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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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『日野皓正 / SPARK』

Hino_SPARK.jpg 同じく、日本の東芝内ジャズレーベル "SOMETHIN' ELSE" からリリースされた、日野さんのアルバム。1994年録音なので、「ブルーストラック」よりはちょっと後です。こちらは日野元彦さん(dr)、佐藤達哉さん(tsax)、坂井紅介さん(wb)…みたいな日本勢と、ドン・アライアスをはじめとした外国人パーカッション隊のミックス編成。けっこう大所帯です。全体としての印象は、シンセとかが入ってはいるんですが、やっぱり生バンドっぽさがすごく出ていて、フロント陣の演奏がすごく生き生きとしてアグレッシブ!!これは日野さんの性格なんでしょうね。音楽って、どういう方向に行くにしても、やっぱりこんな風に人間味あふれるものであって欲しいっす(^^)。

 音楽は、ラテン・パーカッションがけっこう入ってるためか、ジャズにちょっとラテン色が入った印象。ホレス・シルヴァーのナンバーとして取り上げられた"CULCUTTA CUTIE"なんて、チコ・ハミルトンの"Blue sands" みたいで、かなりラテン的なエキゾチックさにあふれてます。
 このアルバムで特にすごいと思うのは、日野皓正さんのトランペットと、佐藤達哉さんのテナーサックスの切れ味!!このふたりのフロントがグイグイ来てカッコいい!佐藤達哉さんという(当時の)若手テナーサックス奏者をはじめて僕が知ったのは、このアルバムだった気がします。フリージャズっぽい曲とかバラードなんかも入ってるんですが、とにかくアップテンポ曲でのこのふたりのソロの印象が強烈!!
 少し残念なのは、バックのリズム隊が丁寧というか、グルーヴし切れていない感じ。バンド全体の方向性は素晴らしくって、ソロが行けばドラムも行くし、バンド全体が音楽をコントロールしている所は素晴らしい。素晴らしいんだけど、リズム隊がモッサリしちゃってるんですよね。すごい所まで行けちゃいそうなバンドと思えるだけに、ここは勿体なかった。でもこれは悪いというより、良いけどもっと良くなりそうみたいな、無い物ねだりみたいな感じです(^^;)。。

 聴いて元気が貰えるという意味で、やっぱり皓正さんのトランペットって凄いと思います。うまいだけじゃなくって、すごく人間味あふれるというか、勢いがある。ギラギラしてバリバリ仕事をこなす上司みたいで、カッコいい中年という感じ(^^)。聴いた後に皓正さんの元気をもらえる、そんなアルバムだと思います!



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『日野皓正 / ブルーストラック』

HinoTerumasa_Bluestruck.jpg 僕がジョン・スコフィールドの演奏を「おお、かっこいい!!」と思った切っ掛けは、1998年発表の日野皓正さんのこのアルバムでした。この頃、日野さんはやっとジャズに帰ってきた感じで、マウント富士ジャズフェスティバルなんかにも出てきて、素晴らしい演奏をしていました。

 このCDが出た頃、僕はようやくジャズの仕事をいただき始めていたのですが、とにかくうまく演奏できなくって泣きそう。うまく行かないので、ステージに上がるのが怖くて仕方がなかったです。マジでストレスから胃がおかしくなっちゃった。そんな頃、雲の上の存在の日野さんは憧れの対象。そしてこのアルバム、1曲目「ロマンセロ・ヒターノ 」がカッコよすぎる!!曲のヘッドはEphrygian → F△の繰り返し…フラメンコです!!曲から管のアンサンブルまで、全てがカッコいいこの曲なんですが、良いのはそれだけじゃなかった。このスペイン風の曲想からジョンスコのギターソロに入ると…うおお、グニャグニャしていてカッコいい~~!!僕が人にジョン・スコフィールドの演奏を薦めるとしたら、間違いなくこのアルバムを選びます!で、僕は、この曲のソロで一気に「ジョンスコってすげええ~!!」となった訳ですが、しかしその後にジョンスコのアルバムを追うも、これを超えるものに出会う事は遂になかったという(&p゚ω゚*)。
 また、アルバムのバランスもすごくいいです。2曲目は一転してルンバ調の曲、3曲目「ブルーストラック」はバップ期のメジャーブルースみたいなナンバー、4曲目は美しすぎるジャズ・バラード…素晴らしいです。「枯葉」なんかも入ってますが、これも普通に演奏する事なく、一捻りも二捻りも入ってる。文句なしで素晴らしいアルバムと思います。で、完璧にアンサンブルを作り上げた上で、日野さんは縦横無尽にソロを取るのですが…おおおお、すげええ~~!!!なんだかんだ言われながら、やっぱり日本のトランぺッターといえばこの人をおいてほかにないでしょう(^^)!!

 ただ、久々に聴いて、マイナス面も少しだけ感じてしまった。ひとつは、リズムがスクエアすぎるというか、ぜんぜんグルーヴしない。これは、スタジオ録音の弊害か、フュージョン以降のジャズの悪しき傾向か。ひとつは…前の記事に書いたように、やっぱりフュージョンの問題であるエレキ・ギターのサウンドのまずさ。さっき1曲目のジョンスコのプレイをべた褒めしましたが、音はコーラスやリヴァーブを挟んだようなシャリシャリのエレキサウンド。で、アルバム後半になると、このシャリシャリの軽すぎるサウンドでコード演奏してバッキングするせいで、バンドのサウンドが混ざらない。この辺は残念でした。
 このアルバムって「大人が楽しむ事の出来るオシャレなジャズ」という感じがします。一生懸命働いた人が、夜に洋酒でも飲みながら聞いてカッコいい音楽、みたいな。つまり、大人のエンターテインメントであって、音楽を深く掘り下げているというものではないと思います。こういう音楽を楽しめるなら、超一流のエンターテイメント・ジャズ、弱点を補って余りある破壊力を持ったアルバムなんじゃないかと。壮年期の日野さんの代表作と思います!



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『John Scofield / Quiet』

JohnScofield_Quiet.jpg ジャズという音楽は、フュージョンと呼ばれる音楽の発生前と発生後で、かなり雰囲気が変わった感じがします。フュージョンが出た後は、正統的なジャズの方まで変わってしまった。ランディ・ブレッカーさんという管楽器奏者がいますが、あの人なんか、アコースティックな編成でスタンダードナンバーを演奏しても、なんかジャズじゃないと感じてしまう。それがいい事かどうかは、人それぞれなんでしょうね。ただひとつ言える事は…ええい言ってしまえ、僕個人は、ブレッカーやパット・メセニーのフュージョン作品が嫌いだという事。マクラフリンとかのフュージョンは好きなんですけどね。で、このフュージョン的なるものの象徴といえそうなのが、フュージョン・ギターというやつです。ロックみたいなエレキギターのサウンドメイクをする人まで出てくるわけで、これが結構とらえどころのない世界で、良いのか悪いのか、何とも言いにくい。基本的には僕には合わないものがほとんどなんですが、たま~に「これは可能性のある音楽なんじゃないか」みたいなものが見つかるもので、切るに切れなくって厄介なんですよ(^^;)。演歌みたいなもんですね、9割はつまらないのに、1割凄いのがあるから切り捨てられない、みたいな。

 基本的に、ロック的なアプローチをするジャズ/フュージョンというのが苦手です。それをやるなら、ジェフ・ベックとかのロックからのアプローチの方が全然カッコいいと思えてしまう。しかしそんなフュージョン的なアプローチをするギタリストの中で「あ、面白いかも」と思った事があるのが、このジョン・スコフィールドというギタリスト。アンプやエフェクターを繋いだエレキギターのサウンドはやっぱり好きではないんですが、非常に独創的なラインを創るんですよ。しかしこのアルバムでは、ナイロン弦のギターを演奏しています。ここまでの僕の論だと、エレキを避けたこのアルバムは好評価になっておかしくないと思うんですが、結論は逆。楽器の演奏表現自体がダメなのです。ガットギターを演奏するには表現がなさすぎる。こんなの、クラシックに入ったらアマチュアのコンテストにすら落ちるレベルなんじゃなかろうか。ガットギターを演奏したくて録音したのはいいけど、演奏するので手一杯、表現なんて到底無理という事だったんじゃなかろうか。で、曲も8割はつまらない。何の冒険もないBGMみたいな音楽がほとんどです。しかし…

 アルバム後半に収録の2曲がすばらしい!7曲目"ROLF AND THE GANG" と8曲目"BUT FOR LOVE"いう曲の和声進行と、それに当てるソロ・アドリブが面白い。あぶねえ、ここに辿り着く前に聴くのを止めちゃうところでした。( ̄ー ̄)。。

 ね、評価しにくいジャンルでしょ(笑)。全面的に褒められるもんじゃないんだけど、少しだけ「あ、これは追求したら面白い音楽を生み出す切っ掛けになるのかも」というのが見つかるのが、僕のこのジャンルのイメージなんです。思うに、このアルバムを評価する人がいるとしたら、この2曲を気に入っているか、BGMとして聴いているか、他のガット・ギターの音楽ジャンルをまったく聴いた事がない人なんじゃないかと。まあそんな感じなので、とても人に薦める気になれない作品ですが、この2曲の為に捨てられないという面倒なアルバムなのです。でも、CD減らさないといけないから売ろう。

 この作品の全体的な印象だけで、ジョンスコさんの評価を決めてしまうのは危険な気がします。で、ジョンスコさんの本領発揮のエレキ・ギターの素晴らしい演奏は、次に書かせていただこうかと。



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『ダーガル・ブラザーズ / 瞑想のドゥルパド』

DagarBrothers_Dhrupad.jpg 前々回、北インド方面のカジュアルな伝統ヴォーカル音楽の「ガザル」について書きました。じゃ、北インド方面のヴォーカル音楽で、もっとフォーマルなというと何があるかというと…僕が知っているのは、ドゥルパドというものがあります。これはそのドゥルパドのCDで、ドゥルパドと言えばこの兄弟、ダーガル・ブラザーズなのです。たしか、音楽一族としてはバッハよりも古くて、しかも今でも伝統が受け継がれているという、驚異の音楽一族w(゚o゚)w。これが聴いているとトリップしちゃいそうな浮遊感、気持ちいです。。

 どの辺がフォーマルかというと…
 まずは音楽。インドの伝統音楽って、ラーガとかターラなんていう理論があって、このルールの上で即興的に音楽が紡がれていくという感じだったハズ(あんまり詳しい事は知りません^^;)。しかし即興的と言っても、歌いながら西洋音楽でいう所の調みたいなものが決まっていって、次にタブラ(指で叩いたり擦ったりして音を出す打楽器)がリズムのパターンを選択していって…みたいな感じだったハズ。これがどういうふうに繋がっていくかは、一族が引き継いでいく門外不出の秘儀、みたいな感じ(たしか、です^^;)。日本でも有名なラヴィ・シャンカールなんかの音楽もラーガを使った音楽で、あれはどんどん陶酔状態に入って超絶的に盛り上がっていくのですが、このドゥルパドという音楽は、同じ陶酔でも、すごーくマッタリしているのです。日本のCDのタイトルに「瞑想の」なんて書いてありますが、これは本当にそういうものなのかも。途中で寝ちゃいそうになるぐらいに気持ちいいです(^^)。伴奏は、タンブーラという「ビヨ~ン」という音を延々出してドローンを作る楽器と、打楽器(タブラと音や奏法が似てますが、パッカワージという楽器みたい)だけ。音階も旋律型も全部声が作ってしまいます。そうそう、このドゥルパドは、いきなり二人のヴォーカルがびったりユニゾンしたりするので(しかも詞まで合ってる)、どこまでが即興でどこからが作曲部分なのか、シロウトの僕には見当もつきませんが、いきなりビタッと合うのでビビります。すっごいです。

 次に詞。ガザルは「あなたがいなければ~」みたいな俗っぽい詞が多かったですが、ドゥルパドは「崇高な魂と崇高な存在の神よ~」みたいな感じで、思いっきりヒンズーな感じです。この辺に来ると、聴いて好きか嫌いかなんてレベルのものじゃないですね。深いです。

 この独特の浮遊感も、やはりインド音楽なんですよね。60年代、ビートルズやヒッピー系のバンドがインドのこういった陶酔系の音楽を取り込もうとしてましたが、本家本元は凄すぎました(。・ω・)。静かに自分の意識の中に沈み込んでいくような感覚、おススメです!!



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なぜアイドルやポップスの歌手って発声すらできない状態でステージに立とうと思えるのか

*もともとこの日記は、ヴォーカルのメソッド本『ザ・コンテンポラリー・シンガー』についての日記でした。でも、その本を読み返して新たに感想文を書いたので、本の感想はそちらに移して、ここには本以外の事で色々と書いていた事を書き残しておこうと思います(^^)。

 たまに思うんですが、一部の日本のポピュラー歌手って、歌手なのに歌を修めたいと思わないんでしょうか。数日前、某テレビ局が新しくポピュラー音楽番組をスタートさせたみたいで、仕事をしながら何となく眺めていたのですが…なぜ日本のポピュラー音楽が売れなくなったのか、その理由を知る思いでした。なんでこんな低レベルの歌番組が作られるようになってしまったのかを考えてみたところ…

 理由その1。音楽とは別の理由が、キャスティングに強く影響しているように見える点。音楽の良さを優先しない音楽番組が、音楽的に面白いものになる筈もないんじゃないかと。25年ぐらい前からでしょうか、日本のポピュラー音楽番組が、特定のプロダクションとレコード会社のアーティストしか出演しなくなってしまい、まったく面白くなくなってしまった。しかもよりによって音楽から遠い所にいる人ばかりが選ばれているような…。

 理由その2。質が低い。歌い手が素人すぎ、ミュージシャンがプロ意識に欠けすぎ。アイドルと言えど、西城秀樹さんも岩崎宏美さんも、もう少しちゃんとしていた気がします。うまかったとは思わないけど、中森明菜さんや河合奈保子さんだって、レッスンも受けて発声トレーニングもしてるなというのが分かりましたし。
 今回の番組、アイドルでも歌い回しが作ってある点など、たしかに努力した痕跡はありましたが、その場限りの対処で、基礎的なレッスンを全く受けていないのではないかと思ってしまいました。鼻腔も開いていなければ支えも作らなければディクションもなっていない…という事は、発声トレーニング自体をやっていないとしか思えませんでした。しかも、ピッチですらアマチュアのカラオケ以下のようでは…。アイドルでもタレントでも、歌を歌う子たちには、ジャズでもソウルでも何でもいいから素晴らしい歌手のCDを4~5枚でいいから聞かせて、「彼らと同じ舞台に立つわけだけど、大丈夫?」と訊いてみたらどうかと。世間が狭く本当の歌を知らないから自分を許せちゃうんだと思うんですよね。現実を知れば、さすがに恥かしすぎて頑張るなり辞退するなりするだろうに。ある意味、恥をかかされるアイドルさんも可哀想。
 そしてミュージシャンが…某局の「SONGS」という歌番組では、もっとちゃんとアレンジもリハーサルもした音を出して、ちゃんと音楽してたんですが、それに対して現在の民放の歌番組のミュージシャンの意識の低さはシャレにならないほどヤバい。こんな初見レベルの演奏じゃ、アマチュアからも馬鹿にされちゃうんじゃないでしょうか。プレイヤーもアレンジャーも「いいものにしたいんで、もう少しリハの時間を下さい」とか、主張すべき所は主張していいモノ作らないとマズい気がします。ホーンセクションなんて、モダンアレンジ以前の問題のクソみたいなやっつけ仕事でした。音大でこんなクソアレンジを提出したら、先生に「あなた、音楽はあきらめなさい」と言われて落第だぜ。職人が「これはバイトだから」といい加減なものを作るのは、商売以前にプロフェッショナルとして最低じゃないかと。

 理由その3。局ディレクターの意図なのかどうか分かりませんが、音楽を軽く考えすぎ。例えば、歌い手にセッション形式で歌わせていましたが、ああいうのは相当なレベルの歌い手にやらせないと無理なんじゃないかと。セッションなんて、一流プレイヤーですら良くする事が難しいのに、音楽を軽く考えすぎている気がしました。歌い回しを決め、それを習得するという作業工程を考えるだけでも、歌をモノにするって楽器よりも数段時間がかかる作業と思うんですよね。裏でやっていたボクシング中継のボクサーが、あのリングに立つまでにどれぐらいの汗と時間を掛けているかを想像してみてほしいです。音楽も同じだと思います。

 民放の広告会社依存の構造とか、背景に色々あるんでしょうが、しかしその中で局側のディレクターがもう少しポピュラー音楽を真剣に勉強して考えないとマズイ気がします。マズイというか、そういう事を何年もやったせいで日本のポピュラー音楽が終わったんじゃないかと。「他に趣味が増えて音楽が選ばれなくなった」とか「CDが売れなくなった」なんて事以前に、ポピュラー音楽が子どもですらだませないぐらいのクソレベルに落ちたところが根本的な問題だとしか思えないのだよ、明智君。
 テレビ局なんて、音楽に大きな資本を投下できる数少ない枠なんですから、そこはファーストフードじゃなくって一流料理をちゃんと出さないと。それは歌手やミュージシャンサイドも同じ。音楽を聴かせる人たちが、音楽より商売上の計算を優先している事のおかしさや恥ずかしさに、いい加減気づいてほしいです。それって、そばも打った事のない人が蕎麦屋を開業して、味には気にもせず、一生懸命売る事ばかり考えているみたいなものじゃないですか。そういうものを人前に出してしまう事の恥ずかしさに気づかない限り、日本のポピュラーなんてもうダメでしょうね。というか、もうとっくに手遅れなのかも。ちゃんと歌に取り組んでいる歌手さんなんてたくさんいるだろうに、そういう人たちを無視した音楽芸能界の自滅としか思えませんでした。


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『ウルドゥーの歌姫 ~パキスタンのガザル GHAZAL FROM PAKISTAN』

Ghazal from Pakistan さっきまでテレビをつけてたんですが…面白いと思うのが、AKB48というグループの歌の歌い方。みんなわざと鼻声みたいにして、5度以上の跳躍をする時はしゃくる(絶対というわけではないんですが、上から落としてくる事は絶対に無い)。同じことを10年ぐらい前にも思った事があって、モーニング娘というグループも似たような感じ。ひとりじゃなくて皆そうするから、この手のグループでは、こういう歌い方がいい歌い方だという共通認識があるんじゃないかと。こういう「歌い方の傾向」って、各ジャンルごとにある気がして、面白いと思っています。
 で、話はインド/パキスタン系の音楽に移るわけですが…あっちの方の歌って、歌い方だけで「あ、インドだ」って分かると思いませんか(笑)?あれ、なんなんでしょうね。インドから流れてスペインにまで届いたジプシー音楽となると、もっとガヤついたハスキーな声が多くなる感じになるんですが、そのルーツのインド/パキスタン音楽はそのガヤつきがなくって、もっと優雅な感じがあります。で、個人的なインド/パキスタン系の女性ヴォーカルの歌で特に好きなのが、このCDです。アーシャ・サマンという人が歌、伴奏ではサラーマット・フセインバーンスリー:大きな竹製の横笛)という人が参加しているのですがこの人は有名で、もしかしてバンドマスターかも。あとはハールモーニヤム(小型のリードオルガン)、サーランギー(日本の琵琶のように立てて構え多弦の擦殺弦楽器)、そしてタブラ。もう、編成だけでおいしい音楽が聴けそうでしょ(^^)。これがエキゾチックでしびれるんですよ!!

 インド系の音楽は、芸術系に寄るか大衆系に寄るか、あるいは古典か現代か、な~んていう感じでとらえると、けっこう分かりやすいみたいです。パキスタンはインド北部で、政治的な経緯で今ではインドと分かれていますが、音楽文化という切り口で言えばインドと大体同じ。むしろ、南インド音楽と北インド&パキスタンという感じの分け方の方が、音楽的にはしっくりくるぐらい。で、北インドの歌音楽だと、ドゥルパドなんて呼ばれる音楽がかなり本格的なラーガ(イメージで言うと、クラシックでいうバッハみたいな感じで、けっこう厳格な感じ)。僕は聴いた事がないんですが、カヤールなんていう音楽もけっこうラーガを重要視する歌音楽みたいです。しかしこのCDに入っているガザルというものは、ドゥルパドに比べるともう少しカジュアルな感じで、ラーガよりも歌詞優先の歌謡音楽に近づく感じ(とはいえ、ライナーによるとやっぱり古典に入るそうです)。カジュアルというのは詩の内容もそうで、ガッチガチの宗教詩というんじゃなくって、「私があなたのものなら、運命を共にさせて」「思うのはあなたの事だけ」みたいな、今のポピュラーとあんまり変わらない感じです。で、これは日本人の僕が聴くと間違いなく「音楽」「歌」というジャンル分けをしてしまうんですが、これはインドでは「詩」「朗読」という扱いなんだそうで。そういえば、インドって、音楽単独という事はあんまりないですよね。踊りとセットだったり。実際、ガザルというのはウルドゥー語で朗読される定型詩の事なんだそうで(ウルドゥー語というのはパキスタンの国語でありかつインドの公用語のひとつ)。で、音楽そのものはというと…イメージで言えば、ラヴィ・シャンカールみたいなゴリゴリのインド古典芸術音楽と、インドネシアの宮廷ガムランの中間ぐらいな感じ。リズムの中核はインド音楽のリズムの中核にあるタブラが変幻自在に動くんですが、音自体は小型オルガンとサーランギーの音がほとんどドローンのように鳴り響いていて、この心地よさが尋常でない!!この部分と、さっき言ったような優雅な歌唱が「宮廷ガムラン」みたいな印象に繋がるんでしょうね(^^)。ちょっと他の音楽では味わえないムードなのです。

 民族音楽というのは、毛嫌いする人が結構多いジャンルの気がします。しかし、同じジャンルならCDを50枚も100枚も聴き続けるのに、他のジャンルはまったく知らないというのはあまりにもったいない。インド音楽はイラン音楽と同じで、西洋のクラシックに優るとも劣らないぐらいに高度な音楽。音楽の頂上に位置するもののひとつといってもいいぐらいの素晴らしすぎる人類の財産と思います。このマッタリとした感じ、たまらんです。超おススメ!!




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書籍『ポピュラー音楽理論』 北川祐(編著)

PopularOngakuriron.jpg 少し前の記事で、渡辺貞夫さんの書いた名著『ジャズスタディ』について書かせていただきました。そこで、「昔の大本命本だけど、今はもっとおススメのセオリー本あり」みたいな事を書いたら、「そのもっといい本とは何だ」というお問い合わせ(お怒り?)のメールをいただいてしまいました(^^;)。しかし、もしかしたら本当にセオリーにつまずいて悩んでいらっしゃるのかも知れないし、僕もセオリーに苦しんだ方なので、力になれるならなりたい。というわけで、その返事をチョットしておこうかと。

 その方がどれぐらい学習されているか分かりませんでしたので、仮にまったく音楽の勉強をした事がないと仮定して話をしてみます。独学でジャズのメソッドを1冊で済ませるのは無理な気がします。最低で3段階、その合理的な学習過程の一例は以下のような感じです。

第1段階(音楽の基礎)
  北川祐『ポピュラー音楽理論』(つまりこれ!)、楽典、etc.

第2段階(ジャズの基礎知識)
  渡辺貞夫『ジャズスタディ』、藤井貞泰『実用ジャズ講座1 理論編』etc.

第3段書(ジャズの実技)
  Mark Levine『ザ・ジャズ・セオリー』etc.

 「『ジャズスタディ』よりいい本ってなんですか」という問いの答えは、Mark Levine『ザ・ジャズ・セオリー』です。しかしそれを読む為には、多分第2段階ぐらいまでは分かってないとまったく理解できないんじゃないかと。で、第2段階の本が必要になるわけですが、第2段階の本は類書が満載。例えば『実用ジャズ講座』は、譜例や説明が多い分だけ『ジャズスタディ』より分かりやすいんじゃないかと(扱っている内容はほぼ同じ。『ジャズ・スタディ』を見て書いたんじゃないかというぐらいに似ています)。しかし第2段階の本も、楽典レベルの学習が終わっていない事には読む事が不可能であるので、まずは第1段階という事になるわけですが…そこでこの『ポピュラー音楽理論』の話になるわけです(^^)。

 この本、昔、3冊で分売されていた『音楽理論ハンドブック』『コード進行ハンドブック』『コード・スケール・ハンドブック』を1冊にまとめたものだと思います。僕が読んだのはその3冊の方で、この『ポピュラー音楽理論』自体は読んでません。というわけで、もし改訂があったら申し訳ないんですが、改訂がないとして…
 ポピュラー、ロック、ジャズ、タンゴ、クラシック…スタンダードな西洋音楽理論の学習の全てはここから!!この本、楽譜がまったく読めない初心者でも読めるようになっています。そのうえ、全部理解できた頃には、機能和声音楽と呼ばれる音楽の基礎理論がバッチリになるという優れもの(^^)。ほら、「誰でもわかる音楽理論」みたいな本って、あるじゃないですか。ああいうのって、読んでもそれだけじゃ足りなすぎるというか、その次の本が必要。で、次の本が何かというと…それがなかなかなくって、多くの独学アマチュア・プレイヤーはずっと初心者本をぐるぐる回るばかりで、先に行けなくなっていると思うんですよ。アマチュアとプロを分ける最初の壁って、実はここにあるんじゃないかと。例えば、ギターでコードをジャカジャカ演奏するだけで止まっている人、ピアノ教室に通って楽譜は演奏出来るけど、メロコード譜を渡されたりアドリブを要求されるとお手上げという人…「最初の壁に当たっている人」はこんな感じ。で、この本はその壁を越えさせてくれる素晴らしい本!!学生のころ、ある所で成長が止まってしまいまして、でも音大に行きたいから何をどう勉強すればいいのかを、知り合いを伝ってプロの音楽の先生に相談したところ、この本を紹介されました。ここから僕の未来が開けた!!この本の存在を知っているかどうかは、ひとりの音楽好きの道を左右するほどに大きかったような気がします。

 しかし今回、この本に関するアマゾンのレビューを見てびっくりしたんですが…「難解」「高度」「初心者には難しい」という言葉がいっぱい。この本ですら難しいのなら、多分もう音楽理論を理解するのは無理です。第2段階以降の理論書は、はっきりいってこの本より何倍も難しいし、逆にこの本より簡単にしてしまうと理論に辿り着きません(^^;)。というわけで、この本で難しかったらどのみちアウト。だから、もし難しいと感じたとしても、すぐにレベルを下げずにまず頑張るしかない(^^)!結局、何回レベルを下げようが、結局ここを通過しなくては始まらないのです(^^;)。とはいえ…この本、音楽理論本の中では、メッチャクチャに簡単な部類です。保証しますが、数Ⅱを理解できる程度のアタマがあれば絶対に理解できます。ちゃんと高校を卒業できるぐらいのアタマがあったら余裕のハズ。この条件を踏まえた上で…それでも「難しい」という人に助言をふたつほど。
 第1に、とにかくピアノかギターを演奏できる状態で読むという事。音楽理論が「難しい」という方の中には、いい大学に行っている人もいたりします。学者の卵さんが、なぜそれよりも数段簡単なはずの音楽理論を理解できないのか。…どうも、本だけ読んでいる人が少なくないみたいです。それをやってしまうと、理解は大幅に遅れますし、記憶するのは更にムズカシくなっちゃうと思います。とにかく、実際の音を確認しながら勉強する、これは音楽の勉強全般に言える事で、理論ですら例外でない。そして、西洋音楽は半分は和声の歴史でもあるので、もし仮に自分がサクソフォニストやベーシストであったとしても、ピアノかギターで音を出せる状態にしてから勉強しないと分かりにくいんじゃないかと。
 そして第2に、この本のコードとスケールの深い部分は、完全に覚えなくても、何となく理屈をおさえておく程度で十分です。そこは別に良い本があります(和声とスケールに関しては、さっきの第2~3段階の本と重複している部分が少なくなくって、2~3段階の本の方がムズカシイかわりに説明が丁寧で分かりやすい)し、そこが分からなくてもすでに音楽のベーシックな理論はもう身についている筈です!!

 最後にオマケ。このブログの内容に即した事で言えば…音楽を「聴く専」という人も、こういう本を読んでから音楽を聴けば、同じCDが10倍ぐらい楽しくなるんじゃないかと思うのです。ほら、サッカーでも、ただゴールが入ったとか外れただけ見てても楽しめますが、戦術とか戦略が分かった上で見ると、楽しさ10倍になるじゃないですか、そんな感じ。。CDやLPを100枚持っているのでしたら、101枚目を買う前に、こういう本を1冊ご購入される事をおススメします。きっと、音楽の聴こえ方が全然違ってくると思います(^-^)g。



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『Black Sabbath / Master of Reality』

BlackSabbath_Masterof.jpg 英ハード・ロック黎明期の名バンドであるブラック・サバスのサード・アルバムです。僕は初期ブラックサバスの中では「vol.4」がダントツで好きなんですが、昔に書いたそのレビューの中で、「『マスター・オブ・リアリティ』はつまらなすぎて駄目だった」なんて書きました。若い頃は本気でそう思ったんです。しかしこのアルバム、人によっては「ブラック・サバス最高傑作!」な~んていう人もいます。そういう人は、本当にそう思っているのだと思うのですよ。だから、僕には分からないけど、人によってはすごく良いと思っている場所があるんじゃないかと。で、久々に聴いてみたら…あ、意外といいかも(^^;)。いやあ、自分の感性のいい加減さに呆れるばかりです。。ただ、なんというか…自分が何を良いと感じて、何をつまらないと感じたのか、ちょっと分かった気がしました。

 前作『パラノイド』との比較で言うと、曲作りのやり方が更に確立されたというか、システム化された印象。極論してしまえば、この音楽は幾つかのギターリフの組み合わせが全て。で、この曲の大量生産システムが確立された事が、良さであり悪さであったんじゃないかと。すべてはアルバムのラスト曲"Into the Void"にあらわれている気がします。イントロの出だしは4小節1組のリフの4回繰り返し。リフ1回の演奏時間が約9秒ぐらいかな?同じ音型を繰り返す場合(ジャズだとリフと言わずにシークエンスという)、クラシックとかジャズだと、例えば最初の2小節は同じで後半の2小節を変えていくとか、色々とヴァリエーション化して演奏する事が多い。理由は、「同じことをまったく同じ形で繰り返すのは2回でも危険、3回だと絶対に飽きる」から。しかしこのアルバムの音楽の場合、何も変化させません。そこで何が起こるかというと…2回目以降、よほどこのリフを気に入りでもしない限り、まず飽きるんじゃないかと(^^;)。残り3回のリピートを聴いている間は退屈なのです(時間にすると、9秒x3=27秒ぐらい?これってCDを止める決断をしてもまったく不思議じゃないぐらいに長い…)。で、このリフが終わった後で何が起こるかというと…次のリフの繰り返しが始まります(^^;)。たぶん、若い頃の僕がダメだと思った理由は、この退屈さだったんじゃないかと。しかし、もしこのリフをカッコよく感じたら、けっこういいのかも。リフに関していえば、サバス的なダークさというのがあります。これはほとんど増4度とか増5度の使用に掛かっていて(4度と5度というのは西洋のポピュラー音楽で最重要となる和声音で、これを半音ずらした音を使うと、ちょっと気持ち悪い感じになる。サバスはこれをトレードマークのように使うわけです^^;)、今回よく感じた理由は…仕事しながらBGMとして流して真剣に聴いてなかったから、リピートに飽きず、リフのカッコよさだけが残ったのかも。このアルバムを通して「退屈だ」と「カッコいい」が表裏一体である理由は、まずはここかも。
 表裏一体ポイントがもうひとつ。イントロが終わった後に何が起きるかというと…テンポをあげて次のリフに入ってのコーラスパート。そこが終わると…さらにテンポをあげて次のリフ。そこが終わると…いきなり元テンポに戻って元のリフ(^^;)。この加速/減速、変わる/戻るという瞬間が気持ちいい!!ここで何が起きているかというと…多くの西洋ポピュラーの場合、シーンの変更で特に重要な要素は和声的なものを用いる事が多いと思います。しかしこの音楽の場合、音楽のシーンを変える要素として、和声機能などのヴァーティカルな要素よりも、テンポとかリフの変更などのホリゾンタルな要素が重要となっています。この部分に関していうと、クラシックにもジャズにも多くの民族音楽にもあまり似た感触のものが無いんじゃないかと。ここは凄くカッコよくて、以降のメタル・バンドの多くが取り入れる事になったサバス的な技法じゃないかと思います。引き替えに…和声は縦にも横にもあまり繋がりがなく、ほとんど機能しません。つまり、ヴァーティカルに音楽を見れば、ペラッペラなんですよね。この手のバンドのギターが音をブーストして倍音を強調する理由のひとつは、単純にサウンドが薄かったからだと思います。しかしそういうサウンドの厚みの加え方というのは、常に同じカラーでのサウンドの厚みとなるので(和声的に厚くするのであれば色々なカラーをつける事が出来るけど、ディストーションで厚みを加えると常に同じインターバルの音しか強調されなくなるから単調な音的印象になる、という意味)、薄っぺらになっちゃう、という事なんじゃないかと。これも良さと悪さが表裏一体なんでしょうね。

 というわけで、色々な音楽を聴いた人にとっては、退屈に感じる音楽である事は否めないんじゃないかと。しかしこれがブラックサバスでないと聴けないような部分も持っている音楽であることも確か。「久々にハードロックを聴きたいな」じゃなくって「久々にブラックサバスを聴きたいな」な~んていう時がたまにあるのは、このオリジナリティがあるからなんじゃないかと思います。いや~、40を超えて、はじめてこのアルバムを面白いかもと思った次第でした。でもやっぱり最初の4枚の中では一番苦手かも(^^;)



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『Black Sabbath / Paranoid』

BlackSabbath_Paranoid.jpg ブラックサバス最大のヒット・ナンバー"IRON MAN"が収録されているセカンド・アルバムです!アイアン・マンと言えばプロレスのロード・ウォーリアーズが思い浮かぶわけですが、そっちを書きはじめるとハナシが長くなってしまうので(^^)、今日のところはこのアルバムの音楽に内容を絞る方向で。。

 小曲を集めた佳作という感じで、1stとか4thみたいにアルバム全体に起承転結があって聴かせ込むという感じではないです。ファーストアルバムから間髪おかずに発表されたので、凝っている暇がなかったのかも知れませんね。で、僕には"Iron Man"のイメージしかなくって、有名な"War Pigs"とかも演奏が重くてちょっとじれったい印象しか残ってなかったんですが、久々に聴くと…おお、"War Pigs"、いいじゃないですか!!イントロのサイレンの音、ピッチが楽器と微妙にずれていて、これが絶妙にカッコいい!!しかし特にシンコペーションも何もなくリフ一辺倒なのでやっぱり飽きてくるわけですが…早回しになって終わった(笑)。。これ、昔は演出かと思ってたんですが、今聴くと本人たちもかったるいと思ったのかも(^^)。続く曲も思っていたより色々とバラエティに富んでいて、意外と楽しかったです(^^)。"Hand of Doom"あたりは、1stアルバム収録の"Black Sabbath"と並んで、以降のこのバンドの作曲様式が確立された佳作だと思います。

 しかし、バンド全体の演奏能力は、このアルバムの時点ではまだちょっと…という感じです。今だったら、日本のインディーズのメタルバンドの方が全然うまいぐらいのレベル。僕はメタルよりも60年代後半~70年代前半のハードロックの方が好きで、またそれを若い時に聴いていたから、また楽器のうまい下手なんて音楽にとっては大した問題とは思わないから、こういうプレイは全然オッケーなんですが、若いメタル好きの人が、メタルの原点だなんて言ってこのアルバムを聴いたら、ちょっとだるいかもしれませんね。でもそこはガマンしていただいて、「このへヴィーさを残したまま、現代風に演奏するとしたら…」な~んて思って聴くと…これが世紀の名盤に聴こえてきます(^^)。それぐらい、アルバムのベースにあるものが素晴らしい。聴き直してみたら意外と良かったアルバムでした!!ロックの名盤のひとつと呼ばれるのも納得。


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『Black Sabbath』

BlackSabbath.jpg 変な話ですが、オジー・オズボーンというヴォーカリストに関していうと、僕はオジー・オズボーン・バンドよりもブラック・サバスの方がシックリ来てしまう(^^;)。オジー・オズボーンのアルバムを超久しぶりに色々と聞き返して、そう思ってしまいました。その理由が、ひとつ前に書いた記事で判明してしまった気がします。結局、僕が好きな音楽って…演奏で言えば、テクニカルな意味で上手いかどうかというよりも、演奏がちゃんと表現を目指しているかどうかという所、作曲で言えば、それが教科書通りであるかどうかよりも、教科書からどれぐらい離れる事が出来ているかという所を重要視しているんじゃないかと。「下手でも良い」とか「クレイジーなほど良い」と言っているわけではないんですが…。大前提は押さえた上で、そこからどこまで遠く行けるか、こういう話なのかも。でもって、ブラック・サバスのデビュー・アルバムのお話。邦題は『黒い安息日』でした。

 まずは音楽うんぬん以前に、アルバムジャケットが素晴らしすぎる。怖すぎです。その辺のホラー映画のポスターの3倍は怖いです。こんな光景を実際に目にしたら、きっと私はショック死するでしょう。で、僕が音楽に関してさっき熱く語った部分というのは、こういうセンスなんですよね、きっと。。このアルバム発表以降、イギリスを代表するハードロック・バンドのひとつとなったブラック・サバスですが、このデビューアルバムの時点ですでに音楽的なコンセプトははっきりしていたんじゃないかと思います。実際にどうだったかは知りませんが、恐怖映画の音楽とロックを混ぜようとしたら多分こうなるんじゃないかと(^^)。音楽はというと…雨と雷の音、その中で教会の鐘が鳴り、歪ませまくったギターが演奏するのは、悪魔の音程です(^^;)。そして歌が始まると、ドラムはフロアタムだけ、ギターはひたすら悪魔の音程のリフを繰り返す。このリフが切れたところでテンポをあげ、曲はいよいよ聴かせどころに作ったクライマックスの下降進行へ!!これですよ、作曲にしても演奏にしても、オズボーン・グループになくって、初期ブラックサバスにある創造性とは(^^)。演奏レベルなんて、オズボーン・バンドの足元にも呼びませんが、音楽ってそういうもんじゃないとやっぱり思ってしまう。。

 このアルバム、ロックの歴史の中でも特異点だったんじゃないかと思います。たぶんこういう音楽って、このアルバム発表時点(1970年)ではスリラー映画ぐらいでしかなかったように思いますし、また曲の構成の仕方も、以降に続くメタル・ミュージックの原点となった気がします(和声進行よりも先に音型から構造を構想する点とか)。で、こういう「味」的な表現に入ると、オジーさんの気持ち悪い声がむしろ素晴らしく思えてしまうという(^^)。あ、そうそう、僕個人は、サバスはオジーさんじゃなくって、作曲から演奏まで全てギタリストのアイオミさんに掛かっているバンドだと思ってます。僕が好きな初期サバスのアルバムの1位は文句なしで"Black Sabbath vol.4"なんですが、このアルバムはその次に好きかも。。このアルバムの全てがいいなんていう気は毛頭ありませんが、大事なものが色々と詰まっているロック・アルバムの気がします!!


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Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

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