
1969年、
イアン・マクドナルドという素晴らしいリード楽器奏者を擁してデビューした、伝説のプログレッシヴ・ロック・バンドの
キング・クリムゾンですが、マクドナルドはファースト・アルバム『
クリムゾン・キングの宮殿』に参加しただけですぐに脱退。クリムゾンは、急遽マクドナルドの代役を務める事の出来るリード楽器奏者を捜し、そこで白羽の矢が立ったのが、サーカスというバンドにいたメル・コリンズでした。この人がまたいいんですよね(^^)。で、そのサーカスが、キング・クリムゾンのデビューと同じ69年にリリースしたアルバムがこれです。僕は、完全にメル・コリンズを追っかけてこのアルバムにたどり着いたクチ。見つけるのも大変な幻のレコードでしたねえ(^^;)。ギター/ヴォーカル、ベースまたはギター、ドラム、サックスというフォーピースバンドでした。
おおおー
アートロック的でカッコいい!サイケデリックでガレージで、インストの割合が高くて、ジャズ色もあって…近い所で言えば
ヴァニラ・ファッジとか、ファーストアルバムの時の
ディープ・パープルとか、ああいう感じでした。その2つのバンドほど上手くはないものの、あれよりもややジャズ色が強く、実際に
ソニー・ロリンズや
チャールズ・ミンガスの曲も演奏してました。これらも純ジャズには演奏していなくて、アート・ロック的な仕上げ方をしていて、そこが色というか、カッコよかったです。こういうのって表現を聴く音楽ではなくて、アレンジや雰囲気の味を楽しむ音楽なんでしょうね。その味が、僕にはビンゴ。
そう言えば、ヴァニラ・ファッジもディープ・パープルも
ビートルズの曲をハードにサイケにやってましたが、このアルバムも1曲目はビートルズの「ノルウェーの森」。なんでみんなビートルズをカバーするんだろ…みんなかなりアレンジを変えているので、良く知られた曲をやればアレンジやプレイの差を強調できるし、そのへんのメリットを狙ってるのかな?
個人的なイチ押し曲は、アルバム2曲目に入っていた、メル・コリンズ作曲の「
Pleasures of a Lifetime」。ギターのアルペジオと魅力的なコード進行で幻想的に始まって(まずはここが見事!)、途中で5拍子の展開部に入ってサックスのインプロヴィゼーションに聴き惚れて、ヘッドに戻る、みたいな。あ~これはいいですねぇ。そう言えば、こういう曲のアシッド・フォーク感と演奏の弱冠ジャズな所は、アート・ロックとも言えるかも知れませんが、初期の
キャラヴァンや
ソフトマシーンといったプレ・UKプログレにも繋がる世界観なのかも知れません。
そうそう、メル・コリンズ作曲で言えば、「Goodnight John Morgan」という曲が、アダルト・コンテンポラリーなボッサ調で、なかなかイケてました。けっこういい曲を書いてると思うんですが、メル・コリンズって、クリムゾンで曲を採用して貰えなくて、泣いてリハスタをとび出した事があるらしいです。
ロバート・フリップ、そういう所だよ(^^)。。
サーカスって、僕はこのアルバムしか知らないんですが、クリムゾンにメル・コリンズを引き抜かれて解散しちゃったみたいなんですよね。このバンド、リード楽器とドラムがうまくて、ギターとベースは決して下手なわけじゃないけどあくまでサイケ/アートロック系の人たちに聴こえました。そういう面では、いずれ別々に活動する事になる運命のグループだったのかも知れませんが、それでもこの音楽の狙っている所ががなかなかカッコ良く感じたもので、あと何枚かアルバムを残してくれたら、もっと面白い事になっていたかもしれないな、なんて思いました。…あ、そうしたら
キング・クリムゾンのセカンド以降は生まれてなかったのか?!なかなか世の中うまく行きませんね(^^;)。