
ポップスのヒットチャートに出てくるオールディーズの黒人コーラスグループといえば、
プラターズのほかに
ドリフターズが思い浮かびます。
ドリフターズといえば、「スタンド・バイ・ミー」を歌った
ベン・E・キングがリードヴォーカルで、「ディス・マジック・モーメント」とか「ラストダンスは私に」をヒットさせたグループと認識していたもんで、プラターズと似たりよったりのポップなコーラスグループと思ってたんですよ。ところがこのグループ、そんな一筋縄でいくグループではありませんでした。僕にブラック・ミュージックを色々と教えてくれた同僚Kが、「ドリフターズと言ったら普通はクライド・マクファター期でしょう」とかいうんですよ!そもそもクライド・マクファターって誰だよ…僕は「え?何それおいしいの?」ぐらいのチンプンカンプン状態だったわけですが、するとKが貸してくれたのがこのアルバムでした。
オリジナルのリリースは1956年ですが、クライド・マクファターがドリフターズに在籍したのは1955年までだったので、それまでに発表されたシングルなどを集めたアルバムなのかも。
ドリフターズはもともとはクライド・マクファターのリード・ヴォーカルを支えるグループとして結成されたそうで、だからこのレコードは「クライド・マクファター&ザ・ドリフターズ」という名称なんですね。なるほど、同僚Kの言葉「ドリフターズと言えばマクファター期」の意味が分かった気がしました。新日と言えば猪木、巨人と言えば長嶋、みたいなもんですね。
ちょっと驚いたのは音楽。まず、録音がセルジオ・メンデスや
ルイ・アームストロングみたいに、まるでSP盤みたいなレトロな音。僕が貸してもらったレコードのカッティングがそうだっただけかも知れませんが、このレトロな音もあって、フィフティーズのチャートを賑わすことになる黒人コーラスグループの音楽というより、そのルーツを聴いた思いがしました。「あ、なるほど、
フィフティーズの黒人コーラス・グループの音楽って、ゴスペルやスピリチャルのチャートミュージック化したのがスタートだったんだな」みたいな。実際にどうだったのかは知りませんが、
コーラスがファルセットでヴィブラートを入れるとか、随所にゴスペルっぽさが残ってるんですよ。
クライド・マクファター期のドリフターズと言えば、このアルバムにも入っている「Money Honey」や「Honey Love」あたりが比較的知られた曲ですが、そういう曲を単発で聴くだけだと「ああ、古き良きポップなフィフティーズだな」ぐらいにしか感じませんでした。ところがアルバムを通して聴いていると、ゴスペルという生活に密着した音楽と、ラジオなんかでも聴いて楽しめる音楽に発展させようとした過程を目の当たりにしているようで、すごく良かったです。ベン・E・キング期のヒット曲がドリフターズだと思っていた僕には、ルーツ・ミュージックの良さも感じられた素晴らしい体験でした。う~ん、これはいい。。