
シューマン作曲の「ピアノ協奏曲」と「ヴァイオリン協奏曲」を、なんと1枚の録音にまとめてしまったというCDです。棒振りはアーノンクール、ソリストはピアノが
マルタ・アルゲリッチで、ヴァイオリンが
ギドン・クレーメルです。アーノンクールって古楽のスペシャリストという印象でしたが、こういうのも指揮するんですね(^^)。
シューマンの音楽って、僕は交響曲がとにかく合いません(;_+)。ピアノ曲も、子どものころに自分でも演奏した「子供の情景」なんて、いかにも子どもピアノ教室用の曲みたいに感じてしまっていました。でも、
「3つのロマンス」とか、ホロヴィッツが演奏したトッカータを聴いて、「おお、これはすごいのでは?!」となり、とどめは
ウルトラセブンの最終回で鳴り響いたピアノ協奏曲です(^^)。今では、実は古典派から初期ロマン派へと入っていった時代でスバラシイのってシューマンなんじゃないかとすら思うほどになっています。特に、アンサンブルものと協奏曲が素晴らしい…な~んて、世間のシューマン評とはぜんぜん違う事を感じてしまっていたりして(^^;)>イヤア。
シューマンのピアノ協奏曲は、激情的な出だしから、感情に任せて揺さぶられる音楽。第1楽章の有名すぎるフォルテのドカンとした出だしからすぐにピアノに落ち、そして印象的なモチーフをピアノと弦が交換しながらゾワゾワとクレッシェンドしていき、アニマートなピアノ独奏。そして弦が…いやあ、こんなの魂を持ってかれてしまいます、ロマン派音楽の悦楽ここにあり。アルゲリッチは激情型の演奏。アルゲリッチのシューマン協奏曲には、有名なドキュメンタリーも残っていますが、このCDの方が凄い!!スコアがどうとか、そういう所にいません。テンポは変幻自在だし、冒頭からエモーショナルな表現にすべてを賭けたかのような演奏でした。こういう音楽は、もう自分の内側から出て来た音を全部叩き出していくような演奏こそが素晴らしいと思うのです。ただ、ちょっと録音が遠いのが残念…すべてが揃うって、なかなかないですよね。。
ヴァイオリン協奏曲の方は、「シューマンのスコアのままで演奏する事は不可能」とか、「作曲家本人が演奏される事を拒否して封印されたいわくつきの曲」とか、まあ色々と逸話のある曲です。結局、最終楽章を演奏できるように手を入れている最中にシューマンが死んでしまい、しばらくお蔵入りという運命だったんですよね。というわりにけっこう録音されていたりするんですが(^^)、他と比べるとクレーメルの演奏はタップリ目に弾いていて、流暢というより、かみしめるような演奏です。エキサイティングな演奏に走りがちなヴァイオリニストだけに、これはむしろアーノンクールの解釈が先に来ているのかも。
シューマンの協奏曲って、独奏楽器は語るように感情的だし、かといって管弦は交響曲の雄大さを持っていて実にロマン派的なのに、構造に余分なところがないのが素晴らしいと感じます。ピアノ協奏曲は有名ですが、ヴァイオリン協奏曲もこれだけ素晴らしいと、実は協奏曲がすごい人といえるかも。いいCDでした!