武満徹さんの映画音楽CD、第4集は勅使河原監督作品集です!このCD、メッチャいいです!僕的には、
「ジェモー」とかの武満さんの80年代後半以降の純音楽より、この映画音楽の方が好きです(^^)。そして…いや~勅使河原監督はマイ・フェイバリットのひとり、絵作品もけっこう観てきました。安部公房作品の映画化、強烈な社会派ドキュメンタリー映画など、日本の映画監督として素晴らしい仕事をした人でした。原爆投下の後、広島に生まれた様々な奇形児を隠すことなく世界に伝えた『世界は恐怖する』は強烈でした。本当に顔の中央に大きなひとつ目をもって生まれた映像は強烈。どういう理由があろうとも、いまだに核兵器保有を肯定している政治家や一般人には見て欲しい映画です。
そんな勅使河原映画のサントラですが、
いちばん実験音楽色が強かったのは「おとし穴」でした。ほとんどループのような曲、
ジョン・ケージ・ショック直後に実験的に作られたかのように聴こえるプリペアド楽器の作品などなど。「おとし穴」は劇映画とはいえ台本が阿部公房さんですし、あのATG映画の第一作ですし、これぐらいあってもおかしくないですが、こういうのを今の映画で聴くことが出来るというと、なかなかね。。今が保守なのか、当時が前衛なのか。興行的にどうかといえば今のほうが合理的なんでしょうが、芸術性で言えば当時の完勝ではないかと。
芸術性でいえば、「砂の女」の音楽はやっぱりすごい。これは弦楽の中に風の音を加工して滑り込ませるミュージック・コンクレート的な作品。
「燃えつきた地図」も前衛的。これは、なんとびっくりコラージュ音楽。
プレスリーのハウンド・ドッグと
ヴィヴァルディが交互に出てきます。68年ということはターンテーブル的な発想ではなくて現代音楽のミュージック・コンクレート的な発想なんでしょうが、これは映画の内容も加味した選曲なんでしょうね。
一方、前衛方面でない音楽も、素晴らしいものが多くて驚きました。まずはなんといっても「他人の顔」のアコーディオンと弦をバックにドイツ語で歌われるワルツが、なんとも言えない味わい。美しいんですが、どこか江戸川乱歩的な情感やヤバさを感じます。
「サマー・ソルジャー」は一転してジャズ調。エレピのソロも、ジャズトリオの演奏も、夢の中を漂うようで気持ちいい。このエレピ、めっちゃいいけど誰だろう、佐藤允彦さんあたりかな…。
「ホゼ・トーレス」は、なんといったらいいか…ソウルミュージックを弦楽でやった感じ。この弦の質感が妙に艶めかしも清々しくもあって、これに似た音楽を僕は聴いた事がありません。う~んこれはいい。
当時の前衛音楽のほか、ジャズ、クラシック、そして当時の日本の劇伴の典型と、色んな音楽を万華鏡のように聴く事の出来るCDでした。それでいてどこか共通する美観を感じるのが面白かった!武満さんの映画音楽集を買うなら、この1枚は優先順位が高いかな(^^)。