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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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『The Beatles / Let It Be』

beatles_LetItBe.jpg ちょくちょくビートルズの記事を書いている気がしますが、ビートルズにそこまで思い入れがあるわけではありません。むろん嫌いではないんですが、ポップスの場合はポピュラーよりロックの方が好きだったもので(^^;)。で、なんでこの記事を書くことになったかというと、ちょっとしたアルバイトで久々にアレンジの仕事をすることになり、そのお題がこのアルバムの表題曲"Let It Be"だったから。で、LPをゴソゴソと引っ張り出して、久々に聴いてみたわけです。

 とにかくタイトル曲の"Let It Be"が素晴らしすぎる。コードは4つぐらいしか出てきません。基本的には、ずっとその繰り返し。なんですが…簡単にいうと、その曲のいちばん重要なコードに戻ってくる、その戻ってくる方法が、今のポピュラーミュージックの王道とちょっと違って、これが絶妙にいい。ムズカシイ言葉でいうと、いまの音楽って、ドミナントと呼ばれるコードからトニックと言われる主和音に戻ってくるんですが(キーがCの場合、G7→Cみたいな感じ)、レット・イット・ビーは、サブドミナントといわれるところからダイレクトに戻ってくる(キーがCならF→Cみたいな)。この感じが、なんというか…古風な感じがするんです。すごく古いクラシックとか(ベートーヴェンとかよりももっと前)、あとはそれこそイギリスのトラディショナル音楽とか。そういう古びた感じが、逆に今ではあまり聴かれない独特のムードを醸し出していて、僕にはすごく心地よく感じるのです。

 あと、詩も素晴らしすぎる。

Speaking words of wisdom, Let it be
囁かれた知恵ある言葉は「なるがままに」

 何の日本仏教だったか、「人のような小さな存在に何が出来るわけでもない。自分で何かできるとおごるのではなく、他力に自分の身を委ねてしまえ」という教義がありましたよね。これって、本当に知恵ある言葉だと僕は思ってしまいます。レット・イット・ビーは、あっという間に興隆して、そしておそらくもうすぐ消え失せてしまうだろう英米のポピュラー音楽の歴史に永遠に残る名曲だと思います。

 と、ここまで褒めておいてなんですが…このアルバム、他の曲が死ぬほどつまらないです。少なくとも僕には相当につまらなかった。この感想は、中学生の頃、わずかな小遣いをはたいてこのアルバムを買った時にも、同じ事を思いました。そう思った事を、今思い出した(^^;)。レット・イット・ビーが素晴らしすぎるので救われていますが、しかしビートルズのアルバムの中では評価の低い方のアルバムという事になっちゃうんじゃないかなあ。これは、解散間近のグループゆえの散漫さだったんでしょうか。



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『Stan Getz / The Roost Quartets』

StanGetz_RoostQuartets.jpg スタン・ゲッツのジャズ・ボッサのCDの紹介が続きましたが、やっぱりゲッツさんはジャズの人。ボッサ以前のゲッツのジャズ・プレイの中で、僕が特によく聴くのが、1950-51年に、ルーストというレーベルに録音された録音集であるこのCD。ジャズなんですが、ゲッツのジャズ・ボッサと同じように、すごく落ち着いた、大人の雰囲気の演奏が多いです。演奏も、曲をすごくよく生かした、実に端正でセンスあるプレイが続きます。このあたりは、ソロ・アドリブに入ったら曲なんてどうでもよい、みたいなジャズとは一線を画している。いや~、こんなに落ち着く音楽を聴いて、アイスコーヒーなんか飲んでしまったら、リラックスしまくりでたまらなくなります(^^)。
 また、録音はモノラルでいかにも古い感じなんですが、それがいい!!「古いジャズ」のあの落ち着いた感じ、もうそれがそのまま出ている感じです。こういう良さって、今の時代に作ろうと思ってももう無理なんでしょうね。
 そして、このリラックスした気持ち良さの裏では…いや~、ソロ・アドリブの組み立てがメチャクチャにうまい!たまにアップテンポのジャズも入ってるんですが、この歌い回しも見事。さすがはウエスト・コーストで一世を風靡したスター・プレイヤー、人気やムードだけでなく、実力があります。
 録音は2つのセッションから選ばれていて、共演者はふたつのセッションで全然違うんですが、ピアノがアル・ヘイグだったりホレス・シルバーだったりという実力者なので、さすがのバッキング。ゲッツの世界観を壊すすことなく、端正なプレイを見せます。
 ゲッツさんのCDの中ではそんなに有名なわけではないCDですが、ウエスト・コースト・ジャズをもろにやっていた全盛期スタン・ゲッツの作品の中では、僕はこれが一番好きです。収録曲数も21曲とたっぷりで、「落ち着いた週末を過ごしたいな…」なんて時にはもってこいの素晴らしいCDです。いや~、気持ちいい。。




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『Stan Getz, Guao Gilberto / Getz-Gilberto』

GetzGilberto.jpg 世界的に大ヒットしたジャズ・ボッサのアルバムで、ジャズのサック奏者のスタン・ゲッツと、ブラジルのボッサのジョアン・ジルベルトの共演盤です。他に、ピアノにはジョビン、ヴォーカルにアスラッド・ジルベルトなども加わっており、ミュージシャンはかなり豪華。ボサノヴァで一番有名だと思われる曲「イパネマの娘」で、一番よく知られているバージョンは、このレコードに収録されているものじゃないかと思います。

 まず、音楽に関しては、もうほとんどブラジル勢が作った音楽と思ってよいかと思います。ジョビンの名曲のオンパレードだし、ミュージシャンはゲッツさん以外は全員ブラジル勢だし。しかし、この音楽を録音したのがアメリカのヴァーブというレーベルであって、たぶんそんな経緯もあってゲッツをあくまで主役のひとりにしようと思うものだから、これがレコードの完成に大きく影響します。ゲッツさんのサックスの音がでけええええ!!ピアノのオブリガートなんてほとんど聞こえないぐらいなのに、いざサックスのソロになると、他の楽器の3倍ぐらいの音量でドッカ~~ンとくる(^^;)。まあ、普通に考えたらこんなの良いわけがないんですが、しかしボッサの上でジャズるとどうなるか…というディレクションを聴かせるのであれば、これはこれでアリなのかも。こうしないと、サックスがバンドに馴染んでしまって、ジャズxボッサに聴こえてこないと思うんですよね。まあやり方がいかにも大味なアメリカ人的な発想とは思いますが、これはこれで良かったんじゃないかという気がしてしまいます。「ボッサを…」と思うのであれば、ブラジル盤で他にいくらでもありますからね。単純に、ゲッツさんの歌い回すすごく心地よいサックスの旋律が、ボッサのムードにすごくあっている気がしてしまう。。もう、売れに売れたアルバムだと思うので、いまさら僕なんぞが新しいレビューなんて書く必要もないかと思いますが、もしこれを聴いていない音楽好きの方がおられるようでしたら、今すぐ聞くべし!素晴らしいジャズ・ボッサを聴く事が出来ます。う~ん、今年の夏の最後はボサノヴァ三昧だったなあ、素晴らしい夏の終わりだ。。


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高円寺阿波踊り

K0120204.jpg 昨日、仕事で東京に行ってきました。せっかくなのでちょうど高円寺という駅でやっていた阿波踊りを見てきました。実は、「東京なのに阿波踊り?」とも思っていたのですが、その規模にビックリ!ものすごい活気、参加団体もすごく多く、徳島のチームばかりか東京のチームでもとんでもないうまさ!観衆もものすごい人数で、町おこしで始めたとかいうレベルではありません。あまりの迫力に魅せられてしまい、ちょっと見て帰るつもりが、最後まで見てしまった。。

 阿波踊りって、踊りがメインかと思っていたらとんでもない、踊りも音楽もスゴイです!阿波踊りって、「連」というチーム単位で道を踊り歩くみたいなんですが、この連というもの編成は、先頭に連の名前の入ったちょうちんを高く掲げて踊る人、続いて女踊り(あの編笠をかぶっている人たちですね)、男踊り(へっぴり腰でうちわをうまく捌くあれです。多分、そうやって踊っている場合は、それが女性であっても「男踊り」という事になるんじゃないかと思いました)、そしてお囃子、という感じ。男と女の順番が逆の連もあったり、中には子供が踊る連もあって、その場合は子供はだいたい先頭。女踊りは、みんなピタッと合っている事が多くて、よくみると下駄を爪先立ちにして踊っているし、手はずっとあげたまま。指の使い方なんかがシナがあってすごくセクシーで優雅なんですが、実はかなりしんどいんじゃないかと思いました。男踊りは、中にはうちわを持っている人がいるんですが、このうちわさばきがメチャクチャにうまい人がいる!これはすごい…と、魅せられてしまいました。打楽器群は、「カンカカンカカンカカンカ…」と鳴らしている金物が多分リーダー的な存在で、それに合わせて大太鼓や締め太鼓がドスドス来る感じ。で、だんだんアッチェルして客や踊りを煽る連がありまして、これがすごい!で、マックスまで速くなったところでいきなり元のテンポに戻ったりして、観客はヤンヤの喝采!いやあ、まるでバリのガムランを見ているような凄さでした。そうそう、音楽は囃子なので、笛が入る事もあります。これが打楽器隊に比べるとすごく音が小さいんだけど、音域が違うからか、よく通ってちゃんと聞こえる。あの笛の音だけで「祭りだっ!!」って気分になって、すごくいいですね。。あと、三味線がいるチームもあったんですが、三味線はどの連も何人いても全然聴こえない。。もしかすると、客に聴かせるんじゃなくって、チーム内で何かの役割を果たしてるのかなあ。あと、これも連によって違ったんですが、掛け声をかけるチームがありますが、これも素晴らしい!男が「ヤットサー」というと、すごい活気があってカッコいい!女が高い声で揃って「ヤットサー」というと、すごくきれいで魅力的。いやあ、僕は掛け声をかける連の方が好きだなあ。

 リズム・フィギュアは基本的にはどの連も同じなんですが、中には独特なリズムをとるところもありました。完全にサンバと同じリズムを大太鼓で叩くチームもありました。途中でいきなりリズムチェンジをするチームもあって、これもすごかった!あと、徳島の「武秀連」というチーム(あれ?「かせい連」だったかな?)は打楽器隊がメインじゃないかというぐらいのチームで、ものすごいテンポが速く、しかもリズム形が全然違う。これもものすごかった!

 他には、群舞だけあって、踊りのフォーメーションも多彩!女踊りが横3列で踊っている間を、男踊りが踊り抜けていくチームがあったり、ゆっくりした進行だったのに、一気にダッシュしていくチーム、ちょうちんを持った男踊りがある点を中心に8方向に向けて踊り狂い、お囃子の煽りがマックスに達したところでいきなりブレイクして、脇から最後尾に下がるチーム…いやあ、すごかった!!
 
 メモしていたわけではないので、記憶頼りになってしまうのですが、僕が「これはすげえっ!」と思った連をいくつか書いておこうと思います。あ、そうそう、途中で一度晩飯を食べるのに抜けてしまったので、全ての連を見ることが出来ていないのが残念。(打楽器が想像以上のパワーで腹にズシンズシン来るので、1時間ぐらいしたら気持ち悪くなってしまって、いったん抜けたのです。そのぐらいのパワーだったのです。)
 
 第3位は「殿様連」。男踊りがいきなり散開したり、すごい迫力で観客からもやんやの大歓声!しかし…パンフを見たら、そんなチーム存在しない。。どうも、僕が名前を間違えて記憶しちゃったみたい。。う~ん、残念。
 第2位は「武秀連」。ちょっと記憶違いだったら申し訳ないんですが、子供ですらうちわ捌きがうますぎる。お囃子の打楽器チームが凄すぎる。何もかもが凄すぎる!と思ったら、徳島のチームなんですね、本場のチームはやっぱり違うわ。。
 そしてナンバーワンは「誠連!!群舞としての独創性も見事、個人個人の技術もスゴイ、囃子もスゴイ、見ていてこんなにハッピーになるとは思いませんでした!で…なんと東京のチーム。いや~、たいしたものです。
 他にもいいグループがいっぱいいたのですが、1日経ったら名前を忘れてしまった。あと、夜の8時でオシマイだったのですが、8時でいきなりビタッと終わって、急にシ~ンとなった数秒後…観衆から一斉に大拍手、大歓声!!これにはちょっと感動してしまった。。
 こんなに興奮したのは久しぶり、阿波踊りって、ものすごい活気があるのに、血を見るようなものではない所が好きです。東京に行く事なんてあまりないので、もう2度と見れないかも知れませんが、機会があったらまた観たいなあ。こういう音楽の迫力って、CDじゃ全然わからないと思うし、やっぱり生だよね、って思っちゃいました!そうそう、たしか今日(8/24)までやっているはずなので、近くの方はぜひ行ってみてはいかがでしょうか?たぶん、夕方の5時から夜8時まで。すごかったですよ!!

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『Stan Getz with Laurindo Almeida』

GetzAlmeida 前の記事でとりあげたローリンド・アルメイダが、ジャズのサックス奏者スタン・ゲッツと共演した作品。録音は63年で、有名なレコード『ゲッツ/ジルベルト』の数日後にレコーディングされています。スタン・ゲッツがブラジル音楽を演奏して、大ヒットしたシリーズの中の1枚というわけですね。以降、アメリカのレコード会社がアルメイダの録音をたくさん行った事を考えると、これはローリンド・アルメイダがアメリカで成功を収める事になる切っ掛けとなった1枚なのかもしれません。そして、その内容は…

 取り上げられている曲は、ジョビンの曲とアルメイダの曲だけ。そして、これがボッサ調で気持ちいい!素晴らしい!サックスのスタン・ゲッツさんも、さすがにウエストコーストのミュージシャンという事で、あんまり鋭い音は出さず、フワーッとした音で気持ち良く演奏します。たぶん、メロコード譜を渡されただけで演奏していると思うんですが、それだけなのにすごくきれいなフレーズを作って、またメロディが凄く歌う感じ。もう、音の表情が美しすぎます。

 この頃のアメリカのヒットチャートを見ると、歌なしのジャズが入っていたり、ラテンが入っていたり、ロックンロールが入っていたり、かなりバラエティに富んでいて、すごく楽しいです。なんというか、大人が音楽を聴いていたという感じなんですよね。いつの間にか、アメリカのチャートは子供向け大量生産品の商売ロック/ポップスばかりになってしまいましたが、こういう大人文化の音楽が、キチンと高い評価を受けていた頃もあったんですね。しかも、メディアのインチキ宣伝じゃなくって、一般の人が利いていたというのが素晴らしい。このレコードは、そういう古き良きアメリカの象徴のような気がして、大好きです。とはいえ、ブラジル音楽ですが(^^;)。とにかく、気持ちいい!!残暑はこのCDで乗り切るぞ!!



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『Laurindo Almeida / Guitar From Ipanema』

LaurindoAlmeida_Ipanema.jpg ブラジル出身のギタリスト/作曲家の、ローリンド・アルメイダという人のボサノヴァ調のアルバムです。1964年発表、メチャクチャ気持ちいい!!

 僕は、このアルメイダという人について、詳しい事を知りません。ただレコードは何枚か持っていて、それらはジャズのサックス奏者スタン・ゲッツとの共演だったりという感じで、ボサノヴァなんだけど、ジャズ方面から紹介される機会の多かった人、という印象があります。この「60年代のアメリカでヒットした、ジャズ文脈のイージーリスニング的ボサノヴァ」という音楽って、ブラジル産のサンバ系統から繋がるボサノヴァとは聴いた印象が違います。ミュージシャンの主張が弱めにしてあるというか、かなりイージーリスニング的。スタン・ゲッツとの共演盤もそうで、まるでハワイアンの一種みたいな音楽として捉えられていた脈もあるような気がします。
 本作もやはりそういうイージーリスニング的なムードで、音楽もセッションっぽいというか、ジャズ的です。これをどう捉えるかという事になるかと思うんですが…いやあ、こういう音楽もあっていいというか、僕はすごく好きです。なんか、ハワイとかバリとかの暑いところで、ビーチ脇のカフェの日陰に入って、冷たいものを飲んでいる時なんかにこんな音楽が聞こえてきてしまったら極楽なんじゃないだろうか、そんなことを考えてしまいます(^^)。

 若い頃の僕は、ボッサと言えばバーデン・パウエルのギター独奏の演奏とか、ああいうミュージシャンの主張が強い音楽の方が好きでした。それは今でもそうなんだけど、大人になってくると色んな価値観を受け入れられるようになるというか、こういう「あなたのいい時間を過ごしてください、音楽でそれをサポートしますよ」的な音楽もとっても素晴らしいと思ってしまうのです。そうそう、タイトルからはもしかしてジョビン音楽集かとも思えるんですが、ジョビンの曲は2曲のみ、あとはジルベルトとか、アルメイダさんのオリジナルとか、色々と入っています。残暑を乗り切るのにおススメの一枚です!



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『Toninho Horta / from Ton to Tom』

ToninhoHorta_fromTomtoTom.jpg 暑いっす。若いときはこれでも夏大好き人間だったんですが、オッサンになってしまうと夏は灼熱地獄以外の何物でもありません。こんな時に涼しい気分になるには、やっぱりボサノヴァだぜ!と、大型レコード店の特集コーナーのような思想をしてしまい、久々に引っ張り出したCDは…

 邦題は『ジョビンへの手紙』、ボサノヴァのトニーニョ・オルタによる、ジョビンへのトリビュート・アルバムです。ボサノヴァの名盤って、時代が古いうえに、ブラジル録音だったりすると、音楽は素晴らしいんだけど音が悪すぎる…というものが結構あります。まあ、それでも2~3曲も聴いていれば、音の悪さはすっかり気にならなくなるんですが、しかしこのCDみたいにメチャクチャにきれいな音の録音を聴いてしまうと、やっぱりこれはこれで素晴らしいよなあ…と思うのです。で、このCD、大半がジョビンの大有名曲なんですが、アレンジが素晴らしい!ウィズ・ストリングスの曲があったり、ものすごく気持ちいいハーモニカのフューチャーがあったり、これまたボサノヴァでよく使われる手法の子供たちのきれいなコーラスがあったり…とにかく、ゆったりとして、気持ちいい!!冒頭の"メディテーション"のたゆたうストリンスと、ジャズギターのようなハイトーンを完全にしぼりきったあったかいギターのサウンドなんて、これを聴いて気持ち良いと思わない人がいるでしょうか。もう、反則レベルのリラックス音楽です。歴史的価値という意味で、名盤ガイドなどにはまったく出てこない1枚だと思いますが、ジョビン音楽のスタジオ録音作品では、僕はこのCDが一番好きです!
 いやあ、聴いているだけで涼しくなってきたぞ。麦わら帽子をかぶって、ハンモックに揺られている気分…。残暑厳しいですが、すごく落ち着いてリラックスする気分になれる、超おススメ盤です!



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『CARPENTERS / Twenty Two Hits of the Carpenters』

Carpenters_22.jpg アバを聴くと、いつも続けて聴きたくなるのが、僕の場合はなぜかカーペンターズです(^^)。気持ち良いポピュラーという繋がりなんでしょうね。しかし、アバと違うのはセクシャルなものをまったく感じないというか、PTA推奨みたいな世界観の中にある印象があります。若い頃の僕は、こういう平和な音楽があまり好きではなかった。好きになった切っ掛けは、何十年も前にカーペンターズのドキュメンタリー番組を見てから。もう、ポピュラーなんてまったく聞かなくなった時期でした。

 カーペンターズというのは、実の兄と妹で結成されたポピュラー音楽のユニット。で、平和で楽しげな曲、あるいは美しい曲ばかり。更にタイミングの悪い事に、当時の僕はかなりハードなジャズにハマっていて、そういう所からはカーペンターズは余計に遠い。これが、なにげなく見ていたテレビ番組でカーペンターズの特集で、ヴォーカルのカレンお姉さんが若い頃に叩いたというドラムプレイを聴いて一変。…う、うまい、思いっきりモダンジャズじゃないか!!なんでこれほどのプレイヤーが牧歌的なポピュラーなんてやってんだ?というわけで、いつの間にかドキュメント番組に目が釘付け。
 カーペンター家では、お兄ちゃんが小さいころからクラシックピアノのコンクールで受賞したりして、興味はすっかりお兄ちゃんに。で、この家族中に漂う空気の中、妹のカレンさんはあまり目立つわけにはいかなかったんだそうな。しかし、実はこの妹さんが兄以上の才能を持っていたようで、ドラムを叩いても何をやらせてもスゴイ。しかし空気の読めるカレンさんは「兄より目立つわけにはいかん」と一歩引いてしまい、常に自分に求められる役割を演じ続ける事に。これが、「音楽全体をコーディネートする作曲は兄、全ての表現が兄の作った枠組みの中で行われる妹の歌」というカーペンターズの構図に収まった、みたいな感じの話だった気がします(間違ってたらごめんなさい!)。で、カーペンターズが売れると、カレンさんは拒食症に陥り、それが原因で死んでしまうという悲劇(・_・、)。で、この拒食症にもこうした家族関係が影響していたというハナシだった気が。で、こういう事を知った後に、あまりに有名なカーペンターズの歌の数々を聴くとですね…もう、聴こえ方が全然違いました。

"Why do birds suddenly apper everytime you are near?"
なぜ鳥たちはいつも急にあらわれるの?あなたの傍にいたいから?

 ここで歌われている"birds"って、いったい誰の事なんでしょうね。また、なぜこういう事を歌うのか。これ、字面通りに受け取ったら、やっぱりおめでたいというか、つまらない歌なんだと思うんですよ。ただ、家族関係や現実はそうじゃないのに、なぜカレンさんはこういう詩を書き、歌い続けたのか。これは、現実がどうあるかというリアリズムではなくって、現実はそうではないけれども、こうあってくれれば…といったような一種のユートピア幻想なんじゃないかと思ってしまいました。で、自分はもう死と直面しているのに、死の直前まで、同じようなユートピア論が歌い続けられる。

 カーペンターズ自体は、レコード会社からヒットを嘱望されたユニットです。そういう意味でいうと、ここにある音楽も言葉も、「望まれて」書かれた商売品でしかないので、本当の作者の心情が反映されていたものかどうかは確認のしようがありません。しかし、カレンさんの人生とそこで貫かれてきた行動を見ていると、僕には、少なくとも半分ぐらいはカレンさんが思い描いた理想の世界が表現されていたんじゃないかと思えてしまいます。そして、お兄さんのアーノルドさんの作曲も素晴らしい。戦争が続き、冷戦に突入し、市民には生きにくい時代にロックが生まれました。ロック興隆期は、今の商売ロックとはかなり違う感触のプロテスト的な側面が出ていた市民音楽的な様相を呈していて、世界の欺瞞を断罪するかのようなその力強さは大変に素晴らしかったと思うし、今でも大好き。しかしそういう中でユートピア世界を提示するというのも、それは美しい事だし、言葉とは裏腹に非常に強い行為だったんじゃないか。ポップ産業という安い外套を纏ってはいますが、それでも美しいカーペンターズの音楽を、僕は今では大好きになりました。で、これも妻が結婚とともに持ってきたアルバムで、ベスト盤。う~ん、素晴らしいとしか言いようがないです。洋楽ポップスを聴かない人にこそ、ぜひおすすめしたいです。



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『ABBA / GOLD -greatest hits-』

ABBA_GOLD.jpg とかなんとか言いながら、アバのアルバムで一番よく聴くのはベストアルバム(^^)。やっぱり、ポップスのチャート音楽なので、アルバム単位で作品を作っているという感じはあんまりしなくて、あくまで曲単位で音楽を作ってるんだと思うんですよね~。そうなると、名曲だけをピックアップして並べてあるアルバムというのはとっても便利(^^)。

 ABBAのベストアルバムってたくさん出てると思うんですが、どれが良いとかいうこだわりは、僕には特にありません。これは、たまたまうちのカミさんが持っていたというだけで、なんだか安売りCDみたいにタイトルもジャケットもダサいんですが(^^;)、しかし中はいい曲だらけ、素晴らしいです。"Dancing Queen"は言うに及ばず、"Take a chance"、"Chiquitita"…名曲揃い、コーラスも素晴らしすぎる。"Gimme! Gimme! Gimme!"のメロディの作り方なんて、まさにプロフェッショナル、素晴らしすぎます。しかし、子供の頃は意味も考えずに聴いていたのですが…"Gimme! Gimme! Gimme a man after midnight"って、直訳すると「深夜を過ぎたら私に男を頂戴!」ってことですよねwwいやあ、これはヒットしない方がおかしいわ。。一方の"Thank You For The Music "なんて、もう美しすぎるというか、聴いていて涙が出てきてしまいそうだよ、お母さん(T.T)。いやあ、やっぱり良いグループですね、聴いていて深いところまで行ける音楽が僕的には一番好きなんですが、こういうライトに聴けて気分が良くなる音楽というのも、やっぱり素晴らしいと思っちゃいます。そうそう、これには続編の「モア・ゴールド」というベストアルバムもあるんですが、これは第1集が売れたから付け足しで作ったみたいな感じで、名曲の割合は第1集が圧倒的に多いです。でも「モア」の方には"Summer Night City"などなどの素晴らしいナンバーも入っていたりして、捨て難かったりもします(^^;)。そうそう、"Summer Night City"もリフパートのあのカッコいい部分で、ひたすら"Walking in the moonlight, love-making in a park"って歌っているように聴こえるんですが、これも直訳すれば「月明かりの中を散歩して、公園でセックスする」ですよね。「アハ~ン」とかいうコーラスもあったりして、アバめ、結構エロいな(^^;)。





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『ABBA / Arrival』

ABBA Arrival 北欧のポピュラー・コーラス・グループ「アバ」のアルバムです。僕が子供の頃、アバの大ヒット曲「ダンシング・クイーン」は、スーパーでもバーガーショップでも、あらゆる所で流れてました。それぐらいの大ヒットでした。うちにも兄が買ってきたドーナツ盤がありました。で、小学生の僕ですらいい曲だと思って聴きまくり。詞をデタラメ英語で丸覚えしてました(^^)。今聴くと、「ナイトアーロング」と覚えていた歌詞が"lights are low"だったりして変な発見まである始末です。大体、夜だったら複数形のハズがないのにね(^^;ゞエヘヘ。
 で、このアルバムは、その「ダンシング・クイーン」が収録されています。他にも"TIGER"とか"Money, Money, Money"とか"Knouwing me, knowing you"とかの有名曲だらけ。で、徹底してポップ!幼少期から大学生ぐらいまでの僕というのは、徹底してハード路線だったもので(猪木は好きだけど馬場はダメとか、セブンは好きだけどタロウはクソとか、巨人の星はアリだけどタッチは死ねとか^^)、基本的にポピュラーは好みではかった。しかし…ABBAは素晴らしすぎる!!この「ハードは好きだけどポップスはダメ」という嗜好って、それを判断する価値観にあると思うんですよね。で、ABBAはこの価値観を壊してくれたんじゃないかと感じるのです。

 僕が言っている音楽上での「ハード」というあり方は、ある意味で簡単です。極端に走ればいいからです。料理に例えれば、極端な量のタバスコをぶっかけるとか、そういうやり方でも実現しようと思えばできる。でも、ポピュラー音楽の心地よさって、そういう事では実現できない。料理でいえば、砂糖をほんの少し減らすとか、わずかに別の食材を足して双方の風味を引き立たせるとか、そういうとっても繊細な事が要求されちゃったりすると思うのです。で、ABBAの音楽はまさにこれ。良く出来ているのです。さらに、曲だけでなく、他にもいい要素がいっぱいある。
 例えば、2組の夫婦によるユニットという事。ハード路線の価値観としては、「やるなら男ひとりで勝負しろ」とか、「かみさんと常に一緒に行動とか軟弱だな」なんて感じに繋げて考えちゃう感じでした。小学生でいうところの「男のくせに女と遊ぶなよ」みたいな感じの延長です。これって自分の中ではある意味で正当化されていた感情で、そういうクラスの男子の風潮があるのに女子とデレデレ遊んでる奴って、そういう考え方に対する気付きがないというか、鈍いというか、そう感じるところがあるわけです。ところが、このABBAというグループは、ステージ上で頬を寄せ合ったりキスしちゃったり、そういう事を平然とやっちゃう。つまり、無自覚なんじゃなくって、自信を持ってそういう価値観を選択しているように見えたのです。これは逆に、僕の方がまったく違った価値観を突き付けられた感じでした。コーラスもものすごくきれいだし、しかしメインの女性ツインヴォーカルは、ハーモニー優先ではなくって、えらくエッジの効いた発声で、声を混ぜるという方向ではなくって、あくまでメインとして立っている。英米でなくって、北欧という周縁から出てきているというのも、中心に対して別の価値観を突き付けているように見えなくもありませんでした。これは、中心諸国が差別問題や環境汚染や主導権争いでの醜い争いを繰り広げている中で、北欧はすべての市民が幸福に暮らせるようにと福祉社会を完成させていった状況に似ている。へヴィーメタルやパンクが興隆してく中で、愛やハッピーを歌って、またそこにセクシャルなものも少し絡んで、それをアーティスト自身が実践しているように見えるという所も素晴らしかった。大げさに言うと、荒む方向ではなくて、愛する方向に進む方が実は正しい、みたいなことを教えられてしまった気分で、そういった価値観が徹底されている感じがします。それは、音楽上の特徴に置き換えて言えば、ほとんどの曲が「聴いていてスカッとする」方向に作られてる。その極めつけが、僕にとっては「ダンシング・クイーン」でした。

 このレコードをターンテーブルに乗せたのは超久しぶりですが、やっぱり良いアルバムだなあ。そうそう、今聴くと、かなりディスコ要素の強い音楽だというのも、新たな発見でした。。ベースとかシンセがピコピコ鳴ってます(^^)。


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『Derek Bailey, Joelle Leandre / No Waiting』

BaileyLeandre ひとつ前の記事で、沢井一恵さんとデュオをしていた相手のコントラバス奏者が、ジョエル・レアンドルというフランス人女流コントラバス奏者。この人がリアル・アーティストというか、商売という所からかけ離れたところで、ものすごくコントラバスや音楽というものを芸術として追求しまくっている感じで、「ああ、これは本物だわ」という感じなのです。

 このデュオでは、相手をしているデレク・ベイリーというギタリストの方が有名じゃないかと思います。フリー・インプロヴィゼーション(演奏の最初から最後まで、モチーフになる曲すら用意せずに、完全に即興で演奏するタイプの音楽)というジャンルの超ビッグネームです。が…僕みたいな普通の人からすると、最初から最後までギターをかきむしっているというアプローチばかりが聞こえてしまって、なんか「デタラメでインチキだな」って思っちゃうんですよね。いや、それでもカッコいいと思える瞬間は度々あるんですが、でもその程度でいいんだったら、楽器を始めたばかりの学生さんのギターだってカッコいいと思える瞬間はあるわけで。。現代絵画で、カンバスの上に絵具をグチャって飛ばしただけの絵とか、真ん中に点がひとつ書いてあるだけの絵とかって、あるじゃないですか。あれを評価するかというのは、評価する基準自体が問われているというか、そういう所に対する挑戦なのであって、それはそれでいいと思うんですが…では挑戦して、その既成概念を壊す事に成功できたとして、その先に、壊した評価基準を超えるだけの評価基準を用意できているかというと、とてもそうは思えないんですよね。最初にそれをやる人は絶対に必要だけど、でもそれが壊された後に何も用意できなければ、ただ反抗したというだけになってしまう。それはさながら「じゃ、これは?」「これは?」と、何にでも食って掛かるくせに、自分では何もできない反抗期のクソガキの如し。そんな意味では、僕はデレク・ベイリーみたいな人というのは、音楽の上でのダダイズム的な役割を背負っただけという気がしてしまうんです。しかし、ジョエル・レアンドルという人は…

 なにもジョエル・レアンドルという人に限った話ではないのですが、デレク・ベイリーみたいな人が出てきた後に、その音楽を引き受けた世代の音楽家/演奏家の中に、すごい人たちがチラホラいる気がするのです。なんというのかなあ…他のジャンルに出てきたっていい気がするんですが、やたらとフリー・インプロヴィゼーションの世界から出てくる人にホンモノが多い(あ、そういう意味でいうと、インチキやニセモノがやたらと多いのもフリー・インプロヴィゼーションやエレクトリカの特徴な気がする…)。つまり、フリー・インプロヴィゼーションという狭い世界だけでゴチャゴチャやっているんじゃなくって、クラシックもジャズもフリー・インプロも全部ひっくるめて引き受けて、キッチリと次の音楽を作り上げちゃった人たちがいると思うのです。あくまで僕の主観ですが、音楽の核心を突き詰めていくと、最後には必然的にこういうアプローチになるのかもしれない、と思うんですよね。クラシックだってジャズだってインプロヴィゼーションだってなんだって、それぞれに良さがある。で、それぞれの音楽のそれぞれの良さを把握できるだけの器量が音楽家にあった場合、どういう態度を取るべきかというと…それぞれの良さを全部引き受けた音楽を作り出す、という作業に入るのが正統だと思うんですよ。でも、こういう事をやっている人って、本当に少ない。ジャズの人はジャズから出てこないし、クラシックの人はいまだにベートーヴェンをやっていて、他の凄いアプローチが出ても、非常に素晴らしい奏法が生まれても、そういうものは無視してベートーヴェンに閉じこもってる。ところが、リアル・ミュージシャンというのは…少ないけど、いるんですよね。ちょっと長くなっちゃったので、この話はここでオシマイにしますが、レアンドルという人は、そういう「本物の音楽」の入り口に立ったひとり、という気がします。このCDではフリー・インプロヴィゼーションという形で音楽を作っていますが、随所にその「本物っぽさ」が現れています。このCDはちょっと即興すぎるというか、荒っぽいところもあるんですが、それを差し引いても素晴らしい音楽だと思います。



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『ジョエル・レアンドル & 沢井一恵 / オーガニック・ミネラル』

EXIP0307.jpg 前の記事でボロクソに書いてしまった沢井一恵さんですが、これまた前の記事で書いたように素晴らしい邦楽器奏者であり、また芸術的な基準から純邦楽のコンテンポラリー化を取り組んでいるという素晴らしいアーティストなのです。で、その好例がこの1枚。このCD、素晴らしすぎます。

 パートナーは、ジョエル・レアンドルというフランス系のコントラバス奏者。この人がまた素晴らしくって、クラシックから現代音楽から即興から、なんでも演奏できてしまうというミュージシャン。それも、器用にポップスでも何でもやるという商売演奏家じゃなくって、芸術音楽に突き進んでいるところがカッコいい。沢井一恵さんもそういうタイプの人だと思うので、多分馬があったんじゃないかと思うのです。で、このCDでは(たぶん)即興演奏でデュオしてます。これが前の記事で書いたバッハのアレとは大違い、素晴らしすぎます!沢井さん寄りの聴き方をすれば、箏の良い面(あの繊細な音とか、駒を自在に動かせるという箏独特の楽器構造を活かした独特のサウンドを作り出したアルペジオとか)を存分に活かしたうえで、純邦楽という狭い枠から飛び出して芸術音楽を成立させている!同じことはレアンドルさんにも言えて、それこそバッハなんかを演奏させたらべらぼうにうまいんだろうな…という事は分かるのですが、時としてかなりアヴァンギャルドなところにまで踏み込んで行ってます。かっこいい!!これですよ、音楽というものは。

 演奏の凄まじさといい、芸術音楽的な切り口といい、文句なしの大傑作だと思います!惜しむらくは…フランスのマイナーレーベルから発売されたCDで、日本の代理店もビショップレコーズという小さそうな所なので、手に入れにくい(T_T)。逆に言うと、これぐらいに先鋭的な音楽を輸入できるというのは、小さい会社だからこそなのかもしれませんね。メジャー会社みたいに「1枚当たりの採算が****円を下回る事業は判を押さない」みたいなやり方をしていたら、芸術音楽なんて、今はもう日本では聞くことが出来ないのかも知れません。手に入れるのは難しいかもしれませんが、普通にしてたらまず聴く事のできないような正真正銘の芸術音楽、しかも大傑作ですので、もし見かける事があったら是非!!

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『沢井忠夫、沢井一恵、山本邦山 etc. / 琴・セバスチャン・バッハ大全集』

KotoSbastianBach.jpg 西洋中心主義的なコンテンポラリー化を目指す地域音楽という括りで、もう1枚。これは、箏や尺八という純邦楽の楽器を使って、J.S.バッハという17世紀バロックの代表的作曲家の作品を演奏したアルバムです。で、中牟礼貞則というジャズギタリストや、ウッドベースにドラムなんかも入っているという編成。沢井さん夫婦に、僕の大好きなジャズギタリストも参加というわけで、期待に胸を膨らませて聞いたのですが…う~ん、これもひとつ前の記事で書いた「クラシックのチェリストが何にも考えないで自分の解釈だけで音楽を演奏してダメにした」というパターンとそっくり。これぐらいダメだと、企画だけ先行して、リハーサルとかをやってうまく行くかどうかの事前確認作業なんて何もしなかったんじゃないかという気がしてしまいました(T_T)。中牟礼さんや沢井さんぐらいの超ハイレベルの人が、この音楽を「うまく行った」と思う筈が無いし、思ってほしくない。

 先にフォローしておくと、この沢井忠夫と沢井一恵という箏奏者は、純邦楽をいい意味でコンテンポラリー化するスペシャリストともいえる夫婦で、成功したプロジェクトは数知れず、単なる演奏家ではなく、本当に素晴らしい音楽家なのです。旧来の曲ばかりやって邦楽の狭い世界から出てこようとせず、たまに出てくる人がいても「クラブミュージックとのコラボ」とか「ビートルズを邦楽器で演奏」とか、馬鹿なんじゃないかというものばかりの邦楽界で、これぞ正しきミュージシャンの姿!という活動をしている二人なのです。しかし、このCDは…もう、バッハ音楽の素晴らしさを全部消し、尺八や箏の良さも全部消すという、最悪の結果に陥っています。例えば、バッハはいくつかの作曲技法を用いて作品を書いた人ですが、そのすべてに共通していえる事は、音楽の構造が数学的に割り出されている点。つまり、構造様式にその視点があるんであって、エスプレッシーヴォに演奏するなんて事自体がバッハを理解していない事になっちゃうと思うのです。こういう音楽を、発音自体が非常にエスプレッシーヴォである尺八で演奏しようとするなら、どうすればバッハの構造美も活かしつつ尺八のエスプレッシーヴォな表現も活かすか、な~んていう所を解決させるのが普通のミュージシャンの最初の課題になると思うのですが…何も考えず、普通に吹いてます(T_T)。馬鹿だわ、こいつ。有名人だと誰も注意する人がいなくなってこういう事態が起こるんでしょうか。これを、バッハの良さも尺八の良さも消された音楽と言わずに何というのか。「トッカータとフーガ」が箏で演奏された瞬間も、もう何かの冗談としか思えず、「チャラリ~、鼻から牛乳~」にしか聞こえませんでした。コミックバンドか、これは。ところが、一方のジャズギターとジャズベースのバンド陣は、バッハ曲をオリジナルとは違うものとして、しかし良い音楽としてまとめ切っていたので、これは楽器の技量とかではなく、音楽をどう解釈すれば良いのかというセンスに関して、邦楽器演奏者側に重大な問題があったんじゃないかと。

 安直な企画盤、これ以上望むべくもないというプレイヤーが揃っていながらこの体たらく、何とかならなかったのかなあ。大好きなプレイヤーさんが多数参加していただけに、がっかり度100%、憎さ100倍のアルバムでした。残念。



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『YO YO MA / SOUL OF THE TANGO』

YoyoMa_Tango.jpg 邦題は『ヨーヨー・マ・プレイズ・ピアソラ』。クラシックのチェリストであるヨーヨー・マが、タンゴのピアソラの曲を演奏したアルバムです。発表当初はけっこう話題になっていました。が…私は興味が持てず、聴かず仕舞いでした(^^;)。最近、たまたまこのCDを聴く機会に恵まれまして、発売から15年近くが経過してからようやく聴いたという次第。

 まずは、取り上げられているピアソラという作曲家/演奏家についての予備知識を。いま、アルゼンチン・タンゴと言って一番有名な人と言えばピアソラじゃないかと思います。もう、ガルデルだのの名前を一番に挙げる人というのは少ないんじゃなかろうか。ピアソラ全盛期のライブなんて、演奏は凄まじいし曲はカッコいいしで、凄すぎます。でも、ピアソラの音楽が純粋なタンゴかというと、そうじゃないんじゃないかと。アカデミックな西洋音楽にアプローチして、タンゴと西洋アカデミズムの中間にあるところの芸術音楽を作った感じ。なんと言えばいいのかなあ…たとえば、琵琶とか尺八とかの純邦楽ってあるじゃないですか。今、そういう新作って、現代音楽の人なんかに委嘱して作曲されたりもしてますが、それを純邦楽とは呼びにくいというか。そのタンゴ版が、ピアソラなんじゃないかと個人的には思っております。で…
 そうなると、ピアソラの音楽を取り上げる人というのが、タンゲスタばかりではなく、クラシックの人も取り上げるようになってくる。リスナーもばらけてくる。僕が高校~大学生ぐらいの頃、ピアソラは大ブームでしたが、最初に食いついた日本のリスナーはジャズの人だった気がしますしね。要するに、タンゴという以上にコンテンポラリーなんですよ。
 ただ、ピアソラというのは「作曲家」という立ち方はしていなくて、あくまで自分の楽団(五重奏団とかのスモールコンボが多い)を持ち、その楽団の演奏のために自分で作曲して、また自分で演奏しています。で、この演奏の在り方というのは実にタンゴ。熱いです、リズムが強烈です、不協和音を混ぜまくってきます!で、この3つの要素というのが僕にとってのタンゴに必要不可欠な要素というか、音楽自体がそれを前提にデザインされていますしね(そうしないと、2拍強調のリズムばかりに拘った作曲の意味なんてなくなっちゃう)。これを活かしたうえで、どこまでサウンドをコンテンポラリー化できるか、という所が重要だと思うんですよ。

 で、クラシック系の人の演奏するタンゴの話に戻ってきます。クラシックの人って、楽譜に示されたされたメロディなり和音をどこまで完成度高く鳴らすか、なんて所に重視していく傾向がある気がします。しかしそれをやっていくと、さきほど挙げたタンゴの強みというものが全部消えていく。クラシックの人がタンゴを演奏すると、タンゴ的である部分が全部消されてしまうのです。これは、クレーメルの演奏したピアソラなんかもまったく同じ。いや、クレーメルのタンゴは、それはそれで好きなんです、僕は。ただ、それが元々のピアソラが狙っていた方向を向いているかというと、そうではないという感じなのです。で、その方向性の違いが、狙ってそうしていて、かつそれが何らかの意味で妥当な選択であるなら、全然良いと思うんですよ。だけどクラシックの人って…そういう意味の次元までは全然考えてなくって、クラシック畑にあるステレオタイプの基準でただピアソラを書き換えちゃっているだけに聴こえてしまうのです。うまく伝わるかな…ほら、クラシックの人が、ジミヘンやツェッペリンの曲を演奏したりとかする事があるじゃないですか。で、同じように演奏する事には全く意味がないから、それを変えてしまっていいとは思うんだけど、変えてどうなるのか、変えたらどういう意味が発生するのかとかは全然考えてなくって、ただ優雅なだけのパープルヘイズやホール・ロッタ・ラブなんかが生まれちゃったりする。それって…全然面白くないうえに、意味もないという最悪の状況にしか思えないんですよね。こういう事態を知っていたから、発売当初にこのCDを聴きたくなかったんでしょうね。で、ようやく聴いた感想はというと…もう想像通り、偶数拍のリズムをどれだけ強く押し出せるかというのが肝になるシーンですら、ヨーヨーマさんは優雅にチェロを奏でております。ダメだこりゃ、自分の流儀で楽譜を読んでいるだけで、何にも考えてないわ。。ピアソラの熱い名曲たちが、どれもこれもBGMみたいになってます。ピアソラやタンゴを期待してこのCDを手にするのであれば、それは大きな期待外れに終わるでしょう。

 しかし、良い所もあります。良く言えば、楽曲のアレンジが、ポピュラーとコンテンポラリーの中間をうまく行っています。これ、誰のアレンジなんだ、と思ってクレジットを見ると…ブラジルのクラシック・ギタリストのアサド兄弟。なるほど、クレーメルのピアソラ作品集が売れたから、それをソニーが横取りして作ったアルバムという訳ですねw。ヨーヨー・マは、担がれた神輿というだけでした。。音楽の狙っているところ自体はアレですが、アサド兄弟によるアレンジ技術自体はものすごくプロフェッショナル。ピアソラ的とかタンゴ的といったところを追わず、ネオ・クラシック的な少しコンテンポラリーで少しポピュラーな上品系BGMを求めるのであれば、これはなかなかの良作だと思います。


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『ハワイアン・チャント』

HawaiianChant.jpg 昔のJVCが出した民族音楽シリーズの1枚です(JVCって、今もあるんだろうか?日本のレコード会社ってどんどん吸収合併されたりして、どうなってるんだか全然分かりません)。最初の狙いは「夏だし、涼しげなハワイアンでも聴くか!」ってな感じだったんですが、これが全然違った(^^;)。ウクレレなんて全然入ってないし、楽園の癒しムードなんて微塵もありません。しかし、これはこれで素晴らしい音楽体験だった!!白人文化が入り込む前からハワイ島にあった土着の音楽…なんだと思います。音楽というより、呪術的な呪文みたいです。合唱曲なんて、音程が2~3しかないものがメインで、それはさながら日本の読経のごとし。

 ハワイは太平洋の島国で、人種的な流れとしては、インドネシア方面から船に乗って流れ着いたモンゴロイドが主要民族。白人が入り込むのなんて、大航海時代以降というず~~~~っと最近の事です。で、エスキモーにしてもネイティブアメリカンにしても、東回りで広がっていったモンゴロイドの人って、常に無伴奏の歌音楽の文化を持っていますが、これがえらくプリミティブというか、音程なんて3つもあれば十分、みたいなものが多いです。で、音楽というよりもその言葉が重要というものが多くって、なんだか呪術的なんですよね。ネイティブ・アメリカンで言えば、狩りの前に狩りの成功を祈る歌とか(こういうと聞こえはいいが、言葉で獲物を呪い殺すというものもある)、そういうのが多い。で、このハワイのチャント(ハワイだと「メレ」と言って、どちらも「歌」という意味です)も、呪術的/儀式的な色彩がバリバリに強いです。ハワイのメレはメレ・オリ(無伴奏チャント)とメレ・フラ(ダンスのみか、ダンスと楽器伴奏がつく)に分かれていて、このCDはメレ・オリという事になります。で、メレ・オリの全てがそういうものなのかどうかは知らないのですが、少なくともこのCDに収められている曲は全部呪術的なものです。悪を防ぐもの、神のインスピレーションを求めるもの、呪文、禁忌から解放する呪文…これが映画やコミックの作り話じゃなくって、リアルなものであるというのが凄すぎる。そういえば、アフリカ系の呪術音楽も、リーダー(祭祀?)が文句を言って、それを追うように合唱というものが多いですが、このハワイのものも構造が同じ。これは必然性があってそうなったのか、文化的なつながりがあったのかはちょっと知りたいところですね~。

 これって、部外者がお気軽に聴いてはいけないようなものな気がしてならないんですが、いいんでしょうか(^^;)。録音する人も、録音すべきじゃなかったんじゃないかなあ。俺が思うに、録音して3年以内に死んでるな。。しかし、こういうものを一度体験しておくというのも、面白い体験かも知れません(^^)。



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『ザ・ベストテン 1978-79』

BestTen1978-79.jpg こちらは、1978年から79年の、日本の商業ポピュラー音楽のヒット曲集。うわあ、80-81年よりさらに懐かしい…というか、もう幼少期の頃の曲という感じで、涙が出てきてしまう(T_T)。。収録曲は以下の通りです。

1. ザ・ベストテンのテーマ
2. ミラーゲートのテーマ
3. UFO
4. しあわせ芝居
5. 微笑がえし
6. プレイバック Part 2
7. かもめが翔んだ日
8. Mr.サマータイム
9. 林檎殺人事件
10. 銃爪
11. 季節の中で
12. チャンピオン
13. HERO(ヒーローになる時、それは今)
14. YOUNG MAN(Y.M.C.A.)
15. 魅せられて
16. きみの朝
17. カリフォルニア・コネクション
18. 銀河鉄道999
19. 関白宣言
20. セクシャルバイオレットNo.1

 僕なりに思ったコメントを、ツラツラと。まずはキャンディーズの「微笑み返し」。当時って、学生が同棲したりとか、そういうのはあこがれのひとつだったと思います。当時のコミックに「翔んだカップル」なんていうものがありましたが、あれも学生が同棲したりとか、そんな内容でした。で、そういうのって、超子供の僕からしても憧れるものがありました。で、この歌は、楽しく一緒に過ごしてきた二人が、明るくさよならを言って卒業とともに別々の道を歩む、みたいな感じ。これが、キャンディーズの解散とファンとのさよならとのダブルミーニングになってる。だから、「卒業」の意味が、学校からという意味だけではなくて、青春時代からの卒業みたいに思えてしまう。すがすがしい曲なんですけど、しかしホロっときてしまいます。サーカスの「Mr.サマータイム」。コーラスグループだけあってさすがにきれいなハーモニーですが、それ以上に…メインヴォーカルが異様に艶っぽい!!いやあ、このニュアンスはガキには出せないわ。。郷ひろみと樹木希林の「林檎殺人事件」。詞はデタラメだし歌はひどいんですが、アレンジが素晴らしい!!演奏も素晴らしすぎる!!ギターのファンキーなカッティングなんて、メチャメチャにうまいし、アレンジも完全にプロの技です。ポピュラーにおけるプロミュージシャンという職業って微妙だと思っているのですが、これはいい方に出たという感じです。世良正則&ツイストの「銃爪」。やりすぎてダせえという領域に踏み込んじゃってますが(^^)、しかしそれを含めて考えてもナイスヴォーカル!男くせえええ!!!また、バンドも思いっきりロックで、ドラムやベースの音作りなんか、相当にかっこいいです。いやあ、これは好きだなあ。。アリス「チャンピオン」。うおお、曲も歌詞もヴォーカルも演奏もかっこよすぎる!!男くさい!!いやあ、今の歌謡曲にはこういう世界観の曲って全然ないので、ちょっと憧れちゃうなあ。ジュディ・オング「魅せられて」。詞がエロすぎる!「好きな男に抱かれながら違う男の夢を見る」って…(^^;)。これも、ガキには歌えない、大人の世界観ですね。ゴダイゴ「銀河鉄道999」。もう、日本のポピュラー音楽史に残る名曲なんじゃないかと。「あの人はもう思い出だけど、君を遠くで見つめてる」なんて、あの名作映画の感動のラストシーンがフラッシュバックしてしまって、涙を禁じえません(T_T)。

 で、トータルしていうと、やっぱり今の時代の歌謡曲と比べると、非常に大人の文化の範疇に歌謡曲があったんじゃないかという気がします。高校生や大学生が聴くような曲であっても、大人の世界へ飛びこんでいきたいというような願望を強く感じます。また、男声ヴォーカル物は、詞の世界観に男性性が強く押し出されているのが印象的でした。今のフェミニズムや男女平等主義に牙を抜かれたようなひ弱な時代思潮とは全然違います。
 そう考えると、当時の歌謡曲って、ある種のあこがれるような世界観を聴衆に提供出来ていたんじゃないかと思います。いやあ、これはよかった!!



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Bach Bach

Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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ロシアとウクライナがほぼ戦争状態に入りましたが、僕はソ連解体後のウクライナについて本当に無知…。これは2016年にオリバー・ストーン監督が作ったウクライナのドキュメンタリー映画。日本語字幕版が出たらぜひ観たい このブログをYoutube にアップしようか迷い中。するなら作業効率としては早いほど良いんですよね。。その時にはVOICEROIDに話してもらおうかと思ってるけど、誰の声がいいのか考え中
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