
驚異のヴォーカル、驚異の合唱!!一世を風靡した、いわゆるブルガリアン・ヴォイスと呼ばれる音楽です。これはマジで凄い、初めて聞いた時には鳥肌が立ち、背筋がゾクゾクして、あまりの感動に身を震わせた記憶があります。
「ブルガリアン・ヴォイスといえばこれ」といわれているCDが他にあるのですが、このCDはその数段上を行くものと思います。僕の中の評価では比べ物にならないぐらいにこちらが良い!!その一番の要素は、このCDが教会でのコンサート録音という点。教会音楽の無伴奏合唱を聴いた事のある人だったら伝わると思うんですが、あの教会の響き自体がひとつの楽器というか、特に和声系の音楽では声のひとつひとつがとんでもない溶け合い方をして、鳥肌モノのサウンドになるのです。で、このCDは、カテドラル教会でのコンサート録音、という訳です。
さて、今回は珍しく、少しマジメにレビューしてみようかと(^^)。ブルガリアというのはバルカン半島の東部に位置する国ですが、この位置がブルガリアン・ヴォイスを紐解くカギなのではないかと思います。要するに、東欧という要素、東方正教会圏という要素、西洋の作曲音楽圏という要素、この3つが重なっているという場所にあるのです。
まず、東欧という要素。ヨーロッパの民族音楽というと、ザックリ言って西と東に分けることが出来るんですが、東の特徴は舞踊音楽が多いという事です。舞踊が多いという事は、踊りのステップに合わせる遊び音楽なので、奇数拍になったり、リズミカルであったり、テンポが変化していったりするものが多く、要するにテクニカル。技術力が高くないと出来ない音楽なんですね。
次に、東方正教会圏という要素。東方正教会圏の教会音楽というのは、基本的に無伴奏合唱。無伴奏ハーモニーの物凄さは、グルジア正教会の音楽とか、バルト海沿岸の音楽とか、ロシア正教会の地下音楽なんかが有名ですが、このブルガリアン・ヴォイスにも全く同じハーモニーを感じることが出来ます。ものすごい音の重なり方、美しさ。
最後に、西洋の作曲音楽圏という要素です。つまり、ブルガリアン・ヴォイスというのは、普通の民族音楽ではなく、もともとブルガリアにあった民族音楽と、作曲家による作曲を融合させて作った音楽なのです。ブルガリアの民族復興運動というか、国のご当地ソング作りというか、そういう視点から生まれてきた音楽なんですね。で、その成果がありまくりで、シンプルなものであったハズの合唱音楽が、とんでもない芸術音楽のレベルにまで引き上げられています。
基本的に、無伴奏での合唱音楽です。しかし、ソロイストのソロパートのある曲や、無伴奏ソロ、あるいは民族音楽のシンプルな伴奏のつく曲などがあり、バラエティ豊か。合唱は魚の大群のように、ハーモニーもリズムも一糸乱れる事無く一斉に動きます。これほどの合唱音楽を聞き逃すのは如何にも勿体ない。音楽好きでブルガリアン・ヴォイスを聴かないなんて、考えられない事だと思うので、ぜひご一聴あれ!!