
音楽では、演奏テクニックが売りのひとつになる事がよくあります。ロックならヘビメタのギタリスト速弾きとか、ジャズではサックスのものすごいプレイ争いとか。クラシックで言えば、ピアノがそれに近い状況になる時があります。作曲家で言えばリストとかショパンあたりはその代表格で、この辺の作曲家の曲の中には「演奏のものすごさ」を競っている世界すらある感じ。ヒーヒー言いながら楽譜を追っている僕からしたら「やめてくれ~!!」と言いたくなるぐらいに音符が書き込みまくってある曲があったり。いつぞや取り上げた
リストの超絶技巧練習曲集よりはマシですが、ショパンも後世のピアニストを苦しめる曲を色々と残してくれているのですよ(x_x;)。。まあ、弾けたらメチャクチャかっこいいんですけどね。。
で、クラシック・ピアノの世界には、演奏がとっても大変なショパンを得意とする「ショパン弾き」なんて言われる超絶野郎がいまして、このアシュケナージさんもそのひとり。この人の演奏は、なんというんですかねえ…聴いていると、ショパンの練習曲を演奏するのが簡単なんじゃないかと思えてくるからオソロシイ。軽々と弾きこなしちゃう感じです。思い入れったっぷりにドッカーンとぶつけてくるというんじゃなくて、超絶に難解な曲をサラッと演奏しちゃう。僕は、音楽は思い入れたっぷり表現たっぷりにやってくれる方が好みではあるんですが、ここまで易々と演奏されちゃうと、それはそれで脱帽モノです。ショパンが好きであるようでしたら、アシュケナージの演奏は一度は通らなくてはならないんじゃないかと。
さて、このCD、ショパンがポーランドにいた頃に作曲が始まったと言われています。黒鍵をやたらと使わされる曲、左手が異常に忙しい曲、分散和音をしつこく演奏させられる曲…音楽としても面白いのですが、演奏する方も大変でございます。泣きそうです。リストのアレよりはましですが(^^;)。でもですね、音楽的に言ったら、もう安定しまくった調の海の中にある音楽なので、この技芸的な部分の大変さが伝わらなかったら、けっこうつまらないかも。逆に言えば、そこが伝わればものすごく面白いというか、テクニック方面のクラシック・ピアノの深く狭い世界を楽しむ権利が貰えたようなものなので、それは幸せ(不幸?)な事なのかも知れません。あと、僕が思うに…これ、アシュケナージさんも、色々な録音を繋ぎ合わせて1枚のCDにしたんじゃないかという気もします。例えば、12の練習曲Op.10の1番ハ長調は、デジタルな感じの音で、耳が痛いぐらいの感じなんですが、同じ3番の「
別れの曲」では、ものすごくアナログな感じでホールの音がボワンボワンしてすっごく遠い感じ。もしかして、アシュケナージさんでも、一回の録音では満足できない曲がいくつかあって、「これだけはこの前のコンサートの録音に差し替えてくれ~」とか、そういう事があったんじゃないかという気もします( ̄ー ̄)。いずれにせよ、
ショパン好きなら避けては通れぬ1枚!クラシック・ピアノはあまり聴いた事がないけどチョット聴いてみたい、なんていう人にもいいかも知れません。
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