このアルバムの時点で、バンドの2枚看板のひとりであるギタリスト・ピーター・フランプトンは既にバンドを去っていたそうです。しかし変わって入ったギタリストがこれまたカッコいい!!僕は、このアルバムの印象って「ロック」「ロックンロール」なんですが、それって"Hot 'n' Nasty"とか"30days in the Hole"とか"C'Mon Everybody"あたりのナンバーの印象が強いのかも。で、いずれもギターとオルガンのコンビネーションが素晴らしい。そしてど真ん中にロック最高のヴォーカリスト(私個人の見解です^^)であるスティーヴ・マリオットのあの凄いヴォーカル!いやあ、これでカッコよくならない筈が無いですね…。
いずれも普通のロックナンバーなんですが、なんでこんなにカッコよくなるのか。きっと演奏のあり方に、その理由があるんじゃないかと。このアルバムはスタジオ録音だと思うんですが、どの曲もスタジオ・セッションという感じ。1曲目"Hot 'n' Nasty"なんて、セッション途中からいきなり曲に入って行ったような始まり方。"30 Days in the Hole"も、ハーモニーの練習をしながら、そのまま曲に入って行ったような感じです。こういう風にちゃんとバンドとしての合わせをしながら、楽譜には書けないような阿吽の呼吸をバンド全体が掴んでいったからこそ、こういうカッコ良さが出たんじゃないかと。 なんでこういう事を書くかというと…若い頃、仕事でポピュラー音楽のレコーディングの仕事をさせていただいた事がありました。その時にビックリしたのは、スタジオに入っていきなり楽譜を渡され、ヘッドフォンからはクリック音が聞こえてきて、僕が演奏するピアノの前に、コンピュータの打ち込みでサンプルのピアノ演奏が入っていて、それを生の演奏に差し替えていくという作業だったんです。「え?バンドやオケ全体で音楽を作っていかなくていいの?」とか、色々と思う事があったんですが、仕事は流れ作業のようにどんどん進んでいきます。ピアノのソロパートもオープンで用意してあったんですが、歌とか主メロの把握も良く出来ないまま、2~3テイクほど演奏しただけでオッケーが出てオシマイ。こういった体験はこの時のレコーディングだけでなくって、ある有名なロックバンドのサポートレコーディングでも同じような事が起きました。またクリックに合わせて演奏か、信じられない。。いやあ、こんな作り方ではロックならではのあのグルーブなんて出るはずもないわ、80年代以降のロックのレコードがつまらないのは、こんな工業生産的なプロダクションをしているのも理由のひとつなんじゃないかと思ったのでした。で、その時のレコーディングエンジニアさん曰く、「今ではジャズでもクリックを使うのが当たり前ですよ」との事。ま、マジか…。90年代以降のメジャーレコード会社制作の日本ジャズがクソつまらないのはその為か。。しかしハンブル・パイのこのアルバム全体に感じる事の出来る「これぞロック!!」という感じは、バンド全体が生々しく動いているからだと思うんですよね。ロックはノリですよ!!