心に残った音楽♪

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『シノーポリ指揮・フィルハーモニア管弦楽団 / マーラー:交響曲第3番』

Mahler_Symphonie3.jpg ロマン派音楽のピアノ協奏曲のハナシを書いていたら、協奏曲や交響曲の悦楽…みたいなハナシになってしまいました。という事は、僕はロマン派音楽のシンフォニーを、そういうものとして捉えているんでしょうね。で、その手の音楽の極限にあるものは…やっぱり、ワーグナーとかマーラーとかになるんじゃないかと。そしてマーラーの第3番は、演奏時間100分超となる大交響曲です。普通の生活を営んでいたら、とても聴けるシロモノではありません(笑)。

 ロマン派の交響曲といって、真っ先に思い浮かべるのは、僕の場合、やっぱりベートーヴェンとかマーラーです。何かの記事で書いた事があると思うんですが、この時に使われる音楽の文法というのが、機能和声と呼ばれるもの。「ドミソ」の積み重ねと、そこから生まれる和声進行のシステムがベースになっているあれですね。クラシックの場合、このほかにテーマとなるモチーフ(「第1主題」なんて言われたりします)なんかをどのように発展させ、全体の音それぞれに関係性を作っていくか…なんていう所も、音楽に一貫性を持たせる方法として使われたりしますが、要するにそれって音の縦軸じゃなくって、横に繋がっていく時間軸上の処理。でもそうなると、横軸が展開していく瞬間は劇性があって面白いですが、展開しない時は退屈な気がします。響きが似たり寄ったりだから。実際、若い頃の僕もそう感じていたわけで…。しかし、交響曲が好きな人は、その時に退屈していない筈ですよね。ではその時に、何が起きているのでしょう。要するに、各シーンは、劇的進行ではなく、そのシーン自体を感じて楽しむ、という感じなんですね。ベートーヴェンの「田園」なんて、もう冒頭のシーン作りだけで圧倒されてしまうような見事な色彩感覚。それぐらい、各場面でのシーン作りに腐心しています。で、マーラーの3番も、概ねこういった音楽的なやり方を踏襲しています。例えば、この曲の1楽章は「夏の始まり」と「牧羊神の目覚め」が構想されていたりします。で、これを音で表現してしまう。音による風景画的なやり方。で、各シーンを渡り歩きながら、機能和声音楽の最も強力な武器であるドラマが展開されるという訳です。で、マーラーの3番は、この展開がもの凄い事になっています。まず、この曲が短調であるという所に注目。つまり、主題は暗めなところから始まるのです。で、100分もの時をかけ、6つの楽章を渡り歩き、映画のようにシーンを変えながら、音楽が最後に辿り着くのは…天国の世界のような、えらく清廉な世界。最後に奏でられるヴァイオリンのレガートの美しさと言ったらありません。

 今の音楽って、音自体に具体的対象がないものがほとんどであると思います。音を聞いた時に感じるその感覚ですべてというか…。で、僕もやっぱりそういう時代の人間なわけです。しかし、ロマン派の時代って、音楽にしても絵画にしても、そうではないんじゃないかと。この当時と現代の感覚のズレというものが、僕が交響曲を聴くための大きな壁としてあったんじゃないかと。しかし、もし絵画的な考えで音を操っているのだとしたら、聴く側は単純に言えばその世界に耽溺するだけで良いわけで…もうこれは、音楽が鳴っているその時は、一種の空想旅行の瞬間というか、それこそ至福のひと時なわけです。

 非常に二律背反的な言い方になってしまうのですが、僕みたいな小市民で労働者階級の人間にとっては、マーラーの3番を聴く生活時間というものがありません。また、「音で夏とか神とかのような対象を表現する」という考え方自体が、僕を含めた現代の一般的な認識からはズレているのも事実なんじゃないかと思います。そういった意味で、ロマン派のシンフォニーは、聴いて好きに感じてくれれば良いというものではなくって、「ロマン派のシンフォニーの聴き方」というものを知らないと、その良さは分からないシロモノになってしまったんじゃないかと。また、それを分かるために努力しなければいけない義務も、一般のリスナーたる僕にはないんじゃないかと。しかし…壮大なるロマン派音楽のシンフォニーの世界は、その努力をするだけの価値があるものなんじゃないかと思える。で、マーラーの3番は、そんな事を考えるきっかけになった音楽のひとつでした。

 …あ、そうそう、マーラーの3番に関し、僕は評論家のように色々な聴き比べをしているわけではありません。そんな時間は、一生ない気がします(^^;)。至福と思っていても、このディスクをかける条件が揃うのは、数年に1度なのです(^^)。僕はシノーポリの指揮によるこのマーラーを「すごすぎる」と思って聴いている事は間違いがないのですが、これが一番良いマーラーの3番であるかどうかは分かりません。…頼りない推薦で、申し訳ないです。。





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『ニニ・ロッソ / ワンス・モア』

NiniRosso_OnceMore.jpg ひとつ前の記事で書いた「野獣死すべし」のメインテーマですが、ジャズバンド・ウィズ・ストリングスという編成で、メインテーマはトランペット。トランペットの哀愁ある音色やメロディをストリングスが支えた瞬間を聴くだけでもう鳥肌モノ。しかし「野獣死すべし」より先に、僕はジャズ・トランペットwithストリングスの悦楽を知っていたのでした。それが、子供の頃、テレビの「水曜ロードショー」という番組のオープニングで流れていた音楽。夕暮れのヨットハーバーで、夕陽に照らされた海がオレンジ色にキラキラしていて、船から手綱が投げ入れられて…みたいなオープニング。その後ろで流れていた、何とも言えない美しい音楽。子供の頃の僕は、あの音楽を聴いて「なんて美しい曲なんだろう」と思っていました。オープニングでは何のクレジットも出ないので、誰の演奏で、何という曲かも知らないまま、オープニングの曲が変わってしまい、そのまま月日が流れてしまいました。
 それから10年ぐらい後でしょうか、大人になり、音楽の仕事をしている時に、ふとした会話の中でその音楽の話になりました。すると、ご年配のレコーディング・エンジニアの方が「ニニ・ロッソじゃないの?」と教えてくれました。だ、誰だそれ??しかし、長年の謎が解明したかも知れないと思った僕は、その人のレコードを調べ、ベスト盤みたいなものに入っている曲の中から「水曜の夜」というタイトルの曲を見つけることが出来ました。これに違いないだろう…。しかし、もしこれだとしたら、水曜ロードショーの為にわざわざ作った曲だったのか。ジャズかなんかのすたんだーと・ナンバーかと思っていました。。で、早速購入して聴くと…これだああああああ!!!

 子供の頃、映画というのはなんて面白い物かと思っていました。でも、映画を見に行くことが出来るのなんて、年に1回ぐらい。そんな素晴らしい映画が、テレビでは毎週見る事が出来るんですが、放送が夜の9時からというのが大ネック。「子供はもう寝なさい」という時間なんですよね(>_<)。だから、「この映画だけは見せてくれ!」というやつだけ、親に必死に頼み込んで、何カ月に1回ぐらいだけ見るので精いっぱい。そんな時に、ワクワクしてテレビの前で待ち構えていて、流れるのがこの音楽だったのです。ブルース・リーもルパン3世もジャン・ギャバンも、僕はこのテーマを聴いた後に体験していたのです。あの夕暮れのヨットハーバーの景色と合わせて、そういうワクワクした体験が、この音楽には集約されて記憶されているんですね、僕の場合はきっと。

 さて、僕はニニ・ロッソという人をよく知りません。ムード・ミュージックのオーケストラの人気ソロイストか、劇伴作家兼トランぺッターみたいな所なんでしょうか。ハイノートも綺麗に出すので、実は結構うまい人なんじゃないかという気もしますが、ジャズのような派手なソロは聴いた事がありません。でも、この「水曜ロードショー」のテーマソングだけで、僕には十分の1枚です。



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『野獣死すべし オリジナル・サウンドトラック』

YajyuuSisubesi.jpg シューマンのピアノ協奏曲と、ショパンのピアノ協奏曲について連続して書きました。書いていて思ったのですが…僕がこのふたつのコンチェルトを最初に聴いたのはいつなのか、という事。シューマンは間違いなくウルトラセブンの最終回でしょうね(^^;)。そうそう、この前、妻がウルトラセブンを見たことが無いというので「それは昭和30~40年代生まれの人間としての一般教養に欠けている」と説教をして、いくつかのハナシを見ました。「ノンマルトの使者」「セブン暗殺計画」「第4惑星の悪夢」、そして最終回「史上最大の侵略」。変身したら自分が死んでしまうと分かっていながら、最後の変身に踏み込むシーンでシューマンが流れるのですが、ここで妻が号泣。横で僕は「泣くなよ」と笑っていたのですが、しかし子供の頃の僕も号泣していた事はここだけのハナシです( ̄ー ̄)。

 …どうも最近は話が逸れちゃうなあ。ああそうそう、ピアノ協奏曲のハナシでした。シューマンはウルトラセブンでしたが、ショパンは松田優作主演の「野獣死すべし」が初体験だったんじゃないかと。ショパンのピアノコンチェルト、映画の中でしつこいぐらいに使われます。実際のコンサートシーンまで何度も出てきます。恐らく、当時の日本のエリート層の符号として使われたんじゃないかと思うんですが、しかし僕の心を捉えたのは、ショパンではなくて、「野獣死すべし」のメインテーマ。ストリングスの前で、ジャジーなトランペットが朗々と鳴り響きます。和声進行も実に切ない感じのもの。訥々と響くエレクトリック・ピアノの音、主題再現部で一気にフォルテとなるストリングス…この音楽だけで、映画の世界に一気に引き込まれていったのを覚えています。

 しかし、このテーマ音楽が交響曲的なスケールのものに発展するのかというと、そうはなりません。テーマパートが終わったら、トランペットのアドリブパートにして、最後にテーマに戻すという、ジャズのような作り。映画では、編集されてトランペットのソロパート自体がざっくりカットされています。まあ、サントラなので、音楽だけで20分の曲にするとかいうのは、意味がないんでしょうね。
 とはいえ、それがまた良かったのかもしれません。ふたつ前の記事で書いたように、僕の今のライフスタイルでは、交響曲や協奏曲は聴くことができないのです。そんな時に、弦楽の悦楽をニュアンスだけでも楽しもうと思ったら、このぐらいのサイズの音楽が丁度よいのかも。そして、この見事な曲は、ペットではなくヴィブラフォンがメインのバージョン、最後に野獣が射殺され、崩れ落ちるシーンに流れるストリングス単独のバージョンと、3つのバージョンがありますが、そのどれもが秀逸。他にも、ストリングスのないバンドだけによるBGMや、ショパンのピアノ・コンチェルトも入っているのですが、僕にとっての野獣死すべしの音楽はメインテーマのバリエーションが全て。このレコードを聴くときは、メインテーマの3バージョンばかりを何度もリピートして聴くのでした(^^)。



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『ルービンシュタインpf / ショパン:ピアノ協奏曲 第1番、第2番』

Chopin_Concerto1_2.jpg ピアノ協奏曲つながりで、シューマンに引き続きまして、ショパンのピアノ協奏曲を。

 クラシックのレコードって、「歴史的録音」なんて呼ばれるものがありますよね。僕はコレクターではないので、どのあたりの物からをそう呼ぶのか分かりません。しかし、録音テープの都合なのか、機械が古いからなのか、音が滲んだような感じになってしまっているレコードは、僕の中では歴史的録音という事になっています(^^)。で、この「歴史的録音」というものにはいい所もあるんですが(例えば、伝説の巨匠の演奏が聴けるとか…)、僕にとってはマイナス面が大きすぎて、聴く気になれない事がほとんど。何がマイナス面かというと…ダイナミックレンジが狭すぎるし、音の再現性が悪すぎるのです。
 ヴァイオリンやピアノなどのクラシックの演奏を学んだ事のある方なら分かると思うのですが、楽譜には演奏の強弱を示す記号とか、速度変化を示す記号、音色を示す指示なんかがいっぱい書いてあります。僕はそこがジャズやポピュラーと一番違う所だと思うのですが、クラシックの場合、この手の表現の部分に相当な要求が比較にならないぐらいにびっしり書いてあります。書いてなくても、演奏者はそこをどう表現すべきか、楽譜から読み取ろうとするし、自分で書き込みます。ピアノの演奏を聴くと、同じショパンを演奏しても、クラシックの素養のある人が弾いているのか、それともジャズやポップスのピアニストが弾いているのかは、簡単に分かります。ジャズなんかの人は、和声をひとつの塊として(つまり和音の音色として)演奏します。一方、クラシックの人は、旋律パートと対旋律パートやバスパートの関係などから、音の強弱を選び出すように考えます。だから、ある瞬間に4つの音が鳴っているとしても、それらを全部同じ音量で弾き揃えるなんてことはまずありません。すべての音に序列があって、どれが大きい音でどれが小さい音で…という感じで、それぞれの音の強さや大きさの関係性が崩れるという事はありません。クラシックのロマン派音楽の場合、更に表現は音が聴こえるかどうかという小さい所から、音楽的である事の出来るギリギリの最大音までを使う事になったりするので、更にその表現の幅は広がります。ところが…「歴史的録音」になってしまうと、ピアニストが弾き分けたであろう音が潰れてしまって同じ音色や音量に聞こえてしまったり、フォルテとフォルテシモが潰れてしまって同じ音量になってしまったりと、演奏家が一番腐心したであろうその表現の部分こそが、録音によって失われてしまったように思えるものが多すぎるのです。

 前置きが長くなりましたが、この録音です。巨匠ルービンシュタインの演奏によるショパンのピアノ協奏曲で、録音は1961年と68年。一般的に言えば歴史的録音ではないという事になるんでしょうが、しかしモダン録音にも届かない感じ。両者の中間ぐらいですかね。で、それがどうなのかというと…なんか、いいんですよ(笑)。音は滲んでしまっているんだけど、しかしアナログ録音独特の温かさと言えなくはないし、こういう音が好きだからクラシックをLPで聴きたいという人も多いと思うんですよね。あの、アナログ録音の良い側面が出ている感じなんです。それでいて、強弱や音色の表現が潰されてしまっているかというと、そこは残っている感じ。こういう事をいってしまうと、もう「個人の趣味じゃねえか」と言われてしまいそうなんですが(^^)、しかしこのバランスが僕には素晴らしすぎる。
 で、これを素晴らしいと思う理由は、他のショパンのピアノ協奏曲の演奏と、ルービンシュタインのそれとの差にも出ているんじゃないかと。リストとかショパンとなると、技巧をイメージする人が多いと思うんですが、ピアニスト本人も同じ思いがあるんじゃないかと思います。というわけで、ショパン演奏というと、華麗でテクニカルな演奏が多い。でも、それがあまりに華麗にし過ぎようとする嫌いがあるというか、そのために大事な部分が失われてきてしまったようにも思えるのです。例えば第1番なんて、音楽的にはどのように演奏すると、いちばん良い音楽になるんでしょう。ショパンのあの耽溺するような音楽性も失わないでほしいと思ってしまうんですよね。そう考えた時に、テクニカルにバラバラと弾きまくる演奏ではなく、このルービンシュタインの演奏のように、ひとつひとつの音の意味付けを丁寧に突き詰めていった演奏の方が、遥かに音楽としての完成度が高いんじゃないかと思えてしまうのです。

 せわしない僕の今の生活では、シンフォニーやコンチェルトは、週末ぐらいしか聴く余裕がありません。週末でも、心を落ち着けて、アタマがすっきりした状態で、時間を十分取って…と、かなり準備しないと聴くことが出来ません。しかし、そうした万全の準備をして、ルービンシュタインのコンチェルトに耽溺して、聴き終わった時にはいつの間にか日が落ちて部屋が暗くなっていて…こういう時間を生きた瞬間こそ、僕は「生まれて良かった」と思える瞬間なのです。1本1本の指の強弱の順列にまで気を遣い、考え抜いた音楽演奏というものを知ってしまったら、まったく間違えずにすごい速さで演奏していたとしても、それが平坦なものであったら子供っぽ過ぎて聴く気になれなくなってしまう。ルービンシュタインがちょっと間違えているとか、そんなのは大きな音楽表現の前では、大した問題ではないのです。これぞ表現、歴史に残るピアノ協奏曲の中でも、ベスト3に入る演奏なんじゃないかと思います。




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『アーノンクールcond. ヨーロッパ室内管弦楽団、アルゲリッチp、クレーメルvln / シューマン:ピアノ協奏曲、ヴァイオリン協奏曲』

schumann_concert.jpg シューマン作曲の「ピアノ協奏曲」と「ヴァイオリン協奏曲」を、なんと1枚の録音にまとめてしまったというCDです。棒振りはアーノンクール、ソリストはピアノがマルタ・アルゲリッチで、ヴァイオリンがギドン・クレーメルです。スーパーチームによる、大名曲の録音という事ですね。

 クラシックのオーケストラやコンチェルトを聴くときに、思う事があります。これらの音楽は、僕の日常生活の中に食い込ませるのが難しい音楽であるという事。朝、眠い目をこすって遅刻すれすれで職場に駆け込み、夜はもう日付も変わろうかという時に自分の部屋に戻るという僕のライフスタイルの中では、音楽は仕事場で小さな音で流すとか、ちょっと耳に挟むとか、寝る前に少しだけ聴くとか、そういうものになってしまいがちです。そうやって聴かれる音楽は、いつの間にか「心を落ち着かせたい」とか「スカッとした気分になりたい」といったように、僕の事情に合わせて機能してくれるものを求めてしまいがちなります。それって、清涼飲料水やコーヒーなんかと同じですよね。しかし、ベートーヴェンやシューマンやマーラーの交響曲や協奏曲となると、そんな片手間に聴けるものではないし、そういう聴き方をしてしまったら、多分良い音楽とは感じないんじゃないかという気がします。ホールで聴くか、ガンバって揃えたちゃんとしたオーディオ装置の前で、音を大きくして、部屋を真っ暗にして聴きたいのです。人生のうちの30分とか1時間の間を、全部持って行かれたいのです。

 シューマンのピアノ協奏曲は、激情的な出だしから、感情に任せて右に左に揺さぶられるような音楽。ロマン派音楽ここにあり、みたいな音楽で、これを「主題が…」とか「和声があそこで…」とか、そういう分析的な聴き方をしてしまったら、たぶん恐ろしくつまらない事になります。そうではなく、この溢れ出てくるようなエモーショナルな音の海の中に自分の身を全部任せてしまうと…いやあ、これぞ音楽の悦楽、官能の極み、もうすべて持って行かれてしまいます。仕事に追われ、お金の心配ばかりを毎日している僕の日常にとって、すべてを投げ出して自分の身も感覚もすべて委ねてしまう瞬間なんてまずないのですが、しかしこのシューマンの悦楽はそれを可能にしてくれる魔術的な瞬間。「クラシックは分からない」とか、あるいはその逆に「アーノンクールの解釈は…」とか、そういう見地はすべて投げ出して、自分ごとこの音の海の中に溺れてみて欲しい。

 言いたい事はぜんぶ伝えたつもりなのですが、これでは全然レビューになっていないので(笑)、少しだけ説明をすると…。ヴァイオリン協奏曲の方は、「シューマンのスコアのままで演奏する事は不可能」とか、「作曲家本人が演奏される事を拒否して封印されたいわくつきの曲」とか、まあ色々と逸話のある曲です。というわりにけっこう録音されていたりするんですが(笑)、他と比べるとクレーメルの演奏はタップリ目に弾いていて、しかもかなり丁寧。流暢というより、かみしめるような演奏です。エキサイティングな演奏に走りがちなヴァイオリニストだけに、これはむりろアーノンクールの解釈が先に来ているのかも。一方、アルゲリッチによるピアノ協奏曲は、ものすごい激情型の演奏。アルゲリッチのシューマン協奏曲には、有名なドキュメンタリーも残っていますが、明らかにこのCDの方が凄い!!もう、スコアがどうとか、そういう所にいません。その場で即興的に音を生み出したかのごとき演奏。テンポは変幻自在だし、冒頭から速度記号やら、エモーショナルな表現にすべてを賭けたかのような曲なので、これはまさにビンゴの演奏ではないでしょうか。こういう音楽は、もう自分の内側から出て来た音を全部叩き出していくような演奏こそが素晴らしいと思うのです。その時に、楽譜の指定から外れる事があろうとも。
 う~ん、これほどの境地でピアノに正対できているピアニストって、他にどれぐらいいるのでしょうね。ちょっと神憑りです。絶好調の時のアルゲリッチって、その心身の全てが音楽の為にあるが如きの凄まじさで、鳥肌モノです。





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『Helen Merrill / with Clifford Brown』

HelenMerrill.jpg アニタ・オデイではない人で、白人女性ジャズ・ヴォーカル物で聴きまくったのが、このレコードです。ヘレン・メリルというヴォーカリストさんの大名盤です。女性ジャズ・ヴォーカルの大スタンダード曲に"What's New"とか"You'd be so nice to come home to" なんて曲がありますが、数えきれないほどに多く歌われきたこれらの曲で誰もが思い浮かべるのは、このレコードなんじゃないかと。ヘレン・メリルと同じような歌い方のものもあったりするほどで、これがジャズ・ヴォーカルの歌唱法の基準のひとつになっちゃったぐらいの大名盤です。

 しかし、ヘレン・メリルという人は、アニタ・オデイほどのテクニシャンではありません。というか、白人女性ジャズ・ヴォーカルものというのは、けっこうヘタな人もいたりして(^^;)…いや、ポップスみたいに「マジでこれでデビューさせちゃうのかよ」みたいなのは少ないし、またヘレン・メリルがヘタという訳でもないのですが。しかしこの人の凄いのは、そういう分かり易いテクニックの所じゃなくって、僕にとっては声が凄いと思っちゃいます。ちょっとハスキーで、また例によって息の成分を多く入れた白人ジャズ・ヴォーカルらしい声を出していて、もの凄く魅力的なのです。ちゃんとしたヴォーカリストさんって、声からきちんと作り込むんですよね。これは、昔にジャズ・ヴォーカルのレッスン風景を見たことがありまして(町のヴォーカル教室レベルのヤツじゃない、本物のやつです^^)、「うわ、息と声の成分とか、息の逃がし方とか、骨伝導のさせ方とか、そんなものまでコントロールしているのか…」と、ビビらされた経験があります。ヘッド・ヴォイスとか、横隔膜がどうとか、僕みたいな素人にはついて行けない世界でした(^^)。ヘレン・メリルという人がそういうのにどれぐらい自覚的なのかどうかは知りませんが、あの声が、たまたまそういう歌い方だったとは到底思えないです。もう、完成度100%という感じ。

 そしてこのレコード、トランペットの大スターであるクリフォード・ブラウンがバックバンドのリーダーなんですが、吹けばいくらでも吹ける実力がありながら、歌や曲を活かして、すごくTPOに合った演奏をしているんですよね。ジャズの人って、曲想とか関係なしに、自分のソロになると吹きまくっちゃってバカ丸出しという演奏もあるので、こういう気配りの出来た演奏は、聴いていてすごく感銘を受けてしまいます。

 まあ、僕なんぞが今さら推薦するまでもない、女性ジャズ・ヴォーカルの歴史的名盤なんですが…アニタ・オデイさんだと書き切れないぐらいに色んなアルバムを思い出すのに、ヘレン・メリルさんのレコードは、これ以外はあまり記憶に残っていないのは何故なんでしょう(笑)。とっても不思議。






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『Anita O'Day / COOL HEAT』

AnitaOday_CoolHeat.jpg 1959年のロサンジェルス録音。いやあ、最もいい時代の、最もいい場所なんじゃないでしょうか。59年のロスに住んでいた白人なんて、ある意味で人類史上もっとも幸福な人なんじゃなかろうか(^^)。うらやましいなあ…。

 なーんて話は兎も角、このアニタ・オデイのレコードの注目点は、オーケストラのアレンジをジミー・ジュフリーが行っているという点です。ジャケットに思いっきり写っているので、レコード会社もそれを売りにしたんでしょうね。ジミー・ジュフリーという人は、ウエスト・コースト・ジャズなんていう括りの中で紹介される事が多いクラリネット奏者。ウエストコースト・ジャズというものが爽やかというか軽いというか、そういう音楽が多く、またジュフリーさん自身の初期の演奏もそういうものが多いものだから、そういう人だと思われている事が多いんじゃないかと思います。が…ある地点以降のジミー・ジュフリーという人は、芸術音楽方面にどんどん傾斜していって、ジャズマンじゃなくって、紛う事なきアーティストになってしまいました。なんか、ジャズなのにガチで4度和声の音楽を作曲段階から作りあげちゃったりして(というのは、3度和声の音楽を4度にリハーモナイズするというジャズはあるんですが、そうじゃなくって音楽自体を4度和声音楽として作り上げるというのが革新的というか、ジャズでは他に聴いたことが無いです、ぼくは。)、素晴らしいんですよ…。で、そんな人がヴォーカル物のアレンジをしているというのが、聴き所のひとつなんじゃないかと。
 このレコードでのジミー・ジュフリーのアレンジは、そこまで芸術的な所までは進んでいません。しかし非常によく練られているのは確かで、ドッカンドッカン系のビッグバンドではなくって、知性系のビッグバンド・アレンジ。いや、これは見事だ。。僕はやっぱり、ビッグバンドはコンボじゃないかと思ってしまうぐらいに音を絞り込んだアレンジが好きだなあ。ビッグバンドのモダン・アレンジを勉強したいのであれば、こんなに素晴らしい教科書もないんじゃないかというほどの素晴らしさです。
 しかし…それによる弊害も起きている気がします。なんか、バンドもヴォーカルも歌ってないんですよね。スコアを追うので精一杯という感じ。アニタさんが歌いまわすところなんかも、なんか楽譜にそういう指示があるんじゃないかとすら思えてしまいます(^^;)。大変に素晴らしいデザインの音楽だけに、もっとバンドやヴォーカルがアレンジに慣れてきた演奏を聴きたかったです。
 そうそう、このアルバムの中に"MY HEART BELONGS TO DADDY" という曲が入ってるんですが、邦訳すると「私のハートはパパのもの」みたいな感じでしょうか。いやあ、こういう世界観って、好きだなあ。たまにこの曲の演奏を聴くことがあるので、超有名どころではないにせよ、一応スタンダードとして認識されている曲だと思うんですが、今ではあまり聴く事の出来なくなってしまったタイプの、実に素晴らしい曲です。









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『Anita O'Day / Pick Yourself Up』

AnitaOday_PickYourselfUp.jpg これは、比較的スモール・コンボのオケでのアニタ・オデイのジャズ・ヴォーカルを聴く事の出来る好アルバムだと思います。オケはふたつで、ひとつはペット・ピアノ・ギター・ヴァイブ・ベース・ドラムのスモール・コンボ。もうひとつはビッグバンドなんですが、アレンジが見事で、ブラスセクション鳴りまくりではなく、要所以外では大胆にブラスセクションをカットしたりと、実にセンスのいいアレンジ、まるでスモール・コンボを聴いているようです。「真夏の夜のジャズ」でアニタが歌っていた"SWEET GEORGIA BROWN"の元アレンジが入っているのも、このアルバムです。ヴァース・パートからいきなりフォービートになるあのアレンジ、見事ですよね。というわけで、オケもアルバム構成も、全体としてメチャクチャにセンスが良いです。

 で、このハイセンスなオケの前で、アニタ・オデイさんの歌が素晴らしい!この人、フレーズの最後が白玉だと、ノン・ヴィブラートの状態から徐々にヴィブラートをつけ、最後にはかなり深いヴィブラートにするんですが、これが実にジャズ的というか、もうこれだけでイケちゃうというほどの見事な職人技。また、声もかなり作り込んでいて、普通に張ればもっと声量を稼げるんでしょうが、敢えてブレスを多めに入れて、倍音豊かなあたたかい音色を作り出しています。これはシロウト考えなんですが、こういう声の作り方って、普通に歌うより息が持たなくなる筈なので、どれだけサウンドというものに気を遣っているのかという事だと思います。プロだわ。あとは歌いまわしなんかも、喋る様に歌うところ、バップ系のフレージングでスキャットするところ、綺麗にうたう所…なんていう感じで、1曲の歌の作り込みが本当に凄い。

 他にも聴き所がたくさんあって、2曲目とか5曲目でソロをとるバーニー・ケッセルというジャズ・ギタリストのソロが見事!などなど、もう文句なしの大傑作!ジャズヴォーカルを聴いてみたいという人には、絶対のオススメ作品です。残念なのは、アニタさんという人は結構美人な人なのに、彼女の良さの出たアルバムは、どれもこれもブスにしか見えないジャケットばかり。もっといい写真があると思うんだけどなあ。





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『Anita O'Day / The Lady Is A Tramp』

AnitaOday_LadyIsaTramp.jpg ジャズの女性ヴォーカルって、古くなればなるほど、白人系と黒人系で大きな違いがあると思います。こういう分け方って「レイシスト」とか言われちゃいそうですが、しかし歌唱法とか、音楽で大事にしている部分とか、そういう所に具体的な違いがあるので、差別じゃなく区別という意味で、歴然と成立するんじゃないかと。僕は昔、白人系の女性ジャズ・ヴォーカルにハマった時期があります。中でも一番好きだったのがアニタ・オデイというヴォーカリスト。で、このアルバムは彼女のレコードの中でも一番好きなものです。

 これはジャズの歴史から考えないと分からない事なのかも知れませんが、今のジャズ・ヴォーカルって、比較的小編成のバンドを伴奏に歌うというものが多いと思います。しかし昔のジャズ・ヴォーカルって、ビッグバンドをオケにしたものが多いです。これって、もともとビッグバンドにヴォーカリストが招待されるという形が多くて、つまりジャズ・ヴォーカルはビッグバンドありきだった…という事なんじゃないかと。しかし、僕はギル・エヴァンスやジョージ・ラッセルというモダン・ビッグバンドを知るまでは、ジャズのビッグバンドがあまり好きではありませんでした。そうなると、必然的にビッグバンドが前提の古いジャズ・ヴォーカルは聴けなくなる事になります。で、このアルバムもビッグバンドをオケにしたヴォーカルものなんですが…これが素晴らしい!アニタ・オデイのヴォーカルが常にビッグ・バンドとコールアドレスポンス状態になっていて(これ、どこまでがアレンジなんだろうか…)、ビッグバンドがドッカンドッカンくるだけのアメリカ的な価値観なオケじゃなくって、かなりカッコいい事になってます。で、主役のヴォーカルがアドリブききまくりで、すごい歌ってる。白人ジャズヴォーカル独特の、ブレス多めの声の作り方とか、ジャズヴォーカルの醍醐味のアドリブフレーズとか、徐々にかけていくヴィブラートとか、本当に素晴らしいヴォーカルです。アニタ・オデイという人は好不調の波が激しいんですが、これは絶好調の部類に入るんじゃないでしょうか。曲もバラエティに富んでいて、1曲目の"ROCK'N ROLL BLUES"はかなり爽快!他にもバラードがあったり、曲種やアレンジもかなり多彩で、とてもよく練られたアルバムだと思います。

 このアルバム、「楽しむ」という事を徹底的に追及している感じで、いい意味でショウビズとしてのジャズの良さが全部出ている感じ。アニタ・オデイの最高傑作だと、僕は思っています。



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『交響詩 銀河鉄道999』

Koukyousi999.jpg 前の記事で書いたモリコーネの"ONCE UPON A TIME IN THE WEST"のテーマ曲を聴いて思い出すのが、この映画版の「銀河鉄道999」の音楽です。これ、いい映画でしたねえ。最もキスシーンの美しい映画って、この映画なんじゃないかと思います。初めてのキスが別れなんですから(T_T)。

 さて、この映画音楽で最もよく使われるテーマメロディは、ワルツ調の愛のテーマ。これがメチャクチャにいい曲!!美しい星についた瞬間。星の海を機関車が駆け抜ける中、主人公の少年が愛を告白するシーン。最後の別れのプラットホーム。重要なシーンで、この美しいメロディが何度も使われます。ラストシーンに至っては、フルオーケストラに転調まで絡めて、これでもかというぐらいに高揚した音楽に仕上げます。もう、この曲だけでも絶対に買いですよね。この映画に感動した事がある人なら、ぜったいに泣けるはず。。
 他にも、いい曲が結構入っています。まずは映画のオープニングシーンで掛かる雄大な音楽。これも素晴らしい!はじめてこの映画を観た時、最初のナレーションからこの音楽への流れだけで、僕は引きこまれてしまいました(^^)。それから、惑星メーテルに入って、主人公の少年がメーテルを張り倒すシーンのフュージョン曲。これも感動しました。映画版の999の話をすると「音楽がイイよね」という人が、僕の周りには多いですが、これだけ名曲が目白押しだと、それも納得だと思います。

 ひとつだけ残念なのは…あまりにスタジオ録音過ぎる所です。ほら、管弦楽のあの音の美しさって、楽器だけじゃなくって、ホールの音も込みでの事じゃないですか。ところがスタジオ録音だと、たくさんいるヴァイオリンの音が全然混ざらないし、マイクが近すぎて音がヒステリックだし…。それでもちゃんとミックスすればいいモノに出来るんじゃないかと思うんですが、録音した音そのままって感じなんですよね。メインテーマなんて、主旋律よりもコンガの方が前にいたり(^^;)。こんなのアレンジとしてあり得ない、エンジニアに問題が…劇伴なので、流れ作業で丁寧にミックスしている時間がないんでしょうね。映画製作って、音楽が最後で、予算のしわ寄せを一番被ってしまうのが音楽だと言いますし。。そんなわけで、サントラ盤よりも映画のフィルムにダビングされて滲んでしまった音の方が音楽的という皮肉な結果に。これはハイレゾがどうとか20bitがどうとかリマスターがどう…というレベルのハナシではありません。いい音楽なだけに、これは残念。

 しかし、間違いなく日本の映画音楽の傑作のひとつと思います。映画公開から30年近くたって、いまだに再発され続けているというのは、それだけこの音楽を愛している人が多い事のあらわれなんでしょうしね。なんだかんだ言いながらも、僕も異常なぐらいに大好きな映画音楽です(^^)。




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『エンニオ・モリコーネ楽団 / "ウエスタン" オリジナル・サウンドトラック』

Western.jpg 前の記事に引き続きまして、モリコーネ作曲の劇音楽を。"ONCE UPON A TIME IN THE WEST"(邦題「ウエスタン」)のサウンド・トラックです。

 モリコーネの音楽が好き過ぎて、僕は映画も見ずに、このサウンド・トラックを買っていました。貧乏だったのでいきなり買う事はなかったのですが、レンタルCD屋さんの視聴器で聴いて、あまりの素晴らしさにレンタルではなくって買ってしまったという訳です。劇中の音楽はモリコーネ節全開というか、「荒野の用心棒」系のおいしい音楽をたくさん聴くことが出来ます。もうこれだけで、モリコーネのファンなら必聴という感じなんですが、僕がノックアウトされたのは、モリコーネ節のそれらの曲じゃなくって、主題曲となっている女声メゾ・ソプラノ入りの弦楽。いや、素晴らしすぎるだろう、これ…。もう、感極まって泣いてしまいそうです。

 しかし、セルジオ・レオーネの代表作のひとつと言われているこの映画を、僕はずっと見ていませんでした。初めて見たのは3~4年前。そして…あまりの素晴らしさに、続けざまに3度も4度も見てしまったという始末です(^^;)。僕が持っているサントラ盤は、ここに紹介した西部劇的なガンマンの対決ジャケットではなくって、蒸気機関車の線路を作っている映画のワンシーンを抜いたものだったんですが、その意味が初めて分かりました。要は、蒸気機関が来て、いよいよ西部開拓時代が終わり、同時に銃の時代も終わろうとする、その瞬間を描いた映画だったんです。で、幼少期に家族を殺された復讐を果たそうとする主人公、町の人々から恐怖の対象として恐れられている一党とそのボス・ガンマン、そして町の有力者として初めてこの町に訪れ、しかしその婚約者が殺されるというヒロイン。この3者は、かつての西部開拓時代の価値観の象徴やこれからの時代の価値観の象徴として描かれていて、どちらが善でどちらが悪であるという事ではなく、それぞれに何とも言えない正義や思想を感じさせます。で、僕の持っているサントラ一面に写っている蒸気機関車自体も、時代の変わる瞬間の象徴というわけです。映画では、ヒロインが街に入った瞬間にカメラがパンして一気に開けた街の全貌を見る事が出来るのですが、この町が見えた瞬間の何とも言えない感慨が、モリコーネの書いたテーマ音楽に全部集約されているというか、意味もなく涙がぶわっと出てしまいそうになります。これ、映画のクライマックスシーンではなく、冒頭のシーンなんですけどね。。で、映画の象徴しているシーンとその感慨そのものを音化したテーマ音楽のシンクロ具合たるや、映画を見た後では、この音楽だけを引っこ抜いて語るのがちょっと片手落ちに見えてしまうほど。

 う~ん、これも本当に素晴らしい映画音楽。映画も見ずに、サントラが素晴らしすぎてそれを先に買ったなんていうのは、後にも先にもこれだけです。本当に素晴らしい音楽だと思います。今後もずっと聴き続けるんだろううな、僕は。この1枚に出会えてよかったです(^^)。



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『エンニオ・モリコーネ楽団 / 夕陽のガンマン・荒野の用心棒 オリジナル・サウンドトラック』

YuuhinoGunman.jpg クリント・イーストウッド繋がりで、「ダーティー・ハリー」に並ぶ彼の代表作「荒野の用心棒」のサウンドトラックを。

 昔に書きましたが、父親が西部劇好きだったという事もあって、西部劇の映画音楽は、僕の音楽の原体験のひとつとなています。幼少時、父の運転する車の横に乗って、西部劇の音楽を何度聴いた事か…。で、何十回も聴いていると、いかに子どもと言えど、好きな音楽と嫌いな音楽が出てくるんですよね。あまり好みじゃなかったのは、爽やかな感じとか、あるいは明るい感じの曲。「荒野の7人」とか「黄色いリボン」とか、ああいう音楽ですね。一方、もの凄いカッコいいと思ったのは、暗くて緊張感があってハード目の曲。「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」「続・夕陽のガンマン」なんかはビンゴで、その曲がかかると「おお、かっこいい!!」とか思ってました。これはずっと後に気づいた事なんですが、幼少期の頃の僕が好きだった西部劇の音楽は、なんと全部モリコーネ作曲のものであったのでした。。こうなると、西部劇の音楽が好きというより、モリコーネの音楽が好きだったのかもしれませんね(^^;)。

 あまりに好き過ぎて、何が好きなのかも分からないんですが、それでもかろうじて言えるのは、ひとつは音楽の題材の取り方と、そしてそれが生み出した他にはないオリジナリティが好きなんじゃないかと思います。「夕陽のガンマン」にも「荒野の用心棒」にも言える事なんですが、アレンジされている楽器の種類が独特です。メインとなる楽器はフォーク・ギター。伴奏打楽器がなんと教会の鐘。主旋律は口笛とか、ハーモニカ。オブリのケーナ(竹の吹奏楽器)…。つまり、使われる楽器は、映画に描かれた世界に出てくるものばかり。アメリカのフォーク音楽の源流のひとつに、カウボーイの音楽というものがあります。カウボーイが使っていた楽器は、フォークギター。この世界観をサウンドトラックが間接的に表現していく。ピアノが音楽に入る時も、ぜったいにグランドピアノなんか使わないで、調律の狂ったホンキートンクなアップライトピアノが使われます。その音は、荒野の酒場に置いてあるピアノそのものという感じ。伴奏に使われる教会の音は、劇中で無残にも死んでいく町の人やガンマンが死ぬ度に鳴らされる街の教会の鐘と同じ。音楽の作り自体もマーチ調のものが多く、これも世界観に死ぬほどマッチしています。こうなってくると、映画と伴奏というのではないんですよね。テーマの口笛なんて、映画の伴奏なんて思えなくて、これは主人公のガンマンの吹いた口笛にしか思えなくなるというのが、人間の心理というものなんじゃないかと。
 教会の鐘をバック、フォークでマーチ調の刻み、主旋律は口笛、そして疾走感と悲壮感が背中合わせのような曲想…いやあ、こんな音楽、他にはちょっと聞けないんじゃないかと。格好良すぎます。

 さて、親父の隣で聴いていた音楽なので、実は映画そのものは大人になるまで見た事がありませんでした。特に、「夕陽のガンマン」を見たのは、つい数年前の事です。「荒野の用心棒」の方が有名ですが、「夕陽のガンマン」面白すぎる!映画の中で、殺された恋人の忘れ形見の首かけのオルゴールが映画の中で象徴的に使われるんですが、蓋を開けたオルゴールのメロディに、トランペットやストリングスが覆いかぶさるように重なって高揚していくという、現実音と伴奏が相互浸透していくという演出は見事でした。このサントラだけ聴いていると、なんでオルゴールにテーマを演奏させてフルオーケストラが伴奏なのかという所が訳分からないと思うんですが、そういう理由です。モリコーネの代表作のひとつ、メチャクチャカッコいい最高の音楽です!!




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『LALO SCHIFRIN presents "DIRTY HARRY" ANTHOLOGY』

DirtyHarryAnthology.jpg クリント・イーストウッドの代表作である映画「ダーティー・ハリー」シリーズの劇音楽のアンソロジーCDです。映画の1・2・4からのセレクトというのは、ラロ・シフリンという音楽監督の音楽を集めたからじゃないかと思います。じゃ、3は違う作曲家なのかというと…知りません( ̄ー ̄)。

 僕がラロ・シフリンという劇伴作曲家を知ったのは、ブルース・リーの「燃えよドラゴン」の音楽が最初です。あれは燃えました(`・ω・´)!!しかしそれ以降、ラロ・シフリンという名前を目にする事は暫くなく、次にであったのが「ダーティー・ハリー」だった、という訳です。ダーティー・ハリーは大ヒットしてシリーズ化された犯罪映画ですが、とにかく1作目が凄かった!神父予告殺人、更に罪のない女を井戸に沈め、幼稚園バスもジャックする狂人・スコーピオンのイっちゃってる感じは、とても演技とは思えないほどのヤバさでした。で、この常軌を逸した連続殺人犯を追うのが、汚い手を使おうが法を犯そうが犯人を追いつめるハリー刑事。イーストウッドかマックイーンの為に用意されたような役です。。で、1作目の映画のオープニングが秀逸!不穏なストリングスのハイトーンに、「燃えよドラゴン」とまったく同じドラムのフィルが入り(いや、マジで同じです)、その直後にエレピのツーファイブ!メッチャ格好いい!!で、その背景ではやっぱり不穏なストリングス、そこにドラムのファンクなリズム、そしてエレキベースのスラッピングのソロ…こんな音楽を聴かされて燃えないわけがありません!!要するに、ストリングス・セクションは顔の見えない不敵な犯人とか犯罪を表現したパートで、それを切り裂くように食い込んでくるファンク・バンドのパートは、それをボッコボコにするダーティーなハリー刑事を表現したパートなんでしょうね。
 このCDに入っている2曲目も秀逸。これ、狂人スコーピオンの不敵な犯罪と、それを追い込むハリー刑事みたいなシーンで使われていた異常に印象深い音楽ですが、構図は同じ。もの凄く不安をあおるのは、今度は調性だったり、歪ませ過ぎだろうと言いたくなるほどにファズのかかったエレキギターあたり。ついでに、ベースまでファズまみれです。これはメッチャいいわ。。逆にハリー側の追い込む感じは、突然食い込んでくるリズムと、一度始まるとどんどんアッチェルしていくテンポ。いやあ、これもメチャクチャかっこいい!!

 70年代のハリウッド映画のサントラの一部って、クラシック・オケと当時流行のロックやファンクを融合した音楽を使うなんていうものが結構多いですよね。それ以前やそれ以降となると、そういうのって目立たないし、あってもあんまり面白くない。なんか「仕事です」ってものばかりで、全然冒険がないんですよね。冒険がないという事は、刺激的な部分が何もないという事でもあるわけで…。しかし、70年代は違います。この手の流れで想像しちゃうのは、ジャズのギル・エヴァンス・オーケストラとかです。ラロ・シフリンって、この辺りの流れで捉えても、まったく違和感がありません。僕が知っているラロ・シフリンの劇音楽って、「燃えよドラゴン」と「ダーティー・ハリー」だけですが、そのどちらもメチャメチャカッコいい!!で、他の活動として知っているのは、タンゴのアストル・ピアソラのストリングス・アレンジを担当したりとか、そういう非常に面白い創造的な仕事もしたりしています。ジャケットはダサすぎますが(^^)、おすすめの1枚です!
 
 


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プロフィール

Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです。音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度ですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

最近気になってるCDとか本とか映画とか
スゴイのが出る!King Crimsonの1970-1972年の間のスタジオとライブ音源!21CD+4BD+2DVD!リハーサルテイクとか、メッチャ聴いてみたい!2万円か、また貯金しないと。。 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!!
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