
少し前の記事で、
渡辺貞夫さんの書いた名著『ジャズスタディ』について書かせていただきました。そこで、「昔の大本命本だけど、今はもっとおススメのセオリー本あり」みたいな事を書いたら、「そのもっといい本とは何だ」というお問い合わせ(お怒り?)のメールをいただいてしまいました(^^;)。しかし、もしかしたら本当にセオリーにつまずいて悩んでいらっしゃるのかも知れないし、僕もセオリーに苦しんだ方なので、力になれるならなりたい。というわけで、その返事をチョットしておこうかと。
その方がどれぐらい学習されているか分かりませんでしたので、仮にまったく音楽の勉強をした事がないと仮定して話をしてみます。
独学でジャズのメソッドを1冊で済ませるのは無理な気がします。最低で3段階、その合理的な学習過程の一例は以下のような感じです。
第1段階(音楽の基礎)
北川祐『ポピュラー音楽理論』(つまりこれ!)、楽典、etc.
第2段階(ジャズの基礎知識)
渡辺貞夫『
ジャズスタディ』、藤井貞泰『
実用ジャズ講座1 理論編
』etc.
第3段書(ジャズの実技)
Mark Levine『
ザ・ジャズ・セオリー
』etc.
「『ジャズスタディ』よりいい本ってなんですか」という問いの答えは、Mark Levine『
ザ・ジャズ・セオリー
』です。しかしそれを読む為には、多分第2段階ぐらいまでは分かってないとまったく理解できないんじゃないかと。で、第2段階の本が必要になるわけですが、第2段階の本は類書が満載。例えば『実用ジャズ講座』は、譜例や説明が多い分だけ『ジャズスタディ』より分かりやすいんじゃないかと(扱っている内容はほぼ同じ。『ジャズ・スタディ』を見て書いたんじゃないかというぐらいに似ています)。しかし第2段階の本も、楽典レベルの学習が終わっていない事には読む事が不可能であるので、まずは第1段階という事になるわけですが…そこでこの『ポピュラー音楽理論』の話になるわけです(^^)。
この本、昔、3冊で分売されていた『音楽理論ハンドブック』『コード進行ハンドブック』『コード・スケール・ハンドブック』を1冊にまとめたものだと思います。僕が読んだのはその3冊の方で、この『ポピュラー音楽理論』自体は読んでません。というわけで、もし改訂があったら申し訳ないんですが、改訂がないとして…
ポピュラー、ロック、ジャズ、タンゴ、クラシック…
スタンダードな西洋音楽理論の学習の全てはここから!!この本、楽譜がまったく読めない初心者でも読めるようになっています。そのうえ、全部理解できた頃には、機能和声音楽と呼ばれる音楽の基礎理論がバッチリになるという優れもの(^^)。ほら、「誰でもわかる音楽理論」みたいな本って、あるじゃないですか。ああいうのって、読んでもそれだけじゃ足りなすぎるというか、その次の本が必要。で、次の本が何かというと…それがなかなかなくって、多くの独学アマチュア・プレイヤーはずっと初心者本をぐるぐる回るばかりで、先に行けなくなっていると思うんですよ。アマチュアとプロを分ける最初の壁って、実はここにあるんじゃないかと。例えば、ギターでコードをジャカジャカ演奏するだけで止まっている人、ピアノ教室に通って楽譜は演奏出来るけど、メロコード譜を渡されたりアドリブを要求されるとお手上げという人…「最初の壁に当たっている人」はこんな感じ。で、この本はその壁を越えさせてくれる素晴らしい本!!学生のころ、ある所で成長が止まってしまいまして、でも音大に行きたいから何をどう勉強すればいいのかを、知り合いを伝ってプロの音楽の先生に相談したところ、この本を紹介されました。ここから僕の未来が開けた!!この本の存在を知っているかどうかは、ひとりの音楽好きの道を左右するほどに大きかったような気がします。
しかし今回、この本に関するアマゾンのレビューを見てびっくりしたんですが…「難解」「高度」「初心者には難しい」という言葉がいっぱい。
この本ですら難しいのなら、多分もう音楽理論を理解するのは無理です。第2段階以降の理論書は、はっきりいってこの本より何倍も難しいし、逆にこの本より簡単にしてしまうと理論に辿り着きません(^^;)。というわけで、この本で難しかったらどのみちアウト。だから、もし難しいと感じたとしても、すぐにレベルを下げずにまず頑張るしかない(^^)!結局、何回レベルを下げようが、結局ここを通過しなくては始まらないのです(^^;)。とはいえ…この本、音楽理論本の中では、メッチャクチャに簡単な部類です。保証しますが、数Ⅱを理解できる程度のアタマがあれば絶対に理解できます。ちゃんと高校を卒業できるぐらいのアタマがあったら余裕のハズ。この条件を踏まえた上で…それでも「難しい」という人に助言をふたつほど。
第1に、とにかくピアノかギターを演奏できる状態で読むという事。音楽理論が「難しい」という方の中には、いい大学に行っている人もいたりします。学者の卵さんが、なぜそれよりも数段簡単なはずの音楽理論を理解できないのか。…どうも、本だけ読んでいる人が少なくないみたいです。それをやってしまうと、理解は大幅に遅れますし、記憶するのは更にムズカシくなっちゃうと思います。とにかく、実際の音を確認しながら勉強する、これは音楽の勉強全般に言える事で、理論ですら例外でない。そして、西洋音楽は半分は和声の歴史でもあるので、もし仮に自分がサクソフォニストやベーシストであったとしても、ピアノかギターで音を出せる状態にしてから勉強しないと分かりにくいんじゃないかと。
そして
第2に、この本のコードとスケールの深い部分は、完全に覚えなくても、何となく理屈をおさえておく程度で十分です。そこは別に良い本があります(和声とスケールに関しては、さっきの第2~3段階の本と重複している部分が少なくなくって、2~3段階の本の方がムズカシイかわりに説明が丁寧で分かりやすい)し、そこが分からなくてもすでに音楽のベーシックな理論はもう身についている筈です!!
最後にオマケ。このブログの内容に即した事で言えば…音楽を
「聴く専」という人も、こういう本を読んでから音楽を聴けば、同じCDが10倍ぐらい楽しくなるんじゃないかと思うのです。ほら、サッカーでも、ただゴールが入ったとか外れただけ見てても楽しめますが、戦術とか戦略が分かった上で見ると、楽しさ10倍になるじゃないですか、そんな感じ。。CDやLPを100枚持っているのでしたら、101枚目を買う前に、こういう本を1冊ご購入される事をおススメします。きっと、音楽の聴こえ方が全然違ってくると思います(^-^)g。