
ビル・エヴァンスのピアノトリオに、フルートのジェレミー・スタイグが参加した形のジャズです。このジェレミー・スタイグというフルーティストが実に個性的で、簡単に言うとすごく熱いんですよね。これがカッコいい!!
ビル・エヴァンスというと、その性格上の事かとは思うのですが、非常にメロウな方というか、音楽的にいえば和声アプローチ上のサウンド方面に意識が流れてしまいがちなピアニストかと思うのですが、このセッションではジェレミー・スタイグに引っ張られるかのように、非常にストレートで激しい演奏を聴かせてくれます。うわ、ストレートなアップテンポ曲でもこんなに弾ける人だったのか…と驚かされてしまいました。それが際立っているのが1曲目の"STRAIGHT NO CHASER"。いやあ、フルートといいピアノといい、またスナッピーの効いた、煽るようでありながら軽快なドラムのブラシ捌きといい、聴いていて実に気持ちのよい演奏です!!"AUTUMN LEAVES"も、ミディアムではなくアップで演奏していて、すごく気持ちいい!ここではベースのエディ・ゴメスのソロが実に見事です。この人、うまいなあ。
他にも"LOVER MAN"とか"WHAT'S NEW"のような、いかにもエヴァンス・トリオの得意そうなスロー~ミディアム・ナンバーはいいに決まっているのですが、ここでもスタイグのフルートがすごくいい!!なんというか、フルートという楽器はもともと息の成分が強い楽器だとは思うのですが、この人の演奏はそれがとても顕著で、例えばアタック音のところで尺八みたいにブレスだけが「ブシュッ」と入ってからフルートの音が入ってくるような表現を使ったりして、ある意味で肉声であるかのよう。これが、曲にすごい表情を与えているし、またフルートの表現にも強く影響しているように思えるのです。いやあ、素晴らしいです!
もうひとつは、B面に入っている"SPARTACUS LOVE THEME"。これは映画「スパルタカス」に入っている曲ですが、大変に美しい和声進行とメロディを持った曲…なんですが、劇的構成に欠けるというか、同じコード進行を何度も繰り返すだけという弱点を持った曲でもあります。しかしそれが、アレンジの妙でまったく飽きる事無く、大変に素晴らしい音楽になっています。いやあ、これはセッションなんていう一言で片づけられるものではありませんね。すばらしいです!
というわけで、ビル・エヴァンス作品としてはちょっと異色のアルバムかも知れませんが、このアルバムを嫌いなんていう人はまずいないんじゃないかと。大おススメの1枚です!
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