
前の記事で書いた、バルトークの弦チェレの楽譜です。弦チェレををはじめ、6曲の弦楽四重奏やミクロコスモスなど、バルトークの作品って、入れ子細工になっている緻密極まりないアンサンブルの妙が凄すぎます。弦チェレの場合、その凄さが極まっているのは、輪唱のように各パートがずれながら重なっていく第1楽章だと思うのですが、これがどのコンサートを聴いても、どのCDを聴いても、私の耳では細部まで聴き取ることが出来ない(T_T)。。いや、耳では聴こえているはずなので、追いついていないのは脳なんでしょうね。。で、実際にはどう重なっているのか、これを知るには楽譜を見るしかないと思うのですが…うああ、これは凄まじい、1小節ごとに7/8拍子、9/8拍子、11/8拍子みたいな感じで変わっていきます。。なるほど、もう小節なんて数えていたら追えなくなっちゃうので、8分音符を感じながら演奏しろ、という事ですね。また、なんでそんなに拍子が変わるかというと、輪唱のように各パートがメインテーマをずらしながら演奏していくという構想なので、自ずとずれるようになっていしまうというわけか。こうなると、感覚的な作曲なんていうのでは絶対に不可能、公倍数の計算とか、そこで重なる音が不協和にならないようにという対位法的な計算とか、かなり幾何学的な計算が必要になってきちゃうんじゃなかろうか。本物の作曲技術だわ。
そして、CDなんかだと「主旋律と対旋律と、あとは背景として鳴っている和音」と捉えていた音が、実はすべての声部が旋律として奏でられていたことに鳥肌が立ちました。で、ですね、このフルスコアを目で追いながら、ひとつ前の記事で書いたCDを聴くとですね…
聴くだけではまったく聴き取れなかった各声部の旋律が聞こえてきちゃうという手品のような現象が起きてしまいます!いやあ、これはスゴイ。。チェロとコントラバスがユニゾンになっていたりする部分があるので、それは1コースと数えるとしても…次第に声部数が増していくこの曲、最大で5声にまで膨れ上がります。これ、5和音じゃないんですよ、5旋律の同時演奏。全部がリズムの違う旋律。いやあ、この時に不協和を避けるための処理なんて、いったいどうやってしたんだろうか。神業だわ。。
というわけで、バルトークの弦チェレが好きという方は、色々なCDにあれこれ手を出す前に、この楽譜を見るというのもいいんじゃないかと思います。というか、このスコアに目を通さずに「弦チェレを理解した」なんて事はあり得ないんじゃないかと。オケ違いの録音を2~3枚聴くよりも、この音楽に深~~く入り込むことが出来ると思います。楽譜が読めない人でも、目で追うだけでもその凄さが分かると思います。マジで鳥肌モノですよ。。
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