
西洋の近現代のクラシック/芸術音楽がメチャクチャ好きです。特に近代は、独創性も強いし感覚的にもモーレツに感動するし、本当にいい音楽がひしめいてます。
シェーンベルク、
ストラヴィンスキー、
ドビュッシー、
バルトークが同時代の同じシーンにいるって、すごくないですか?
これだけべた褒めしておきながら、僕はバルトークのすべてが好きなわけじゃなかったりして(^^;)。バルトークって、元々は
ベートーヴェンや
ブラームスや
R.シュトラウスといったドイツ/オーストリア音楽に影響されまくったところから始まって、途中でハンガリーの民謡を採集・研究しつつシェーンベルクとかの当時の前衛音楽も吸収した人です。僕はこの先鋭化した時のバルトークの音楽が好きで、6曲ある
弦楽四重奏曲はどれも見事、特に3番以降は天才的です。「弦チェレ」も、
フィボナッチ数列(!)を用いて、楽器ごとに配分された12音と複雑なカノンが一点を目指して上昇していく第1楽章は神技。弦カル3番が1927年、弦チェレが1936年ですから、27年以降の10年ちょっとぐらいの作品が強烈、という事になります。
でも、バルトークがそのまま最先端を突っ走ったかというとそうではなく、
第2次世界大戦で東ヨーロッパの雲行きが怪しくなってからはアメリカに亡命。ここから先鋭的な作風が影をひそめて、すこし前のクラシック音楽の作風に戻ってます。 さて、このCDに収められてる「管弦楽のための協奏曲 Concerto for Orchestra」は、「
弦チェレ」と並んで上演機会の多い作品。書かれたのはアメリカ亡命後、死ぬ2年前となる1943年。というわけで、作風は従来のクラシックに近いところに戻ってます。さすがに近現代屈指の作曲家の晩年の作品だけあって見事なオーケストレーションです…が、アメリカで評価されなかったもんだからちょっと日和ったような気がしなくもない(゚ω゚*)。バルトークほどの人でも、評価されなくなっちゃうと「アメリカの人に受け入れられるものを」とか思っちゃうんでしょうか。弦楽四重奏や弦チェレを知っていると、これはちょっと物足りない…。もしこれがバルトークの作品じゃなかったら絶賛ものだと思うんですが、バルトークの作品だけに、神がかった数列や最先端の技法を突き進んで欲しかった。って、こんなに見事なオーケストレーションを聴かせて貰っておきながら、贅沢ですね。
というわけで、僕がこのCDで驚いたのは、ついでについてきた
「4つの小品 作品12 Four Orchestral Pieces (Sz51)」の方で、これが凄かった!作風こそロマン派の和声組織を用いつつようやく独特な音楽を創りはじめた、いかにもR.シュトラウスとかスクリャービンが出始めた時代の音楽ですが、独創性がすごい…。作曲は1912年、オーケストレーションを作ったのは21年、ドイツ/オーストリア音楽に影響されまくった
初期バルトーク作品の総括のような音楽でした。僕は先鋭化する前のバルトークというと、唯一のオペラ「
青髭公の城」とかバレエ音楽「かかし王子」「中国の不思議な役人」とかの有名作しか知らないんですが、それらの曲の着想がみんな入ってる気がします。
特に第2曲「スケルツォ」は、この曲だけちょっと崩れたソナタ形式っぽくて(他はABA3部形式に近いかな?)、雰囲気も独特のヤバみがあって、素晴らしい。
僕は貧乏音大生だったもんで、他のオケとの聴き比べなんて出来てないので、他のオケや指揮者の録音との比較は出来ないんですが、ブーレーズの指揮シカゴ響の演奏は、聴いていて不満なんてひとつも感じない素晴らしい演奏でした!先鋭化以前と以降のバルトークの作品ふたつを聴けるCDでしたが、
デビュー時期のバルトークをこんなに素晴らしいと思ったのは初めて、素晴らしい体験でした。あんまり有名じゃないですが、「4つの小品」は聴いて損はない見事な作品だと思いました!