『Lalo Schifrin / Insensatez』

Lalo Schifrin Insensatez ドン・セベスキーがアレンジを担当したウェス・モンゴメリーのアルバムを聴いていたら、ポピュラーのアレンジ物を聴きたくなってしまいました(^^)。なんていったって、子供のころはジャズピアニストや現代音楽の作曲をしたかったわけじゃなくって、ポップスのアレンジャーになりたかった僕なので、アレンジ物が嫌いなはずがないんですよね(^^)。これは、ラロ・シフリンによるボサノヴァ作品集。

 ラロ・シフリンといえば、僕にとっては劇伴作曲家アレンジャー。「燃えよドラゴン」や「ダーティー・ハリー」の音楽の感想を書いた事がありますが、どっちも大好き!しかし、アーティストとしてのラロ・シフリンは?実は僕、劇音楽ではないラロ・シフリンのアルバムって、これしか聴いた事がありません(^^;)。そしてこのアルバム、ほとんどボサノヴァ。しかも、3リズム&ストリングスのCTIレーベルのムーディー系ボッサみたいでした。このレコードのレーベルはジャズの名門ヴァーブですが、VERVEはゲッツ&ジルベルトなんかのジャズ&ボッサのレコードも結構出してましたっけ。ラロ・シフリンはピアノを演奏していますが、ピアノの演奏はリズムがけっこう重く、味があってカッコいいけど、やっぱりピアニストの腕としてはどうかな…みたいな( ̄ー ̄)。やっぱり才能を感じるのはアレンジで、特に弦アレンジはダーティーハリーや燃えよドラゴンみたいでした(^^)。そりゃそうか、同じ人が書いてるんだから。とくに1曲目"WAVE"の、モチーフのリピートと弦アレンジの絡みは見事でした!!

 やっぱり、アーティストやピアニストというよりも職人アレンジャーであって、またそのアレンジも腕は確かなプロだけど、進歩的な音楽を作るタイプではないのかも。このあたりは、セベスキーと似ているかも知れません。むしろ、ギル・エヴァンスみたいなアーティスト型のアレンジャーが珍しいんであって、ポピュラー音楽のアレンジャーというのはこういうものなんでしょうね。でも、プロのアレンジ術が聴けるし、アレンジはガッツあふれる所と気持ちい所が両方あって、久々に聴いてもなかなか良いアルバムでした(^^)。

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『Diego Schissi Quinteto / Tongos』

Diego Schissi Tongos
 こちらは、2010年発表のディエゴ・スキッシ・クインテットのアルバム。現代のアルゼンチンのタンゴ系のプレイヤー/コンポーザーの中では、アタマ半分ぐらい抜けた存在に感じます。古典すぎず、かといって古典無視でもないし、モダンや時には前衛っぽくもあるけど行き過ぎないし、このあたりのバランスがすばらしいっす(^^)。

 ことし(2016年)発表のアルバム『TIMBA』に比べると、全体のまとまりがないというか、部分部分はカッコいいんだけど、全体がガシッとしていない感じ。色々な作曲技法が使えるものの、それをまとめきれていないというか、「あれもこれも出来るよ~」みたいなところで終わってしまっている感じがします。いやいや、じゅうぶんカッコいいんですけどね、なんせ今年の新作が素晴らしすぎた(^^)。というわけで、素晴らしいんだけど最高傑作ではない、みたいな感じでしょうか。でも、ピアソラ以降のモダン・タンゴを聴いた事がない人にとっては、じゅうぶん驚かれるような素晴らしい内容だと思います。

 この人を聴いていて思うのは、タンゴのほかにジャズも勉強したんだろうな、という事。そんでもって、ある意味では古風になりがちなタンゴの和声を、モダンなサウンドにすり替えていきます。今のタンゴのカッコよさは、ジャズの50~60年代とか、ロックの67~72年とか、その頃ぐらいのカッコよさを感じます。リアルタイムのタンゴ/アルゼンチン音楽の情報収集はなかなか大変かと思いますが、ここはドップリはまっても損のない、素晴らしい音楽だと思います(^^)。


『Diego Schissi Quinteto / TIMBA』

Diego Schissi Quinteto - TIMBA  ディエゴ・スキッシと読みます。ピアニストです。今年(2016年)発表、超リアル・タイムの、アルゼンチンのモダンタンゴです!いまのところ今年買ったアルバムの中でナンバーワンの作品かも?!

 冒頭、はげしい不協和音から始まり、一気にタンゴになだれ込んでいきます。おお~、かっこいい(^^)。そして、短めの曲がダアッと並ぶんですが、バンドネオンとコントラバスだけの曲があったり大編成の曲もあったりで、これがすべて小楽章のようにつながっていって、1枚のアルバムでひとつの作品みたいに感じます。これはよかったなあ。そうそう、音がぶ厚いので圧倒されますが、編成はピアノ、バンドネオン、バイオリン、ギター、コントラバスというわけで、いたって普通のタンゴバンド編成。

 タンゴって、タンゴっぽい曲の作り方やアンサンブルのさせ方みたいなものがあるんだろうな、と感じます。それが何なのかといわれると困るんだけど(^^;)。たとえばコード進行とかだと、モダンタンゴの名曲(「アディオス・ノニーノ」とか「鮫」とか)とそっくりなコード進行が、どのアーティストの新曲にも出てきますしね。それって、「タンゴ」と名乗る以上、どこかにタンゴ的なものを感じて作っているわけで、それが良さでもあるし、縛りにもなっている気がします。そんな制約のなか、今のタンゴのどのあたりが進化しているかというと、楽曲の様式と和声の範囲が、けっこう進んでいる感じがします。和声で言えば、このアルバムだと、けっこうジャズっぽい和声も出てくるし、不協和音も無調もあり。ソングフォームは、ジャズみたいなコーラス形式を取らずに、クラシックのように起承転結をつけていく所は、今のタンゴをジャズやポップスやフラメンコなどの他のワールドミュージックよりも一段高いものにしているように感じます。聴いていて、「ああ、こういうソングフォームというのがありうるのか」と、ちょっと感動したところが随所にありました(^^)。

 個人的な感想を言えば、2010年代の現時点でいうと、いつの間にやらエンターテイメントになってしまった今のジャズやロックに比べると、タンゴの方が全然挑戦的で面白い音楽に感じます。客に媚びず、自分がカッコいいと思う音楽を突き進んでいる感じ。音楽はこうあって欲しいですよね(^^)。日本に住む僕にとっての問題は、たぶん言語の壁、流通の壁、メディアの壁なんじゃないかと。今の日本で、タンゴの新情報を伝えてくれるメディアなんて「ラティーナ」ぐらいしかないですしね。ラティーナ、楽しみに読んでたんですが、近所の本屋がつぶれちゃったのでどうしよう。。そんなわけで、日本ではあまり聴かれる事もないまま消え去ってしまう1枚なのかも知れませんが、これは聴いて損のない、超優秀な現在進行形の音楽だと思います!!


『DUO EL BALCON』

DuoElBarcon.jpg ブエナ・ビスタとおなじ中南米つながりということで。アルゼンチンのフォルクローレで、ギターと女性ヴォーカルのデュオです。去年(2015年)発表されたデビュー作で、「エル・バルコン」と読むみたいっす。いや~、これは素朴ですばらしい歌!!歌って元来こういうものですよね、今の日本の商業ベッタリで加工バリバリの歌が異常なんだよなあ。。

 アルゼンチンのフォルクローレって、編成は色々ありますが、シンプルにギターと歌だけというものもひとつの型。そしてこのギターが、日本のフォークみたいにコードジャカジャカじゃなくって、クラシックとかフラメンコとかボッサとかも吸収していて、みんなかなりうまいです。それで、日本とかアメリカみたいに、レコードありきじゃなくって、実際に庭先やカフェなんかで、肉声と生演奏で自分たちが思っている言葉を口ずさむというが、南米のフォルクローレ全般に感じる印象です。この夫婦デュオのグループ名も、ふたりのバルコニーで曲を作ってメロディーを口づさんで…という風に出来た音楽だから、こういう名前になったそうで。いや~、歌ってこういうものですよね、本来は!リバーブですらほとんどかかっていないこのCD、自宅録音なんじゃないかとすら思っちゃうんですけど、それが、本当に生きている人が、自分の言葉や自分の指で奏でた音で伝えているというふうに感じられて、素晴らしい(^^)。素朴だけど、ギターも歌も素晴らしくって、しかもそれが見世物として凄いんじゃなくって、日々の日常にしっかり結びついている感じでいいなあ。

 日本で、バンドやら何やらでドカドカやって、稚拙な上に「そんなこと思ってもいないだろ」みたいな言葉を聴かされて続けて、僕は歌が嫌いになった気がします。でも、アルゼンチンとかのラテンアメリカ方面って、こういう生活に密着した歌の文化がけっこう生きているんですよね。なんでもかんでも金が前提になっちゃった日本やアメリカでは少なくなっちゃった種類の音楽だけど、そういうものとは全く別の価値観の上で、本当に素直に「一緒に買い物行こうか」とか「いまの鳥、絶対なんか喋ったよね」とか、そういうところにあるものって、僕はすごく好きです。人間の幸せって、実はそういう所にあるんじゃないかと。歌が好きな人には、超おススメです!!


『BUENA VISTA SOCIAL CLUB』

BuenaVista.jpg ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブです!キューバ音楽のミュージシャンと、アメリカのルーツミュージックをベースにした音楽を作っているギター/ヴォーカルのライ・クーダーが作ったバンド!超好きだったし、世界中に大量のファンがいると思うのですが、とうとう解散してしまいました。僕は3月に解散来日公演に行ってきました。このCDの頃とはメンバーも結構変わってましたが、よかった~(^^)。このCDは、音楽的には思いっきりカリブ海の歌音楽がベース…というか、大半はキューバ音楽そのもの。少しだけアメリカのルーツミュージックも入ってますが、どちらにしても、フュージョンして新しい音楽を作り出したというものではなくって、ラテンアメリカのルーツミュージックの紹介、という側面が強かったんじゃないかと。発表は1997年。

 僕はキューバ音楽が結構好き。でも全然くわしくなくって、50年代とかの古いやつはそれなりに聴いてたんですけど、80年代以降は全然でした。そんな中、いきなりワールドミュージック界隈で爆発的にヒットしたこのCDには、「お、今のキューバ音楽って、どんな感じなのかな?」という感じで手を出しました。結果としては…大昔のキューバ音楽とあんまり変わってません。もちろん新しい録音なので音はいいんですが、正直言って僕程度のライトユーザーには50年代のキューバ音楽との違いがまったく分からず。実際、そんなに変わってないのかも知れません。でも、そこが良い!キューバにしてもジャマイカにしてもコロンビアにしても、政治はともかく音楽や市民生活は50年代(どころか20年代?)からあんまり変わってないのかも知れませんね。

 キューバ音楽を知らない人にうまく説明できるかどうか分からないんですが、古い日本のキャバレーで掛かってたコンガとかの入ったラテンっぽい音楽、と言えばイメージしやすいかな?…たとえが悪いですね(^^;ゞ。。で、キューバの音楽は、リズムや形式によって名前がついてたりします。まず、キューバの歌音楽で一番多いのは、「ソン」というもの。前半はけっこう他のラテン系の歌音楽とあんまり変わらないんですが、後半でリードヴォーカルとコーラスが掛け合いになる「モントゥーノ」というパートを持つものが多いです。アフリカの民族音楽にも同じ形式があるので、これは奴隷としてアフリカ系民族が連れてこられた時の名残かも。日本では「ルンバ」なんて言われる事もありますが、キューバでルンバというと、もうちょっと違う曲種を指すんだそうで。この辺は僕はよく分かってません(^^;)。次に、キューバのダンス音楽で有名なものが「ダンソン」。たぶん、ダンスソングという事じゃないかと。(*ころん様より、コメント欄に有り難い書き込みをいただきました(^^)。引用させていただきます。「ダンソン(DANZON、ダンソーンが近い発音)ですが、元々は器楽曲で、ダンス音楽なのは間違いありませんが、ダンスソングというワケではございません」との事。なるほど~!)これがいかにも「ラテンムード歌謡!」って感じで、古臭いです(^^)。でもこの古臭さが、中米の直射日光と古い木造りの小屋みたいな匂いがしてきて、いい(なんだそりゃ)!!このCDでは、ルーベン・ゴンザレスのピアノをメインにした"Puero Nuero"というダンソンが入ってますが、めっちゃムーディーで、まぶしい太陽光線と薄暗い室内の両方を感じるような音楽、大好きです(^^)。他にも、ボレロ(世界中に広まった3拍子のスペイン舞踊が有名ですが、キューバのボレロはなぜか4拍子が多くって、しかも舞曲には思えない)とか、グァヒーラとか、いろいろ入ってます。キューバ音楽の入門として、大推薦の1枚と思います!そうそう、解説があると100倍楽しめると思うので、ぜひぶ厚い日本語解説のついたものをおススメします(^^)。
 あと、アルバム後半には、アメリカン・ルーツ・ミュージックも少し入ってます。ここがライ・クーダーのカラーなんでしょうね。ライ・クーダーは、アメリカのミュージシャンといっても、アメリカ南部からラテン文化周辺のルーツミュージックに寄った人なので、「ジャズ」をやっていても、今ぼくたちがすぐに想像するようなジャズじゃないです。まるでハワイアンのようなジャズ。ブルースでも同じで、あの戦前の暗くうねるアレじゃなくって、白人のカントリーみたいなブルースをやります。考えてみたら、こういうジャズやブルースって、僕はライ・クーダーがやったものばかりで知っているのですが、ライ・クーダーがいつも「ブルース」と言って演奏するあの明るいブルースは、どこがルーツなんでしょうか?知っている方がいましたら、どうぞ教えてください!!

 というわけで、真剣に聴きこむ音楽というよりも、のんびりゆったり楽しむ音楽と思います。キューバ音楽や、カリブ海の楽園的なムードを楽しみたい方は、ぜひ!!庭やベランダでのんびりビールでも飲みながら聴いたら最高じゃないかと(^^)。


プロフィール

Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです(ノ^-^)ノ
音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。
プロでも評論家でもありませんので、たいした事は書けないかも知れませんが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!! レコ芸に載っていた近藤譲さんの新譜、室内楽作品集みたい。好きな作曲家なんで聴きたいんですが、持っている2枚のALM盤と4曲かぶってるので悩み中…
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