『アサートン指揮ロンドン・シンフォエッタ/シェーンベルク:室内楽作品集』

Shoenberg_Chamber Ensemble シェーンベルクの室内楽作品集、2枚組です。曲目は…

CD1
・室内交響曲第1番(15楽器のための)op.9
・浄夜op.4(弦楽六重奏版)
・室内オーケストラのための3つの小品
・鉄の旅団
・クリスマスの音楽
・ヴァイオリンとピアノのための幻想曲op.47
CD2
・組曲op.29
・管楽五重奏曲op.26

 録音はクリア、演奏はタイトです。若い頃の僕は、このディスク2に入っているふたつの曲に惹かれて買ったんです。というのは、この2曲、シェーンベルクの12音音楽が完成した超重要作と言われていたから。ところが、これが全然受け付けなかった_| ̄|○。「組曲」はまだ良かったんですが、「管楽五重奏曲」なんか、駄作としか思えなかった。管楽器の音が、バラバラにピロピロなっているだけに聴こえてました。そんなものだから、「シェーンベルクは、12音の時代は当たりはずれがあるから気をつけろ!」と思うようになったんだと思います。じっさい、「6つのピアノ小品」ぐらいしか、12音でいいと思ったものがなかったですしね~。
 そして今回、売るかとっておくかを決断する為に聴いてみると…超おもしろかった!若い頃の俺は一体何を聴いてたんだよ。。もしかすると、ジャズやフランス音楽を中心に聴きすぎていたものだから、対位法的に絡む構造を捉える事が出来なかったのかも。たしかに、そこが聴こえてこないとつまらないかも知れません。フォーメーションがまるで分らないままサッカーを見るようなもの…かな?あ、あと、構造が重要なので、音楽を音の印象で捉える人は、やっぱりつまらなく感じるかも。思うんですが、セリーみたいに音どうしの関係性が重要な音楽って、演奏にかなり左右される気がするんですよね。どの音とどの音が照応しているかを見えやすく演奏すると、すごく構造が立体的に浮かび上がってくるんですが、平たんに演奏すると、これがめちゃくちゃな音の羅列に感じられちゃう。このCD、ちょっと平坦です。じゃ、どうすればいいのかはちょっと分からないけど、もう少し立体的に構造を浮かび上がらせる方法がある気がします。今度、楽譜を手に入れてみようかな…。でも、そのアナリーゼだけで大変なことになりそうです。現代音楽を扱う指揮者って、すごいな~と思います。僕だったら、指揮以前の分析の段階でくじけちゃいそう。。

 僕のシェーンベルク観は、今回でちょっと修正されました。うちには大量の本やレコードがあって、どう考えたって残りの人生であと2周も聴けない。だから、「もう1回聴いている時間はきっとないな」と思ったら、悪くないレコードでも手放す事にしてます。このブログ自体が、それをやろうと思って始めたものですし(^^)。というわけで、シェーンベルクは、ピアノ曲以外はぜんぶ手放すつもりだったんですが、ところがどっこい素晴らしかった!!無調時代はもともと好きだったんですが、シェーンベルクの12音をこんなに素晴らしいと感じたのは、人生初かも。これは、対位法やカノンの勉強をしてから聴いた方が解れるようになる音楽ですね。そういう視点で、構造を追えるぐらいの集中力がある時に聴くとシェーンベルクの無調以降の音楽はスゴイ。逆に、集中力がない時に聴くとよく分からなくなっちゃう。こんな感じかな?かといって、頭で考えるだけの音楽かというと、そうでない気も。実はしばらく前に嫌な事があって、ちょっと落ち込んじゃったんです。なんにも手がつかなくって、僕があまりにも落ち込んでるから、普段は奔放なうちの猫が、僕を心配して顔をスリスリしてきたりして、ずっと僕から離れないで寄り添ってくれるほど(うちのネコ、僕を自分の子供と思っているフシがあります^^;)。そんなもんだから、いろんな音楽を聴いて気分を変えようとしたんですが、ロックもジャズも全部だめ。ところが、シェーンベルクを聴いていたら、感動しすぎて復活してしまいました。うつくしいというのとはちょっと違くて、見事という感じ。感動してしまった。久々のシェーンベルク体験、ものすごく良かったです。。


スポンサーサイト

『シェーファー(soprano)、ブレーズ指揮アンサンブル・オブ・アンテルコンタンポラン/シェーンベルク:月に憑かれたピエロ、ナポレオンへの頌歌 他』

Shoenberg_Boulez_Pierrot.jpg 人生何度目のトライでしょうか、「月に憑かれたピエロ」です。実は、学生時代、舞台のお仕事でこの曲を演奏した事があるんですが、吐き気を覚えるほどクソむずかしかったです。ジャズの仕事でも辛い思いをしたことがありますが、はっきり言ってその比じゃなかった。この曲、シェーンベルクが既に無調に進んだ頃に書かれた、調音楽や対位法という古典的な音楽書法が部分的に使われた曲なので、「軟弱だ!」なんて言う人がいますが、「じゃお前、これ弾いてみろ!そんじょそこらの聴音感覚で対処できるようなもんじゃねえぞヾ(`□´)ノ〃ウガー」と言いたくなるのでした(^^;)。

 そんなトラウマがあるからなのか、僕は大名曲といわれるこの曲があんまり好きじゃないんですよね。それなのに、ストラヴィンスキーやラヴェルなど、同時代のそうそうたる作曲家はこぞってこの曲を絶賛。つまり、分かってないのは私の方なので、忘れた頃に毎度毎度再トライするわけです。そして今回…うああ、やっぱりダメだった_| ̄|○。。でも、なぜ駄目なのかがちょっと分かった気がしました。
 このCDで指揮をとっているブーレーズ自身が、ブーレーズ版「月に憑かれたピエロ」みたいな「ルー・マルトー・サン・メートル」なんて曲を書いてますが、それも「詞が重要な役割をしているので外しようがないけど、それでも声さえなければもっと良かったのに」なんて感じちゃうんですよね。このCDには、他に「心の茂み」という曲と「ナポレオン・ボナパルトへの頌歌」という曲(この曲もとっても有名な曲です)もはいってるんですが、これらもソプラノ入り。そして、どちらもやっぱり肌に合わない。つまり、「ああ、厳格でクールな音楽には声というのは合わない」と僕は感じちゃうのかも。対位法音楽に近い所もあるので、言葉が入っちゃうとそこがぼやけるんでしょうね。好きになれない理由は、アホみたいに単純なものでした(´・ω・`)。でも、自分に合わないんだから、こればっかりは仕方がないですね。


『ブレンデル(pf)、ギーレン指揮バーデンバーデン南西ドイツ放送オケ/シェーンベルク:ピアノ協奏曲、』

Shoenberg_Gielen_Brendel.jpg 実は、調音楽時代のシェーンベルクはそんなに好きじゃなかったんですが、久々に「浄められた夜」を聴いたら意外と良かったので(年をとってロマン派を受け入れられるようになった?)、他のも聴いてみようかな(ゴソゴソ)…あれ、こんなの持ってたか?…あああ思い出した!現代音楽バリバリの指揮者ギーレンに、ベートーヴェンとかのクラシックのど真ん中ばかりをやるピアニストのブレンデルの組み合わせに驚いて、手を出したんでした(^^;)。

 取りあげているのは、室内交響曲1番(作品9、1906)、2番(作品38)、ピアノ協奏曲(作品42、1939)、です。室内協奏曲の2番は作品38となってますが、実は1番と同じ年に書かれて、第2楽章が完成しないまま30年以上たってから続きが書かれたので、作品番号が遅くなったんですね。というわけで、室内交響曲の2曲は、初期の調音楽の傾向が強いです。この2曲が書かれた1906年前後というのは音楽的にすごい時代で、ストラヴィンスキーの「火の鳥」が1910年、アイブスの「夕闇のセントラルパーク」が1906年、ラヴェルの弦楽四重奏が1903年です。いや~、音楽がめっちゃくちゃエキサイティングな時代じゃないですか!新しい音楽の名作がボロボロ出てくる時代、ロックでいう1967から72あたりみたいな感じ?いや、それ以上でしょうね、たぶん。というわけで、調音楽とはいえ、4度和音とかを使ったりして、面白い所がチラホラありました。第2番なんて、シュトラウスの「変容」とそっくりな和音とか出てきますし(^^)。でも…音がギッチギチに書きこまれ過ぎていて、楽器が鳴る前に次の音が来ちゃう、みたいな感じで、ちょっとオーバーアレンジ気味というか、聴いていて疲れちゃいました。この2曲は、すごくよく出来てる感じだけど、もう聴かなくてもいいかな?

 そして問題の、ピアノ協奏曲。いや~、これがかなり素晴らしかった!!「3つのピアノ曲」ほどの研ぎ澄まされた感じはないですが、それに迫るほどの素晴らしさ。ピアノがブレンデルなので、もっと官能的な演奏になるかと思ったら、けっこう鋭い感じというか、メリハリはついてるんだけど感情的に行くんじゃなくって、対位法的な曲の構造を綺麗に描き出しにいった感じです。この頃のシェーンベルクは既に12音列技法に入っている頃で、調機能ではなくって、音列間の関係とかが、曲の構造を決める重要な点になってるんですよね。その関係をはっきり描く事に配慮した指揮と演奏という感じ。いや~、これは見事!曲自体も、「6つのピアノ小品」とかみたいに極度に短くなったりしていなくって、性格の違う4つの楽章が見事だな~、と思いました。こういう曲を書くのも凄いし、この構造を見事に描き出す演奏も凄いです。

 僕にとってのシェーンベルクは、当たり外れの多い作曲家で、とくに初期のロマン期と作品26以降の12音列以降は気をつけないといけないハズだったのに、12音が実に素晴らしくって、意外と外れがない。12音時代はクソ難しそうなので、自分で弾きたくはないですが。若い頃の俺は、一体何を聴いていたんだろうか。耳が腐ってたんですね、きっと(;_;)。。


『バレンボイム指揮&ピアノ、シカゴ交響楽団/シェーンベルク:浄められた夜、5つの管弦楽曲 他』

Shoenberg_Barenboim_Nacht.jpg 近現代の作曲家で、以降の音楽にもっとも影響を与えた作曲家といえばシェーンベルクじゃなかろうか?!無調音楽、12音音楽などなど、シェーンベルク以前にはほとんど聴くことの出来なかった音楽がここからはじまり、以降のセリー音楽の源流になり、たぶん今のさまざまな実験音楽も…とにかく現代音楽のルーツとなった超重要人物、最先端で難解な、スゴイ人なのです!僕は、シェーンベルクは12音音楽にいってしまうちょっと前の、無調音楽にちょっとだけロマン派音楽の匂いが残っているあたりが一番好きでして、ロマン派から無調、そして12音へというシェーンベルクの変化を存分に味わえるのが、このCDというわけです(^^)。

 シェーンベルクさん、最初はブラームスとかワーグナーとかマーラーみたいな重厚なドイツ音楽みたいなのを書いていました。その代表作が、このCDにも収録されている「浄められた夜」。作品4なので、本当に初期ですね。これがいい曲なんです(^^)。シェーンベルクは難解でちょっと…という方は、ぜひ「浄夜」を聴いてみて下さい!じつに官能的な、上質のロマン派音楽です(^^)。そうそう、この曲、じつは標題音楽でして、デーメルという詩人の詩からインスピレーションを受けて作られてます。もともと弦楽6重奏だったそうですが、ぼくが聴いたCDは全部大編成だな~(ホリガー指揮のものとか、カラヤン指揮のものとか)。
 
 ここから、シェーンベルクの作風は少しずつ変わっていきます。無調といわれる音楽を書きはじめるんですが、このあたりのシェーンベルクの音楽は名作の宝庫。まずは、 「3つのピアノ曲」。作品11なので、これも比較的初期の作品なんですが、ロマン派な感じと無調のミックスみたいな感じ。調的感覚がないわけではないんですが、なんというのかなあ…センタートーンはあるけど、長調とか短調とか、あるいはそれらのモードとか、そういうんじゃないんですよね。もっと対位法的というか、それぞれの旋律の関係性でむすばれた音楽、みたいな。だからあえて調か無調かと言われれば無調という事になるんでしょうが、これが恐ろしくいい曲(^^)。曲の構造がしっかりしているからなんでしょうね。ただ、この曲にはバレンボイムの数段上を行く快演がありまして…それはまたいつか紹介します。そうそう、このCDですが、おもしろい事に、最後に「3つのピアノ曲」の第2番のプゾーニ編曲版が入ってます。これは、他では聴いた事がなかったもので、ちょっと驚きました。
 これとまったく同じ年に書かれた「5つの管弦楽曲」、これもまた素晴らしい!管弦楽ではあるんですが、これも「3つのピアノ曲」の似たような音楽で、しかし管弦曲のカラフルな響きがあるものだから、ゾクしてしまいます。そして、「浄夜」と違って、ドイツ音楽的なドラマがまるでなく、6つの楽章のそれぞれがすごく短くて(2分とか5分とか、もう管弦楽とは思えないぐらいに短いっす^^;)、無調的印象主義とでも呼びたくなるような感じ。いや~、これもカッコいいっす。こういうのを聴いていると、長調か短調の音楽ばかりを聴いている自分が馬鹿におもえてくる…。
 その2年後に書かれたピアノ独奏曲「6つのピアノ小品」。ここまで来るとロマン派の香りなんて全然なし。しかも、どの曲も長くて70秒と、短いっす(^^)。なんで短いのかは分からないんですが、この傾向はシェーンベルクの高弟ヴェーベルンもそうなので、そういうコンセプトが当時のセリー音楽にはあったのかも知れません。ただ、「無調」という言葉から想像する音とはちょっと違うと思います。無調といっても、♭9 とか♯5 が出てくるという感じだし、対位法的な線と線の構造が実によくできているもので、デタラメに聴こえるどころか恐ろしく合理的なかんじで美しい。これも素晴らしいです!

 というわけで、ロマン派、無調、12音と変化していったシェーンベルクのキャリアを1枚で楽しめるこのCD、おススメです!!

『Gavin Bryars / HOMMAGES』

GavinBryars_Hommages.jpg  「タイタニック号の沈没」とか、ことごとく外れを掴まされた僕のブライアーズ観が一変したアルバムです!いや~、これは良かった。。

 このCDをものすごく単純に表現すると、スイングも変化もしないアンビエント・ジャズという感じ。同じコーラスの繰り返しという意味ではやっぱりミニマルだし、劇的構成を取らずにひとつの印象だけをずっと提示し続けるという点はアンビエントっぽいですが、その循環が普通の西洋音楽のコード・プログレッションを伴うもので、しかもオルタードされたテンションが結構使われているので、響きがジャズっぽいんですよね。この時間は流れているんだけどムードは変化しないというのが聴いていて心地よいのです(^^)。おススメはなんといっても1曲目のピアノを中心に作った"My First Hommage" で、水槽を眺めながらこの音楽を聴いていたら、海の中を無限にプカプカと漂っているような感覚に襲われてしまいました。

 アンビエント系の音楽って、作ろうと思えば録音機器で何かの音を録音してループしてしまえば出来てしまうので、チープなものも少なくないんですよね。だから、ルネサンス音楽みたいに同じムードをずっと漂わせる音楽って好きなのに、アンビエントはついつい敬遠してしまっていたんですが、これは超良作。いや~、この緩い音の海にずっと浸かっていたいです、気持ちいい…


プロフィール

Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです(ノ^-^)ノ
音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。
プロでも評論家でもありませんので、たいした事は書けないかも知れませんが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
フリーエリア
検索フォーム
リンク
最近気になってるCDとか本とか映画とか
少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!! レコ芸に載っていた近藤譲さんの新譜、室内楽作品集みたい。好きな作曲家なんで聴きたいんですが、持っている2枚のALM盤と4曲かぶってるので悩み中… 楽器屋で演奏してみたら、木製鍵盤で、タッチがけっこう本物のピアノに近かった!うちにあるアップライトがけっこうヤバいので、フルメンテして貰うか、こういうので間に合わせようか大いに悩み中。
これまでの訪問者数
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
アド