さて、ひとつ前の記事でボロクソに書いたヴェルヴェッツと共演したアランドロンの奥さん女優というのが、この人。女優と言いつつ、歌手としてCDをけっこうたくさん出しています。で、いつまでたっても歌がヘタなんですが(SMAP以下です。いや、マジで…)、音楽性はヴェルヴェッツに影響されたのか、けっこうダークな感じなものもあります。このアルバムは、中でも格別の出来で、歌は兎も角、音楽が素晴らしすぎて愛聴盤になってしまいました。アヴァンギャルドでポップ、曲の作り込みが見事で、聴いていてため息が出てしまうほどすばらしい。メリーゴーランドで鳴っているようなマーチングベルのような音を背景に、3拍子でふわふわした音楽の上に、アコーディオンで半音程の反復が重なり、心地よい音楽と不穏な音楽が同時進行し、何とも言えない幻想的な曲が始まる。2曲目では、ヴィオラと歌。…なんという独創性。大量生産システムの中にあるポップスでは、絶対に作れない音楽です。
で、クレジットを見ると、ディレクションや作曲を行っているのが、ジョン・ケイル。ヴェルベット・アンダーグラウンドの音楽の中心人物です。なるほど、これで納得。音楽そのものだけを見れば、ジョン・ケイルのアルバムというわけですね。このアルバム、本当におススメです。
ちょっと注意しなくてはならない事が。このアルバムは、ジョン・ケイルというプロフェッショナルの作った見事な作品として、間違いなくおススメできます。しかしじゃあジョン・ケイルのアルバムがみんな良いかというと…そうでもないんですね、これが。ヴェルヴェッツにハマった後、ヴェルヴェッツの音楽の中心人物はジョン・ケイルだと思い、彼の
『VINTAGE VIOLENCE』 というアルバムを買ったところ、これが単なるロックンロールみたいなもので、しかも曲も演奏もクズ。なんか、ヴェルヴェッツをパンクな視点から捉えたディレクターがいて、そういうのをやらせたんでしょうか。ダメダメです。他に、ケイルのピアノ作品だけを集めた作品なんていうのもあって、フレデリック・ジェフスキーみたいな感じになるのかな、なんて聞いてみたんですが…音大の学生が頑張って卒業記念に作りました、みたいなレベル。こんなの作るなよ。。あと、ジョン・ケイルがディレクターのニコの作品で、
『チェルシーガール』 というのもあるんですが、これもレコード会社の意向を受けて作ったやっつけ仕事みたいな、ただのポピュラー・アルバム。
というわけで、この作品だけ、どういうわけかケイルの作品でちょっと特別にいいのです。あ、あと、ジョン・ケイルが関わっているかどうかは分からないけど、
『NICO / THE END』 というアルバムは、ポピュラーを全曲ドローンにしてしまうという、かなり面白いアルバムでした。でも、このアルバムの神がかった完成度には到底及びませんが。。
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