
ジャズに分類しましたが、この音楽は現代音楽に分類する事もロックに分類する事も可能なんじゃないかと。ひとつ言える事は、これが商業音楽ではなく、紛うこと無き芸術音楽であるという事。しかも、相当にシリアスな芸術音楽と言って間違いないのではないかと。
このグループの歴史はかなり古く、僕の持っているレコードで一番古いものは60年代の録音となっているので、相当に古くから活動を続けているグループと思います。そしてこのアルバムは1994年のライブ録音。実に長期に活動を続けているグループなのですね。
音楽の説明をする前に、とにかく素晴らしい!聴いていて芸術的な感動を覚えてしまうというか、音楽の本質的な所というのが全て詰まっているんじゃないかと思わされる音楽です。で、音楽の内容というと…大変にアヴァンギャルド。このアルバムの編成は、ピアノ、ギター、パーカッションというトリオですが、この編成から想像できるような音楽を想定すると、多分全然違うんじゃないかと。
まずピアノですが、現代音楽のジョン・ケージとかモートン・フェルドマンあたりのピアノ音楽を想像すると近いかも。楽曲の構造の軸になるようなフレーズをひとつ放り込んだ後は、プリペアドの響きであったり、サウンドの1音1音が実に刺激的です。しかし、それが音色ばかりのハッタリでない所が凄い。で、要所要所はこのピアノが音楽の構造を作り上げていく。このピアニスト、ジョン・ティルバリーという人なんですが、相当なやり手と思います。AMMのオリジナルメンバーではないようですが、彼はこのパフォーマンスのキーマンだと思います。
ギター。これはもうギターの原形を留めていないというか、こする、叩く、ひっかくという感じの演奏。場合によっては発信機のような使い方までします。いやあ、これがまたデタラメには到底聞こえなくって、こするというひとつの表現にしても、それを実に見事に演奏しています。これは本物のアヴァンギャルドだな…と思わされました。で、AMMらしさというのは、このギタリストによって齎されているのではないかと。
パーカッション。かなりドラムセットに近い楽器編成だと思うのですが、ジャズ系ではなくてフリー・インプロヴィゼーション系といった感じのパーカッションで、しかもメチャクチャにうまい。煽るところの演奏が巧みである事は勿論なのですが、タムだかコンガみたいなものだけでシーンを作ってしまう所があったりと、作曲的な視点も見事。
そしてこれがトリオになると…これは完全即興演奏なんじゃないかと思うのですが、音楽全体のコントロールがグループ全体でメチャクチャにうまい。完全即興って、演奏家それぞれが自分のやりたいようにやり続けるだけの演奏を利かされる事が多いのですが、そういうものって、僕には聞いてられません。バカなだけにしか思えないんですよね。しかしこれは、3者ともに音楽全体を見据えて演奏していて、抜き差しとか、音楽のシーンの意味付けとかが実に明確です。音が要らないと思ったら、ギターなんて十分以上も音すら出さずに待ったり。いやあ、音楽としてこれは超1流です。
アヴァンギャルドの本質を突いた見事なグループによる奇跡の演奏。見事な音楽と思います。これは超おススメ!!