
1959年のロサンジェルス録音。いやあ、最もいい時代の、最もいい場所なんじゃないでしょうか。59年のロスに住んでいた白人なんて、ある意味で人類史上もっとも幸福な人なんじゃなかろうか(^^)。うらやましいなあ…。
なーんて話は兎も角、この
アニタ・オデイのレコードの注目点は、オーケストラのアレンジをジミー・ジュフリーが行っているという点です。ジャケットに思いっきり写っているので、レコード会社もそれを売りにしたんでしょうね。ジミー・ジュフリーという人は、ウエスト・コースト・ジャズなんていう括りの中で紹介される事が多いクラリネット奏者。ウエストコースト・ジャズというものが爽やかというか軽いというか、そういう音楽が多く、またジュフリーさん自身の初期の演奏もそういうものが多いものだから、そういう人だと思われている事が多いんじゃないかと思います。が…ある地点以降のジミー・ジュフリーという人は、芸術音楽方面にどんどん傾斜していって、ジャズマンじゃなくって、紛う事なきアーティストになってしまいました。なんか、ジャズなのにガチで4度和声の音楽を作曲段階から作りあげちゃったりして(というのは、3度和声の音楽を4度にリハーモナイズするというジャズはあるんですが、そうじゃなくって音楽自体を4度和声音楽として作り上げるというのが革新的というか、ジャズでは他に聴いたことが無いです、ぼくは。)、素晴らしいんですよ…。で、そんな人がヴォーカル物のアレンジをしているというのが、聴き所のひとつなんじゃないかと。
このレコードでのジミー・ジュフリーのアレンジは、そこまで芸術的な所までは進んでいません。しかし非常によく練られているのは確かで、ドッカンドッカン系のビッグバンドではなくって、知性系のビッグバンド・アレンジ。いや、これは見事だ。。僕はやっぱり、ビッグバンドはコンボじゃないかと思ってしまうぐらいに音を絞り込んだアレンジが好きだなあ。ビッグバンドのモダン・アレンジを勉強したいのであれば、こんなに素晴らしい教科書もないんじゃないかというほどの素晴らしさです。
しかし…それによる弊害も起きている気がします。なんか、バンドもヴォーカルも歌ってないんですよね。スコアを追うので精一杯という感じ。アニタさんが歌いまわすところなんかも、なんか楽譜にそういう指示があるんじゃないかとすら思えてしまいます(^^;)。大変に素晴らしいデザインの音楽だけに、もっとバンドやヴォーカルがアレンジに慣れてきた演奏を聴きたかったです。
そうそう、このアルバムの中に"MY HEART BELONGS TO DADDY" という曲が入ってるんですが、邦訳すると「私のハートはパパのもの」みたいな感じでしょうか。いやあ、こういう世界観って、好きだなあ。たまにこの曲の演奏を聴くことがあるので、超有名どころではないにせよ、一応スタンダードとして認識されている曲だと思うんですが、今ではあまり聴く事の出来なくなってしまったタイプの、実に素晴らしい曲です。
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