
だんだん分かってきたと思いますが、クラシック・ピアノの棚の整理をしている最中なわけです(^^)。この棚が一番量が多くって大変なんだなあ。。でもって、本題。最初にこのCDを聴いた時(15年ぐらい前?)の第一印象は、「
音が素晴らしすぎる!!」という事でした。これは、最初の音が聴こえてからわずか数秒で感じた感覚。ちょっとこの事を頭においていただいて…
この作品は、日本人のクラシック・ピアニストである内田光子さんによる、
シューベルトの作品集です。クラシックを全然聴かない人でも、中村紘子さんと内田光子さんのふたりは、顔を見た事があるのではないでしょうか。そのぐらい日本人ピアニストとして有名な方なんじゃないかと思います。しかし…クラシックの演奏家というと、やっぱりヨーロッパ人が主役であって、それ以外の地域は亜流、まして日本なんて…クラシックを本格的に聴きはじめた学生の頃、僕はそんな風に思ってました。こういうものって、結構ありますよね。フィギュアスケートなんかもそうで、ヨーロッパの人はスラッとしてみんな綺麗で、メダルも日本人なんてとてもとても。しかし今では日本が本当に追いついて、抜いちゃう人まで出てきちゃった。クラシック・ピアニストの世界も、なかなか馬鹿に出来ないのです。
内田さんも、鳴かず飛ばずの時代がすごく長かったそうです。レコーディングの話どころか、自主開催のリサイタルを続けるのがやっと、チケットを売るのにもヒーヒー言っていたそうで。これは、よほど特別なコンクールでの受賞歴からの華々しいレコードデビューでも飾らない限り、日本人のクラシック演奏家は皆そう。内田さんも様々な受賞歴がありますが、まあクラシック演奏家としては特別というほどでもなく、これぐらいの人なら日本だけでも300人ぐらいいると思います。こういう中から、どうやってアタマひとつ飛び出してくるのか。ここは、個人的に興味があるところですが、内田さんの場合は、あるモーツアルトを扱ったシリーズ企画が受けたのが切っ掛けだったそうで。以降の活躍っぷりは有名ですね。お父さんが外交官だった事などから、「金で名声を買った」とか色々言われた事もあったし、実際にそういうのが一部ではまかり通っちゃう嫌な業界でもあったのですが、しかしこのCDのような素晴らしいものを聴いてしまうと、それらが嫉妬か何かから来た単なる誹謗中傷にしか聞こえなくなるんじゃないかと思うのです。それぐらいに音が素晴らしい!!音に対する徹底的な気遣いは、もうこれは日本人的な細かさが良い方に出た好例なんじゃないかと思います。
パッと聴きでも傷があるものの、表現が素晴らしい!!しかし、とにかく一番に感銘を受けるのは、「絶対に素晴らしい録音を残す!」というその気迫です。自分のピアノを、自分が最も気に入っているウィーンのホールに空輸、残響の最も美しい場所にピアノを設置し、マイクの位置を決め…。既にアタマひとつ抜けてきたプレイヤーさんなら、そんな事しなくたって、ムジ一クフェラインなんていう一流のホールを使うなら、そこの一流のピアノを使ったっていいわけだし、その方が100倍ぐらい楽な筈なんですよね。クラシックのピアニストがマイピアノをホールに持ち込むというのはよくある話ではありますが、その成果がここまで音にあらわれてしまう事を知ったのは、僕にとってはこれが初でした。
そして、シューベルトの「ピアノ・ソナタ21番」。シューベルトがピアノソナタを書いていたとは知りませんでしたが、これが意外と良かったです。
シューベルトが死ぬ数週間前に書きあげた、抒情的なロマン派音楽の官能性漂いまくり。作曲的には…以降のショパンやリストを知っていると、ちょっと格下感がないわけではないですが、それでもこれは素晴らしかった(^^)。
本当は、日本人クラシック・ピアニスト論みたいな事も書こうと思ってたのですが、なんか長くなっちゃったので、それはまたいつか書こうと思います。今回言いたかったのは、「
シューベルトなんて聴く男はオカマだぜ!と思っていた自分が、あまりの音の美しさに感動してしまった1枚だったという事です。日本人ピアニストとかいう色眼鏡を外して聴くべし!!」という話でした。幸いなことに、アマゾンで中古盤が恐ろしく安い値段で売ってました( ̄ー ̄)。。でも…なんでこういうCDを手放しちゃうんだろうか、モッタイナイ…。
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