
このブログですが、基本的に自分が凄く大好きなCDやLPを紹介しています。が、今回はちょっと違う感じ。これをいい音楽なんて全然思ってません(^^;)。ただ、アメリカという国の俗っぽい側面を感じることが出来るという、僕の中ではそういう位置づけにあるアルバムで、その俗っぽいアメリカの匂いを僕が決して嫌いなわけではないという。
マクドナルドって、ありますよね。僕は、あれを美味いなんて思いません。でも、あそこのフライドポテトとストロベリーシェイクは、たまに食べたくなるし、中学生の時に、友達と連れ立って騒いでいたという楽しい思い出とも関連した場所でもあります。そういう位置づけのものって、ありませんか?音楽でいえば、テーマパークで掛かっているキラキラした音楽とか。あれを最上の音楽とも思わないけど、でもテーマパークで過ごした楽しい時間というものの一部として僕は記憶しているし、そういうものとして言えば、決して嫌いではないのです。
で、このプリンスという人の音楽は、僕にとって音楽的な良さは感じないんだけど、僕がもしアメリカ人で、ニューヨークとかシカゴとかの労働者としてアパート暮らしをしていたら、こういう音楽がテレビやラジオから流れてきて、プリンスのような価値基準を持った文化の中に自己を確立していくんだろうな、とか思っちゃうのです。…何言ってるのか分かりませんね(笑)。僕の価値基準の上で評価できるものではないんだけど、僕が持っていない価値観を持っている異文化のものの象徴として、聴いていて楽しいのです。アメリカのテレビドラマを見たりする時、日本に無い風習とか、日本に無い住宅の作りとかを見るだけで、楽しくなりませんか?そんな感じ。
僕は、プリンスという人を詳しく知りません。合衆国在住の黒人で、しかし白人文化も拒否ぜず受け入れるタイプの都市生活者で、そういう意味では僕の中ではイメージがマイケル・ジャクソンとかと被ってます。で、ここにある音楽の特徴を挙げていけば、ラップ調の歌い回し、シンセサイザーやデジタルドラムの使用、ディストーション・ギター、ライブで演奏できないだろうスタジオ制作前提の音楽、「プッシー・コントロール」なんていう歌詞、奇抜なファッション…要するに、80年代から90年代にかけての、アメリカの商業音楽に含まれるキーワードが全部入っているという感じ。もう外連味タップリで、傍から見ればばアホみたいな恰好して、作った後に「これヒットするかな」とか言ってそう。文化自体に倫理とかの哲学的な深度を深める歴史も時間的余裕もなかったアメリカって、本人たちも知ってか知らずか、経済的な価値観が何にも増して優先しちゃったような世界だと思っているのです。特に都市部。で、善悪は別にして、その中で人が動いている、その喧騒感がこの音楽には溢れているように感じるのです。
安っぽい価値観の上にある、意味よりも金に振り回される資本主義の現代病理の上に成り立っている空元気のような音楽。でも、そこがいい。僕がアメリカに生まれて、工場労働者として疲れてアパートに帰ってきて、ピザとかコーラとか飲み食いしながら、ぼんやりテレビをつけたら流れてくるような音楽…そういう想像をすると、楽しくなってくるのです。
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