とはいえ…僕は、シーナさんやギターの鮎川誠さん擁するシーナ&ザ・ロケッツというバンドに思い入れがあるわけではありません。思い入れがあるのは、このバンドの「ユー・メイ・ドリーム」という曲。この曲を聴いた頃、僕は小学校高学年ぐらい。編成やリズムはロック的なんですが、アレンジにはテクノっぽい要素がかなり入っていて、音楽から受ける印象はかなりポップ。このアルバムではバットマンのテーマなんかもプレイしてるんですが、これもえらくテクノでポップ。こういう「軽いロック」とか「ポップなロック」みたいな匂いって、80年代の洋楽にも共通するところなんじゃないかと思うのですが(例えばカルチャークラブとかデュラン・デュランとか)、そういうのをまったく知らない小学生の僕は、ものすごく不思議な気分でこの曲を聴いていました。そして何回も聴いているうちに、理由はよく分からないんですが好きになったんですよね。前の記事で「オールディーズって、アメリカの50年代をすごく表象する記号になっていて、その前にも後にも似たようなサウンドがない」みたいなことを書いたと思うのですが、テクノサウンドというのは、ある意味で明るく浮かれた80年代を見事に表象しているんじゃないかと思うのです。僕にとっては、「YOU MAY DREAM」という曲自体に、明るく軽く楽しい80年代の匂いが全部入っている感じなのです。
しかし、このロック&ポップ&テクノみたいなものが、このバンドの本質であったかどうかは、僕はちょっと分かりません。なんせ、この後のこのバンドの音楽をほとんど聴いてないし(^^;)。ただ、このアルバムで言えば、イギー・ポップのカバーとか、キンクスの"You Really Gotta Me"とか、このアルバムではないですがヤードバーズのプレイで有名な"Train Kept a Rollin'"のカバーの「レモンティー」とか(というか、バンドアレンジは絶対にフォガットの"Honey Hush"を参考にしてる)もやっているところを見ると、バンド自体は普通にロック好きで、ロック出来ればそれで満足なバンドだったのかも。新宿ロフト的な感じでしょうか。シーナさんはすごくルーズな歌い方をする人で、子供の時にはこれがRCサクセションの忌野さんと共通して思えて、「こういうヘタっぽく歌うのがロックなのかなあ」とか思ったり。ファッションで言えば、露出の高い服着て、エロそうでちょっとアタマの弱そうで人の良さそうなロック・ヴォーカルのお姉さん…て感じ。もしかすると、ポップとかテクノというのはこの時のコンセプトというか、レコード会社側の戦略だっただけかもしれません。