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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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『Steve Reich / The Desert Music』

Rech_DesertMusic.jpg メレディス・モンクの記事で書いたミニマル・ミュージックというものの本家と言えばこの人、スティーヴ・ライヒです。現代のクラシック最大の商業的成功を収めた作品はこれなんじゃないかと思います。

 ミニマル・ミュージックというのは、ある音型を何度も反復的に用いる音楽の事で、1960年代からアメリカの一部の現代音楽で用いられるようになりました。ライヒの場合は反復するだけではなく、複数の音型に違う周期を持たせることによって、音がちょっとずれていく。例えば、7拍で1周期の音型と、11拍で1周期の音型を同時に演奏し始めると、最小公倍数の77拍目が来るまでは、それぞれの音型は単純な繰り返しであっても、ふたつの音型の音の重なりはどんどん変化していくようになりますよね。そんな感じです。で、僕がミニマル・ミュージックに手を出したのはこのCDが初だったのですが、その響きにビックリ!!うわ、これは凄い…と深く感じ入ってしまいました。それにしても、最初の一枚でミニマル・ミュージックの最高傑作に手を出すとは、高校生の頃の僕の勘もなかなかのものだったんだな( ̄ー ̄)。

 ライヒは、作曲をベリオとミョーに習い、バリの音楽を勉強して感銘を受けたと言いますから、その時点でミニマルを構想する事は時間の問題だったんでしょうね。ずいぶん前にケチャについて書いた事がありますが、バリの音楽というと、ケチャにしてもガムランにしても、入れ子細工で周期的に波が来る大人数アンサンブルという特徴を持っています。これを西洋のモダン・コンポジションの視点で行ったという所です。
 もうひとつのライヒの特徴は、そのミニマルの音を無調とか不協和音とかの中で使わず、また複雑なリズムの中で用いず、すごく伝統的な協和音の中で使った事。これが現代音楽最前線というのではなく、ポピュラーになった要因ではないかと。前の記事で取り上げたメレディス・モンクの音楽も、この後大量に出現したジャンル違いのフォロワー(例えばニューエイジ系のロックとか)も、思いっきりこの路線を踏襲してました。

 反復と周期的ズレというミニマル的な手法というのは、完全にスクエアなリズムで、しかも一拍も落とさずに演奏しないといけないので(一度落としたら復活しにくい^^;)、演奏家にとっては辛い音楽だそうです。知り合いのオケのヴァイオリン奏者さんが、「今度ライヒやるんだよ、いやだなあ」と言ってた事があります。。そういう点もあってか、小編成向けのミニマル作品を聴くと、演奏はどんどん四角四面で音楽的じゃない方向に行ってしまって、つまらなさを感じる事も僕はありました。しかしこの「砂漠の音楽」は、弦楽にライヒ自身の小編成アンサンブル(シロフォンとかが入っている打楽器色の強いグループ)に合唱という、ミニマルとしては相当に大編成で、かなりの迫力で、そういうこじんまりミニマルとは一線を画す素晴らしい出来栄え。詩を伴っている合唱(ウイリアムズの詩)と弦楽の参加というのは音楽にとってすごく大きくて、これによって音楽にアーティキュレーションが付け加えられて、ミニマル音楽に音楽的な息吹を与えています!!ライヒはきっとガムランやケチャのような周期ごとにものすごい迫力で高揚していく感じを作りたかったんだと思いますが、思惑とは裏腹の西洋的な音楽的表現がついた事は、計算外の幸運だったのではないでしょうか。
 弦楽に合唱まで取り組んだライヒ一世一代の勝負作「砂漠の音楽」は、その響きの壮大さから行っても、ミニマルの最高傑作といえるのではないかと思います。ミニマルを知らない人、あるいはミニマルは知っているけど「砂漠の音楽」を知らない人は、素晴らしい作品なのでぜひご一聴あれ!!あ、色々と他の演奏も出てますが、ライヒ・アンサンブル参加&録音の絶品なこのノンサッチ版を強くおススメします!!



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『Meredith Monk / Dolmen Music』

MereMonk_DolmenMusic.jpg 前の記事で書いたヒグチケイコさんの活動歴を見ていると想起してしまうのが、このメレディス・モンクというヴォイス・パフォーマーさん。いわゆるミュージシャンという感じではなく、劇場でのシアトリカルなパフォーマンスの舞台監督という印象を僕は持っています。舞台監督が大前提で、その上で自分で作曲もパフォーマンスもする印象。自分で歌ったり踊ったりもしちゃうわけです。女性のヴォイス・パフォーマーにはこういうボーダーレスな活動をする人が結構いますが(極端な例では、女優の夏木マリさんなんかもそうかな?)、メレディス・モンクさんはその先駆けのひとりなんじゃないかなあ。

 内容はアメリカのミニマル・ミュージックを合唱で展開した感じ。合唱の要素として、バロック以前の古楽のアンサンブルのアイデアなんかもチラホラ垣間見えたり。そういう意味で言うと、何か音楽的な動機があるというよりも、舞台作品を作る為に、面白いと思ったものは何でもかんでもチャンポンにしちゃった感じかな?舞台というのはなんでも借りてきちゃう所があって、特に舞台音楽となると、古楽でも前衛でも何でもあり。そこにオリジナリティが求められるかというと全然そうじゃなくって、例えば時代劇を作ろうと思ったら、それに合いそうな音楽を「作る」んじゃなくって「借り」てきちゃう。これ、舞台じゃなくって、音楽単体だったら、「私の新作です」といってベタベタのバロックとか、あるいはミニマルそのものを発表したら恥ずかしいと思うんですよ。でも、舞台作品という事になると、そうならなくなる。そういう意味で言うと、アートを感じる割には独創性は感じられませんでした。複雑な不協和音どころかモダンな音の混ぜ方なんかも一切なし、リズムも複雑なものは全く出てこないで全部単純なオンビート。そういう所も「ああ、本当の作曲家ではない人がアタマの中で作った音楽なんだな」という感じで、若い頃にはこのイージーなつぎはぎ&潔癖症気味な四角四面の音が物足りなかったんですが、今聴くと…いやあ、なかなか面白いじゃありませんか!

 最初に聴くと、ちょっとCGっぽいというか、まるでコンピュータに作曲させたかのような四角四面な感じというか、無機質で冷たい印象を受けるんじゃないかと思います。問題は、聴く側がそれを面白く感じるかどうかという点ですよね。このレコードを出したECMというレーベルは、もともとジャズ方面のレーベルでしたが、クラシック方面に手を出した事もあります。手を出す方面はやはりモダンが中心なんですが、しかしモダンと言ってもグッチャグチャでアツい方面は嫌いなようで、どこかキッチリと、そして涼しげな方向が好きみたい。このレーベルがリリースすると、シュトックハウゼンの音楽ですらスッキリと整理整頓されたような音になってしまうという(^^)。で、このアルバムはまさにそのイメージにピッタリで、つまりはECMのあの透明な感じが好きな人だったら、絶対に気に入る音楽なんじゃいかという気がします。僕の趣味のど真ん中というわけじゃないんだけど、さすがに名盤扱いされるだけのものはある1枚だと思いました。


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『ヒグチケイコ・神田晋一郎 / 種子の破片』

KandaHiguchi_ShusinoHahen.jpg パティ・ウォーターズと東アジアのトランス系ヴォーカル・ミュージックに触れた以上、どうしても触れておきたい作品が。ヒグチケイコさんというヴォーカリストです。この作品は神田晋一郎さんというピアニストとの共演で、ジャズや三文オペラや日本の現代曲、そしてフリー・ヴォーカルなアプローチと、色んな要素が入り組んでいるのですが、テクニックがものすごいのは勿論なんですが、この融合のさせ方のセンスが素晴らしすぎる!!なんといえばいいのか…前の記事の韓国のシッキムクッが儀礼音楽であるとすると、同じものを歌音楽上で見事に成立させた感じ。いやあ、はじめてこのCDを聴いた時の衝撃といったらありませんでした。

 このCDに辿り着いたのは、実はピアノの神田晋一郎さんという人に食いついたのが先。いつぞや書いたEXIAS-Jという日本のアヴァンギャルド系のグループで素晴らしい演奏をしていまして、この人のソロ作ってないのかな…と思ってこのCDに辿りついたわけです。で、曲目を見ると、ジャズはもとより、武満徹、クルト・ワイル、そしてオリジナル…聴くより先に、「あ、これは本物だな」、と思ったわけです(^^;)。そしてそのピアノ、私の予想のはるか上を行くものでした。いやあ、こんな人が埋もれていて、あんな人たちが偉そうにテレビやラジオで音楽を語っている日本って…という愚痴は兎も角、まがりなりにも青春時代にピアノに真剣に取り組んできた僕としては、嫉妬を通り越して尊敬の念を抱いてしまった。。しかしそれ以上に凄かったのが、ヴォーカルとのシンクロ具合。2~3個前の記事で、パティ・ウォーターズの素晴らしいヴォーカル&ピアノのデュオの記事を書きましたが、このCDはその数段上を行くものと言えるんじゃないかと。それは"Love Letter"とか"Porgy and Bess"みたいなジャズ・スタンダードにも言えるし、谷川俊太郎&武満徹の2曲に至っては、僕が今まで聴いてきたこの曲の演奏でもベスト・パフォーマンスという域にまで達してます。
 それから、最初はこのヴォーカルを「凄いアドリブ力だ」なんて思ってたんですよ。しかしあまりの感動に何度も聴き直しているうちに…音の入り方、ブレスの入れ方、ファルセットに入るタイミングなどなど、綿密にアレンジしてないかい?いやあ、これはピアニストのアレンジなのかヴォーカリストの機転なのか分かりませんが、パティ・ウォータズにしても誰にしても、素晴らしい人というのはフリーであろうがなかろうが、突き詰めるとフリーとは全く違う所まで丹念に仕上げてくるというか。すごい人というのはフリー云々でなくって、音楽のために必要なものは全部仕上げてくるんだな、と思わされました。このCDに入ってる"My Funny Valentine"のヴァースなんて、ほとんど現代音楽だしな…。フリーとかジャズとかクラシックとかを無視するのではなく、またどれかのジャンルに囚われるのでもなく、今ある様々なピアノ/ヴォーカル音楽の良い所を丁寧に吸収した上で、ピアノ&ヴォーカルなら最後にはここに辿り着く、という場所に辿り着いた素晴らしいパフォーマンスが本作であると僕は思ってます。いかにもシャーマニックなヴォーカルというわけではないんですが、その瞬間に辿り着いた瞬間にトランス状態にズバンと入ってしまう…西洋音楽の素晴らしい音楽の上に、西洋音楽が苦手にしてきた領域に入り込んでいる感じです。これは見事!


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『死者への巫儀 珍島シッキムクッ』

Sishaheno.jpg 僕がフリー系のヴォーカルを聴き始めたのは、パティ・ウォーターズあたりのフリージャズ系のヴォーカルからでした。これが普段よく耳にしていたジャズやポピュラーやブルースという音楽とはまったく異質な所があって、その異質さは西洋の教会音楽の合唱音楽的な所の真逆。トランス状態に入っての声の音楽。で、フリーヴォーカルという点から考えて、フリージャズのヴォーカルはその入り口でしかなかったと痛感させられたのがこの1枚でした。韓国のシャーマン音楽のひとつです。

 最近、韓国と日本は際どい政治的関係になってしまってる気がします。それが政治的な駆け引きであるうちはまだ良かったんですが、国民感情にまで発展してしまっているのがマズい。これでは民族主義の対立が引き金のひとつになったこの100年の世界中の国際紛争の繰り返しではないか…と思いつつ、日本の小市民である私は、やっぱり他国の国土に国旗を掲げたり、理不尽な身柄拘束が起きたり、国際法廷にて超高額の賠償金を払う事で「これからは前向きに関係を改善しましょう」とした問題をいきなりチャラにして政治的駆け引きに使おうとする態度にムカつく事は事実。感情的には韓国嫌いになってしまいつつあるのですが、しかし韓国のシャーマニズムに基づく音楽の素晴らしさは認めないわけにはいきません。韓国にあるシャーマン音楽は、西洋的な理知性とは全く違う基準を持っていて、しかもそれが音楽のとても重要な所を突いているように思えます。フリージャズ系のヴォーカルが無意識のうちにも目指したもの、またヨーロッパのフリーインプロヴィゼーション系のヴォーカルが「フリー」であるという技術的な問題ばかりを処理しようとしてとうとう気づく事の出来なかったものが、全部ここにある気がします。

 韓国には「クッ (KUT)」というシャーマン音楽があるそうですが、このCDには、韓国の珍島という島に伝わる、死者の魂を収めるための儀礼音楽「シッキムクッ」が収められていました。これが他の韓国のシャーマン音楽と共通して、トランス状態でどえらい事になっていくわけですが、この手のトランス音楽では世界最強とも言えそうな韓国の音楽の中でも、その入れ込み具合がけっこうすごい1枚です。ものすごい高揚感を感じる韓国トランス系は他にあるんですが、これはドロドロとヤバ~い宗教音楽、という雰囲気。音楽そのものは、日本の仏教音楽に共通するものを感じるかな?女のシャーマン(?)の声に打楽器のポリリズミックなアンサンブルが加わって、マジで理性がすっ飛んでるんじゃないかと思わされる瞬間もあります。だいたい僕たちというのは、子供の頃から、どんな時でも理性的に振る舞えるように訓練されてきたし、また自分自身でもそうやって訓練してきたものだと思うんですよね。理性を完全に失ってトランス状態で振る舞う…な~んていう体験をした人なんて、そういないんじゃないかと思うんですよ。しかしそれで失われるのは感情的な高揚感で、この何とも言えない身体的な「生きているぜ」感覚って、まさに音楽でしか実現できないものなんじゃないかと。また、トランス云々抜きにしても、そのドロドロとした雰囲気が異様。怖いもの見たさな人は必聴!!


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『PATTY WATERS / College Tour』

PattyWaters_CollegeTour.jpg どちらかというと、こちらの方が往年のフリージャズファンのパティ・ウォーターズのイメージに近いアルバムかも。1966年のライブパフォーマンスを収録したアルバムです。フリー系とはいっても、絶叫して恐怖のヴォーカリーズを叩きこんでくるというんじゃなくって、どちらかというと囁くように"ahhh…"と声を出しながら、徐々に音楽に入って行く感じ。フリージャズというよりも、ヨーロッパのフリーインプロヴィゼーションに近いイメージでしょうか。そして、このトランスに入って行く過程の音楽が素晴らしい!

 このCDを買った頃の僕というのは、フリー系のヴォイスというのがどうも好きになれませんでした。じゃあなぜこのCDに手を出したかというと、参加ミュージシャンのメンツに魅かれたからでした。一番目を惹いたのが、フルートでクレジットされていたジュゼッピ・ローガン。この人については前に記事を書いた事がありますが、ものすごくデーモニッシュな呪術的なフリージャズ系の管楽器奏者で、しかし発表作が少なくあっという間にシーンから消え去り、ジャケットには写真も写っていないので、僕は大好きな人なのに顔すら知らないという(^^;)。そんな謎めいた人が参加しているレコードだったというだけで、買う動機としては十分だったのです。で、これが素晴らしい。共演者を無視して勝手に吹きまくっちゃうという事は絶対に無くって、すごく音楽全体のムードを感じながらおどろおどろしく音を出してくる。いやあ、これはハマります。また、他の共演者も素晴らしくって、バートン・グリーン、デイヴ・バレルなどなど。いやあ、フリージャズ好きな人だったら、このメンバーを見ただけで聴きたくなっちゃう気持ちも分かってもらえると思います。で、彼らが揃って「自分勝手にやかましくメチャクチャに演奏しちゃうフリー系のダメなパターンの演奏家」からはほど遠い所にいて、主人公であるパティ・ウォーターズさんのトランス具合に交感していくというか、彼女が表現しているものを大事にしながら、それを具体的な音にかえて行っているという感じです。時には悲鳴のような絶叫シーンにも達するんですが、基本的には静かに、どんどん自分の中に入って行く静かな感じ。その中に、ピアノやウッドベースやフルートの音が(時には普段音楽に使わないような特殊な音を用いて)ポーンと放り込まれた時の独特の質感がたまりません。で、魂が夜中の森をさまよっているようなフワフワした世界がずっと続いていたところで、5曲目でいきなり美しい美しいジャジーな音楽に繋がった瞬間の美しさ…これはちょっと形容しがたいものがありました。

 どう聴いても完全なインプロヴィゼーションだと思いますが、ヨーロッパのフリー・インプロヴィゼーションと違って、かなり情念的な所を大事にした、相当に深い音楽と思います。あ、そうそう、BGMとか癒しとか、そういうレベルで聴くのは難しい音楽と思います。好きとか嫌いで語るのすら間違っていると感じるというか、「観賞用のものとしての音楽」というのとは、基本的にあり方が違うんじゃないかと。これも大好きなレコードです。いわゆる「ポップス」「ジャズ」「ロック」なんていうものだけが音楽だと思っていた了見の狭い昔の僕の既成概念を吹き飛ばしてくれた1枚でした。こういう音楽って、楽器よりも歌にこそふさわしいという気も。




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『PATTY WATERS / YOU THRILL ME』

PattyWaters_YouThrillMe.jpg
 チャールズ・マンソンに続いて、アメリカのダーク・フォーク的なヴォーカルミュージックを。ジャズ寄りの女性ヴォーカリストであるパティ・ウォーターズです。ジャズヴォーカルとはいえ、かなりフリー寄りの所で活動していた人で、フリージャズ全盛期の60年代に、フリージャズ系の人をバックに歌ったアルバムが数枚出ただけで、あとは忽然と姿を消してしまった。というわけで、普通のジャズヴォーカルを期待すると痛い目に合う…と言いたいところなのですが、このアルバムに関してはまったくフリーではなく、ジャズです。しかも、超上質のジャズ。初めて聞いた時には鳥肌が立ってしまった。これ…部分的にはチェット・ベイカーより良いんじゃないかい?

 このアルバム、パティさんの未発表音源集です。録音年は1962-79となっています。つまり、60年代半ばでシーンから忽然と姿を消してしまった彼女のその後も録音されているというわけです。で、アルバムはレコーディング風景をそのまま収録したような出だしから(歌の合間合間に、ディレクターとのトークバックでのやり取りが入っていたりする)、本編ではピアノ&ヴォーカルのデュオ演奏(もしかすると弾き語り?)に入って行きます。で、このピアノとヴォーカルの関係が素晴らしすぎる。ピアノのスペースの取り方なんて、絶品すぎです。なんというのかなあ…西洋のジャズって、どんどん音を足す方向に進化していった感じがするんですよね。空間があればそこにフレーズを挟み、停滞したらターンアラウンドして新たなコード進行を付け加え、和声もテンション領域にまでどんどん音を足して…みたいな感じで。ところがこのCDでの音楽は、ピアノもヴォーカルも余計な音をどんどん削ぎ落としていく感じ。リズム音楽であるジャズの中から、強拍部分の強調を全て無くし、場合によっては1小節を全てひとつの和音だけで透き通るように響き渡らせて(これが鳥肌モノの美しさ!)、リズムが弱められ、歌だけが残される。少し前に、ジョー・パスの歌伴での、最小限の音だけを出す表現の素晴らしさについて書いた事がありますが、そのピアノ版という感じでしょうか。これぞ音楽、すばらしい…。ヴォーカルは、年取ったような声になるテイクでは(これが70年代の録音なのかな?)かなり音がフラつくんですが、そんなことよりも音楽で表現しようとしているところが素晴らしすぎて、文句を言う気になれません。

 恐怖のフリー・ヴォーカルの印象が強い人だけに、昔からのファンの人には嫌われるアルバムなのかも知れませんが、もっと広く音楽として聴けば、こんな素晴らしいヴォーカルアルバムもなかなかないでしょう。商業主義でない部分が前面に出てきた時のアメリカ音楽の背景に聴こえるものって、恐るべしと感じる時があります。大おススメです!!


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『Charles Manson / LIE: The Love and Terror Cult』

CharlesManson_Lie.jpg アメリカ合衆国は、これまでに何人も常軌を逸するような殺人鬼を生み出してきました。チャールズ・マンソンもそのひとりで、彼は狂気のカルト宗教の元祖として、今でもその名を知られています。映画監督ロマン・ポランスキー宅に押し入り、その妻であり映画女優でもあるシャロン・テートを惨殺した「シャロン・テート殺害事件」は、その話題性もあって彼が起こした多くの事件の中でもとくに有名。殺人現場に教徒が残した「ヘルター・スケルター」の殴り書きは、ビートルズのあの曲からの引用。彼は16歳の売春婦の子供で、施設に置き去りにされ、空腹に耐えかねて窃盗を犯し9歳で少年院送り、そこで看守に性的暴行を受け、出所後はドラッグ漬けになりながらもカルト宗教を立ち上げ、熱狂的な彼の信奉者を生み出します。そして、これはそんな彼が作った音楽のアルバム。色眼鏡抜きにして、アメリカ音楽史の中でも屈指の傑作と私は思っています。これは絶対に聴くべき。

 ここ最近、フーとかハンブル・パイとかのロック/ポップ・ミュージックの素晴らしいミュージシャンを取り上げてきましたが、彼らをしても比較するのが失礼なほど、マンソンの音楽はレベルが高いです。ミュージシャンとしての格が段違い。最初に聴いたとき、その曲、そのヴォーカル、そのギター、その音楽性…どこをとっても非の打ちどころがない素晴らしさに、感動を禁じえませんでした。最初は「社会的な話題性だけでこのレコードが残ってるんだろう」と思っていた僕は、はっきり言って打ちのめされました。
 このレコードが吹き込まれたのは1967年で、その当時のアメリカと言えば、サイケデリック全盛期。商業的なサイケ方面はエレキギターやリヴァーブやオルガンなどの電子加工された音で、音をグニャグニャにするものが主流だったと思うんですが、しかし一方ではアシッドフォークというか、サイケデリックフォークみたいな流れもあって、ここに素晴らしいものがかなりある。ただ、あまり商業ベースな音楽ではないので、芸術方面に鈍い日本の文化の上ではあまり聴かれていないようですが。で、アコースティックでやるとなると、リヴァーブを大量にかけたり、電気楽器のトーンを変調させるなんていうお手軽なサイケデリック感は一切使えないので、楽曲や表現なんかで、その個性を表現せざるをえなくなるわけですが、チャールズ・マンソンのそれは本格派というか、音楽として実に素晴らしいのです。「サイケデリック感覚」というだけでいえば、逆に下手な事で個性が出たりという事もあるし、実際にそういう人もいるんですが、マンソンは音楽としてほんとに素晴らしいんですよ。曲、歌、ギター、音楽性…そのいずれにも、見事な表現が宿っています。すごくセンシティブな感じ。

 この、芸術家が持っているべき実に繊細な感受性って、どこから来てるんでしょうね。ここで、話が元に戻るわけなんですが…カルト宗教を立ち上げるまでにマンソンが体験してきた人生って、ものすごいと思います。親に捨てられ、看守に同性愛レイプされ…同じ目にあったら、マンソンでなくとも多くの人が心的トラウマになるでしょう。こういう強烈すぎる体験が、もしかしたら音楽の上に重なってきているのかも知れません。

 ときどき思う事があるのですが…音楽家って、僕の中ではやっぱり専門的教育を受けた人って段違いなうまさだと思うんです。ロックとかジャズとか色々ありますが、しかしクラシックとかインド音楽とか中国音楽の超一流の前に出たら、恥ずかしくって自分が音楽家だなんて言えなくなっちゃうんじゃないかと思うんですよ。そうならないのは、そのミュージシャンや音楽のリスナーが超一流自体を知らないからであって…。しかし、そういう教育の末に成立している音楽からは程遠い所にあるハズのフォーク音楽(なにもアメリカン・フォークに限らず、世界のフォルクロアの中でという意味です)の中には、ビックリするぐらいに表現の豊かな人が出てくる時があります。これって、分析的に突き詰める音楽とは全く違う方法で、音楽の核心に迫る道というのが実はあるんじゃないかと思ってしまうのです。チャールズ・マンソンの音楽の中には、現代の音楽が見失っていながら、しかし音楽が根源的に持っている何か大事なものがあるような気がしてならない。デモテープが元になっている音源との事で、ビックリするぐらい単純な構成の曲もあるんですが、それですらイントロのギターをルバートにして、サビだけで大きく音楽を動かして、ヴォーカルもどこを歌い込むべきでどこは抜くべきで、普通なら抜いてしまうような音のしっぽまで綺麗に表現を残して…こういう表現が細部にわたっているので、驚くほどに素晴らしい音楽に聴こえてきてしまう。音楽家の力量というものが実際に存在するというのをまざまざと見せつけられる音楽です。必聴

 あ、そうそう…それでもマンソンが行った非常極まる事件は弁解の余地なしだと僕は思います。教団のための金が欲しいだけが為に、何の落ち度もない人の家に侵入して、40か所以上をめった刺しにして殺害するような行為には、何の同情も与える必要はないと思います。あくまで、彼の音楽と、彼の反社会的行為を、同じ机上で評価しない方が賢明かと。まったく同じ理屈で、彼の素晴らしい音楽を、彼の反社会的行為が故に貶す必要もないと思うのです。



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『The Who / A Quick One』

Who_QuickOne.jpg 『マイ・ジェネレーション』に続いて発表された、ザ・フーのセカンドアルバムです。1966年発表。これも僕が若い頃は手に入れにくくって、友だちから借りて聴いていました。

 いやあ、このバンドは、同世代のブリティッシュ・ビートのグループの中では断トツでバンドアレンジがうまいな…。他のバンドだと、1曲2~3分の間でも飽きてしまう事が多いのに、このバンドはその中でシーンを作ったりして単なる繰り返しにせずにドラマを作るから、聴いていて飽きません。。ファーストアルバムではまだ「ビートバンドの中のひとつ」という感じだったのが、このアルバムになるとフーならではのバンドアレンジっぽいもの("I Need You"とか)がチラチラと見えてきます。ただ、それと背中合わせに、「作曲してからバンドで充分に練習しないままスタジオで録音してしまった」という感じもちょっとします。なんか、丁寧に演奏してしまって、ファーストアルバムやライブアルバムのような疾走感はあまり感じない。で、変態ドラマーのキース・ムーン作曲のバカバカしい曲も入っていたりして(だんだんアッチェルしていって意味不明に叫んだりする^^;)、相変わらずひねくれた感じもあって楽しい。。そうそう、キース・ムーンと言えば、昔見たフーのドキュメンタリー映画の中で、SM嬢に鞭を打たれながらインタビューに答えてたのが印象に残っています。

 フーのアルバムの中では比較的地味な印象のアルバムですが、聴くといつも「あ、けっこういいじゃん」と思うんですよね。ビートルズでいう"For Sale"みたいな位置なのかな?捨てがたい佳作だと思います!!



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『The Who / My Generation』

TheWho_MyGeneration.jpg ハンブル・パイを聴き直して以降、ブリティッシュ系のビート・ミュージックばかり聴いてるぞ(^^;)。こういう軽音楽って、仕事しながら何となく掛けておいても聴けちゃうので、いちど聴き始めると止まらなくなるんですよね。。これは、ザ・フーのデビューアルバムだったと思います。僕が若い頃はなぜか手に入れにくいアルバムで、僕はカセットにダビングして聴いていました。黒人音楽への憧憬を隠さずに出し、それをバンド形式のビート音楽上に乗せ、そのアルバムタイトルに"My Generation"と名付けるとは…あざといとも言えそうですが、それ以上に正鵠を得ているというか、「こういう価値観が俺たちのジェネレーションなんだよ」と言って正当化してしまう強さが素晴らしい。

 さて、同世代のブリティッシュ・ビート系のバンドとの比較でいうと…例えば、少し前に聴いたスモール・フェイセズとか、デビュー当時のビートルズあたりとの比較でいうと、バンドアレンジが段違いで上手いです。リズムフィギュアも多彩だし、ギターもスモールフェイセズみたいにジャカジャカやるだけじゃなくって、きちんとアレンジしてある。音が60年代のシャカシャカしたチープな音なのが残念ですが、それは時代的な問題なので、本人たちのせいじゃないし、仕方がないですね。それどころか、こういうサウンドって、60年代のブリティッシュ・ビートでしか聴く事が出来ないので(不思議な事に、これより古い50年代のアメリカ音楽とかになると、これよりもいい音だったりするものがあったりする)、なんか「この時代ならではの質感」という感じがしてきて、これはこれで気持ち良く感じたりし始めるから不思議。。ジェームス・ブラウンの"Please, Please, Please"なんかまでコピーしてたりするんですが、これをバンド形式でシャカシャカ演奏すると…ちゃんとブリティッシュっぽくなっちゃうのが面白い。。じゃ、アニマルズみたいにモロに黒人音楽に傾倒しているかというと…ボ・ディドリーの"I'm a Man"なんかもカバーしてるんですが、ちょっと茶化しているというか、好きなのと軽く扱うのが同居している感じで、ちょっとひねくれた感じがするんですよね。この斜に構えたセンスがフーなんだろうな。。これがモッズに受けたというのはものすごく理解できる気がします。

 な~んて聴きすすめているうちに、アルバムの真ん中で名曲"My Generation"がかかると…うおお、やっぱりこれは燃える!!やっぱりフーは、後期のシンセなんかを使って凝った事をする時期よりも、初期みたいにバンドでビート・ミュージックをやってる時の方がカッコいいと思ってしまいます(^^)。素晴らしい1枚!!



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『The Who / Live at LEEDS』

Who_LiveLeeds.jpg モッズご用達という事でいえば、スモールフェイセズよりもこちらの方がビッグネーム。ピート・タウンゼント擁するロックバンドであるザ・フーの超絶ライブアルバムです!!このアルバムは最高です!!数多あるロックのライブアルバムの中でも、上位に食い込む大傑作じゃないかと!!ZZトップやグランドファンクというアメリカンバンドのヤバいぐらいのパワーのライブ盤にも負けないぐらいに凄い!!

 元々このアルバムは、40分弱の全6曲という形で発表されました。僕が最初に買ったのはこれで、これが素晴らしかった!!1曲目"Young Man Blues"での、ヴォーカルと掛け合いで叩かれるドラムの凄まじいプレイ!!インテンポになってから一気にドライブするギター!ものすごい疾走感で突っ走って行った所で、満を持して始まるギター・ソロ!!その後も素晴らしいパフォーマンスが続き、大名曲"My Generation"や"Magic Bus"が…うおお、かっこいい!!もし、ビートルズにストーンズにアニマルズにキンクスにスモールフェイセズに…みたいな感じで、「60年代のブリティッシュ・ビート」という括りを作るとしたら、演奏力の凄まじさでは、フーは別格と言っていいんじゃないでしょうか!!ビートの強烈さでいえば、ツェッペリンさえ凌ぐといっても過言でないと思います。ロック好きなら、聞き逃す事の許されない必殺の1枚と思います!!

 それと…ちょっと前のハンブル・パイというロックバンドのライブ盤の記事で、ロックバンドのライブがだれてしまう問題点を書きました。ところが、このアルバムにはそれが無い。リーズ大学の狭いスペースでのパフォーマンスだったそうですが、それが故か大会場でのモニター返しに起因するバンドのバラバラ感なんて微塵もない。ロックバンドが長時間ライブの時間埋めに採用するようなダラけた即興パートもない(即興がダメと言っているわけじゃないんですが)。さっき書いた"Young Man Blues"なんて、短い演奏ですが、ソロにつないでいくまでの曲の構成は、簡単なコーラス形式ではないし、満を持して見せ場に持ってきたギターソロも、間違いなく書きソロの見事さ。もう、ここまで作っておけば音楽が崩れたりダレたりする筈が無いという用意周到さなんですよね。なんだ、ロックバンドもワンマンでこれだけの濃密なライブが出来るじゃん!!と思ったんですが、僕はここで失敗してしまいまして…
 このアルバムがあまりに好きなものだから、大人になってから、2枚組で33曲入り(!)にパワーアップした「デラックス・エディション」なるものに買い直してしまったんですよ。すると…曲間は間延びするし、ダメなパフォーマンスの曲もそれなりにあるし、聴いててダレてしまった。うわああ、買い直さなければよかったよ。。結局僕は、この完全盤を通して聴く事は無くって、好きなパフォーマンスだけをプログラムして聴いているんですが…するとビックリ、最初に買った時の6曲の編集とほとんど同じになってしまった(^^;)。。なるほど、あの編集は「もっともぶっ飛ぶロックアルバムにするにはどうすればいいのか」と突きつめた結果の完全な選曲だったわけですね。。あくまで個人の想像ですが、もし僕が最初に「デラックス・エディション」を聴いていたら、そんなに好きになっていなかったんじゃないかと。個人的には、6曲にまでバンドの素晴らしさを絞り込んだ最初のCDを聴く事をおススメします!!




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『Small Faces』

SmallFaces.jpg  前の記事でとりあげたスモールフェイセズの「オグデンズ~」が自分の趣味に合わなかったため、若い頃の僕のスモール・フェイセズ体験はそこで終わってしまいました。しかし、ザ・フーと並んで、本物のモッズ・バンドであると友人から聞いた事がありまして…「オグデンズ」みたいなコンセプティブなアルバムがモッズなわけもなく(^^)、僕は本当のスモール・フェイセズの音楽というのを聴いた事がないのかも知れない!というわけで、聴いてみました!!67年発表。あ、そうそう、スモール・フェイセズには、別の『Small Faces』というアルバムもあるそうで。

 第一印象は…2分、2分16秒、2分10秒…曲がみじけえ!!イントロがあって、曲のメロディが決まって、サビでハーモニーが合って…という所で音楽が終わってしまう。。いやあ、せっかく音楽を作る一番ベーシックなアイデアを思いついたというのに、それをおいしく料理する前に音楽が終了しちゃう感じがします。この段階でアレンジを終わりにしちゃうと、音楽がメロディとギターコード的なハーモニーだけで終わっちゃう。これは、本人たちの意向なのか、それともラジオ放送やレコード産業を見据えたレコード会社側の意向なのか。いずれにしても、この「アレンジする前に音楽を発表しちゃった」的なプロダクションによって、アレンジしたら面白くなりそうなメロディやコード進行の曲も、全部同じような曲に聴こえて終わってしまいます。メロディと和声の兼ね合いから、色々な可能性がありそうなのに、すべての曲がギターの「ジャン」というストローク一発に還元されてしまう。これは残念。同じ同世代のビート系のバンドでも、例えばビートルズの"Paperback writer"とか"I feel fine"とか"day tripper"だと、同じ2~3分の曲でも、ヴォーカルメロに対するオブリが作ってあったり、それなりにちゃんと作ってあるんですが…。

 他には…実は、イギリスのモッズというのは、ファッションや文化としては少しは理解しているつもりなんですが、音楽としては良く知らないんですよね。パーカー着てスクーターに乗ってクラブに集まって…みたいな若者文化の中で、ロックンロールやちょっと黒い音楽が聴かれている、みたいな感じなのかな?だとしたら、音楽そのものはR&Bとかロックンロールの範疇のビート音楽という感じでいいのかな?このアルバムで聴く事の出来る音楽も、僕の中では「60年代のブリティッシュ・ビート」という範疇から一歩もはみ出ていないので、当たらずとも遠からずな気がします。例えば、この音楽がモッズだとして、ストーンズやアニマルズとの差は何なのかと言われると、僕にはわからない(p゚ω゚*)。あ、チェンバロが入っている曲があったりして、オルガン系の使用が気持ちいと言えば気持ちい感じです(^^)。キューバ音楽調の曲が1曲入っていたのは驚きましたが、それも「やりたかったからやった」というだけなんでしょうね( ̄ー ̄)。いや、そういうのをカッコいいとするセンスこそが「モッズ」であるなら、少し理解できるし、そういうセンスって決して嫌いじゃないです。

 あと、僕が注目していたヴォーカルのスティーヴ・マリオットさんですが…うまいんですが、まだハンブル・パイの時の凄さはない感じ。この時点では、ザ・フーのヴォーカルに歌い回しがそっくりでした。彼らって、歌い方がみんな似ていますが、これはリトル・リチャードとかのブラック系のヴォーカリストにあこがれてたのかな?

 というわけで、僕的には、このアルバムが何か特別な1枚とは思えなかったのですが、しかし「60年代のブリティッシュ・ビートってこんな感じだよな」というステレオタイプであるようには感じたので、そういう雰囲気を楽しむには良いアルバムかもしれません。



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『SMALL FACES / Ogdens´ Nut Gone Flake』

SmallFaces_Ogdens.jpg 超絶ヴォーカリストであるスティーヴ・マリオットがハンブル・パイの前に在籍していたバンド「スモール・フェイセズ」のアルバムです。68年発表。若い頃の僕がこのアルバムに手を出したのは、ハンブル・パイにぶっ飛んだ経験があったので、その前身バンドの音楽を聴いてみたかったから。で、スモール・フェイセズの代表作はこれだと雑誌で読んだからです。そんな中、このレコードが丸い缶に入っている特殊ジャケットでCD化されました。紙巻きたばこの葉っぱの缶をモチーフにしていたんでしょうね。しかし…製作者側の熱意に反し、CDやLPをキチンと棚に収めたい僕はこれに当惑、結局買わずにレンタルCDで借りてきて、カセットにダビングして済ませてしまいました(^^;)。。このカセットを出して聴くのはその時以来なので…27~8年ぶりぐらい?いやあ、懐かしいです。。

 ジャケットデザインにあらわれているように、アルバムの内容もかなり凝ってます。コンセプト・アルバムというのか、ラジオのDJみたいな人が色々とアナウンスしながらその合間に音楽が挟まったり、木管のアンサンブルが被さったり、1曲目がいきなりインスト・ナンバーだったり。60年代半ばから後半のイギリスのロック・バンドというと、有名なのはビートルズやローリング・ストーンズ。彼らの大ヒットから、その後にロック系のビートバンドが大量にデビューしては消えていく状態。音楽性やサウンドの傾向もけっこう似ている。日本でいえば、古くはチェッカーズとか、最近ではジャニーズでも自分で演奏するグループとかいますよね。ああいうイメージに割と近い状態だったんじゃないかと思うのですが(日本が強く幼児性を感じるのに対し、当時のイギリスの方は不良性が強い感じかな?)、そういうグループが1曲目にインストを持ってきて、アルバム全体が物語のようになっていて、全部オリジナルで…というのは、相当に頑張ったんじゃないかと。そういえば、ビートルズやストーンズも、同時期にコンセプトアルバムを作ってました。ラジオ用のヒットチャートではなく、LP単位で作品を作りたいという流行だったのかも知れません。

 で、個人の感想としては…音楽そのものは、すごく茫洋としてしまっていて、楽しめませんでした。カセットにダビングしたままにして放ったらかしにしてあったのも、きっと音楽がつまらなかったんでしょうね。音もまだ「初期ビートルズ」的なスッカスカのサウンドで、ベースはローが抜けてサステインもなくポコポコいっちゃってるし、ギターの音もも全然魅力がない。コンセプト性が強い事が裏目に出て、マリオットの超絶ヴォーカルもあんまり出てきません。ただ…もし英語が出来る人が聴いたら、面白いのかも。何となくですが、ストーリーを中心に作ってある気がするんです。僕は英語が苦手なので、物語の半分も分からないんですが、英語が理解できる人が聴いたら、もしかしてすごく面白いアルバムなのかも知れません。ああ、やっぱり英会話の勉強を再開しよう、そうしよう。。



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『HUMBLE PIE / PERFORMANCE -Rockin' the Fillmore-』

 2015年、あけましておめでとうございます!!今年もどうぞよろしくお願いします(^^)。。新年を迎えて心機一転…かと思いきや、大みそかに続いてハンブル・パイのアルバムの紹介です( ̄ー ̄)。

HumblePie_Performance.jpg  ハンブル・パイの2枚組ライブアルバム(CDだと1枚)、1971年のパフォーマンスという事で、これまで紹介したアルバムでいえば、『大地と海の歌』より後、『スモーキン』より前という感じ。ピーター・フランプトンは…おお、まだ在籍している!若い頃、その2枚のアルバムにぶっ飛んだ僕は、名盤としてよく紹介されていたこのライブアルバムをワクワクしながら買ったのですが…記憶では、あまりいい印象が残ってないんですよね。。さて、久々に聴き直した結果は…

 う~ん、なんというのかなあ。悪くないんだけど…ダレる(^^;)。遅い。
 その理由は何なのか、聴きながらそんな事をずっと考えてしまいました。ひとつはフィルモア・イーストという大きな会場が問題なのかも。大きな会場でのライブになると、演奏はミュージシャン向けに用意されたステージモニターから出てくる音を頼りに演奏する事になります。だから、共演しているミュージシャンの音を直接聞く事が出来ず、すごく大雑把な音の情報だけで自分はプレイしなくてはいけなくなる。こうなると、PAエンジニアのモニター返しの技術が演奏を左右してしまう事になるんですが…このライブの演奏って、ちょっと「待つ」感じがあるのと、共演者に対するインタープレイが非常に大雑把な気がするのです。リズムとか大まかな所は聴こえているけど、細かいフレージングとかには反応していない…という気がするんです。4曲目""I Walk on Gilded Splinter"なんて、ギターバトルの長いプレイの後に、ビタッと決める所があるんですが、これがお互いを見ながら「大丈夫?いくよ?」みたいに揃えるから、スピード感を失って遅い遅い。。その後のに盛り上げる場所でも、ベースは同じリフを最初に出すから「またか」感が生まれる。それを解消するには例えばドラムがカウンターでフィルを入れるとか、アドリブでも解決策はいくらもあるんだろうけど、スタジオ盤ではバンド全体が反応できていたそういう部分のフォローが無い。ブルースハープのソロも楽節いっぱいまで持たなくって尻切れトンボで終わる。それをギターなりなんなりが受けてあげても良さそうなものなのに、その援軍もない。ワンノートのリフなんだから、すぐ次に行ってしまってもいいのに、それもしないで何もないまま何小節も待つ。…ここまでバンドの反応が悪いと、やっぱりモニター返しがよく聴こえてないんじゃないかと思ってしまいます。スタジオ盤ではあれほどの反応を見せる素晴らしいロックバンドなのに…。

 もうひとつダレる問題になったと思えるのが、音楽の中に組み入れられている即興パート。これはツェッペリンのライブアルバムの時にも感じた事なのですが、ブルース系の「スケール一発!」みたいな即興を延々とされると、どうしても退屈に感じてしまう…。同じ即興音楽でも、ジャズだと、和声進行上だけでも色々と変化がつけてあって飽きにくいし、ロック・ミュージシャンよりも即興演奏の組み立てにも慣れている人が多いから、同じコーラス形式の音楽でも、「同じところを回る」んじゃなくって、時間軸に沿ってドラマが展開していくように構成できたりする。しかし、このライブでのプレイは…なんか、手さぐりしながら演奏しているジャム・セッションに聴こえちゃう。これは僕個人の見解なんですが、多くのロックバンドって、楽譜を見ないで演奏しますよね。一時、僕はあれを「全部暗譜してるなんてすごい!!」と思っていたのですが…やっぱり覚えられる量には限界があるんだなと。まして長時間ライブになると、アンサンブル・パートが沢山ある楽曲をセットリストに加える事は出来なくって、勢いライブでは音楽の善悪ではなく、ライブの時間的サイズの都合で即興パートを組み込まなくてはいけなくなっているのでは?これは、ハンブル・パイだけじゃなくって、レッド・ツェッペリンとか、60~70年代のけっこうたくさんのロック・バンドに共通して感じる所です。

 ただ、ライブならではの良さもあって…お客さんと会話をするようなアドリブの歌い回しとMCが入るナンバーがあるんですが(5曲目の"Rolling' Stone")、マリオットさんの語るようなマシンガンヴォーカルに、お客さんが歓声をあげたり笑ったり拍手をしたり…途中で「ピー」なんて音が入って言葉が消されていたりww

 僕の感想は…悪くは無いんだけど、ハンブル・パイの実力からしたら、まだまだ不完全燃焼のパフォーマンスの気がします。もう少し短い持ち時間のステージで、しかももっと小さなライブハウスの音源とかがあれば、聴いてみたいなあ。もしかしたら、僕自身が大好きなロックバンドだったので、期待が大きすぎたのかも知れません(^^;)。。


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Bach Bach

Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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ロシアとウクライナがほぼ戦争状態に入りましたが、僕はソ連解体後のウクライナについて本当に無知…。これは2016年にオリバー・ストーン監督が作ったウクライナのドキュメンタリー映画。日本語字幕版が出たらぜひ観たい このブログをYoutube にアップしようか迷い中。するなら作業効率としては早いほど良いんですよね。。その時にはVOICEROIDに話してもらおうかと思ってるけど、誰の声がいいのか考え中
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