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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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『EXIAS-J electric conception / avant-garde』

exias_avantGarde.jpg 前の記事で「音楽的にハイレベルな即興系アヴァンギャルドというのは、イギリスのAMMと日本のEXIAS-Jしかない」と書きました。で、これがそのEXIAS-Jというグループ。しかし、なんと読んでいいのか分からん(^^;)。つまり、"EXPERIMENTAL IMPROVISERS' ASSOSIATION IN JAPAN"の略なんだそうで。なるほど、アヴァンギャルドというよりはインプロヴィゼーションという所にグループの趣旨があるようですね。
 で、このグループですが、真相は分かりませんが、一聴した感じでは、ギターがリーダーなんじゃないかという気がします。そういう意味でいうと、全員対等のAMMのグループ・インプロヴィゼーションとはちょっと印象が違うかも。でもって、こちらの方が超絶プレイが多いというか、単純にうまいです。アヴァンギャルド的な表現は徹底的にアヴァンギャルドなんですが、フリージャズっぽいところとか、現代音楽っぽいところとか、シーンによっては器楽的なアプローチも多いです。これは、ギターが超高速で弾きまくる所とか、ピアノがまたものすごくうまく音楽を作るところなんかが目立つので、そう感じるのかも。ミュージシャンのレベルは、演奏だけでなく、作曲的な面からも相当に高いと思います。いやあ、こんなグループを自分で作ってみたかった。。こんな事できたら、カッコいいだろうなあ。

 このCD、もう音が録音機器のピークを振り切っちゃってて、ビキビキと割れまくってるんですよ。横浜エアジンの録音みたいなので、いくらなんでもPAしてると思うんですよね。それでも、ギターが一気に持っていくところなんか、ピアノどころかドラムまで完全にマスクされるし、更にライブ・エレクトロニクスが被さるところなんかはそのギターまで掻き消されるほどの勢いです。いやあ、ロックですらこれほどの音圧を体験するのは難しいんじゃないかと。でも、だからといって音の暴力一辺倒になるかというとそんな事は全くなくって、音楽そのものはむしろ理知的ですらあります。驚くべきは1曲目。どう聴いたってインプロヴィゼーションなんですが、サウンドは強烈、しかし構造はセシル・テイラー並みに見事、そしてすべての楽器の音が溶け合うぐらいの物凄いクライマックスまで音楽が上り詰めて行って…一気に全員が音を切って、最初のパートに戻るのです!!うわ、これはマジックだ。。一体どうやって演奏したのか、返す返すも、このグループは生で見てみたかったです。

 これこそ本物のアヴァンギャルドでしょう。最も凶暴な部類に属するインテリジェンスと思います。




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『AMM / The Crypt』

AMM_CRYPT.jpg ひとつ前の記事で書いたアヴァンギャルドグループ・AMMの1968年の演奏です。CDだと2枚組。編成はこちらの方が大きくて、ピアノ&チェロ、パーカッションx2、ギター&エレクトロニクス、サクソフォン&ヴァイオリンという編成。多楽器主義的な編成ですね。しかし、器楽インプロヴィゼーションを想像しない方がいいです。もっとアヴァンギャルドというか、ギターなんて発信機のような音の連続ですし、パーカッションなんてふたりいるけれども、さざ波のような演奏です。いやあ、それにしてもこのセンスの良さは何なのでしょうか。アヴァンギャルドではあるのですが、実に音楽的なんですよね。

 まず、僕はこの音楽を言葉でうまく説明することが出来ません。この人たちが楽器をうまく演奏できるかどうかも分かりません。でも、この実に音楽的なセンスを感じる素晴らしい音楽を前にして、「楽器の演奏が…」なんて言っている時点で、音楽的センスが無いとしか言いようがないでしょう。もっと「人間にとって、音はどうやって音楽として知覚されるのか」とか、もうそういう根源的な部分から音楽を立ち上げたんじゃないかというほどの素晴らしい音楽なのです。こういう音楽というのは、音楽というものの始まりにあった音楽と言われてもおかしくないとおもえますし、これが音楽の最終形だと言われても僕は納得する気がします。

 とにかく強調しておきたいのは、こういった音楽のサウンド面だけを模倣したノイズ・ミュージックやそういうのとは、音楽的素養の点で決定的に違うという事です。日本でいう大友ナンチャラとか灰野ナンチャラ、あるいは海外のナンチャラ・オルークみたいな人と、こういう本物の音楽的アヴァンギャルドを一緒にしない方がいいです。「音楽的」と僕が言っている部分は1箇所ではなくって、色々なところに出てきます。例えば、こするような音やフィードバック的な音で音を出す表現。やかましければいいとか、そういう意味で音を使っているんじゃなくって、この音の変化のさせ方とか、音を挟み込むそのやり方が音楽的なんです。あるいは楽曲構造。デタラメに音を出し合っているだけでは、この構造は到底作る事が出来ないと思います。各パートに有機的な関係性が築かれていて、しかもそれが時間軸に沿って発展していく。ひどい即興ノイズのライブをさんざん聴かされてきたので、偶然にもこういう事は起きないと僕は断言できます。高いレベルでこれが出来る即興系のアヴァンギャルド・グループというのは、僕が知っている限りでは、このイギリスのAMMというグループと、日本のEXIAS-Jというグループしか知りません。

 ところで、AMMって、一般にはどれぐらい知られているのでしょうね。これを聴いて「ノイズ・ミュージックだね」と一括りにする人がいたら、あるいは「デタラメじゃねえか」という感想を持つ人がいたら、それは悲しい事です。実に音楽的なアヴァンギャルド、それが僕にとってのAMMです。




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『AMM / Live in Allentown USA』

AMM Live in Allentown USA ジャズに分類しましたが、この音楽は現代音楽に分類する事もロックに分類する事も可能なんじゃないかと。ひとつ言える事は、これが商業音楽ではなく、紛うこと無き芸術音楽であるという事。しかも、相当にシリアスな芸術音楽と言って間違いないのではないかと。

 このグループの歴史はかなり古く、僕の持っているレコードで一番古いものは60年代の録音となっているので、相当に古くから活動を続けているグループと思います。そしてこのアルバムは1994年のライブ録音。実に長期に活動を続けているグループなのですね。

 音楽の説明をする前に、とにかく素晴らしい!聴いていて芸術的な感動を覚えてしまうというか、音楽の本質的な所というのが全て詰まっているんじゃないかと思わされる音楽です。で、音楽の内容というと…大変にアヴァンギャルド。このアルバムの編成は、ピアノ、ギター、パーカッションというトリオですが、この編成から想像できるような音楽を想定すると、多分全然違うんじゃないかと。
 まずピアノですが、現代音楽のジョン・ケージとかモートン・フェルドマンあたりのピアノ音楽を想像すると近いかも。楽曲の構造の軸になるようなフレーズをひとつ放り込んだ後は、プリペアドの響きであったり、サウンドの1音1音が実に刺激的です。しかし、それが音色ばかりのハッタリでない所が凄い。で、要所要所はこのピアノが音楽の構造を作り上げていく。このピアニスト、ジョン・ティルバリーという人なんですが、相当なやり手と思います。AMMのオリジナルメンバーではないようですが、彼はこのパフォーマンスのキーマンだと思います。
 ギター。これはもうギターの原形を留めていないというか、こする、叩く、ひっかくという感じの演奏。場合によっては発信機のような使い方までします。いやあ、これがまたデタラメには到底聞こえなくって、こするというひとつの表現にしても、それを実に見事に演奏しています。これは本物のアヴァンギャルドだな…と思わされました。で、AMMらしさというのは、このギタリストによって齎されているのではないかと。
 パーカッション。かなりドラムセットに近い楽器編成だと思うのですが、ジャズ系ではなくてフリー・インプロヴィゼーション系といった感じのパーカッションで、しかもメチャクチャにうまい。煽るところの演奏が巧みである事は勿論なのですが、タムだかコンガみたいなものだけでシーンを作ってしまう所があったりと、作曲的な視点も見事。

 そしてこれがトリオになると…これは完全即興演奏なんじゃないかと思うのですが、音楽全体のコントロールがグループ全体でメチャクチャにうまい。完全即興って、演奏家それぞれが自分のやりたいようにやり続けるだけの演奏を利かされる事が多いのですが、そういうものって、僕には聞いてられません。バカなだけにしか思えないんですよね。しかしこれは、3者ともに音楽全体を見据えて演奏していて、抜き差しとか、音楽のシーンの意味付けとかが実に明確です。音が要らないと思ったら、ギターなんて十分以上も音すら出さずに待ったり。いやあ、音楽としてこれは超1流です。

 アヴァンギャルドの本質を突いた見事なグループによる奇跡の演奏。見事な音楽と思います。これは超おススメ!!



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『ストラヴィンスキー:洪水、アブラハムとイサク、管弦楽のための変奏曲、レクイエム・カンティクルス、他 ナッセン指揮、ロンドンシンフォエッタ』

Stravinski_flood.jpg ストラヴィンスキーと言えば「火の鳥」や「春の祭典」という、彼のキャリア前半で発表された作品が有名だと思うのですが、それに並んで大好きなのが、ストラヴィンスキー晩年の作品です。で、中でも一番好きなのが「FLOOD(洪水)」という劇音楽。

 変な話なのですが、「春の祭典」はあまりに好きすぎて、聴きまくっていたものだから、何がそんなに良かったのかが分からなくなってるのです(^^;)。で、ストラヴィンスキーに夢中になっている頃に、どんな作品かも良く分からず買ったのが、このCDでした。中古で安く手に入ったんですよ。予備校の真ん前にある中古レコード屋さん。ある時、懐かしさのあまり寄ってみたら、無くなってました。で、買った当初は、この音楽の良さは良く分かりませんでした。が…

 「春の祭典」とか「火の鳥」は、けっこう強引に良い音楽にしてる曲だと思うんです。複雑なリズムをガンガン出して、無理やり振り向かせてるというか(^^;)。それがまたカッコいいから手におえないんですが、でもなんか騙されてる気になるんです。それに比べると、「洪水」という作品は、まさにプロの作曲家が書いた作品!という感じで、もう批判のしようがない完成度を感じるのです。精巧極まる、非の打ちどころのない作品という感じ。晩年のストラヴィンスキーというと、「火の鳥」とかの頃とは違って、もうセリー音楽に手を出しています。セリーではあるんですが、ストラヴィンスキー的なダイナミクスが残った音楽になるという所が面白いです。セリー音楽というと、僕が真っ先に思い浮かべるのはヴェーベルンやブレーズの曲なんですが、あの幾何学的な手触りは残しながらも、ストラヴィンスキーのセリー曲はもっと音楽的というか…説明不能、とにかく素晴らしいのです(これじゃレビューになりませんね^^;)!!

 さらにこの作品、題材も面白いです。タイトルからも想像がつくように、旧約聖書の世界です。聖書の世界って、若い頃は宗教がらみというだけで毛嫌いしていたんですが、物語としても面白いです。特に面白いのが、旧約聖書と黙示文書。非常に暗示的な内容でもあり、芥川賞とか直木賞の小説なんかとは比較にならない面白さです。これがセリー音楽のあの質感の中で、しかも実に見事な構造美の中で進行していって…いやあ、こんなに素晴らしい作品には、なかなか出会うことが出来ないんじゃないかと思います。結局、クラシック音楽というのは人気商売なので、実はポピュラー音楽と同じぐらいに人気のあるなしが重要になってしまう宿命の音楽だと思うのですが、純粋に音楽的な完成度でいえば、「洪水」は人気こそ劣るものの、その完成度は「火の鳥」や「春の祭典」を遥かに上回るストラヴィンスキー最高の傑作と僕は信じて疑いません。そうそう、このCDには他に「アブラハムとイサク」(これも聖書ですよね)、「管弦楽のための変奏曲」、「レクイエム・カンティクルス」(これがまた素晴らしい!現代曲に合唱というだけでゾッとする素晴らしさですが、更にアルトとバスで詩が朗誦されるのですが、ダビデとかが出てくるので、これも旧約の世界ではないかと)なんかも入っています。

 そうそう、このCDですが、録音も物凄くいいです。そういう意味では、この作曲作というだけでなく、演奏や録音を含めたこのCD自体が大傑作なんじゃないかと。あと、物語がとても面白いので、日本語訳のついている日本盤を購入する事をおススメします!これ、テキストは聖書からそのまま取ったのか、聖書をもとに新たに書いたのか、ちょっと僕には分かりませんが、英語じゃない部分があるので、輸入盤を買ってしまうと何言っているのか訳わからないと思います。。


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『ストラヴィンスキー:火の鳥、春の祭典 アバド指揮、ロンドン響』

Stravinsky Firebird Abbado LondonSymphony これは貧乏な僕の生活ゆえなんですが、特に学生の頃は、音楽が大好きなのに、練習もしなくちゃいけない、作曲の勉強もしたい、CDも聴きたい…ということで、時間もお金もとにかく足りませんでした。
 そうなると、クラシックのCDを買うのに、独特のパズルゲームのような戦略が必要に。パズルのルールは、「指揮者やオケを散らして買う」「曲がダブらないようにする」「できるだけ中古で」の3つ。これが簡単そうでなかなか難しく、例えばベートーヴェンの交響曲のCDを買おうとしても、中古屋にはバーンスタイン指揮の「5番&7番」とカラヤン指揮の「5番&6番」が売っていたり(泣)。で、ストラヴィンスキーの場合、「春の祭典」と「火の鳥」の2曲の録音ばかりが溢れかえっていて、パズルがどうしてもうまくいかなかったのです。で、「火の鳥」が欲しかったのですが、どうしても「春の祭典」とのカップリングが多く、「春の祭典」がダブってしまったという。。

 しかし、このダブりが思わぬ収穫。お目当ての「火の鳥」ではなく、「春の祭典」の聴き比べになったのです。同じ「春の祭典」が、これほど違うとは思ってもみませんでした。前の記事で扱ったものと比べると、こちらのアバド指揮・ロンドン響の方が圧倒的な格上、知名度も圧倒的です。しかし演奏は…良く言えば流れるように淀みない演奏、悪く言えば迫力がない。。これは、エコーの多いホール録音という理由もその一因にあるかと思いますが、それ以上に演奏そのものによるところが大きいと思います。面白い事に、「火の鳥」と「春の祭典」で録音年が3年開いているのですが、どちらも同じ傾向。なんか、流暢なのです。例えば、「火の鳥」は最初の変化のところで「タタタタタタタ…」という3連の細かい動きがあるのですが、これはスタッカート気味にリズミックに歯切れよく、格好良く「ズダダダダダダン!」と演奏してほしいのですが、このCDだと「タララララララ~」とスラーで繋がれているような演奏。例えが悪いかも知れませんが、叫びながら「愛してる!」というのと、微笑みながら小声で「愛してる…」というのでは、ぜんぜん意味合いが違ってくると思うんですよね。同じ曲なのに、もうそれぐらいに違う。これは解釈とか個性としか言いようがないですが、これをどう聴くかで評価が分かれるような気がします。僕は…「火の鳥」や「春の祭典」は、極端に言えばロックやジャズのバンドが演奏した方が格好良くなるんじゃないかとすら思っているぐらいなので、これは正直言ってダメでした。クラシックをあまり聴かない方は「細かい事を」「おたくっぱい」「マニアックだ」と思われるかもしれませんが、ちょっとの差ではないんですよ。ほとんど別曲。同じ曲とは到底思えないような音楽になっちゃってるのです。

 というわけで、クラシックって、人気ある曲になればなるほど、指揮者やオケなどの違いで何十種とCDが出ていますが、ちゃんとオケや指揮者や録音年なんかも気にして買った方がいいよ、というお話でした。。


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『ストラヴィンスキー:春の祭典、ペトルーシュカ ヤンソンス指揮、オスロ―響』

Stravinsky_LeSacreDuPritemps_Jansons.jpg ついに来ました、ストラヴィンスキーです!!「春の祭典」です!!…って、なんでブレーズの超有名なレコードとか、名盤ひしめく大名曲の録音の中で敢えてこれなのかというと…もう自分でも説明不可能です。いちばん心震えるのがこれなんです。これが好きなんですよ。。

 な~んて言ったらレビューにならないので、ちょっと分析する事に。要するに、アレンジが凄く見えやすい演奏と録音なんじゃないかと。例えば、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが、アレンジ上ではどういう関係になっていて、このCDではそれぞれがどこから聴こえてくるか…なんてところに注目するだけでも、このCDの凄さが分かろうというものです。ああ、あと、録音でいうと、それぞれの楽器のセパレートが凄く良くって、オケが全部でグチャッと鳴るのではなくて、楽器それぞれが何をやっているのかがちゃんと見える感じです。そういう意味でいうと、現代的なレコーディングという感じでしょうか。演奏が硬いと言えば硬いですが、もしかしたらエッジを利かせるためにわざとそうして、練り込んで録音に挑んだんじゃないかという気すらしてきます。実に鮮明な「春の祭典」なのです。

 で、肝心の音楽です。ストラヴィンスキーは、かなり独創的な音楽を作る人です。クラシックというものをよく知らない頃、僕はクラシックといえばベートヴェンの「ジャジャジャジャン」とか、ああいうイメージが凄く強くて、どの曲を聴いても「クラシック」っぽい響きで、すごく無個性な音楽に思えていました。外人さんの顔が全部同じに見える現象に近いですね。だから、モーツァルトの曲を「これはベートーヴェンの曲だよ」と言われても信じちゃってたんじゃないかなあ。それが、ストラヴィンスキーとかの、個性の塊のような人の音楽に出会って、その考えは変わりました。ストラヴィンスキーの中で「春の祭典」は別格というか、「すげええ」という衝撃度は最大級でした。ちなみに、ストラヴィンスキーは時代によって作風を変えていくんですが、これは初期の原始主義なんて言われてた頃の代表作のひとつ。

 このCDを聴いた頃というのは、ブレーズとかシュトックハウゼンとかも聴いていたので(順番が逆だろ…)、ストラヴィンスキーの「火の鳥」あたりだと、近代音楽特有の派手な色彩感は感じるんですが、その和声の響きがちょっと古典的すぎると感じたんですよね。のちに「火の鳥」は大好きな音楽のひとつになるんですが、最初に聴いた時は、とにかく「普通のクラシック」っぽく感じてしまって、つまらなかったんです。しかし、「春の祭典」はちょっと違う。響きもそうなんですが、それ以上にえらくパーカッシヴな音楽というか、もう従来のクラシックとは音楽のルール自体が違う感じ。キング・クリムゾンを聴いているような扇情的な音楽なのです(キング・クリムゾンの曲の中には、「春の祭典」のアイデアをそのままパクったものがあります)。

 大名曲なだけに、「春の祭典」をいまさら推薦するというのもナンなのですが、クラシックがつまらないという人にこそぜひ聴いてほしいと思う曲です。ロックやジャズのファンなんか、絶対に面白いと感じると思うんですよね。また、他の「春の祭典」の演奏や録音しか聴いたことが無い人には、一流とは言えない指揮者とオケのこの録音を、だまされたと思って聞いてみて欲しいと思ってしまうのです。これはいいと思うと思います(^^)。


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『ベルク:アルバン・ベルク・コレクション Alban Berg Collection』

AlbanBergCollection.jpg 僕はあまり裕福ではないので、全集モノのようなCDボックスみたいなものは、なるべく買わない事にしています。全集モノって、買うときは盛り上がるのですが、いざ買ってしまうとすぐにお気に入りのディスクしか聴かなくなっちゃったりして、なんかついでに要らないものまで買わされただけの気がしてきてしまう事が多くって。。しかし稀に、あまりに好きすぎて、バラで買うより全集を買ってしまった方がお得という場合もあったりします。そのうちのひとつが、グラモフォンが出したこのアルバン・ベルクの8枚組CDセット。「ルル組曲」とか「7つの初期の歌」とか、ベルクの有名どころの作品は片っ端から入っています。前の記事で書いた「室内協奏曲」も入ってます。こちらは、ズーカーマン(vln)&バレンボイム(pf)&ブレーズ指揮アンサンブル・アンテルコンタンポランによるものでした。これも素晴らしい演奏ですが、やっぱりあのスターンのヴァイオリンに勝つのは難しいかな。。

 ベルクというのは、聴けば聴くほど、本当にいい作曲家だと感じさせられてしまいます。古典の美と前衛の刺激が見事に融合している感じ。このバランス感覚が絶妙すぎます。月並みな表現になってしまうのですが、本当に名曲ぞろい。しかし、僕がこのCDを買った本当の理由は、名曲がいっぱい入っているからではなくて、「アルテンベルク歌曲集」が入っていたから。演奏はアバド指揮のウィーンフィル。
 アルテンベルクという曲は、無名というほどでもないと思うのですが、かといって頻繁に演奏される曲でもないので、ちょっと突っ込んで聴いている人じゃないと、名前しか知らないという事もあるんじゃないかと思うんですが…これが大名曲。特にオーケストラのアレンジがもの凄くって、奇を衒ったようなことは何もしていないんですが、ちょっと神がかってます。よくぞこれだけのアレンジを…という感じで、ただでさえいい曲なのに、アレンジが故に、これがとんでもない構造美を生み出しています。オーケストラ団員でもないくせに、あまりに素晴らしくて、楽譜まで買ってしまいました。。しかし、楽譜きたねえ…(^^;)。オケの人は、こんな楽譜を読んじゃうのか。更に、とんでもない連譜とか、しかもそれが他のパートと入れ子細工で演奏されていたりするんですが、オケの人ってこれを初見で弾いて、しかも初見で合わせるんですよね。…やっぱり、プロは凄いな。。演奏も、とんでもなく素晴らしいんですが、少しだけ残念なのは、オケが薄くなったところで「カツッ、カツッ…」と音が聞こえるところがある事。いや、これは良いスピーカーで大音量で聴かないと分からない程度で、それでも気づかない人は気づかないと思うので(一緒にオーディオマニアの方と聴いていた時に、その方ですら気づかなかったぐらい)、気にするほどのものではないんですが、たぶんこれって、メトロノームの音なんじゃないかと。…やっぱり、ウィーンフィルでも、これをメトロノームなしで合わせるのは大変だったんでしょうね。ちょっと安心しました(^^)。

 少しだけ注意しないといけないのは、このボックスは「コレクション」であって「全集」ではないという事です。例えば、先の「アルテンベルク歌曲集」には、室内楽版というのもあるんですが、そういうアレンジ版とかまではケアできていません。もしかしたら、室内楽アレンジってベルク自身の編曲じゃないのかな?まあでも、よほどのベルクマニアでもない限り、これを押さえればまず大丈夫じゃないかと。本当に素晴らしい音楽体験が待っていると思います(*^ー゜)v


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『ベルク:室内協奏曲、ヴァイオリン協奏曲 アイザック・スターン (vln)』

Stern_Berg.jpg 20世紀初頭のクラシック音楽界に、新ウィーン楽派と呼ばれる楽派がありました。これはシェーンベルク、ヴェーベルン、ベルクの3人の作曲家の事を指していて、12音音楽の創始者であるシェーンベルクがトップ、あとのふたりはその弟子です。簡単に言うと、無調音楽とか12音列技法とかを開拓した楽派です。シェーンベルクが現代音楽のカリスマである事は勿論なのですが、ヴェーベルンも徹底した点描主義なんかで、後のセリー音楽主義者から神扱いを受けていたりして、これも人によってはシェーンベルク以上のカリスマ扱いをされる事があります。しかし、この中で僕が一番好きな作曲家は…そのどちらでもない、ベルクです。

 他のふたりは、リクツでは凄いんだろうなと思うんですが、リクツを抜きにしていざ音と正対すると…ちょっと難しい時があります。2~3秒に1音だけなるだけの音楽とまで進むと、構造はともかく感覚的にはやっぱり退屈かな(^^;)。ヴェーベルンの中でも点描主義が極端に進行した曲って、実は音自体はあまり聴いていなくて、アタマで音楽を考えているんじゃないかと思っちゃうんですよね。ところが、ベルクとなると話が違います。聴いていて総毛立つような音楽体験。この人の書く曲って、素晴らしいとしか言いようがないのです。

 新ウィーン楽派の中で、なんでベルクの音楽だけが僕には素晴らしく感じられるのか。その理由は、やっぱり昔に書いた「クラシックの中では近代音楽と現代音楽の中間あたりのモノが好き」という事なんだと思います。ベルクの場合、前の時代の和声音楽が築きあげてきた良さというものを残しながら、12音列技法に進んでいます。要するに、両方の音楽のいいとこ取りなんです。ベルクは、音列技法を使いつつ、音の順番に工夫を凝らして、調的にも聞こえるようにしています。12個の音を全部使わなくちゃいけないといっても、最初に出てくる音の順番が「ド・ミ・ソ」だとしたら、あとの順番はどうあれ、人間の感覚は長調的に聴こえる、みたいな。同時に12音音楽でもあるので、機能和声にはない独特の音の重なり方とか前衛音楽特有の鋭さもあって、絶妙なバランスなのです。

 僕はベルクの「室内協奏曲」という曲が大好きで、色んなオケで色んなソロイストのバージョンをいくつも聴いたのですが、このアイザック・スターンがヴァイオリンの録音が、一番すごいと思いました。この曲、非常に印象的なヴァイオリンの旋律から始まるんですが、スターンのヴァイオリンの表現力と言ったら、ちょっと言葉では言い表せないものがあります。前衛音楽なんですが、実演する演奏家自体は、今までに培ってきた人間的な表現をそのまま生かして演奏している感じ。自分の演奏を録音した事のある人ならわかると思うんですが、録音を聞き返すと「1音目がほんの少し弱い」とか「2音目をもっとぼやかして弾きたい」とか、たった4小節ぐらいでも、何十回も録音して、それでも成功するのは1回あるかないかみたいな感じ。しかし、ここでのスターンの演奏は…音の入り方から最後の抜き方まで、表現の塊ではないかというほどの勢いと同時に、これ以外にはありえないんじゃないかというほどの正確さ…もう神憑りです。ちなみに、ピアノはゼルキン、オケはロンドン響という事で、こちらも見事。

 しかし残念なのは…レーベルがソニーという所。要するに、復刻されない可能性があるんですよね。。アマゾンで見たところ、まだ中古盤が何枚か出回っているようですので、大名曲と大名演が重なったこの神録音を聴きたい方は、速めに手に入れる事をおススメします。演奏家にとっても生涯随一の瞬間だったんじゃないだろうかというほどの素晴らしい演奏でした。


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『ザ・ゴールデン・カップス / スーパー・ライヴ・セッション』

GoldenCups_SuperLiveSession.jpg なぜか3作連続で取りあげてしまった柳ジョージが一時参加していた、グループサウンズ時代の日本のバンドです。同時に、日本のロック黎明期の最高峰。柳ジョージは、1曲だけリードギターで参加しています。しかし凄いのは柳ジョージじゃなくって、バンド全体の実力。ハモンドオルガンがミッキー吉野、リードギターがエディー藩、ベースがルイズルイス加部…いやあ、スーパーグループじゃないですか。。

 な~んて言ってますが、僕の青春時代は80年代なので、グループサウンズというのはリアルタイムでは見ていません。右も左も分かっていない中学生の頃ですら、かなり古臭くってドン臭いイメージがあって、自分から積極的に聴く気にはなれませんでした。そういう先入観が払拭されるきっかけは、例の中学生の時の同級生。彼は中学でジミヘンのキリング・フロアーやファイアー、あるいはクリームのクロスロードなんかを平然と弾きこなしているような凄さだったのですが(実は、お父さんがプロのアコーディオン弾きだったそうで…)、その彼が学園祭で演奏したのが、ジミヘンとかじゃなくって、なんと「はっぴいえんど」という日本の古臭いバンドの曲。驚異のギタープレイを楽しみにしていた僕は、肩透かしを食わされた気分でした。僕は日本のポピュラーより洋楽の方が全然上だと思っていたので、日本の…というだけでもう下に見ていたんですね。でも、ジミヘンのハードナンバーまで弾きこなす彼が、わざわざ選んだぐらいなので、日本の古いロックって、もしかしていいのか?と、ちょっと価値観を揺さぶられました。で、後日にそんな話をしていると、彼が古い日本のロックやグループサウンズなんかのレコードを何枚か貸してくれました。その中に、ゴールデン・カップスのベスト盤が混じっていました。残念なことに、僕の先入観はほとんど当たってしまって「やっぱりグループサウンズはダメだわ…」と思いかけていた所で、ライブ演奏が2曲だけ入ってました。しかしこれがもの凄かった!!特に印象的だったのがサイモン&ガーファンクルの「59番街」のカバーで、これをものすごくカッコよくロックアレンジしていて、ゾッとしました!!そんなわけで、シングルカットされた如何にもグループサウンズな歌謡曲はいいから、このライブ演奏の入っているオリジナルを聴きたいと探すと…ありました!それがこのアルバムです!!

 例の"59番街"のほかにも、クラプトンやジャック・ブルースのいたクリームの"I'm so glad"、果てはバタフィールド・ブルース・バンドの曲までやってます。選曲だけでもセンス良すぎだろ、これ。。しかし本当に凄いのは選曲センスじゃなくって、演奏のクオリティ。これがハンパでない。フュージョン的な小器用さじゃなくって、ロック的なダイナミックさと、もの凄い表現力なんです。う~~~ん、これはスゴイ。。

 いやあ、この1枚で、僕の日本のロックバンドに対する印象はガラッと変わりました。とはいえ、やっぱり時代が時代なので、黎明期の日本のロック音楽って、レコード会社主導の歌謡音楽っぽいものは結構残ってるんですけど、そうでないものは録音自体があまり残ってないんですよね。で、60年代当時の日本のバンドのリアルな所というのは、メジャーではないレコード会社が作ったものとか、当時のラジオ録音で残っているものとか、ライブ録音とか、そういうものが多い気がします。これだけべた褒めしておいて何ですが…ゴールデンカップスは、このライブ盤以外は聴かなくていい気がします。もう、ジャガーズとかフォーリーブスとかと変わらない商業歌謡をやってますから。。


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『柳ジョージ / GOOD TIMES』

YanagiJouji_GoodTimes.jpg 柳ジョージが、アメリカの古いポピュラーソングをバンドwithストリングスで歌ったアルバムです。

 まず、ストリングスの音とアレンジが凄くいい!!これを初めて聴いた中学生の時、もうこれだけで「うわあ、いい…」と思ってしまいました。ほら、「エデンの東」とか「風と共に去りぬ」とか、ああいう古い映画音楽のストリングス・アレンジの気持ち良さがある感じです!で、音だけはデジタル録音になっていて、いい意味ですごく綺麗になっているという。いま聴くと、弦の人数が少ない気がするんですが(笑)、中学生の頃はそういうのは分かりませんでした。

 選曲がまた素晴らしい!!アメリカの古いポピュラー音楽集という感じなんですが、特に良かったのが「TOO YOUNG」と「DANNY BOY」の2曲。どちらも有名すぎるぐらいに有名な曲ですが、まだ中学生だった僕は、どちらもこれが初体験。初体験としてのインパクトがあまりに強すぎて、「TOO YOUNG」に関してはいまだにこれが世界で一番いいアレンジだと思っているぐらいです(^^)。

 柳ジョージの視線って、やっぱりアメリカに向いているんだな、と思いました。それも、日本から見た、古き良きアメリカ。このアルバムでとりあげられているのは、「too young」とか「come rain or come shine」なんかは古いジャズの名曲ですし、「bluberry hill」や「cry」なんかはソウル系、「danny boy」なんて古き良きどころか、民謡なんじゃないかなあ。実は、何十年ぶりかに引っ張り出して聴いたのですが…いやあ、古い映画を見ているような、懐かしく、そして美しいアルバムでした。

 このアルバム、好評だったのか第3集まで出ていますが、2集は僕にとっては選曲もアレンジもイマイチでした。そのせいもあって、3集に至っては聴いた事すらありません。。僕にとって、1集が良すぎたのでしょうね。


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『柳ジョージ / FOR YOUR LOVE』

YanagiJouji_ForYourLove.jpg これも無知で申し訳ないのですが、クレジットが途中から”柳ジョージ&レイニーウッド”ではなくて”柳ジョージ”になったので、バンドは解散し、途中からはピンでの活動という形になったんじゃないかと思います。で、ピンになってからの柳ジョージのベスト盤です。でも、この後も活動は続いたので、ある時点までのベストという感じでしょうか。

 柳ジョージが横浜のゴールデンカップスからキャリアをスタートさせたことは前の記事で書きましたが、この横浜という町は、柳ジョージにとって大きな帰属意識を覚えるものとしてあったように思います。矢沢永吉さんなんかも横浜には特別な感慨があるらしいですよね。僕は若い頃にバンド活動をしていたのですが、ライブで横浜の方に行くと、町は綺麗なんだけど人は少ないし、店は古いし寂れているしで、横浜にはちょっと独特な印象を持っています。僕は関西人なんですが、横浜って関東ではあるんですが、文化としては東京よりも神戸に近い印象を覚えます。ニューヨークでいえば、アップタウンではなくってダウンタウンに近い感じ。路地裏なんかに入ると、特にそう思います。柳さんの場合、横浜への思い入れは相当なものみたいで、「YOKOHAMA」なんてアルバムも作ってるし、このベスト盤に入っている「さらばミシシッピー」とか「青い瞳のステラ、1962年夏」なんて曲にもそれを感じる事が出来ます。なんというか…あの寂れた街で、米兵の客が来るライブハウスを通してアメリカのポピュラー音楽を見て、独学でギターを覚えて…という感じがするんです。

 「青い瞳のステラ」なんて、詞にジワッと来てしまいます。「”今ごろ国のテネシーあたりは刈り入れ時さ”と片言混じりで ~バルコニーから覗くあんたはブロンドさえも色あせて ~好きなブルースかけてた夜は決まって夜明けにすすり泣いてた」。これ、どういう人物像なんでしょうね。米軍キャンプの人?日本に来たアメリカ人の恋人?母親?で、主人公の私は、その「あんた」にテネシーワルツのステップを教わって、「しゃがれた声で褒めてくれよ、芝生の下で眠っていずに」とつぶやきます。芝生の「上」じゃなくって「下」なんですね…。芝生という事は、日本の墓地ではなくって、外人墓地でしょうね。アメリカ出身の母親、かな…。そう、柳ジョージの音楽や詞に感じる叙情性って、アメリカのポピュラーそのものじゃなくって、横浜という視点からのアメリカのポピュラー音楽、という感じなのです。逆説的ですが、そのアイデンティティーは横浜という寂れかけた都市にあるという。

 オケがスタジオミュージシャンの演奏なのか、録音技術が発達したのか、レイニーウッドの頃に比べると演奏がすごくプロフェッショナルになったのと引き換えに、大量生産品についてまわる無個性さが出てしまってますが、それでも名曲ぞろいです。それも柳さんらしい、1.5流の名曲ぞろい、そしてそれがいい。僕が好きなタイプの音楽ではない筈なのに、たまに聞きたくなってしまうレコードなのです。







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『柳ジョージ&レイニーウッド / ROAD SHOW』

YanagiJouji.jpg ひとつ前の記事で、ジャクソン5のバンドを音を「バタバタして泥臭い」みたいな事を書きましたが、それって70年代の日本のロックバンドもそっくりなんですよね。ドラムでいえば、スネアはローチューニングでキックはミュートしまくり。ギターはなんかまだビートルズに毛の生えた程度のミャンミャンした音しか出ない、みたいな。そういう色の部分だけじゃなくって、ミュージシャン自体もそんなにうまくない。
 その頃、日本の歌謡曲は、テレビの歌番組のバックバンドにもロックバンドが入り込んできていて、ジャズのビッグバンドとロックのリズムセクションの混在になっていたように思います。沢田研二やピンクレディーが「8時だよ!全員集合」みたいな生演奏の番組で歌を歌う時も、耳につくのはロックの8ビート、ギターサウンド、そしてブラスセクション、という感じだった気がします。じゃあその日本の黎明期のロックバンドのミュージシャンって、どうやって音楽を学んでいたのでしょうか。なんといったって黎明期なので、専門学校や教室みたいなものがあったとは思えないし、みんな独学だったんじゃないかなあ。だから、約束されたプロフェッショナルな技術体系も業界構造も無いも同然で、全員アマチュア。そんな人たちがライブハウスに出て必死にやってたんじゃないかなあ。70年代前半ごろだと、ロックのライブハウスがけっこうたくさんあった街って、関東でいえば東京と横浜のふたつぐらいしかなかったそうです。

 そんな中で、横浜で実力ナンバーワンみたいに言われていたバンドがゴールデンカップスだったそうです。ゴールデンカップスはレコード会社からデビューもしているし、レコード産業的にはグループサウンズという歌謡音楽を彼らに歌わせていたのですが、ことライブとなるとレコードと全然違って、洋楽のロックのカバーとかばっかりをやっているハードなパフォーマンスだったそうです。僕もライブ盤を聴いたことがあるんですけど、えらいロックで、しかも巧くてびっくりした事があります。で、柳ジョージというのは、ゴールデンカップスに途中から参加した人だったと記憶してます。でも、年齢がひとりだけ若くって、ギターがうまいのにベースを弾かされたとか何とか(^^;)。

 さて、何を言いたかったかというと、柳ジョージ&レイニーウッドというバンドの音楽には、これらの要素の匂いがプンプンするのです。70年代のバンドのバタバタ感、横浜という町の情緒はあるけど垢抜けない感じ、独学で楽器を覚えた感…。今聴いても、やっぱり垢抜けないし、古臭く、暑苦しいんですよね。でも、それがすごくいい感じを出しているというか、いい意味で時代や地域性や文化を感じさせるのです。柳ジョージって、センスが良くって二枚目で…というタイプではありません。むしろ、ちょっと古臭いセンスをしていて三枚目。都市部に出て来た田舎者という感じすらします。ただ、ギターはストラト弾いてるクラプトンそっくりで、横浜のバンド周辺では「ちょっと冴えないやつだけど、ギターはうまいな」みたいに言われてたんじゃないかという気がします。そして、その冴えない感じが凄くいいんです。ダサカッコいいという感じ。レイニーウッドの持ち曲に「遺言」という曲があります。「俺がいつか死んだら、亡骸を小さな船に乗せて、生まれたこの町の港から…」みたいな歌い出しで始まります。お世辞にも格好いいヤツが吐くセリフではないですよね。しかし、なんかそういうところが、洗練されない事の良さ、みたいに僕には感じられてしまうのです。

 音楽的には、バンドブルースやってる時のクラプトンとか、それこそジャクソン5なんかのソウル系の音楽とかに、黎明期の日本のロックバンドのバタバタした感じが混じっている感じ。さて、柳ジョージ&レイニーウッドのアルバムというのを全部聴いてきたわけではありませんが、曲としては「雨に泣いてる」「同じ時代に」「時は流れて」「遺言」「FENCEの向こうのアメリカ」という曲が僕は好きです。どれもベスト盤に入っていたり、ライブの常連ナンバーだったりするのですが、この全部が入っているCDというのが無い(;;)。組み合わせの問題ですね。。ここでは、「柳ジョージです。が、頑張ります!」みたいに緊張しまくりのMCをしている、しかし演奏の白熱度がすこぶる高い、ライブ盤を紹介しておきます。しかし、これだと「遺言」が聴けなかったりする(^^;)。


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『JACKSON 5 / THE ULTIMATE COLLECTION』

Jackson5_Ultimate.jpg マイケル・ジャクソンがリード・ヴォーカルを取っていた兄弟コーラスグループ・ジャクソン5のベスト盤です。「スリラー」とか「BAD」のマイケル・ジャクソンの音楽とは繋がりません。ソウル系の黒人コーラスグループの流れという感じで、しかし子供が歌っているという所に話題性があったんじゃないかと。リードヴォーカルを取るマイケル・ジャクソンはまだチビッ子、しかし歌がうまい。上手いと言っても、子供にしては上手いという感じで、ソウル・ミュージシャンの大御所や黒人コーラスグループの大御所と比較しちゃダメです。

 でも僕が聴き入ってしまうのは、このグループのコーラスワークとかマイケルのリードヴォーカルじゃなくって、曲です。ジャクソン5の持ち歌に「NEVER SAY GOOD BYE(さよならは言わないで)」という曲があるんですが、これがもの凄いいい曲。ミディアムバラードなんですが、僕はこの曲を今までに何回聴いた事かというぐらいに大好き。で、ドタバタしたバンドがまた、古いブラック・ミュージックっぽいというか、すごく懐かしい匂いを出してます。70年代の黒人映画なんかに出てくる、シカゴとかの黒人しか来ないビリヤード場とか、スラム街の路地の消火栓の近くで遊んでいる子供とか、なんかああいう匂いがするんですよね。

 まあ、ベスト盤なので、これでなくても良いと思います。大事なのは、「I'll be there」と「NEVER SAY GOOD BYE」が入ってさえいれば、どのベスト盤でも問題ないかと思います。


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『MICHAEL JACKSON / BAD』

MichaelJackson_Bad.jpg プリンスつながりで、白人の匂いがするブラック・ミュージックを。マイケル・ジャクソンです(ベタだなあ)。しかもバッド(ミーハーだなあ)。懐かしいなあ、これ。アルバムが発売されたのはCDが出たての頃。友達が買って、友達の間で皆で回し聴きしてました。で、「CDって、やっぱ音が良いね」なんていってました。

 この音楽のヒットしていた頃、アメリカの商音楽系のブラック・ミュージックは、リズムがプログラミングでオケも要所要所がシンセサウンド、そしてヴォーカルだけがやたらと上手いという、完成されたシステムでした(それが良い音楽かどうかは別として)。あのスティービー・ワンダーですら、そんな感じでした。で、マイケル・ジャクソンというのは、プリンスやスティービー・ワンダーのような、自分自身で音楽を作る人とはちょっと違っていて、いってみれば担がれた神輿。人の作った音楽を歌う歌い手さんのわけで、音楽の実際の主役は別の人。「マイケル・ジャクソン」という看板のつけられた商品なんですよね。しかし本人がその役割を見事に演じ切るというか、受けるための努力を惜しみません。歌はどんどん熟練していくし(いい方向に熟練しているかどうかもまた別の話として^^;)、楽しめるステージにするためにステージパフォーマンスもどんどん磨きをかけていくし、顔はどんどん整形してカッコよくしていくし、肌の色まで白くなっていく(p゚ω゚*)。ジャケットのヘアースタイルなんかも、一歩間違えば恥ずかしい野郎になりそうな気もしますが、格好いいところに踏みとどまっているようにも見えます。そういう意味では、郷ひろみに通じるところがある。やっぱりこれも、僕にしてみればアメリカ的な安っぽさと資本主義の奴隷文化の象徴、しかしそこがいい、という感じに思えたのです。

 今、こういうサウンドの新作なんかないでしょうね。でも、今は無くなったというだけで、実にプロフェッショナルなサウンドメイクだと思います。で、ビートを強調したマイケル独特の歌い回しも、恥ずかしくなる一方で、一緒に「チャッ!!」とか口ずさんでる自分もいたりして。音楽そのものは、リズミックでもあるし、「リべリアン・ガール」みたいなエキゾチックな曲想のものも入っていたりとバラエティに富んでいるし、かなり楽しいです。結構好きだなあ。

 で、AMAZONを見てビックリ!今は、25周年記念盤とかいうのが出てるんですね!こういう同じものにリミックスを追加とかで何度も売ろうとする事を、恥ずかしいとも思わないところも、僕のアメリカ観のひとつなんです。で、それも悪くないかな、と。





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Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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ロシアとウクライナがほぼ戦争状態に入りましたが、僕はソ連解体後のウクライナについて本当に無知…。これは2016年にオリバー・ストーン監督が作ったウクライナのドキュメンタリー映画。日本語字幕版が出たらぜひ観たい このブログをYoutube にアップしようか迷い中。するなら作業効率としては早いほど良いんですよね。。その時にはVOICEROIDに話してもらおうかと思ってるけど、誰の声がいいのか考え中
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