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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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『エンニオ・モリコーネ楽団 / 夕陽のガンマン・荒野の用心棒 オリジナル・サウンドトラック』

YuuhinoGunman.jpg クリント・イーストウッド繋がりで、「ダーティー・ハリー」に並ぶ彼の代表作「荒野の用心棒」のサウンドトラックを。

 昔に書きましたが、父親が西部劇好きだったという事もあって、西部劇の映画音楽は、僕の音楽の原体験のひとつとなています。幼少時、父の運転する車の横に乗って、西部劇の音楽を何度聴いた事か…。で、何十回も聴いていると、いかに子どもと言えど、好きな音楽と嫌いな音楽が出てくるんですよね。あまり好みじゃなかったのは、爽やかな感じとか、あるいは明るい感じの曲。「荒野の7人」とか「黄色いリボン」とか、ああいう音楽ですね。一方、もの凄いカッコいいと思ったのは、暗くて緊張感があってハード目の曲。「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」「続・夕陽のガンマン」なんかはビンゴで、その曲がかかると「おお、かっこいい!!」とか思ってました。これはずっと後に気づいた事なんですが、幼少期の頃の僕が好きだった西部劇の音楽は、なんと全部モリコーネ作曲のものであったのでした。。こうなると、西部劇の音楽が好きというより、モリコーネの音楽が好きだったのかもしれませんね(^^;)。

 あまりに好き過ぎて、何が好きなのかも分からないんですが、それでもかろうじて言えるのは、ひとつは音楽の題材の取り方と、そしてそれが生み出した他にはないオリジナリティが好きなんじゃないかと思います。「夕陽のガンマン」にも「荒野の用心棒」にも言える事なんですが、アレンジされている楽器の種類が独特です。メインとなる楽器はフォーク・ギター。伴奏打楽器がなんと教会の鐘。主旋律は口笛とか、ハーモニカ。オブリのケーナ(竹の吹奏楽器)…。つまり、使われる楽器は、映画に描かれた世界に出てくるものばかり。アメリカのフォーク音楽の源流のひとつに、カウボーイの音楽というものがあります。カウボーイが使っていた楽器は、フォークギター。この世界観をサウンドトラックが間接的に表現していく。ピアノが音楽に入る時も、ぜったいにグランドピアノなんか使わないで、調律の狂ったホンキートンクなアップライトピアノが使われます。その音は、荒野の酒場に置いてあるピアノそのものという感じ。伴奏に使われる教会の音は、劇中で無残にも死んでいく町の人やガンマンが死ぬ度に鳴らされる街の教会の鐘と同じ。音楽の作り自体もマーチ調のものが多く、これも世界観に死ぬほどマッチしています。こうなってくると、映画と伴奏というのではないんですよね。テーマの口笛なんて、映画の伴奏なんて思えなくて、これは主人公のガンマンの吹いた口笛にしか思えなくなるというのが、人間の心理というものなんじゃないかと。
 教会の鐘をバック、フォークでマーチ調の刻み、主旋律は口笛、そして疾走感と悲壮感が背中合わせのような曲想…いやあ、こんな音楽、他にはちょっと聞けないんじゃないかと。格好良すぎます。

 さて、親父の隣で聴いていた音楽なので、実は映画そのものは大人になるまで見た事がありませんでした。特に、「夕陽のガンマン」を見たのは、つい数年前の事です。「荒野の用心棒」の方が有名ですが、「夕陽のガンマン」面白すぎる!映画の中で、殺された恋人の忘れ形見の首かけのオルゴールが映画の中で象徴的に使われるんですが、蓋を開けたオルゴールのメロディに、トランペットやストリングスが覆いかぶさるように重なって高揚していくという、現実音と伴奏が相互浸透していくという演出は見事でした。このサントラだけ聴いていると、なんでオルゴールにテーマを演奏させてフルオーケストラが伴奏なのかという所が訳分からないと思うんですが、そういう理由です。モリコーネの代表作のひとつ、メチャクチャカッコいい最高の音楽です!!




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『LALO SCHIFRIN presents "DIRTY HARRY" ANTHOLOGY』

DirtyHarryAnthology.jpg クリント・イーストウッドの代表作である映画「ダーティー・ハリー」シリーズの劇音楽のアンソロジーCDです。映画の1・2・4からのセレクトというのは、ラロ・シフリンという音楽監督の音楽を集めたからじゃないかと思います。じゃ、3は違う作曲家なのかというと…知りません( ̄ー ̄)。

 僕がラロ・シフリンという劇伴作曲家を知ったのは、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」の音楽が最初です。あれは燃えました(`・ω・´)!!しかしそれ以降、ラロ・シフリンという名前を目にする事は暫くなく、次にであったのが「ダーティー・ハリー」だった、という訳です。ダーティー・ハリーは大ヒットしてシリーズ化された犯罪映画ですが、とにかく1作目が凄かった!神父予告殺人、更に罪のない女を井戸に沈め、幼稚園バスもジャックする狂人・スコーピオンのイっちゃってる感じは、とても演技とは思えないほどのヤバさでした。で、この常軌を逸した連続殺人犯を追うのが、汚い手を使おうが法を犯そうが犯人を追いつめるハリー刑事。イーストウッドかマックイーンの為に用意されたような役です。。で、1作目の映画のオープニングが秀逸!不穏なストリングスのハイトーンに、「燃えよドラゴン」とまったく同じドラムのフィルが入り(いや、マジで同じです)、その直後にエレピのツーファイブ!メッチャ格好いい!!で、その背景ではやっぱり不穏なストリングス、そこにドラムのファンクなリズム、そしてエレキベースのスラッピングのソロ…こんな音楽を聴かされて燃えないわけがありません!!要するに、ストリングス・セクションは顔の見えない不敵な犯人とか犯罪を表現したパートで、それを切り裂くように食い込んでくるファンク・バンドのパートは、それをボッコボコにするダーティーなハリー刑事を表現したパートなんでしょうね。
 このCDに入っている2曲目も秀逸。これ、狂人スコーピオンの不敵な犯罪と、それを追い込むハリー刑事みたいなシーンで使われていた異常に印象深い音楽ですが、構図は同じ。もの凄く不安をあおるのは、今度は調性だったり、歪ませ過ぎだろうと言いたくなるほどにファズのかかったエレキギターあたり。ついでに、ベースまでファズまみれです。これはメッチャいいわ。。逆にハリー側の追い込む感じは、突然食い込んでくるリズムと、一度始まるとどんどんアッチェルしていくテンポ。いやあ、これもメチャクチャかっこいい!!

 70年代のハリウッド映画のサントラの一部って、クラシック・オケと当時流行のロックやファンクを融合した音楽を使うなんていうものが結構多いですよね。それ以前やそれ以降となると、そういうのって目立たないし、あってもあんまり面白くない。なんか「仕事です」ってものばかりで、全然冒険がないんですよね。冒険がないという事は、刺激的な部分が何もないという事でもあるわけで…。しかし、70年代は違います。この手の流れで想像しちゃうのは、ジャズのギル・エヴァンス・オーケストラとかです。ラロ・シフリンって、この辺りの流れで捉えても、まったく違和感がありません。僕が知っているラロ・シフリンの劇音楽って、「燃えよドラゴン」と「ダーティー・ハリー」だけですが、そのどちらもメチャメチャカッコいい!!で、他の活動として知っているのは、タンゴのアストル・ピアソラのストリングス・アレンジを担当したりとか、そういう非常に面白い創造的な仕事もしたりしています。ジャケットはダサすぎますが(^^)、おすすめの1枚です!
 

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『MR.BIG / bump ahead』

MrBig_BumpAhead.jpg 前の記事で書いたメタル系ギタリストのポール・ギルバートさんが、レーサーXの後に在籍したバンドです。ビリー・シーンというこれまた超絶テクニシャンとして売り出したベーシストなんかもメンバーだったりして、スーパーグループという感じで紹介されていました。

 音楽はというと、例の完全様式化されたメタルじゃなくって、もっと普通のロック。しかし、この普通のロックというのも、やっぱりジャンルが変わっただけで型通りなんですが…1曲目の"colorado bulldog"、これが斬新!平歌に入った途端にギターはお休み、ドラムはサイドスティックのみ、そしてベースはウォーキンベース。いやあ、これはカッコいい!!で、サビからギターソロにかけては一気に弾きまくりで畳み掛け、ソロ中では転調!!いやあ、メタル音楽の全てが、これぐらいに作曲とアレンジに力を入れていたら、もっと面白い音楽になっていたんじゃないかなあ。"colorado bulldog "それぐらいの素晴らしい音楽、必聴です!ロックやメタルなんかとっくに卒業したハズの僕が、ある切っ掛けでこの曲を聴いて、すぐにレコード屋に走ったのもうなずけるというもの(笑)。
 で、2曲目ではアップテンポの曲に見事なブルースハープ!!これもまた素晴らしい。。

 しかし、良かったのはここまで。あとは様式化された、いくらでもありそうなロックやらバラードやらが延々と続きます。もう、CDをかけていた事すら忘れちゃうぐらいに退屈。最後の最後、忘れていた頃にフリーの"MR.BIG"が演奏された時に「なるほど、これがバンド名の由来だったのか」と思わされたぐらいでした。コテコテのメタルから離れ、古き良きロックとメタルを融合した音楽をやりたかったバンドなのかも知れませんね。…というわけで、このアルバム、僕は最初の2曲しか聴かないのですが、その2曲だけでも買うに値するアルバムだと思います。特に"colorado bulldog"は(以下略)。




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『RACER X / Live - EXTREME VOLUME』

RacerX_LiveExtreme.jpg 中学生ぐらいの頃、前の記事でとりあげたイングウェイ・マルムスティーンと同じぐらいの速弾きの達人と言われていた人がいました。ポール・ギルバートという人です。で、このレーサーXというバンドは、そのポール・ギルバートさんが在籍していたメタルバンド。やっぱりイングウェイと同じで、楽曲自体はポピュラーそのもので、プレイがメタル調という音楽です。ドラムはツーバスで、ベースと一緒に「ドコドコドコドコ…」と、ひたすら16ビート。ギターもパワーコードで「ザクザクザクザク…」と16ビート。ソロになるとひたすら速弾き。これにハマれるかどうかが、この音楽を楽しめるカギだと思うんですが…中学生の僕はメチャクチャ嵌りました(^^)。そうそう、この手のメタルの特徴のひとつに、イントロ部分なんかで使われるリフレインのパターン化があると思うんですが、このバンドはこのリフのパターンが速弾きと連動していて、またそれを職人技でカッコよく作るので、様式に嵌めた曲ばかりではあるんですが、聴いていてすごく楽しいです。

 あと、このアルバムのいい所は、プレイヤーそれぞれにスポットを当てた曲が収録されている事。考えてみれば、この方面のメタルというのは、プレイヤーのテクニックを聴いて「うお~、かっちょいい!!」なんて燃えるのが楽しい所でもあると思うので、この演奏至上主義的な作りは相当に楽しい。ベースが主役の曲なんて、さんざん弾きまくった挙句、最後にレッド・ツェッペリンの"Whole Lotta Love"で締めるという遊び心まであったりして、相当楽しいです(^^)。

 でも、僕がメタルを聴いていた期間というのはあまり長くなくって、このあたり以降はあまり聴いてません。その後も、メタル好きの友人に色々聞かせて貰ったんですが、なんか楽しめなくなってしまいました。あっという間に好きになって、あっという間に通り過ぎてしまった音楽、それが僕にとってのメタルかも知れません。


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『Yngwie Malmsteen / TRILOGY』

YngwieMalmsteen_Trilogy.jpg イングウェイ・マルムスティーンというロック・ギタリストが80年代半ばに発表したサードアルバムです。いわゆるヘヴィーメタル、「世界最速のギター」なんていうのが売り文句でした。学校でもこの快速ギターソロが大流行!子どもの頃にタイガーマスクのローリング・ソバットが流行った時ぐらいの大流行だったんじゃないかなあ(^^)。今では信じられないかもしれませんが、洋楽といえばメタルという時代だったんです。クラスでもメタルマニアが5~6人いたし、メタル聴いてない奴はロック好きとは言えない、ぐらいの雰囲気でした(^^;)。で、僕もやっぱりこの超高速の速弾きロック・ギターにぶっ飛びました!!

 久しぶりに聴いてみたら…こんなにポップスだったっけ?って思うぐらいにポップでした(^^;)。曲が歌謡形式ばっかりだからそう感じちゃうのかも。でも、曲の形式は歌謡形式でも、当時としては斬新な点がふたつあった気がします。ひとつは、ギターがめっちゃ速い事(^^)。いや~言葉にするとチープですが、実際聴くと、おっさんになってから聴いても爽快です(^^)。そしてもうひとつは、ちょっと古風な旋法を使う時があって、ここはちょっと面白かったです。こうなったのは、北欧出身だからじゃなくって、クラシック・ギターをやっててそうなったんでしょうね(^^)。80年代中ごろのロックやポップスって、本当に画一化されちゃって、本当に長調と短調しか知らないんじゃないかという曲や演奏ばかりで、マジで想像力が貧困でした。さらに、費用対効果まで考え始めちゃったのか、作曲やアレンジどころか演奏も聞くに堪えないやっつけ仕事みたいなレコードで溢れてましたから、結果的にたるんだロック産業シーンに一石を投じた1枚にもなってたんじゃないかと。

 えらく単純な歌謡形式ばかりなので、クラシックやジャズを聴く人が聴いたら「ガキっぽいな」と思っちゃうかも(^^;)。でも、メタル自体が若者向けの音楽ですし、若い人が音楽体験のはやい段階でこういう音楽を体験したら、「おお~すげえ」ってきっとなるはず。少なくとも、中学生の時の僕は、本気でぶっ飛びました(^^)。80年代ロックシーンにさんぜんと輝く名盤のひとつだと思います。


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『ブレーズ:プリ・スロン・プリ ブレーズ指揮、BBC響』

boulez_PriSlonPri.jpg ブレーズのピアノ曲を演奏した事があるので、楽譜も幾つか見た事があります。とはいっても、ブレーズのピアノ曲を人前で演奏できるような技術はないので、個人の楽しみとして弾いた程度なんですが(^^)。で、その曲はブレーズの歴史の中では「管理された偶然性」なんていうコンセプトで作られた曲のひとつで、音楽のモチーフがバラバラに書いてある感じ。で、そのひとつのフラグメントを演奏した後は、2番目と3番目のどちらのフラグメントを演奏しても良い…みたいな感じで書かれていました。要するに、演奏者の自主性という所に、ある程度音楽のコントロールを任せているという事なんだと思います。しかし、演奏する側から言えば、それをその瞬間にインプロヴィゼーション的に選択するなんていう事はまずなくって、より良くなると思う方を先に選んでおいて練習してしまうので、企画倒れなんじゃないかとは思うんですけどね(^^;)。

 前置きが長くなりましたが、このCDです。このCDは、「管理された偶然性(アレアトリー)」で書かれた作品、しかもオーケストラ作品という点で、とても評価されている作品なんじゃないかと思います。5部構成ですが、中間3部のタイトルなんて「インプロヴィゼーション」ですからね。しかし、こういう構造面は兎も角としてですね…音楽が非常に面白い!!素晴らしい!!そしてやっぱり音楽を時間の矢の方向に一貫性を持たせているのが、テキストなんですよね。ここでは女声ソプラノがその役割を果たしています。ブレーズって、理念の部分ではなく、新しい音楽的アイデアから、ひとつのお音楽作品を作り上げるのがメチャクチャうまい人なんだと思います。あんまりイデオロギーにとらわれ過ぎない方が、この人には向いているんじゃないかと思います。

 冒頭に述べたように「管理された偶然性」というものは、演奏と作曲が一体のものとなった時に初めて実現可能なんじゃないかと思います。作曲と演奏の分業体制の中では、冒頭に述べたような事にしかならないんじゃないかと。だから、僕の感想でいえば、その部分のアレアトリーの思想云々ではなく、この音楽の構造的な美しさやサウンドの見事さ、その部分だけでこの音楽を評価していて、それだけでもこの音楽は絶品中の絶品、大名作といっていいんじゃないかと思っています。ブレーズのオーケストラ曲で一番好きな曲、僕の場合はそれが"Pri Selon Pri"です。しかし、本当に素晴らしい音楽だなあ。。



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『ブレーズ:ル・マルトー・サン・メートルetc. ブレーズ指揮、アンサンブル・アンテルコンタンポラン』

boulez_LeMartteauSansMaitre.jpg 現代音楽のステレオタイプに近い作曲家といえば、ブレーズなんじゃないかと思っています。日本だとブレーズは「前衛三羽烏」なんて言われて、また「セリー主義」という現代音楽のメインストリームの代表的作曲家でもあります。というわけで、構造面でもサウンド面でも、ブレーズさんの作品はすごく「現代音楽的」なんですよね。そして、このCDに収められている“le marteau sans maitre (主のない槌)”は、ブレーズの代表作なんて言われています。このディスクには、他に、「ピアノのためのノタシオン」というピアノ独奏曲と、「2台のピアノのためのストリクチュール第2集」という2台ピアノの作品が収められています。結論から言うと、ブレーズのCDを1枚だけ聴くとしたら、僕は間違いなくこのCDを選びます

 まずは「主のない槌」。この作品は、ルネ・シャールというシュールレアリスム系の詩人が書いたテキストが基になっています。で、それをメゾ・ソプラノが歌うんですが、この配置が面白い。詞は「激怒する職人」「孤独な死刑執行人」「美しい建物と様々な予感」の3つに分けられているんですが、これに前奏がついていたり演奏があったりという訳で、音楽全体は9つに細分されています。そして、この配置に関する構造化のシステムが…セリーなんですね。で、セリーシステムは、こういった楽曲様式のみならず、音楽の作曲技法にまで及びます。セリーというのは、根本的に和声法というよりは対位法的な視点からの作曲様式なので、そこから生まれてくるサウンドというのが、よく我々が聴くような音楽とは全然違います。更に、調的重力を否定すらしているので、一歩間違えると、デタラメに聞こえるんですよ。いや、フリージャズを聴くと分かるんですが、デタラメに楽器を演奏すると、デタラメに聞こえないんですよね。本当にデタラメに聴こえるようにするためには、相当に綿密に作曲しないと難しいんですが…この曲の1曲目は、綿密に書かれたがゆえに生じる「デタラメ」の典型なんじゃないかと。で、僕はそれが良い音楽とは全然思いません。無調や12音やセリー音楽の際どさは、ここにあると思います。しかし、この“主のない槌”の場合、そのメゾ・ソプラノが全体を繋ぐ見事な役割を果たすのです!歌は線的に音を繋ぐ楽器ですので、まずデタラメにはなりません。更にこの作品の場合、明確なテキストもあるので、音楽の時間的進行が見事に担保されているのです。つまらない音楽になりがちなセリー音楽を、大変に面白いものにした名作なんじゃないかと。
 また、楽器編成も面白いです。先に言ったメゾ・ソプラノの他が、6つの楽器(アルト・フルート、ヴィオラ、ヴィブラフォン、シロフォン?、ギター、打楽器群)です。そしてこれらの楽器が、単旋律から次第にサウンドのアンサンブル的な重なりが目立つようになる順に配置されていきます。言い換えると、だんだん音の重なりが多くなって面白くなっていって、また音楽の形がはっきりしてくるんですね。 あ、そうそう、ということはですね…逆に言うと、音楽が始まってしばらくは最初は全然面白くないという事でもあります(^^;)。でも、4部あたりから加速度的に面白くなっていくので、最初の7~8分は我慢して聞きましょう(^^)。まあ、そういう音楽上の構造主義的な作品ではあるので、サウンドの印象だけで音を捉えているとすごくつまらない音楽に思えちゃうかと思うんですが、こういった構造に注目して聴くと、実に良く出来ているというか、さすがに戦後の作曲界の主導者のひとりというだけのことはあるという完成度です。そうそう、これはブレーズ自身が指揮をしているという意味でも、価値ある録音なんじゃないかと。

 さて、さんざんブレーズ代表作といわれている「主のない槌」の事ばかり書いてきましたが…僕が少しだけピアノを弾くからかもしれませんが、ブレーズの作品で最も素晴らしいのは、ピアノ曲だと思っています。このディスクに収められている「ピアノのためのノタシオン」なんて、はっきりいって絶品です。これはセリー主義以前に書かれた作品なのですが…いやあ、本当に素晴らしい!!一方の「2台のピアノのためのストリクチュール第2集」は、今度はブレーズがセリー主義の後に書いた作品で、「管理された偶然性」なんていう視点から書いた曲じゃなかったかな?いやあ、これも素晴らしいんですよね。。やっぱりブレーズのピアノ曲は絶品だなあ(^^)。理由は意外と単純な所にあって…ほら、ピアノって、残響が残って、いろんな音が重なるじゃないですか。セリーみたいな線(ものによっては点)の音楽の場合、どうしてもサウンドが貧しくなっちゃう方向に行っちゃうと思うんですが、ピアノ曲だと、意図してかどうかはわからないんですが、それが自ずと解決されちゃう。で、現代音楽的な魅力と楽器本来の音の美しさのどちらも引き立つ結果になってるんじゃないかと。…単純すぎますかね(^^;)。



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『Anthony Braxton / 3 composition of NEW JAZZ』

AnthonyBraxton_3composition.jpg 1968年録音という事なので、恐らくアンソニー・ブラクストンのデビュー作です。タイトル通り、当時のフリージャズのアルバムとしては、相当に作曲色が強い感じです。しかし、ブラクストン自身のアルト・ソロは作曲の微塵もない、凄まじい光速プレイ!

 アンソニー・ブラクストンという人は、シカゴ出身。シカゴというのは、かつてはアル・カポネが政治家から何まで買収して町の帝王になった街であるとか、映画にもなっているほどの暗黒街のメッカだったり、そんな怪しいナイトクラブで演奏される音楽が他でもないブラック・ジャズであったりと、独特なムード漂う所みたいです。行ったことはないんですが…。ロックでも、デトロイト周辺のロックって、ちょっと他と違う感じですよね。日本でいうと、一昔前の川崎とか、西成とか、あんな感じなのかな?で、70年代が近づくと、デトロイトのジャズ系のミュージシャンは組織を作って、ニュー・ジャズの新たな流れなんていうのを作り出そうと画策します。一番の成功例はアート・アンサンブル・オブ・シカゴで、一番の実力者はアンソニー・ブラクストン、という感じでしょうか。
 しかし、こういう組織というのは、得てしてミュージシャンのレベルとか、組織としての強度というのが疑わしかったりするんですよね。このアルバムには、良い意味でも悪い意味でも、そういった側面が出ています。ブラクストン自身としては初リーダー作という事で、自分のプレイにしてもコンポジションにしても力が入りまくり。力が入りすぎて、ハッタリっぽい所すらあるぐらいです(^^)。しかし、共演者がブラクストンのレベルに追い付きません。なんというのかな、「ああ、多分ここはこういう風にしたかったんだろうな…」みたいに思える所がたくさんあるんです。しかし、共演者にそれを実現するだけの技術がない。
 こういうジレンマって、前衛ジャズ方面では常に付きまとう問題だと思います。コンポジションやコンセプトを具体化できるミュージシャンと使おうとすると、そういう人は他も忙しいのでパーマネントなバンドにすることが出来ず、どうしてもセッションっぽいものになっちゃう。パーマネントなバンドで作り上げていくと、音楽自体はまとまりを増していくけど、それぞれの演奏者の技量に問題が残っちゃう。構想が素晴らしく、また主役のブラクストンの演奏も絶品だけど、共演者の技量が追い付かなかった、大名盤になり損ねた好盤。それが、本作なんじゃないかと思います。あ、こんな事書きましたが、素晴らしい音楽ですよ!!


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『Anthony Braxton / QUARTET (LONDON) 1985』

AnthonyBraxton_Quartet1985.jpg 前に紹介したアルバムが、現代コンポジションとジャズ・インプロヴィゼーションの振幅が広いアルバムだとすれば、こちらは比較的ジャズ・アドリブ的なブラクストンの超絶ソロを堪能できるライブ・アルバムです。CD2枚に渡って、吹きまくり。しかも曲は、例によってブラクストン独特の曲想です。基本的にモード的(本当の意味でのモードで、機能和声の中でちょっと変わったスケールを使うモード調とか、そういうのではない)というか、曲ごとにスケール的な色彩なんかが明確です。具体的に書き込まれたパートなんかもあります。

 とはいえ、ブラクストンって、曲のタイトルが絵で描かれていたりするんですよ。で、その脇に"COMPOSITION 52"とか"COMPOSITION 86 (+32 +96)"とか書かれてます。で、その意味でいうと、ここでの演奏はぜんぶ土台にあるコンポジションがあるみたいです。これは想像でしかないんですが、例えば"32+96"なんていう曲は、32という何らかのコンポジションと96というコンポジションを組み合わせたものなんでしょうね。例えば、32はスケール・コンポジションで、96は度数と音価のコンポジションだとすると、86というコンポジションは必然的に決まってくる。で、それが音楽の土台にあって、その範囲内でカルテットはアドリブ演奏することが出来る、みたいな。で、このCDの場合、CDの1枚目も2枚目もノンストップで一気に演奏してしまうんですが、クレジット上はどちらも6つほどのコンポジションから成っています。いやあ、演奏の切れも凄いし、作曲によって得る事の出来ているアンサンブル的な側面とか、あるいは曲調、サウンド・イメージなんていう側面も、実にカッコいいです。

 問題は、録音。どこかの劇場でのライブ録音なんですが、たぶんマイク2本で録ってるんですよ。だから、音がちょっと不鮮明で、ドラムとかベースがかなりカッコいい事をやってるのに、「ワ~ン」て残響でかき消されちゃって、良く聞こえない。ここだけが実に残念でした。あ、そうそう、メンバーは、マリリン・クリスペルがピアノ、マーク・ドレッサーがベース、ジェリー・ヘミングウェイがドラムです。いやあ、全員がリーダー作を出しているレベルのスーパーバンドじゃないですか。。素晴らしい!



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『ANTHONY BRAXTON / TOWNHALL 1972』

AnthonyBraxton_Townhall.jpg ジャズって、面白い音楽だと思います。元々はエンターテイメント音楽の極み。アメリカ合衆国という文化後進国から生まれた大衆音楽かつ職業音楽、商音楽の極みたいな音楽であったのが、色々な音楽をアーカイブしていくような側面を持ち始めて、モダン・ジャズあたりになると、その最先端は芸術音楽という所にまで発展したという。で、そのジャズの芸術音楽としての最高峰というのは、当のジャズ・ファンからは理解されない(場合によっては毛嫌いされてる)というのも面白いです。たいそうな評論家であっても、あるいはアマゾンでレビューを書きまくっているようなジャズ・キャットであっても、セシル・テイラーやブラクストンの音楽を「何を考えているのか分からない」とか、平然と書いちゃってます。いや、皮肉じゃなくって、ああいう人たちには、本当にセシル・テイラーとかアンソニー・ブラクストンの音楽がデタラメやっているように聞こえてるんでしょうね。
 さて、前置きが長くなりましたが、芸術音楽としてのジャズの、ピアノの分野での最高峰がセシル・テイラーなら、サックスの最高峰はアンソニー・ブラクストンじゃないかと思います。そして、1972年のタウンホールでのコンサートを収めた本作が、その中でも一番分かり易いというか、ディレクションの明確な最高傑作なんじゃないかと思います。

 アンソニー・ブラクストンという人を理解するには、ふたつのポイントを押さえておけば、大変に理解しやすくなるんじゃないかと思います。ひとつは、作曲技法をちゃんと修めているという事。それは、いわゆるポピュラー音楽の機能和声音楽(つまり、クラシックもジャズも含めての、ドミソの3和声の音楽です)という意味じゃなくって、無論それもおさめているんだけど(というのも、普通にスタンダードのソロを演奏しても、とんでもなく巧い!!)、フランス系のモード音楽とか、それ以外の音階音楽とか、現代の西洋作曲音楽の一部あたりもしっかり修めているんだろうな、という事です。まあ、そう思える理由は色々とあるんですが、手っ取り早くは、このCDを聴けば納得できるんじゃないかと。
 もうひとつの特徴は、チャーリー・パーカーから繋がってくるような、ジャズのバカテク・サックス・ソロアドリブというものの達人であるという事です。本作でいえば、冒頭のアドリブ・パートといい、その直後に繋がってくるテーマのプレイなんかにも、その超絶ぶりがあらわれています。その技術たるや、とんでもないレベル。ブローやフラジオでごまかすなんてことは絶対にしません。

 そして、このCDです。もう、上の説明で、ブラクストンの音楽の傾向は伝わったんじゃないかと思います。要するに、現代音楽やモダン・ジャズというものを全てひっくるめたコンポジションを完成していて、その上をサックスがソロで縦横無尽に駆け回る、というわけです。メンバーもどちらかというとフリー一色の人じゃなくって、クラシックからジャズからフリーから何でもこなしちゃう人たちばかり。デイブ・ホランドがベースで、フィリップ・ウィルソンがドラムで、現代音楽とジャズ的なスケール音楽の真ん中にあるコンポジションが骨格にあって、音の選択そのものはジャズ的なアドリブ・ソロに一任されていると言えば、その凄さが少しは伝わるんじゃないかと。

 いやあ、これほどの音楽は、ちょっとやそっとでは出会うことが出来ないんじゃないかと思います。驚異の大傑作。ただ、ブラクストンというのは器用貧乏というか、やりたいことがたくさんありすぎる人で、ミニマル的なコンポジションに没頭してサックスを全然吹かなかったり、逆にチャーリーパーカーの曲ばかりを1時間近くぶっ通しで超高速で吹きまくるだけとか、とにかくやる事が極端なので、彼のCD1枚だけを聴いて評価しちゃったりすると、時として危険なのです。しかし本作は、アタマの2曲が比較的現代コンポジションよりのジャズ、ラスト曲が比較的ジャズ寄りの現代コンポジションという感じで、ブラクストンの音楽の最良の部分がバランスよく音楽化された名作なんじゃないかと。名盤中の名盤、大名盤だと思います!





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プロフィール

Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです。音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度ですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

最近気になってるCDとか本とか映画とか
intoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!!
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