このCDには3つの音楽が入ってます。1曲目は古楽歌手ポール・ヒリアーを想定して書かれた「プロヴァーブ」。これ、僕の耳には、バロックよりはるか以前の古楽合唱を想定し、それをミニマルと掛け合わせて作ったような音楽に聴こえるのですが…メレディス・モンクの記事の時も書いたんですが、こういう「何かを借りてきて作った作品」というのは、僕は好きじゃないんですよ。それだったら、オリジナルを聴いた方が何倍もマシに思えてしまうというか。また、そういう点を除いても、構造もあまりに単純、和声にも何の挑戦もないので響きも単純。また、「ほら、綺麗でしょ?」みたいな、まるでイージーリスニングのようなのエコーがいっぱいかけてあって、なんかポップスみたい。聴いていてすぐに退屈になっちゃいました。 2曲目は「名古屋マリンバ」。名古屋音大の委嘱作ですが、2台マリンバで単純な音型を重ねてミニマルをやりますが、それこそ「え?それだけ?」って感じでオシマイ。こんな作曲でいいんだttら、世の作曲家だったら誰でも3日もあれば書けちゃうんじゃなかろうか。 3曲目は「シティ・ライフ」。今後聞き直して、面白いと感じる可能性があるかも知れないと思うのはこの曲でしょうか。しかし、今回の視聴では面白いと思わなかった(正直に言うと、マジでセンスねえな、と思ってしまった…)。きっと前回聴いた時も(20年前ぐらい?)、同じように「いつか面白いと感じる時が来るかも」と思って取っておいたんだろうな。この曲、簡単にいうと、現実音を録音して、それを作品の中に組み込む「ミュージック・コンクレート」という手法を使っています。純粋なミュージック・コンクレートは現実音だけで音楽を構成しちゃったりしますが、この作品では現実音と室内楽アンサンブル(ピアノ、木管、弦、ヴィブラフォン…他にも入ってるのかな?比較的小さい編成と思われる)を混ぜて使ってます。で、これがどうかというと…僕には、軟派なライト・クラシックに聴こえちゃう(>_<)。サンプラーを使って、ラップかターンテーブル音楽のような「check it out」という言葉が何度も繰り返されたり、車のスリップする音がリズムよく挿入されたり…というのが、すごく下手なクラブ・ミュージックのDJに聴こえちゃう。で、サンプラーでループされた音に合わせて管弦が「チャッチャッチャラッチャ…」みたいにアンサンブルしたりするんですが、これがカッコ悪すぎる…。。う~ん、クラシックの人がこういうのに手を出すと、「うわ、マジでセンスねえな…」と思わされることが結構あるんですが(市販のデジタル・シンセを使うにしても、よりによってその音かよ…みたいな音を平然とチョイスして、しかもプリセットの安っぽいリヴァーブを取らずにそのまま使っちゃったり、とか)、まあその典型という感じでしょうか。低予算のB級映画で、劇伴作曲家が何のポリシーもなく2週間ぐらいでバババッと作っちゃった使い捨て音楽みたいです。さっき「記事にしやすい」と書いたのは、「実際の町の音を収録して、シティ・ライフの喧騒や空虚さというものを音楽化した」みたいな文章化がしやすいという意味なんですが、実際に完成した音それそのものは上記の通りで、僕にとっては最悪でした。音楽というものは、この手の文章的な意味づけがなくとも、つまり音それそのものだけが取り出されても、魅力的なものでなければならんと思うんですよ。だって、音そのものが魅力的じゃなくても良いんだったら、何だってありになっちゃうじゃないですか。例えば「戦場の銃声だけを使って作った曲」なんていうのが仮にあったとして、音なしで既に重要な意味を作り出す事が出来ちゃう。でも、それだけでいいんだったら、音なんてもういりませんよね。そういうものを音楽的な価値を有した音楽といえるだろうか…そういう事です。