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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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『OZZY OSBOURNE / Randy Rhodes Tribute』

OzzyOsbourne_Tribute.jpg しかしオジー・オズボーン・バンドの名ギタリストと言えば、ジェイク・E・リーさんよりもランディ・ローズさんの方が有名かも。ランディーさんは早死にしてしまって(23~4歳ぐらい?)、これは彼のトリビュート作として発表されたライブアルバム。メタルがクラスで大流行した中学生時代、メタルマニアの僕の友人の何人かはこのアルバムを神のように崇めていて、「音楽好きならこのアルバムが嫌いなんてありえない」「天才の演奏だ」なんて言ってました。しかし、メタル以外の音楽も聴く友人界隈では、ヒソヒソと「…そんなにすごいか?これが天才ならドルフィーやグールドは神だよな」なんて言っていたわけです。僕はどちらかというと後者。すごく綺麗に演奏するなあとは思ったんですが、選ぶ音はすべてインサイドだし、メタルって視覚イメージとは違って、音楽はすごく保守的なんだなあ、と思ったのです。うまい下手ではなくって、刺激が足りなかったんですよね。しかしそんなに大絶賛されるなら、何かが僕に分からないだけかもしれないと思い、カセットだけは持っていました。で、何十年ぶりかに聴いたところ…

 な、なるほど~。、若い時には全然感じませんでしたが、これは確かにうまいわ、一聴してクラシック・ギターのメソッドを修めているのが分かります(^^)。。若い頃の僕というのは、ある意味で言うと今よりピュアで、「これは良い、これはダメ」みたいな所がはっきりしていたのかも。だから、うまい下手なんてどうでもよくって、音楽が好きか嫌いか。しかし、大人になると良い意味でも悪い意味でも色々なものを受け入れられるようになって、このCDに関しては「バンドサウンドのほとんどを1本のギターだけで成立させている」とか「単純にうまい」という点だけでOKでした(^^)。ただし、音楽的にはどこまで行ってもドミソなので、サウンドがえらく古典的というか、先鋭的なサウンドを求める事は出来ない感じかな?

 というわけで、音楽的には保守、演奏的には技術志向(速弾きとか、そういう子供っぽい事じゃなくってね)なエレキギターファンの人であれば、これはとても素晴らしく感じるアルバムなんじゃないかと思います。オジー・オズボーンというヴォーカリストのアルバムなのにランディ・ローズさんの事ばかり書いてしまいましたが、実際ここにある音楽の大半はギタープレイに掛かっていると思います(^^)。



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『BADLANDS / VOODOO HIGHWAY』

Badlands_VoodooHighway.jpg 自分のブログを読み返していたら、そんなに思い入れのないCDのレビューも結構ある事に気づきました。ロックでは、メタル関係の記事が結構多い事にビックリ。僕が本当に好きなロックって本当はぜんぜん違う方向なんですが、これは「このCD、売っちゃおうかな…」と思って整理のために聴いたために起きた現象。まあでも買った当時は好きで買っていたわけだから…つまりは卒業しちゃったという感じなのかな?このCDは、学生の頃にメタル好きの友人から「これは絶対に聴け!」といって買わされたものです(^^)。バッドランズというハードロック・バンドのセカンドアルバムで、たしかこのアルバムを最後に解散しちゃったんじゃなかったかな?

 このバンド、元ブラック・サバスのヴォーカリストのオジー・オズボーンのバンドでギターを演奏していたジェイク・E・リーという人が結成したバンドで、メタル関係の世界ではそれなりに話題になってたそうです(その友人談)。このアルバムが出た1991年頃のメタルというと、昔のドロドロしたメタルとは違う、すごくさわやかでテクニカルなLAメタル(AORとメタルを合わせたようなサウンドだった)の全盛期が過ぎつつあって、メタルの中から、もっと王道のロックみたいな事をやるバンドが出始めていました。スラッシュ・メタルという高速ビートが命みたいなジャンルのバンドが表舞台に立ち始めてましたが、そのスラッシュの看板バンドですらハードロックを志向し始めていた感じ。シンデレラというバンドもぜんぜんメタルっぽくないアルバムを出していたし(しかし内容を全然覚えてない^^;)、レーサーXの馬鹿テクギタリストのポール・ギルバートさんもMR.BIGなんていう王道ハードロックのようなバンドを結成したりしてました。で、これもそういう路線に進んだバンドのひとつで、すごくうまいハード・ロック・バンドという感じでした。1曲目はいきなりボトルネックを使ったブルージーなハードロックだし、他のナンバーもメタルって感じの曲はありません。5曲目なんて、思いっきり戦前アコースティック・ブルースですし(すぐ終わっちゃうけど^^)、アルバムタイトルにもなった"VOODOO HIGHWAY"も、イントロはなんとドブロ・ギターのスライドプレイ!!悪い曲なんて1曲もないし、どれもこれも完成度の高い演奏なんだけど…ロックのステレオタイプ展示会みたいで、引っかかるものが全然なかった(T_T)。しかし、ギターのプレイだけに注目して聴いていると…いやあ、これ、すごいうまいな。細かいプレイもすごくうまいんですが、手先でピロピロやっているだけじゃなくって、全体としてはラフにガツンとくる感じで、それがすごくロック的でカッコいい。8曲目のギターのミュート・カッティングを含めた"Silver Horses"なんて、曲はつまらないと思うのに、ギターはコピーしたくなっちゃいます。

 久々に聴いた感想としては、音楽自体は型通りでつまらなく感じましたが、ギターだけに注目して聴くとやさぐれている上にうまくってすごくカッコいい!!ガキ臭い意見ですが(^^;)、生でライブを見ていたらすごくカッコいいバンドだったんじゃなかろうか。これからロック・ギターをはじめようと思っている若い人、または久々にエレキギターを弾いてみようかなんていう人にとっては、バイブルになってもおかしくないぐらいに価値あるアルバムかも(^^)?!


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『渡辺貞夫 / A NIGHT WITH STRINGS vol.2』

WatanabeSadao_Strings2.jpg ナベサダさん全盛期では無い頃の録音ではありますが、どうしても紹介したいアルバムが、これ。1993年のライブ録音、ウィズ・ストリングスです。今も続いているのかどうか分かりませんが、この頃のナベサダさんは、クリスマスにオーチャードホールでウィズ・ストリングスの公演を行うのが恒例になっていて、その録音というわけです。

 ナベサダさんでウィズ・ストリングスというと、どうしてもチャーリー・パーカーを思い浮かべてしまうかと思うんですが、これは全曲ともブラジル調の曲が占めています。そして…恐ろしく音がいい!!1曲目がいきなりバラードで、渡辺貞夫さん屈指の名曲"ELIS"から始まるのですが、このイントロのストリングスを聴いただけで鳥肌もの!!(ちなみに、ストリングス・アレンジはヴィンス・メンドーサ。すっげえ気合の入り方だ…)そして、いよいよ貞夫さんがテーマを演奏すると…うああああ、なんという表現力、ソロも書いたんじゃないかというほどの見事なラインです。演奏も音楽も素晴らしいんですが、このCDで一番すごいと思うのは、正直言ってこの録音です。この音だけで死んでもいいと思うほどに音がいい!!演奏や会場の響きがいいのは当然ですが、きっとレコーディング・エンジニアが超一流なんだと思います。楽器のバランス、会場の響き、空間の作り方…僕が聴いたウィズ・ストリングのアルト・サックス作品の中では、これ以上に良い録音のCDを聴いた事がありません。この音を聴くためだけに買っても損は無いというぐらいの至福のサウンドを聴く事が出来ます!!

 で、肝心の音楽の方ですが…曲としては、貞夫さんのオリジナル、ジョビン、ジルベルト・ジルの曲が演奏されるのですが、全てにおいてオーケストラ・アレンジがいい!!バンドはエレキ・ギターにエレキ・ベースの入ったモダン・ボッサ・バンドという感じなんですが、これがテクニック志向のジャズ・フュージョンに走らず、実に気持ちよくグルーブします。このバンド・コンセプトがなかったら、もしかしたら旧来のジャズのウィズ・ストリングスものと変わらない伝統芸に陥っていたかもしれないと思うと、目指していたものも素晴らしかったんじゃないかと(一歩間違うと軽いものになっちゃいそうで際どいですが( ̄ー ̄)。そして、貞夫さんのプレイが悶絶もの。若い時のバリバリのアルティストみたいな事はせず、美しく音を紡ぎ出して行きます。味ものの演奏となると、しかもサックスとかヴァイオリンとかのテクニシャンとなると、どうしても色っぽくやりすぎてしまうものですが、歌わせながらもやりすぎないこの加減というか、歌心と楽理的な挑戦が見事に調和した素晴らしい演奏。やっぱり、白髪まじりの年齢になったらこういう風に音楽したい。なんという理想的な齢の重ね方をしたんだろうかとため息が出てしまいます。

 さてこのCD、発売元が今は無きファンハウス。超バブリーなレコード会社で、日本人ジャズの新作の録音にも結構力を入れて、幾つも良いレコードを残してくれました。これは、その中でも屈指の名盤なんじゃないかと。ものすごいメンバー、ものすごいアレンジャー、ウィズ・ストリングスの実現、入念に行われたと思われる完璧なアレンジと完璧なリハーサル…ファンハウスなき今、今の日本ではこういう録音は出来ないかも。全然有名な盤ではないと思うのですが、間違いなくナベサダさん生涯の会心作じゃないかと思います。超おススメ!!



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書籍『ジャズスタディ』 渡辺貞夫

JazzStudy.jpg で、恐らく日本のジャズの大革命に繋がったのが、渡辺貞夫さんがバークレーで学んだことをまとめたこの本。ジャズ理論書として、有名すぎるぐらいに有名ですね。昔、日本でジャズを独学で学ぼうとしたらこれしかありませんでした。

 菊地雅章さんの『アタッチト』の記事で少し書きましたが、戦後日本ジャズは、バークレー留学生が現れる前後で、匂いが全然違います。以前は進駐軍ラジオ&キャバレー&日本歌謡のミックスみたいな単純なコードとメロディだけの音楽だったのが、渡辺貞夫さんのバークレー帰りからいきなりモダン化して、レベルが飛躍的に上昇した感じがします。でも、当時外国に音楽留学するなんて、しかもクラシックではなくジャズでの留学なんて、ちょっと出来ない事だったんじゃないかと。そういう状況を鑑みて、日本のジャズマンのために渡辺さんは海外で学んだことをこの本にまとめてくれたんだと思います。なんという素晴らしい人間性(^^)。貞夫さんがこの本を書いてくれなかったら、日本ジャズのモダン化はそうとう遅れてたんじゃないかなあ。

 さて、今の時代的に言うと…ジャズの理論って、本当の理論部分と、具体的にどう演奏するかという技法部分のふたつに分かれると思います。もちろん双方は地続きですし、両方押さえられれば理想なんでしょうが、現実問題としてジャズを演奏したければ、「このコード進行の場合は、こういうリハーモニゼーションとこういうリハーモニゼーションがあって、なぜそうかというと…」という理論よりも、「理由は兎も角、マイナーツーファイブの場合は2度も5度もエクステンションしちゃうのが普通」みたいな技法的な部分を学ばないと実際の演奏に繋ぎにくい。で、この本は、理論本に近くて、しかも懇切丁寧な教科書というよりもメモやノートに近い。だから、単にこの本だけでジャズを学ぼうとしたら、演奏につなぎにくいという点で挫折しやすいなんじゃないかと(^^;)。もちろん頑張れば、書いてある事自体は理解できると思います。しかし理論書としても、この本は実質的にジャズ和声理論とブラス・アレンジメントに重きが置かれている感じで(ブラスアレンジのハーモニーなんて、恐らく貞夫さんがサックス奏者だから、バークレーで専攻した科目だったとか、そういうんじゃないのかなあ^^;)、「なぜそのテンションなのか」という部分の説明は省かれていて、そうなるとベタ覚えになるのでチンプンカンプンになってしまう可能性もあるんじゃないかと思います。

 良い所は、現在出ている丁寧な理論書ではあまり触れられていない部分もある所。モードとか、アッパーストラクチャー・トライアドの根本原理あたりの知識を最初に学んだのは、僕はこの本が最初でした。で、他にもジャズ・セオリーの本はけっこう勉強したんですが、アッパー・ストラクチュアの捉え方なんかは、全く違うアプローチのものもあったりするので、マジメに勉強したかったら「どっちが」じゃなくて「どっちも」あたらないとダメなような気がします。僕個人に関していうと、この本を読んでなかったら、モダン・ジャズの響きに対する理解は遅れていた気がします。あと…ある時期に日本で出ていたジャズ理論書の多くが、この本とほぼ同じ構成です。これは、ジャズスタディを参考にして書かれたからなのか、あるいはバークリーのメソッド自体がそうであったのか…。つまり、(少なくともある時期までの)ジャズ理論の大スタンダードな学び方がこれだったんじゃないかと。今からジャズを学びたいなら、僕個人としてはもっとおススメのセオリー本があります。でも、理論の勉強をする時って、教科書は同じ系統のモノでも3~4冊ぐらいは持っておかないと捗らない(どの本もだいたい一長一短があるので)と思うので、持っておきたいジャズ理論書ベスト5には入る本なんじゃないかと。

 オマケですが…他にもこの本の面白い使用用途がありまして、この本を読んだ上で日本ジャズの黎明期からモダン化までの録音を聴くと、けっこう面白い事が起きます。例えば、ひとつ前の記事で書いた貞夫さんの『ジャズ&ボッサ』での演奏なんて、この本で「なるほど、きっとこのフォース・ビルドは貞夫さんが日本のプレイヤーに伝えたんだな…」な~んていうのがあったりして。なんか、日本のジャズがモダン化していく時期の録音を聴いていると、「あ、ジャズスタディだわ」と思う事が結構出てきます。たぶんプロの人も読んでたんでしょうね(^^)。。というわけで、この本自体が日本人ジャズ史みたいな所があるので、楽器を演奏しない人でも、日本ジャズが好きな人には色々と発見があると思うので、超おススメです!!



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『渡辺貞夫 / ジャズ&ボッサ』

WatanabeSadao_JazzBossa.jpg で、僕が持っている菊地雅章さんの演奏の中で、比較的古いものがこれ。アルトサックスの渡辺貞夫さんの出生作にして大名盤の誉れ高い『jazz & bossa』です!!発表は1966年という事なので、貞夫さんがバークレー留学から帰ってからの作品、菊地さんはバークレー留学前という事になるのかな?

 渡辺貞夫(a.sax, fl)、プーさん(p)、富樫雅章(dr)、中牟礼貞則(g)…メンバーからして素晴らしすぎです。そして…いやあ、2015年の今聴いても、皆さんめっちゃうまい!!アルバムタイトルから、スタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトのボサノヴァのアルバムを想像したくなっちゃうかと思いますが、そうじゃなくって、A面がジャズ、B面がボッサという作り。というわけで、ギターの中牟礼さんはB面での活躍という事になります。そして…1曲目から軽快なジャズ!いやあ、若い頃の貞夫さんってこんなにうまかったのか。そして、菊地雅章さんのピアノが予想以上にうまくてびっくり。アメリカ留学なんてしなくたって大丈夫だったんじゃないの、これ…。露骨にコンピングを主体にバッキングしてますが、ここまで徹底されると逆にカッコよく聞こえてしまうという発見がありました。セロニアス・モンクのナンバーだけは違和感を感じるんですが、きっとモンクナンバーって、なんかカッコよく演奏するコツがあるんでしょうね。

 いやあ、なんというか、日本ジャズ黎明期の演奏だろうに、まったく非の打ちどころのない演奏です。色々と古い語法が多いとか、そういうのはあるんですが、しかしこの人たちがいなかったら、日本での以降のジャズ教育自体もなかったわけで。恐らく、このアルバムがあるから以降の日本ジャズが興隆したんであって、貞夫さんとか富樫さんとか菊地さんとかのその後だけじゃなくって、日本のジャズを語る上でも外す事の出来ないマストアイテムと思います!



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『菊地雅章 / ススト』

KikuchiMasaaki_Susto.jpg 菊地雅章さんの作品としては、前の記事で取り上げた『アタッチト』よりも、こっちの方が100倍ぐらい有名なんじゃないかしら。1981年発表のリーダー作です。

 音楽性が、『アタッチト』とは全然違うので注意。もろにブラック/ファンク色が強かった頃のエレクトリック・マイルスです。エレピとか、シンセとか、ロック風のドラムとか、その上でダラダラとインプロしている管楽器とか。1曲目なんかずっとループですし、2曲目はエレキギターにエレキピアノに8ビートのドラムで適当に合わせていて、どフュージョン。この時代のジャズってエレクトリックの方向を向いていた所があって、テレビだと赤いルパン3世とか松田優作のドラマのBGMなんかがこの路線、映画でも金田一耕輔みたいなスリラーですらこういうサウンドでした。今聴くと「ああ、80年代の日本の歌謡フュージョンだなあ」なんて思っちゃいます。エレクトリック・ジャズでもものすごいカッコ良いものってあると思うんですが、このアルバムは安直で浅くてダサい(あくまで僕個人の感想です^^;)。

 こういう音って「時代の思い出」としては嫌いじゃないんだけど、音楽の本線とは思えなくて、流行をやったというだけの気がしちゃう。この録音、たぶん簡単なリードシートだけを作ってセッションしたんじゃないかと思うんですが、これをやれと言われたら、そこそこのミュージシャンなら誰でも簡単に作れると思います。このアルバムは結構売れたもので、若い頃の僕にとっての菊地さんのイメージはこれでした。「鍵盤奏者にありがちな、一応色々な音楽は出来るけど、何をやりたいかがはっきりしない技術屋さん」みたいな印象を持ってしまって、ナメていたわけです(^^;)。。というわけで、僕には合わないアルバムでした。あ、でも、フュージョンとかエレクトリック・マイルスのセッション的な作風が好きという人だったら、結構イケるのかも。しかし前の記事で書いた『アタッチト』で、その印象が180度変わっちゃうんだから、アルバム1枚でミュージシャンを評価するというのは危険なんでしょうね。



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『菊地雅章 / アタッチト』

attached.jpg 2次大戦直後の日本のジャズ・シーンというのは、80~90年代のアメリカのジャズそのもののうまい人だらけのシーンとは全然違って、キャバレーで演奏しているハコバンとかビッグバンドというイメージがあります。古い日本の映画のキャバレーのシーンなんかでよく聴かれるあれです。かつてクレイジーキャッツの「解っちゃいるけどやめられない~っと」とか石原裕次郎の「おいらはドラマ~~」なんかの、あのサウンドです。ブラスバンドの延長にある、ディキシーランドジャズと日本歌謡がゴチャゴチャに混じっている感じ。実際のところ、ブラバンと古典的クラシックの音楽教育(主に芸大)のミックス状況から、米軍キャンプにあるレコードや進駐軍放送なんかのコピーをしていたからそういう音になったんじゃないかと。で、この状況が変わるのは、日本人の中から実際にアメリカのジャズ学校に行って学んだ人が出てきてからじゃないかと思います。1939年という 戦時中に生まれた菊地雅章さんは、日本のジャズが日本独自の歌謡ジャズから本場ジャズに踏み込んだパイオニアのひとりだったんじゃないかと思います。

 若い頃のプーさん(菊地さんの愛称)の音は、僕はあまり意識して聴いた事がありません。しかし、日野皓正さんとのグループとか、渡辺貞夫さんのバンドとか、銀巴里セッションとか、日本ジャズ黎明期の名盤と言われているものには悉く出演しているんですよね。それらの印象というと、悪く言うと「重い」「考えながら演奏しているみたいで遅い」「時間軸でのアーティキュレーションに乏しい」という感じなんですが、しかしこれが諸刃の剣で、時として「考えた演奏で演奏が流れてしまわない」「1音1音の重みが大きい」という風に聴こえてくる事があります。何故こうなるのかというと…さっき言ったような日本の戦後ジャズの置かれた状況と、プーさんのキャリアを見ると、何となく想像できます。今の恵まれた音楽学習環境から考えれば、いわば独学的な要素がすごく大きかったんじゃないかと思うのです。これは、古い日本人クラシック・ピアニストにも共通するサウンドの傾向。プーさんが真面目に音楽を学んだのは、ソニー・ロリンズの日本公演でピアニストを務めた直後の30歳になってから渡米したバークレーでの勉強が唯一なんじゃないかと思います。40の手習いなんて言いますが、アマチュアでなくてプロの第一線で活躍していた人が、勉強のために学生に混じって音楽を学びに行くというこの決意がスゴイ。もしかしたら、ロリンズの伴奏を務めて、「ああ、ここから先は本気で勉強しないと無理だ」とか、思ったのかも知れません。

 そして、1989年録音の本作です。菊地雅章さん初の無伴奏ピアノ・ソロ作。カーラ・ブレイ、オーネット・コールマン、セロニアス・モンク、デューク・エリントン、チャールズ・ミンガス、そしてオリジナル…なんというセンスの良さ、真剣勝負のストイックさです。綺麗なスタンダードとか女性受けそうな綺麗な曲なんて1曲も選びません。そしてその演奏は…まるで1音1音考えながら弾いているかのような重さ、しかしこの1音1音の深さというか、真剣さに感動してしまいました。この重さのニュアンスって、時々日本の超ホンモノ芸術音楽志向の人の音楽に感じる事があります。魂の演奏、素晴らしい。

 僕が持っているCDは、TRANSHEART という日本のレーベルから出たもの(ジャケットの写真は、アマゾンに出ている奴と違って、上に表示したものと同じ)。僕の記憶では、昔NECが作ったジャズ寄りの音楽レーベルで、ポール・ブレイの作品とか、売れ線狙いではないけっこう渋いレーベルだったのですが、すぐに潰れちゃった気が(^^;)。というわけで、今は凄く入手しにくいCDになっちゃったみたいですが、この深さは素晴らしすぎるので、中古盤屋ででも見かけたら是非手にされる事をおススメする次第です(^^)。



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『Russian Church Music』

RussianChurchMusic.jpg ロシア正教会の聖歌集です。聴いていて鳥肌が立つほどの美しい四声の男声コーラスです。

 浅はかな知識で申し訳ないのですが…キリスト教というのは、大きく分けるとカトリック、プロテスタント、そして東方正教会系の3つに分かれると思います。この場合の「東方」というのは、西洋か東洋かではなくって、西ヨーロッパか東ヨーロッパかという意味。僕らが結婚式の時なんかに耳にする讃美歌は、東方ではなくって西寄りの音楽です。で、すごく分かりやすい西と東方の教会音楽の違いは、伴奏の有無です。東方正教系は、無伴奏なんですよね。東方正教会というのは、ある側面で商売化してしまった一部カトリック教会の歴史と違って、すごくストイックで、本当に救いを求めているような感じ。この宗教そのものの在り方と相まって、無伴奏合唱が恐ろしく静謐で荘厳な感じ。西の聖歌がどこか明るい感じなのに対して、ロシア正教会系の聖歌はどこか暗く、そして荘厳なんです。いつかロシア民謡のディスクを紹介した事がありますが、これはロシア文化に通底するところなのかも知れませんね。

 東方正教会というのは、結局はローマ・カトリック教会みたいな総本山と支部みたいな感じじゃなくって、あくまで自分たちが信仰してきたものを大事にして、山村にひっそりと作った教会や洞窟で祈りを捧げているという独立独歩みたいなイメージが僕には強くて(あくまで僕のイメージです、実際はどうなんでしょうか)、だからローマ正教系とかブルガリア正教とかグルジア正教とか、一本化されずにそれぞれバラバラにやってる感じです。で、ローマ正教系の聖歌を収めたこのディスクは、特に「祈り」という側面が強いんじゃないかと思います。言葉がすごく重要という感じなんですよね。旧ソ連時代って、宗教が弾圧されてたじゃないですか。だから、キリスト教徒は山に隠して作った教会に密かに集まって、祈りを捧げていたんだとか。なんか、そういう心から出てきた祈り、みたいなものをニワカの僕ですら感じちゃうぐらいの凄いコーラスなんですよ。教会音楽から発展していたクラシックの歴史なんかまったく無視して、5世紀とか6世紀の教会音楽がそのまま残っている感じ。しかも、それを音楽家がやっているというより、ロシアの森の奥で、それがずっと歌い継がれてきた、みたいな凄さを感じます。

 東方正教会系のものすごい合唱を聞きたければ、このCDは絶対の一枚だと思います。僕は、この荘厳さに、なんかまるで宗教的な感動にも近いような心を打たれ方をしてしまいました。あ、そうそう、このCDですが、すべての聖歌のロシア語歌詞と英語歌詞(もうひとつ、何語か分からない歌詞がついてます。ラテン語?)、それにロシア正教歌に関する詳しい解説(英語やロシア語など)がついてます。これが素晴らしすぎるので、MP3のダウンロードではなくって、ブックレットがちゃんとついているCDでの購入をおススメします(^^)。



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『シューマン:オーボエとピアノのための作品集 D.ボイド(oboe), M.J.ピリス(p)』

Schumann_OboeandKlavier.jpg 半年ほど前、嬉しい事にミーティングで音楽出版社に行く機会に恵まれました。その時、雑談でベートーヴェンの3大ピアノソナタの話になりまして、その時の話を簡単にいうと「繰り返しが多すぎて、また最後の盛り上げ方がこれでもかこれでもかとしつこすぎて、聴いていて気恥ずかしくなってしまう」みたいな感じ。たぶん、熱情のクライマックスの話なんだろうなと思って聴いていた僕ですが、たしかにそれはうなづけるところもあるなあ、と。で、次に音楽出版社さんの編集長さんがポツリといった言葉が印象に残ってまして…「最近思うんですが、実はシューマンが一番素晴らしいんじゃないかと思うんですよ」
 僕は若い頃にシューマンの「子供の情景」というピアノ曲を演奏した事がありまして(好きで演奏したわけじゃなくって、リストやベートーヴェンよりも簡単そうだったから演奏したというだけ^^;)、これがなんかボンヤリした感じの曲で、あまり良い印象じゃなかったんですよね。だから、編集長さんの仰った言葉がちょっと意外な感じがして、心のどこかに残ってたのです。僕がシューマンを良いと思ったのは結構遅くて、アーノンクール&アルゲリッチ・クレーメルが演奏した協奏曲の録音を聴いてから。これが「子供の情景」からは想像がつかないぐらいの激情ロマン派音楽。あれはカッコよかった(僕の趣味だっただけかもしれません^^)!!で、本作ですが…

 とにかく推薦したいのは、冒頭に収められた「3つのロマンス」の作品の完成度、演奏の素晴らしさ、音の良さです。1楽章出だし、オーボエの音を聴こえた瞬間から鳥肌モノ!!いやあ、これは素晴らしすぎる!!何と言えばいいか…過度に激しくするでもなく、過度に感傷的になるのでもなく、そしてインテンポに入り、オーボエを受けるピアノが出てきて…美しさ、悲しさ、抒情性、なんか色々なものが絶妙にブレンドされている感じで、しかし過剰な所がどこにもないのです。なんか、半年前に編集長さんがおっしゃられていたことが、いきなり分かった気がしました。ヘタクソながらも音楽をやっていると、とにかく苦労するのが、わざとらしくならない事。たぶん俳優さんなんかもそうだと思うんですが、わざとらしくなった瞬間に、いくら迫力があろうが全部台無しなんですよね。もう、そういう傷がひとつもない上に、鳥肌が立つほどの美しさと感傷的な切なさなのです。これは鳥肌モノ。聴いた事のない人は絶対聴くべし!!

 他には、「アダージョとアレグロ」「民謡風の5つの小品」「子供のための4手用曲集」などから抜粋されていますが、オリジナルはどれもオーボエではないので、録音としては非常に貴重なんじゃないかと。いやあ、こういう試みはどんどんやってほしいですね。あと、解説を読んでいて意外だったのは、シューマン晩年の名作「幻想小曲集」。これ、オリジナルはクラリネット指定なんですね。オーボエの名曲だと思っていたので、ちょっと意外でした。このディスクでは3楽章までフル収録。素晴らしい曲だと思いますが、これこそ「子供の情景」に近い感じの匂いが残っていて、やっぱり冒頭の「3つのロマンス」の衝撃には勝てないかな。
 
 な~んて色々書きましたが、僕の場合、クラシックのCDで「これは一生ものだ!」と感激するものって、10~20枚聴いて1枚ぐらいの割合なんじゃないかと思います。これは間違いなくその1枚。あんまり有名なディスクじゃないですが、素晴らしい1枚です。死ぬまで手放しません。こんなに素晴らしい作品はなかなか出会えないんじゃないかと思いますので、どこかで見かけたら是非!!



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『シャブリエ:田園組曲、狂詩曲スペイン、ラルゲット、他 ガーディナー指揮、ウィーンフィル』

Chabrier_Espana.jpg 結局、僕がフランスのクラシックを聴くときって、そこに僕が思い描いているフランス的な何かを求めている気がします。でもそれって何?サティとかドビュッシーとか、4度和声のたゆたう、ああいうフワーッとした感じ?でも、フランスのクラシックがみんなそういう音楽かというと、そんな事ないです。本当は、僕たちが思う所のドイツ的な劇的な機能和声方面の音楽の方が多いんじゃなかろうか。ましてラヴェル登場以前となると、余計にそうだった気がします。サン・サーンスとかね。で、シャブリエの音楽には、19世紀末のヨーロッパのムードとか、音楽の傾向とかが実によくあらわれてるんじゃないかと思うのです。閉じたヨーロッパ音楽の中に、第3世界からの音楽が流入して一気にバラエティに富んでいき、その中からいよいよ今でいう所の「フランス音楽」が立ちあがってくる直前に生きた作曲家の音楽、という感じです。

 フランスの作曲家エマニュエル・シャブリエの生没年は、1841-1894年。というわけで、ワーグナー全盛期を生きていた事になります。また、その時代だと、ドイツとフランスはライバル関係ではあるけれども、1次大戦による決定的な決裂はまだ起きてません。というわけで、ワーグナーの影響があり(このCDに入っている「グヴァンドリーヌ」なんてワルキューレみたいだ!)、しかしフランス的な匂いは残っている感じ。そして…それ以上に、当時のヨーロッパの雰囲気が音楽にすごくあらわれているのです。

 この時代というと、ヨーロッパには中産階級というのが登場していて、市民は裕福。世界旅行なんかも出来るようになる頃で、植民地主義の影響で中南米の音楽がヨーロッパに逆輸入され始めます。キューバ島のハバネラのリズムはラヴェルの音楽や、それ以外の世界中の音楽(例えばタンゴ)なんかに大きな影響を与えますが、クラシックでいち早くハバネラのリズムを使った人って、もしかしたらシャブリエなのかも知れません。このCDに収められた「ハバネラ」がそれ。楽しく躍動している感じ。また、シャブリエの代表作「狂詩曲スペイン」なんか、闘牛のリズムとか、スペインの直射日光のまぶしく明るい感じとかが凄く良く出てます。閉じたヨーロッパ文化の中に、アメリカ航路を通じて文化が流れ込んできている感じが、すごく音楽に反映されている感じです。そうそう、シャブリエは作曲の専門家ではなくて半サラリーマンで(売れてからは作曲家に専念したらしい)、奥さんと長期のスペイン旅行に出た時にこの曲を書いたと言いますから、コンサート・オブ・ヨーロッパの時代の、ヨーロッパ市民の豊かさが、曲想にも出ている感じがします。大体、現代のお金持ちの日本人だって、サラリーマンで休暇を取って、奥さんと4か月に及ぶ海外旅行に出る事の出来る人がどれぐらいいますかね?植民地主義時代のヨーロッパの平和が、どれほど裕福なものであったかが分かります。でも、技法はやっぱりドイツ音楽のモノなんですよね。だから、フランス人がドイツ語を使って、フランス人の視点で当時のヨーロッパのムードを語っている感じ。それが音になってる、みたいな。

 というわけで、どの曲もみな、明るめで、優雅で、ちょっとエキゾチックな所が入ってきていて、平和で、躍動していて(と言っても激しくというよりもスキップしているような感じ)…。19世紀末のヨーロッパの優雅なムードを楽しみたい方は、自分で豆をひいてコーヒーを注ぎながら、このCDを聴くと、タイムスリップできるのではないかと思います(^^)。



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プロフィール

Bach Bach

Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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ロシアとウクライナがほぼ戦争状態に入りましたが、僕はソ連解体後のウクライナについて本当に無知…。これは2016年にオリバー・ストーン監督が作ったウクライナのドキュメンタリー映画。日本語字幕版が出たらぜひ観たい このブログをYoutube にアップしようか迷い中。するなら作業効率としては早いほど良いんですよね。。その時にはVOICEROIDに話してもらおうかと思ってるけど、誰の声がいいのか考え中
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