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心に残った音楽♪

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『マーラー:交響曲第3番 シノーポリ指揮・フィルハーモニア管弦楽団』

Mahler_Symphonie3.jpg ロマン派音楽のピアノ協奏曲について色々と考えていたら、協奏曲や交響曲の悦楽…みたいな所に考えが行き着いてしまいました。僕はロマン派音楽のシンフォニーを、そういうものとして捉えているんでしょうね。で、その手の音楽の極限にあるものは…やっぱり、ワーグナーやマーラーになるんじゃないかと。そしてマーラーの第3番は、演奏時間100分超となる大交響曲で、長大な交響曲の中でも特に演奏時間の長い曲です。普通の生活を営んでいたら、とても聴けるシロモノではありません(^^;)。

 交響曲といって僕が真っ先に思い浮かべるのは、ベートーヴェンとマーラーです。ベートーヴェンは初期は古典派で後期はロマン派に数えられ、マーラーは後期ロマン派と呼ばれます。両者はそれほど劇的に違う音楽とは感じませんが、でもけっこう明確な差もあります。そのひとつが様式で、構造に相当な配力があるのが古典派、様式がかなり自由で、物語の流れや情景描写次第が音響構造より優先する事もしばしばあるのがロマン派、みたいな区分けも出来るんじゃないかと。
 この曲の1楽章は「夏の始まり」と「牧羊神の目覚め」が構想されて、これを音で表現してしまう、音で描く風景画的なやり方をしてますが、これが音で風景を描けてしまう見事さでした。まずは絵画性が高いんですよね。
 そしてこの3番、長いドラマで描こうとしているテーマに考えさせられるものがありました。最初は短調で始まった曲が100分もの時をかけ、絵画的に描かれた6つの楽章を渡り歩き、最後に辿り着くのは…天国のような、えらく清廉な世界。これってつまり、人生を描いているんじゃ…。音楽どうこうを抜きにしても、創作物の主眼を個人の人生や死をテーマにするって、もうそれ以上はないのではないかというぐらいの重要な所に取り組んでいるのではないかとお感じるのですよね。その最後に奏でられたヴァイオリンのレガートの美しさと言ったら…つまり死の瞬間(それともその先?)を安静や美として描いたわけですが、ここに胸を打たれました。

 ただ…僕みたいな現代日本に住んでる労働者階級の人間にとっては、マーラーの3番を最初からゆったり聴く時間がないのです(T.T)。いつか、マーラーの3番をゆったり聴ける時間がある生活をできるようになるんだろうか。。労働者は辛いよ。



(2022.10 追記)
 久々にこの録音を聴きなおしました。最近聴いたつもりだったんですが、もう8年も前なんですね。マーラーの3番を聴いて思い出すのは、ラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」。要するに、管弦楽の美しいオーケストレーションです。これが来るのが第6楽章で、長大な交響曲のラストが飾られます。この曲だけで20分を超えますが、もうなんというか…忘我の境地で身を任せていたい音。感動といってしまえば簡単ですが、感動を通り越したもっと壮大なモノ、人知を超えたもの…みたいな。
 ロマン派って、死がテーマになっているように感じるんですが、それをどのようにすれば昇華させられるか、というのがマーラーのシンフォニーの多くに魅まれる裏テーマであるように感じられました。交響曲第3番も例外ではなく、その最終楽章は死んで天に召される様を描いてるのではないかと思ってしまいました。

 そして、あまりに美しい浄化の第6楽章を活かすなら、このシンフォニーは第4楽章からで良い気がしました。1楽章なんて、それだけで単一楽章のシンフォニーと言ってよいほどよく出来ていますが、あまりに私的で饒舌すぎるというか。前半楽章が現生で、後半に従って死―死と言っても日本的な感覚ではなくて、キリスト世界での昇天のような救いの感覚―へと繋げてあるように聴こえたので、物語としては整合性が取れているのでしょうが、短歌・俳句のある国に生まれた身としては皆まで語らずとも分かるというか、純粋に音楽と見れば後半だけの方が完全を示せるのでは、な~んて思っちゃったりして(^^;)。4楽章から聴くと、物語としてではなく純音楽として完全を成立できる気がするんですよね。
 4楽章も最終楽章に近い美しさを持っていて、ニーチェの詩が使われています。抜粋すると、「世界は深い、昼が思っていたよりも深い(中略)だが、すべての快楽は永遠を欲する―深い永遠を欲するのだ」。これが5楽章で「子供の不思議な角笛」の一節に繋がります。「3人の天使が美しい歌を歌い、その声は幸いに満ちて天上に響き…」、そして最終楽章へと繋がります。
 それにしても、マーラーの交響曲は、ひとつひとつが青年会からその死までを描いているようで、言ってみればひとりの人生のよう。ひとつを聴いて「これはかくかくしかじかな音楽だ」とか、簡単に言ってはいけないものに感じました…さんざん語っておいてなんですが(^^;)。


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『ニニ・ロッソ / ワンス・モア』

NiniRosso_OnceMore.jpg ひとつ前の記事で書いた「野獣死すべし」のメインテーマですが、ジャズバンド・ウィズ・ストリングスという編成で、メインテーマはトランペット。トランペットの哀愁ある音色やメロディをストリングスが支えた瞬間を聴くだけでもう鳥肌モノ。しかし「野獣死すべし」より先に、僕はジャズ・トランペットwithストリングスの悦楽を知っていたのでした。それが、子供の頃、テレビの「水曜ロードショー」という番組のオープニングで流れていた音楽。夕暮れのヨットハーバーで、夕陽に照らされた海がオレンジ色にキラキラしていて、船から手綱が投げ入れられて…みたいなオープニング。その後ろで流れていた、何とも言えない美しい音楽。子供の頃の僕は、あの音楽を聴いて「なんて美しい曲なんだろう」と思っていました。オープニングでは何のクレジットも出ないので、誰の演奏で、何という曲かも知らないまま、オープニングの曲が変わってしまい、そのまま月日が流れてしまいました。
 それから10年ぐらい後でしょうか、大人になり、音楽の仕事をしている時に、ふとした会話の中でその音楽の話になりました。すると、ご年配のレコーディング・エンジニアの方が「ニニ・ロッソじゃないの?」と教えてくれました。だ、誰だそれ??しかし、長年の謎が解明したかも知れないと思った僕は、その人のレコードを調べ、ベスト盤みたいなものに入っている曲の中から「水曜の夜」というタイトルの曲を見つけることが出来ました。これに違いないだろう…。しかし、もしこれだとしたら、水曜ロードショーの為にわざわざ作った曲だったのか。ジャズかなんかのすたんだーと・ナンバーかと思っていました。。で、早速購入して聴くと…これだああああああ!!!

 子供の頃、映画というのはなんて面白い物かと思っていました。でも、映画を見に行くことが出来るのなんて、年に1回ぐらい。そんな素晴らしい映画が、テレビでは毎週見る事が出来るんですが、放送が夜の9時からというのが大ネック。「子供はもう寝なさい」という時間なんですよね(>_<)。だから、「この映画だけは見せてくれ!」というやつだけ、親に必死に頼み込んで、何カ月に1回ぐらいだけ見るので精いっぱい。そんな時に、ワクワクしてテレビの前で待ち構えていて、流れるのがこの音楽だったのです。ブルース・リーもルパン3世もジャン・ギャバンも、僕はこのテーマを聴いた後に体験していたのです。あの夕暮れのヨットハーバーの景色と合わせて、そういうワクワクした体験が、この音楽には集約されて記憶されているんですね、僕の場合はきっと。

 さて、僕はニニ・ロッソという人をよく知りません。ムード・ミュージックのオーケストラの人気ソロイストか、劇伴作家兼トランぺッターみたいな所なんでしょうか。ハイノートも綺麗に出すので、実は結構うまい人なんじゃないかという気もしますが、ジャズのような派手なソロは聴いた事がありません。でも、この「水曜ロードショー」のテーマソングだけで、僕には十分の1枚です。



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『野獣死すべし オリジナル・サウンドトラック』

YajyuuSisubesi.jpg シューマンのピアノ協奏曲と、ショパンのピアノ協奏曲について連続して書きました。書いていて思ったのですが…僕がこのふたつのコンチェルトを最初に聴いたのはいつなのか、という事。シューマンは間違いなくウルトラセブンの最終回でしょうね(^^;)。そうそう、この前、妻がウルトラセブンを見たことが無いというので「それは昭和30~40年代生まれの人間としての一般教養に欠けている」と説教をして、いくつかのハナシを見ました。「ノンマルトの使者」「セブン暗殺計画」「第4惑星の悪夢」、そして最終回「史上最大の侵略」。変身したら自分が死んでしまうと分かっていながら、最後の変身に踏み込むシーンでシューマンが流れるのですが、ここで妻が号泣。横で僕は「泣くなよ」と笑っていたのですが、しかし子供の頃の僕も号泣していた事はここだけのハナシです( ̄ー ̄)。

 …どうも最近は話が逸れちゃうなあ。ああそうそう、ピアノ協奏曲のハナシでした。シューマンはウルトラセブンでしたが、ショパンは松田優作主演の「野獣死すべし」が初体験だったんじゃないかと。ショパンのピアノコンチェルト、映画の中でしつこいぐらいに使われます。実際のコンサートシーンまで何度も出てきます。恐らく、当時の日本のエリート層の符号として使われたんじゃないかと思うんですが、しかし僕の心を捉えたのは、ショパンではなくて、「野獣死すべし」のメインテーマ。ストリングスの前で、ジャジーなトランペットが朗々と鳴り響きます。和声進行も実に切ない感じのもの。訥々と響くエレクトリック・ピアノの音、主題再現部で一気にフォルテとなるストリングス…この音楽だけで、映画の世界に一気に引き込まれていったのを覚えています。

 しかし、このテーマ音楽が交響曲的なスケールのものに発展するのかというと、そうはなりません。テーマパートが終わったら、トランペットのアドリブパートにして、最後にテーマに戻すという、ジャズのような作り。映画では、編集されてトランペットのソロパート自体がざっくりカットされています。まあ、サントラなので、音楽だけで20分の曲にするとかいうのは、意味がないんでしょうね。
 とはいえ、それがまた良かったのかもしれません。ふたつ前の記事で書いたように、僕の今のライフスタイルでは、交響曲や協奏曲は聴くことができないのです。そんな時に、弦楽の悦楽をニュアンスだけでも楽しもうと思ったら、このぐらいのサイズの音楽が丁度よいのかも。そして、この見事な曲は、ペットではなくヴィブラフォンがメインのバージョン、最後に野獣が射殺され、崩れ落ちるシーンに流れるストリングス単独のバージョンと、3つのバージョンがありますが、そのどれもが秀逸。他にも、ストリングスのないバンドだけによるBGMや、ショパンのピアノ・コンチェルトも入っているのですが、僕にとっての野獣死すべしの音楽はメインテーマのバリエーションが全て。このレコードを聴くときは、メインテーマの3バージョンばかりを何度もリピートして聴くのでした(^^)。



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『ショパン:ピアノ協奏曲 第1番、第2番 ルービンシュタイン (pf)』

Chopin_Concerto1_2.jpg ピアノ協奏曲つながりで、シューマンに引き続きまして、ショパンのピアノ協奏曲を。

 クラシックのレコードって、「歴史的録音」なんて呼ばれるものがありますよね。僕はコレクターではないので、どのあたりの物からそう呼ぶのか分かりません。しかし、録音テープの都合なのか、機械が古いからなのか、音が滲んだような感じになってしまっているレコードは、僕の中では歴史的録音という事になっています(^^)。で、この「歴史的録音」というものにはいい所もあるんですが(例えば、伝説の巨匠の演奏が聴けるとか…)、僕にとってはマイナス面があって敬遠しがちなのです。何がマイナス面かというと…ダイナミックレンジが狭すぎるし、音の再現性が悪すぎるのです。
 クラシックの楽譜には、演奏の強弱を示す記号とか、速度変化や音色を示す指示なんかがいっぱい書いてあります。書いてなくても、演奏者はそこをどう表現すべきか、楽譜から読み取ろうとするし、自分で書き込みます。ピアノの演奏を聴くと、同じショパンを演奏しても、クラシックの素養のある人が弾いているのか、それともジャズやポップスのピアニストが弾いているのかは、簡単に分かります。ジャズの人は、和声をひとつの塊として(つまり和音の音色として)演奏します。一方、クラシックの人は、旋律パートと対旋律パートやバスパートの関係などから、音の強弱を選び出すように考えます。だから、ある瞬間に4つの音が鳴っているとしても、それらを全部同じ音量で弾き揃えることはまずありません。ところが…「歴史的録音」になってしまうと、ピアニストが弾き分けたであろう音が潰れてしまって同じ音色や音量に聞こえてしまったり、フォルテとフォルテシモが潰れてしまって同じ音量になってしまったりと、演奏家が一番腐心したであろうその表現の部分こそが、録音によって失われたようにきこえるものが多いのです。弦なんかだと、古い録音だと僕は音が取れなかったりするものが結構多いし(^^;)。。

 前置きが長くなりましたが、この録音です。巨匠ルービンシュタインの演奏によるショパンのピアノ協奏曲で、録音は1961年と68年。一般的に言えば歴史的録音ではないという事になるんでしょうが、しかしモダン録音にも届かない感じ。それがどうなのかというと…なんか、いいんですよ(笑)。音は滲んでしまっているんだけど、しかしアナログ録音独特の温かさと言えなくはないし、こういう音が好きだからクラシックをLPで聴きたいという人も多いと思うんですよね。あの、アナログ録音の良い側面が出ている感じなんです。それでいて、強弱や音色の表現が潰されてしまっているかというと、そこはかろうじて残っている感じ。こういう事をいってしまうと、もう「個人の趣味じゃねえか」と言われてしまいそうなんですが(^^)、しかし僕は好きなのです。
 ルービンシュタインの演奏は、けっこう落ち着いてます。リストとかショパンとなると、技巧をイメージする人が多いと思うんですが、ピアニスト本人も同じで、華麗でテクニカルな演奏が多いです。でも、このルービンシュタインの演奏は、優雅と言っていいほど落ち着いてました。なるほど、こういうのもいいなあ。


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『シューマン:ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲 アーノンクール指揮ヨーロッパ室内管弦楽団、アルゲリッチp、クレーメルvln 』

schumann_concert.jpg  シューマン作曲の「ピアノ協奏曲」と「ヴァイオリン協奏曲」を、なんと1枚の録音にまとめてしまったというCDです。棒振りはアーノンクール、ソリストはピアノがマルタ・アルゲリッチで、ヴァイオリンがギドン・クレーメルです。アーノンクールって古楽のスペシャリストという印象でしたが、こういうのも指揮するんですね(^^)。

 シューマンの音楽って、僕は交響曲がとにかく合いません(;_+)。ピアノ曲も、子どものころに自分でも演奏した「子供の情景」なんて、いかにも子どもピアノ教室用の曲みたいに感じてしまっていました。でも、「3つのロマンス」とか、ホロヴィッツが演奏したトッカータを聴いて、「おお、これはすごいのでは?!」となり、とどめはウルトラセブンの最終回で鳴り響いたピアノ協奏曲です(^^)。今では、実は古典派から初期ロマン派へと入っていった時代でスバラシイのってシューマンなんじゃないかとすら思うほどになっています。特に、アンサンブルものと協奏曲が素晴らしい…な~んて、世間のシューマン評とはぜんぜん違う事を感じてしまっていたりして(^^;)>イヤア。

 シューマンのピアノ協奏曲は、激情的な出だしから、感情に任せて揺さぶられる音楽。第1楽章の有名すぎるフォルテのドカンとした出だしからすぐにピアノに落ち、そして印象的なモチーフをピアノと弦が交換しながらゾワゾワとクレッシェンドしていき、アニマートなピアノ独奏。そして弦が…いやあ、こんなの魂を持ってかれてしまいます、ロマン派音楽の悦楽ここにあり。アルゲリッチは激情型の演奏。アルゲリッチのシューマン協奏曲には、有名なドキュメンタリーも残っていますが、このCDの方が凄い!!スコアがどうとか、そういう所にいません。テンポは変幻自在だし、冒頭からエモーショナルな表現にすべてを賭けたかのような演奏でした。こういう音楽は、もう自分の内側から出て来た音を全部叩き出していくような演奏こそが素晴らしいと思うのです。ただ、ちょっと録音が遠いのが残念…すべてが揃うって、なかなかないですよね。。

 ヴァイオリン協奏曲の方は、「シューマンのスコアのままで演奏する事は不可能」とか、「作曲家本人が演奏される事を拒否して封印されたいわくつきの曲」とか、まあ色々と逸話のある曲です。結局、最終楽章を演奏できるように手を入れている最中にシューマンが死んでしまい、しばらくお蔵入りという運命だったんですよね。というわりにけっこう録音されていたりするんですが(^^)、他と比べるとクレーメルの演奏はタップリ目に弾いていて、流暢というより、かみしめるような演奏です。エキサイティングな演奏に走りがちなヴァイオリニストだけに、これはむしろアーノンクールの解釈が先に来ているのかも。

 シューマンの協奏曲って、独奏楽器は語るように感情的だし、かといって管弦は交響曲の雄大さを持っていて実にロマン派的なのに、構造に余分なところがないのが素晴らしいと感じます。ピアノ協奏曲は有名ですが、ヴァイオリン協奏曲もこれだけ素晴らしいと、実は協奏曲がすごい人といえるかも。いいCDでした!



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『Helen Merrill / with Clifford Brown』

HelenMerrill.jpg アニタ・オデイではない人で、白人女性ジャズ・ヴォーカル物で聴きまくったのが、このレコードです。ヘレン・メリルというヴォーカリストさんの大名盤です。女性ジャズ・ヴォーカルの大スタンダード曲に"What's New"とか"You'd be so nice to come home to" なんて曲がありますが、数えきれないほどに多く歌われきたこれらの曲で誰もが思い浮かべるのは、このレコードなんじゃないかと。ヘレン・メリルと同じような歌い方のものもあったりするほどで、これがジャズ・ヴォーカルの歌唱法の基準のひとつになっちゃったぐらいの大名盤です。

 しかし、ヘレン・メリルという人は、アニタ・オデイほどのテクニシャンではありません。というか、白人女性ジャズ・ヴォーカルものというのは、けっこうヘタな人もいたりして(^^;)…いや、ポップスみたいに「マジでこれでデビューさせちゃうのかよ」みたいなのは少ないし、またヘレン・メリルがヘタという訳でもないのですが。しかしこの人の凄いのは、そういう分かり易いテクニックの所じゃなくって、僕にとっては声が凄いと思っちゃいます。ちょっとハスキーで、また例によって息の成分を多く入れた白人ジャズ・ヴォーカルらしい声を出していて、もの凄く魅力的なのです。ちゃんとしたヴォーカリストさんって、声からきちんと作り込むんですよね。これは、昔にジャズ・ヴォーカルのレッスン風景を見たことがありまして(町のヴォーカル教室レベルのヤツじゃない、本物のやつです^^)、「うわ、息と声の成分とか、息の逃がし方とか、骨伝導のさせ方とか、そんなものまでコントロールしているのか…」と、ビビらされた経験があります。ヘッド・ヴォイスとか、横隔膜がどうとか、僕みたいな素人にはついて行けない世界でした(^^)。ヘレン・メリルという人がそういうのにどれぐらい自覚的なのかどうかは知りませんが、あの声が、たまたまそういう歌い方だったとは到底思えないです。もう、完成度100%という感じ。

 そしてこのレコード、トランペットの大スターであるクリフォード・ブラウンがバックバンドのリーダーなんですが、吹けばいくらでも吹ける実力がありながら、歌や曲を活かして、すごくTPOに合った演奏をしているんですよね。ジャズの人って、曲想とか関係なしに、自分のソロになると吹きまくっちゃってバカ丸出しという演奏もあるので、こういう気配りの出来た演奏は、聴いていてすごく感銘を受けてしまいます。

 まあ、僕なんぞが今さら推薦するまでもない、女性ジャズ・ヴォーカルの歴史的名盤なんですが…アニタ・オデイさんだと書き切れないぐらいに色んなアルバムを思い出すのに、ヘレン・メリルさんのレコードは、これ以外はあまり記憶に残っていないのは何故なんでしょう(笑)。とっても不思議。






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『Anita O'Day / COOL HEAT』

AnitaOday_CoolHeat.jpg 1959年のロサンジェルス録音。いやあ、最もいい時代の、最もいい場所なんじゃないでしょうか。59年のロスに住んでいた白人なんて、ある意味で人類史上もっとも幸福な人なんじゃなかろうか(^^)。うらやましいなあ…。

 なーんて話は兎も角、このアニタ・オデイのレコードの注目点は、オーケストラのアレンジをジミー・ジュフリーが行っているという点です。ジャケットに思いっきり写っているので、レコード会社もそれを売りにしたんでしょうね。ジミー・ジュフリーという人は、ウエスト・コースト・ジャズなんていう括りの中で紹介される事が多いクラリネット奏者。ウエストコースト・ジャズというものが爽やかというか軽いというか、そういう音楽が多く、またジュフリーさん自身の初期の演奏もそういうものが多いものだから、そういう人だと思われている事が多いんじゃないかと思います。が…ある地点以降のジミー・ジュフリーという人は、芸術音楽方面にどんどん傾斜していって、ジャズマンじゃなくって、紛う事なきアーティストになってしまいました。なんか、ジャズなのにガチで4度和声の音楽を作曲段階から作りあげちゃったりして(というのは、3度和声の音楽を4度にリハーモナイズするというジャズはあるんですが、そうじゃなくって音楽自体を4度和声音楽として作り上げるというのが革新的というか、ジャズでは他に聴いたことが無いです、ぼくは。)、素晴らしいんですよ…。で、そんな人がヴォーカル物のアレンジをしているというのが、聴き所のひとつなんじゃないかと。
 このレコードでのジミー・ジュフリーのアレンジは、そこまで芸術的な所までは進んでいません。しかし非常によく練られているのは確かで、ドッカンドッカン系のビッグバンドではなくって、知性系のビッグバンド・アレンジ。いや、これは見事だ。。僕はやっぱり、ビッグバンドはコンボじゃないかと思ってしまうぐらいに音を絞り込んだアレンジが好きだなあ。ビッグバンドのモダン・アレンジを勉強したいのであれば、こんなに素晴らしい教科書もないんじゃないかというほどの素晴らしさです。
 しかし…それによる弊害も起きている気がします。なんか、バンドもヴォーカルも歌ってないんですよね。スコアを追うので精一杯という感じ。アニタさんが歌いまわすところなんかも、なんか楽譜にそういう指示があるんじゃないかとすら思えてしまいます(^^;)。大変に素晴らしいデザインの音楽だけに、もっとバンドやヴォーカルがアレンジに慣れてきた演奏を聴きたかったです。
 そうそう、このアルバムの中に"MY HEART BELONGS TO DADDY" という曲が入ってるんですが、邦訳すると「私のハートはパパのもの」みたいな感じでしょうか。いやあ、こういう世界観って、好きだなあ。たまにこの曲の演奏を聴くことがあるので、超有名どころではないにせよ、一応スタンダードとして認識されている曲だと思うんですが、今ではあまり聴く事の出来なくなってしまったタイプの、実に素晴らしい曲です。


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『Anita O'Day / Pick Yourself Up』

AnitaOday_PickYourselfUp.jpg これは、比較的スモール・コンボのオケでのアニタ・オデイのジャズ・ヴォーカルを聴く事の出来る好アルバムだと思います。オケはふたつで、ひとつはペット・ピアノ・ギター・ヴァイブ・ベース・ドラムのスモール・コンボ。もうひとつはビッグバンドなんですが、アレンジが見事で、ブラスセクション鳴りまくりではなく、要所以外では大胆にブラスセクションをカットしたりと、実にセンスのいいアレンジ、まるでスモール・コンボを聴いているようです。「真夏の夜のジャズ」でアニタが歌っていた"SWEET GEORGIA BROWN"の元アレンジが入っているのも、このアルバムです。ヴァース・パートからいきなりフォービートになるあのアレンジ、見事ですよね。というわけで、オケもアルバム構成も、全体としてメチャクチャにセンスが良いです。

 で、このハイセンスなオケの前で、アニタ・オデイさんの歌が素晴らしい!この人、フレーズの最後が白玉だと、ノン・ヴィブラートの状態から徐々にヴィブラートをつけ、最後にはかなり深いヴィブラートにするんですが、これが実にジャズ的というか、もうこれだけでイケちゃうというほどの見事な職人技。また、声もかなり作り込んでいて、普通に張ればもっと声量を稼げるんでしょうが、敢えてブレスを多めに入れて、倍音豊かなあたたかい音色を作り出しています。これはシロウト考えなんですが、こういう声の作り方って、普通に歌うより息が持たなくなる筈なので、どれだけサウンドというものに気を遣っているのかという事だと思います。プロだわ。あとは歌いまわしなんかも、喋る様に歌うところ、バップ系のフレージングでスキャットするところ、綺麗にうたう所…なんていう感じで、1曲の歌の作り込みが本当に凄い。

 他にも聴き所がたくさんあって、2曲目とか5曲目でソロをとるバーニー・ケッセルというジャズ・ギタリストのソロが見事!などなど、もう文句なしの大傑作!ジャズヴォーカルを聴いてみたいという人には、絶対のオススメ作品です。残念なのは、アニタさんという人は結構美人な人なのに、彼女の良さの出たアルバムは、どれもこれもブスにしか見えないジャケットばかり。もっといい写真があると思うんだけどなあ。


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『Anita O'Day / The Lady Is A Tramp』

AnitaOday_LadyIsaTramp.jpg ジャズの女性ヴォーカルって、古くなればなるほど、白人系と黒人系で大きな違いを感じます。これって音楽で大事にしている部分に具体的な違いがあるんじゃないかという気がします。僕は昔、白人系の女性ジャズ・ヴォーカルにハマった時期があるのですが、中でも一番好きだったのがアニタ・オデイでした。これはヴァーブに移籍後3枚目のアルバムで、1957年発表。

 今のジャズ・ヴォーカルって、比較的小編成のバンドを伴奏に歌うものが多いです。これは古いものになればなるほど、ビッグバンドをオケにしたものが多いです。これって、もともとビッグバンドにヴォーカリストが招待されるという形が多かったからだと思うんですが、でも僕はギル・エヴァンスやジョージ・ラッセルというモダン・ビッグバンドを知るまでは、ジャズのビッグバンド自体があまり好きではありませんでした。だから、ビッグバンド伴奏のジャズ・ヴォーカルがあまり好きじゃなかったんです。ところがその偏見はこのアルバムで一変しました。あまりの素晴らしさにしびれてしまったのです!

 このアルバム、アニタ・オデイの歌に対してビッグバンドがオブリ上に絡むことが多くて、そのアレンジにしびれます。
 そして、主役のアニタ・オデイのヴォーカルが本当に素晴らしい!一曲目の「Rock'n Roll Blues」は僕が好きなアニタ・デイのレコーディングの中でも上位に入る大好きなものですが、歌の最初の4小節を聴いただけで、「あ、このヴォーカルはメッチャクチャいい!」と虜になりました。ちょっとフラット目にルーズに歌って…ああもうこれは音を聴かないと良さを伝えきれないです。2曲目のコール・ポーター曲「Love for Sale」も名唱。4曲目「Lover Come Back to Me」はアレンジも歌唱も見事…いやあ、歌が素晴らしいです。白人ジャズヴォーカル独特の、ブレス多めの声の作り方とか、ジャズヴォーカルの醍醐味のアドリブフレーズとか、徐々にかけていくヴィブラートとか(アニタさんはヴィブラートをかけられないなんて言われてますが、見事だと思うけどなあ…)、本当に素晴らしいヴォーカル。

 アニタ・オデイはレコードによって好不調の波が激しいですが、これは絶好調の部類に入るんじゃないでしょうか。このアルバム、「楽しむ」という事を徹底的に追及している感じで、いい意味でショウビズとしてのジャズの良さが全部出ている感じ。アニタ・オデイの発表したアルバムの上位に入る名作だと僕は思っています。もしかすると1位かも。そうそう、僕が持っているのはCDですが、チリパチ音が入っている曲があるので、もしかするとマスターの一部が紛失または事故を起こしていて、何曲かはレコード起こしなのかも知れません。だから大人気のヴァーブ盤のひとつなのに、CD化があまりされていないのかも。


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『交響詩 銀河鉄道999』 音楽:青木望

Koukyousi999.jpg 前の記事で書いたモリコーネの"ONCE UPON A TIME IN THE WEST"のテーマ曲を聴いて思い出すのが、この映画版の「銀河鉄道999」の音楽です。これ、いい映画でしたねえ。最もキスシーンの美しい映画って、この映画なんじゃないかと思います。初めてのキスが別れなんですから(T_T)。

 さて、この映画音楽で最もよく使われるテーマメロディは、ワルツ調の愛のテーマ。これがメチャクチャにいい曲!!美しい星についた瞬間。星の海を機関車が駆け抜ける中、主人公の少年が愛を告白するシーン。最後の別れのプラットホーム。重要なシーンで、この美しいメロディが何度も使われます。ラストシーンに至っては、フルオーケストラに転調まで絡めて、これでもかというぐらいに高揚した音楽に仕上げます。もう、この曲だけでも絶対に買いですよね。この映画に感動した事がある人なら、ぜったいに泣けるはず。。
 他にも、いい曲が結構入っています。まずは映画のオープニングシーンで掛かる雄大な音楽。これも素晴らしい!はじめてこの映画を観た時、最初のナレーションからこの音楽への流れだけで、僕は引きこまれてしまいました(^^)。それから、惑星メーテルに入って、主人公の少年がメーテルを張り倒すシーンのフュージョン曲。これも感動しました。映画版の999の話をすると「音楽がイイよね」という人が、僕の周りには多いですが、これだけ名曲が目白押しだと、それも納得だと思います。

 ひとつだけ残念なのは…あまりにスタジオ録音過ぎる所です。ほら、管弦楽のあの音の美しさって、楽器だけじゃなくって、ホールの音も込みでの事じゃないですか。ところがスタジオ録音だと、たくさんいるヴァイオリンの音が全然混ざらないし、マイクが近すぎて音がヒステリックだし…。それでもちゃんとミックスすればいいモノに出来るんじゃないかと思うんですが、録音した音そのままって感じなんですよね。メインテーマなんて、主旋律よりもコンガの方が前にいたり(^^;)。こんなのアレンジとしてあり得ない、エンジニアに問題が…劇伴なので、流れ作業で丁寧にミックスしている時間がないんでしょうね。映画製作って、音楽が最後で、予算のしわ寄せを一番被ってしまうのが音楽だと言いますし。。そんなわけで、サントラ盤よりも映画のフィルムにダビングされて滲んでしまった音の方が音楽的という皮肉な結果に。これはハイレゾがどうとか20bitがどうとかリマスターがどう…というレベルのハナシではありません。いい音楽なだけに、これは残念。

 しかし、間違いなく日本の映画音楽の傑作のひとつと思います。映画公開から30年近くたって、いまだに再発され続けているというのは、それだけこの音楽を愛している人が多い事のあらわれなんでしょうしね。なんだかんだ言いながらも、僕も異常なぐらいに大好きな映画音楽です(^^)。


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『エンニオ・モリコーネ楽団 / "ウエスタン" オリジナル・サウンドトラック』

Once Upon a time in the west soundtrack 前の記事に引き続きまして、モリコーネ作曲の劇音楽を。"ONCE UPON A TIME IN THE WEST"(邦題「ウエスタン」)のサウンド・トラックです。

 モリコーネの音楽が好き過ぎて、僕は映画も見ずに、このサウンド・トラックを買っていました。貧乏だったのでいきなり買う事はなかったのですが、レンタルCD屋さんの視聴器で聴いて、あまりの素晴らしさにレンタルではなくって買ってしまったという訳です。劇中の音楽はモリコーネ節全開というか、「荒野の用心棒」系のおいしい音楽をたくさん聴くことが出来ます。もうこれだけで、モリコーネのファンなら必聴という感じなんですが、僕がノックアウトされたのは、モリコーネ節のそれらの曲じゃなくって、主題曲となっている女声メゾ・ソプラノ入りの弦楽。いや、素晴らしすぎるだろう、これ…。もう、感極まって泣いてしまいそうです。

 しかし、セルジオ・レオーネの代表作のひとつと言われているこの映画を、僕はずっと見ていませんでした。初めて見たのは3~4年前。そして…あまりの素晴らしさに、続けざまに3度も4度も見てしまったという始末です(^^;)。僕が持っているサントラ盤は、ここに紹介した西部劇的なガンマンの対決ジャケットではなくって、蒸気機関車の線路を作っている映画のワンシーンを抜いたものだったんですが、その意味が初めて分かりました。要は、蒸気機関が来て、いよいよ西部開拓時代が終わり、同時に銃の時代も終わろうとする、その瞬間を描いた映画だったんです。で、幼少期に家族を殺された復讐を果たそうとする主人公、町の人々から恐怖の対象として恐れられている一党とそのボス・ガンマン、そして町の有力者として初めてこの町に訪れ、しかしその婚約者が殺されるというヒロイン。この3者は、かつての西部開拓時代の価値観の象徴やこれからの時代の価値観の象徴として描かれていて、どちらが善でどちらが悪であるという事ではなく、それぞれに何とも言えない正義や思想を感じさせます。で、僕の持っているサントラ一面に写っている蒸気機関車自体も、時代の変わる瞬間の象徴というわけです。映画では、ヒロインが街に入った瞬間にカメラがパンして一気に開けた街の全貌を見る事が出来るのですが、この町が見えた瞬間の何とも言えない感慨が、モリコーネの書いたテーマ音楽に全部集約されているというか、意味もなく涙がぶわっと出てしまいそうになります。これ、映画のクライマックスシーンではなく、冒頭のシーンなんですけどね。。で、映画の象徴しているシーンとその感慨そのものを音化したテーマ音楽のシンクロ具合たるや、映画を見た後では、この音楽だけを引っこ抜いて語るのがちょっと片手落ちに見えてしまうほど。

 う~ん、これも本当に素晴らしい映画音楽。映画も見ずに、サントラが素晴らしすぎてそれを先に買ったなんていうのは、後にも先にもこれだけです。本当に素晴らしい音楽だと思います。今後もずっと聴き続けるんだろううな、僕は。この1枚に出会えてよかったです(^^)。



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プロフィール

Bach Bach

Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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ロシアとウクライナがほぼ戦争状態に入りましたが、僕はソ連解体後のウクライナについて本当に無知…。これは2016年にオリバー・ストーン監督が作ったウクライナのドキュメンタリー映画。日本語字幕版が出たらぜひ観たい このブログをYoutube にアップしようか迷い中。するなら作業効率としては早いほど良いんですよね。。その時にはVOICEROIDに話してもらおうかと思ってるけど、誰の声がいいのか考え中
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