
フランソワ・ルルーというフランス人オーボエ奏者のCDで、プーランクとブリテンの曲を取り上げています。ここ最近の記事のキーワードは、「フランス」なんです。このキーワードを少しご記憶いただいて…
この素晴らしいCDに関しては、書きたい事が山ほどあるのですが…まず、演目。クラシックのオーケストラでの木管楽器は、高い音の順にフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットの4つがあります。で、オーボエというのは、オーケストラの調律の基準となり、また木管の旋律パートの花形。あのダブルリード楽器特有のサウンドもあって、個人的にはオーケストラにとっての超絶に重要なポジションと思っています。ところが、それだけ素晴らしい楽器だというのに、クラシック以外のジャンルではあまり用いられない。南北アメリカの音楽でも、フルートやクラリネットが用いられることはあっても(たとえばジャズ、タンゴ、その他もろもろ…)、この超絶に素晴らしい楽器が用いられることはあまりありません。ダブルリードというだけで手入れも演奏も大変でしょうから、そういったカジュアルな音楽で使うには厳しい楽器なのかも知れません。そんな事も、この楽器に「クラシック的な崇高な何か」を与えているのかも。
この楽器の次の問題は、そのオーボエの素晴らしさを表現できる曲は何かという事。
僕は、オーボエの傑作のひとつとして、プーランクのオーボエソナタを挙げたいです。で、このCDには、その超名演が入っている!!いやあ、これは素晴らしいですよ。。他にも、このCDではじめて知った曲も入っていたんですが(例えばブリテンの「オウィディウスによる6つの変容」)、これも、よくぞまあこんな名曲が知られていなかったものだなあ…というほどに素晴らしい。ちなみに、収録曲は以下の通り。
(プーランク)
・オーボエ・ソナタ
・オーボエ、バスーン、ピアノのための三重奏曲
(ブリテン)
・テンポラル・ヴァリエーション
・オウィディウスによる6つの変容
・2つの虫の小品
次に、フランスのオーボエについて。オーボエと言えば、ドイツのオーケストラに名プレイヤーが集中している気がします。例えば、ホリガー。あの超絶的なテクニックはたしかに悶絶しまくってしまうのですが、なんというのかなあ…ジャズの管楽器奏者みたいに、ものすごく鋭い音でくるんですよね。で、ドイツのオケのオーボエって、こういうカラーのものが多い気がします。ところが、フランス系のオーボエって、音がものすごくふくよか。ほら、ジャズで言えば、ニューヨーク周辺のサックスと、ウエストコーストのサックスでは、音の出し方が全然違うじゃないですか。昔、知り合いのサックス奏者に尋ねたところ、なんでもリードの削り方が全然違うんだそうで。。で、フランスのオーボエって、音自体が音楽的というか、これだけで素晴らしい次元に連れて行ってくれる感じです。そしてこの
ルルーというオーボエ奏者は、フランス系のオーボエのエッセンスを全て実現している感じ。素晴らしすぎます。この「ドイツとフランス」の差って、オーボエに限らず、チェロの弓の持ち方なんかにも「フレンチ持ち」みたいのがあるみたいで、もう「音楽自体をどう響かせるか」という所が根本的に違うんでしょね。実際に、「ジャーマン・オーボエ」「フレンチ・オーボエ」という区分けも存在しますし。で、ルルーという人、なんと18歳にしてパリ・オペラ座の首席奏者になったというのだから、早熟な天才と言えると思います。きっと、ドイツ系でないというだけで割を食ったというだけで、実際には「本物」という事が出来ると思います。むしろ、こういう人を積極的に紹介する事の出来ないクラシックの評論界がダメというか…。
クラシック業界とういやらしい構造が故に軽視され、しかし実際の現場では「本物」として名の通っている人。な~んていうのは僕の勝手な想像ですが(^^)、このCDをはじめて聴いた当時、「なぜこれほどの人を僕は知らなかったのだろう」と思わされた、素晴らしい1枚です。まさに天上の音楽、超おススメ!!
スポンサーサイト