奏団』音大で専攻していたのでフランス近現代の音楽は楽譜もCDもいっぱいありすぎ、これを整理したかった(^^;)。聴き直して驚いたのが、フランス音楽ってドビュッシー直前もまた素晴らしかったという事。フォーレではピアノ三重奏曲やピアノ五重奏曲といったアンサンブル物が絶品でした
第9位:『ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》全曲 ベーム指揮、バイロイト祝祭劇場管弦楽団・合唱団』ワーグナーと言えば楽劇ですが、ぜんぶ聴くのにとんでもなく時間がかかる指輪よりも、「トリスタンとイゾルデ」の方が僕は好き。古典派からロマン派へと繋がったクラシック音楽のクライマックスのような大名作、しかも録音が良くてびっくり。ショルティ&ウィーンフィルの演奏も凄かったけど、70歳を越えていたベーム渾身の指揮は鬼気迫る名演、音楽家として生きるならこういう感動を生み出してこそなんだな…すごかった!!
第8位:『武満徹:高橋アキ plays 武満徹』武満徹のピアノ曲は、ギター曲に並んで名曲ぞろいですが、これはすごすぎる精度の演奏で背筋が凍った…武満曲らしくない解釈かも知れないけど戦慄するほどの衝撃を覚えたのは事実
第7位:『Lee Konitz with Strings / An Image』今年はリー・コニッツさんも亡くなったんですよね(・_・、)。トリスターノ派の重鎮であるリー・コニッツのアルバムで断トツで素晴らしかったのがこれ。というか、このアルバムで僕が感動したのは、コニッツさんではなく、アレンジを担当したビル・ラッソ。半音階あたりに突入し始めたあたりの近代音楽の室内楽というレベルのアレンジや作曲をやってるんですよ、好きとか嫌い以前に、単純にレベルが高いです。ジャズというエンターテイメント音楽からこういうのが出てきた40~50年代って、アメリカ音楽にとって素晴らしい時代だったと思います。今のジャズなんてほとんどポップスですもんね。。これ、2020年に聴いたレコードのジャズ1位でもあります。
第6位:『伝説の竪琴 ミャンマーの音楽』今年のベスト・レコードの中で癒し系音楽のトップ。アジアの田園地帯の音楽って、レイドバック系の音楽が多いけど、その心地よさ満載
第5位:『古代ギリシャの音楽 Musique De La Grece Antique / グレゴリオ・パニアグヮ指揮、アトリウム・ムジケー古楽合唱団』ウソみたいな話ですが、古代ローマ時代の音楽です…2000年以上前の音楽を聴けるって、すごすぎる。それだけじゃなくて音楽自体もアルカイックな素晴らしい響きで悶絶もの
第4位:『ドビュッシー:前奏曲集 第1巻・第2巻 クリスティアン・ツィマーマン(p)』ドビュッシーのピアノ曲は自分なりのイメージが出来上がってたんですが、そんなドビュッシー観が根底からぶっ壊された凄すぎる演奏。はやいうちにクラシック・ピアノを諦めて本当に良かった、どんなに頑張ってもこんな奴には絶対勝てないって。。
本、音楽書籍 結婚する時に「この収入じゃ結婚やめるか音楽やめるかの2択しかない」と音楽の道からリタイアした僕でしたが、有難い事に今でもたまに音楽の仕事をいただける事があったりして(^^)アリガトウゴザイマス。音楽で稼がなくてはいけなかった頃と違って、やりたくない仕事を断れるもんで、演奏の腕はそうとう落ちたけど、作編曲は今の方が良いんじゃないかとすら思ったり思わなかったり。でもって、せっかくだから自分の持っている知識や技術だけでパパッと作らず、今まで自分が使ってこなかった作曲技法やら何やらに挑みたいと思って、昔読んだ音楽書をほじくり返してみると…ああ、こんな素晴らしい教えに触れていたはずなのに、いつの間にか自分の中から消えているもんだなあと驚くばかりでした(^^;)。というわけで、音楽書籍をはじめ、今年読んだちょっと硬派めの本の中で心に残っているものを。
『ヘッセ詩集』新ロマン派にしてアウトサイダーなヘッセの詩集を読み返したのは、R.シュトラウス「4つの最後の歌」を聴き直して感動したから。思想を背景としているようなこの手の詩は大人になってから読んだ方がりかいできると痛感させられた絶対いい、しかもちょっと生きる指針にまでなった(マジです)
『旋律学』エルンスト・トッホ昔学んだ本だけど、読み返すといつの間にやら忘れていた事多数。和声ではなく旋律をどう作曲するかに悩んでいる人は、ジャンル問わず必読
『作曲の手引』ヒンデミット半音階にまで拡張した機能和声の拡張も忘れている事多数、さらに当時は理解も出来ていなかっただろうこともいっぱいあった(^^;)>。長調や短調の先の作曲を目指す人必読ですが、今となっては入手困難かも
第3位~1位
第3位:『Central Asia | The master of the Dotar』ロックやジャズのギターもいいけど、西アジアの撥弦楽器の音楽を聴いたら、狭い音楽だけを聴いていた自分を悔い改めること必至。それぐらい超絶の馬鹿テク&表現で、ちびりそうでした。でもイランはもっと凄いんだよな、もう8年もブログをやってるのにイランのダストガーに触れてないぞ(^^;)。いつか書こうと思います。。
第2位:『シェーンベルク:グレの歌 アバド指揮、ウィーンフィル、ウィーン国立歌劇場合唱団』シェーンベルクって無調音楽や12音音楽で有名ですが、実はロマン派音楽最高峰の作曲家でもあると思っています。そう言いたくなる根拠が『グレの歌』です。この曲はブレーズ&BBC響のものも推薦ですが、聴いている時に感動して体が震えて来てしまったアバド&ウィーンフィルのこれをまずは推薦したい
第1位:『Mysterious Albania』今年の1位はこれ、タイトルがあながち嘘とは思えないほど神秘的なハーモニーとポリフォニー、アルバニアの合唱音楽です!もう1枚年間ベストにあげた方のアルバニアの合唱も凄かったので、このへんの合唱はどれも超ハイレベルなんでしょう。ブルガリアン・ヴォイスも凄いしなあ。はじめて聴いた時も「なんだこれは」と圧倒されましたが、久々に聴いた今年も「うわあああ…」と圧倒されてしまいました。
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今年もお世話になりました。コロナの第3波が来て、日本のみならず世界も大変なことになってます。問題なくワクチン接種できるようになるまであともう少しみたいなので、あともうひと踏ん張り。大事な人にうつさないよう、みなさん年末年始は家でゆっくり過ごしましょう…音楽好きだと、それがたやすく出来るところがいいですね(^^)。。それでは皆さん、よいお年を!!