
1972~74年の足掛け2年、全105話という長きにわたってテレビ放送されたSFヒーローアニメです!105話って仮面ライダーより長いじゃねえか!すげえ。製作をした
タツノコプロは吉田竜夫さんという漫画家が作ったアニメプロダクションですが、吉田さんは77年に死去。
TVシリーズのガッチャマンは3作品作られましたが、吉田竜夫さん存命中に作られたのはこの第1作目だけです。
幼少時の僕は、タツノコプロ制作のSFヒーローは好きなものが多かったです。『宇宙の騎士テッカマン』を筆頭に、『新造人間キャシャーン』『破裏拳ポリマー』、みんなコスチュームのデザインや劇画調の絵柄がカッコよく感じて、好きでした。でもガッチャマンだけは好きになれず、けっこうやっていた再放送も見た記憶がほとんどありません。ガッチャマンは戦隊ヒーローのアニメ版といった風なのですが、隊員のひとりがサザエさんのカツオそっくり。敵組織の幹部の「赤き死の仮面」みたいな風体のやつがふざけていて気に食わない。なにより「ガッチャマン」という名前がダサすぎる…子どもなんて、そんなところで好き嫌いを判断するものなんでしょう (^^;)。
そんな事を、学生時代に一緒に音楽をやっていたサブカル好きのヴァイオリニストに話すと、「でもテッカマンやキャシャーンが好きでガッチャマンが嫌いって、食わず嫌いじゃないの?」との事。まあそうですよね…。でも今さら105話も見てられないというと、「じゃ、いい話だけ入ったビデオを貸すよ」と。で、彼のセレクトした話を見ると…おおお、これは面白い!というわけで、僕みたいに「今さらガッチャマンを全部観る気にはなれないけど、どんな話かだけでも知りたい」という人向けの重要エピソードを紹介!って、このセレクトは僕じゃなくて友人ヴァイオリニスト君なんですけどね(^^)
■ep1:ガッチャマン対タートル・キング ガッチャマンは科学忍者隊5人の活躍を描くアニメですが、
忍者隊の名称がガッチャマンなのではなくて、白いコスチュームを着たリーダーのコードネームがガッチャマン…そうだったのか。というわけで、1話は面白くないですが、色々な設定がわかります。ちなみに、この回と第2話は話が繋がっていて、敵兵器タートル・キングのデザインは、ガンダムをデザインした大河原邦男さんらしいです。
■ep52~53:レッドインパルスの秘密/さらばレッドインパルス 1話の次のおすすめが52話とはさすがガッチャマン、鳥だけに飛びますね(^^)。ガッチャマンの所属しているる科学忍者隊は偵察部隊であって、レッドインパルスという機動隊が別にいます。そして、このレッドインパルスのリーダーが、実はガッチャマンの実の父親。だれかが爆発する宇宙船を操縦して地球を救わなくてはいけませんが、ここではじめて父は正体を明かして子に別れの挨拶を…。この回を見て、人生ではじめて「あれ?ガッチャマンって実は面白い?」と思ったのでした。
■ep102:逆転! チェックメイトX ガッチャマンは基本的に一話完結ですが、ウルトラマンのように完全な一話完結ではなく、全体を通して物語が少しずつ動いています。そのストーリーが一気に動くのが終盤で、特に102話以降は目が離せませんでした。
102話は超重要エピソードで、ひとつはコンドルのジョーの正体が敵に知られる事。もうひとつは、100話以上にわたって人類に立ちはだかってきた敵リーダー・ベルクカッツェの秘密が明かされる事でした。本当は男と女の双子だった人間が、雌雄同体のひとりのミュータントとなってしまう。地球外生物に救われたリーダーが使い捨てにされ…最終話での最後の言葉は「私は何のためにミュータントにされたのか。こんな結末を迎えるのなら、私は人間でいたかった」。
いずれ死にゆく人間にとって、ミュータントやサイボーグは今もテーマであり続けていますが、こういう視点から命を描けるのはガッチャマンって、実はハードSF作品なのかも。■ep103~105:死を賭けたG-2号/魔のブラックホール大作戦/地球消滅! 0002 終盤のもりあがりのもうひとつは、殉職です。その最初がレッドインパルス隊員たちの殉職。僕はずいぶん歳をとった事もあって、映画・小説・演劇・オペラと、色んな物語を見てきました。で、間違いなく心を動かされるのは感情移入した人の死。だから、シナリオライターが仲間のいる物語の終盤を劇的にしたかったら、ひとりずつ殉職者を出すこと。ガッチャマンの場合、終盤の高揚感のひとつが、ガッチャマンと戦ってきたレッドインパルスの全滅です。これは分かっていても泣けました。。
そして悲劇の極めつけは、コンドルのジョー。ガッチャマンの終盤って、ガッチャマンではなくサブリーダーが主人公のような展開をします。自分の親がギャラクターの幹部だった事を知り、また今までの戦いのダメージが尾を引いて余命あとわずか。その体調の異変をリーダーに察知され、敵に顔を知られて拉致され、最終回では自分が犠牲になり、ジョーが生前に放っていた羽手裏剣が…これは主人公だよ。コンドルのジョーの最後は、子どもの頃に観ていたら感極まっていたかもしれません。
僕は全話見たわけじゃないんですが、アニオタな旧友の言葉を信じるなら、100話以上もあるガッチャマンも、最初、真ん中、終盤だけ見れば充分だそうで。ところで、ここまで劇的な展開にするなら、科学忍者隊どころか人類も大鷲のケンと白鳥のジュンだけを残して全滅、そしてこのふたりから人類の第2章が始まる…みたいにしたらさらに劇的だったでしょうが、敵ボスの正体を最後まで隠して生き延びさせたところを見ると、人気があったから続編の余地を残したかったのかも。でもって、やはり続編が作られたんですよね。その話はまた次回!