
さっきまでテレビをつけてたんですが…面白いと思うのが、AKB48というグループの歌の歌い方。みんなわざと鼻声みたいにして、5度以上の跳躍をする時はしゃくる(絶対というわけではないんですが、上から落としてくる事は絶対に無い)。同じことを10年ぐらい前にも思った事があって、モーニング娘というグループも似たような感じ。ひとりじゃなくて皆そうするから、この手のグループでは、こういう歌い方がいい歌い方だという共通認識があるんじゃないかと。こういう「歌い方の傾向」って、各ジャンルごとにある気がして、面白いと思っています。
で、話はインド/パキスタン系の音楽に移るわけですが…あっちの方の歌って、歌い方だけで「あ、インドだ」って分かると思いませんか(笑)?あれ、なんなんでしょうね。インドから流れてスペインにまで届いたジプシー音楽となると、もっとガヤついたハスキーな声が多くなる感じになるんですが、そのルーツのインド/パキスタン音楽はそのガヤつきがなくって、もっと優雅な感じがあります。で、個人的なインド/パキスタン系の女性ヴォーカルの歌で特に好きなのが、このCDです。
アーシャ・サマンという人が歌、伴奏では
サラーマット・フセイン(
バーンスリー:大きな竹製の横笛)という人が参加しているのですがこの人は有名で、もしかしてバンドマスターかも。あとは
ハールモーニヤム(小型のリードオルガン)、
サーランギー(日本の琵琶のように立てて構え多弦の擦殺弦楽器)、そして
タブラ。もう、
編成だけでおいしい音楽が聴けそうでしょ(^^)。これがエキゾチックでしびれるんですよ!! インド系の音楽は、芸術系に寄るか大衆系に寄るか、あるいは古典か現代か、な~んていう感じでとらえると、けっこう分かりやすいみたいです。パキスタンはインド北部で、政治的な経緯で今ではインドと分かれていますが、音楽文化という切り口で言えばインドと大体同じ。むしろ、南インド音楽と北インド&パキスタンという感じの分け方の方が、音楽的にはしっくりくるぐらい。で、北インドの歌音楽だと、
ドゥルパドなんて呼ばれる音楽がかなり本格的なラーガ(イメージで言うと、クラシックでいうバッハみたいな感じで、けっこう厳格な感じ)。僕は聴いた事がないんですが、カヤールなんていう音楽もけっこうラーガを重要視する歌音楽みたいです。しかしこのCDに入っている
ガザルというものは、ドゥルパドに比べるともう少しカジュアルな感じで、ラーガよりも歌詞優先の歌謡音楽に近づく感じ(とはいえ、ライナーによるとやっぱり古典に入るそうです)。カジュアルというのは詩の内容もそうで、ガッチガチの宗教詩というんじゃなくって、「私があなたのものなら、運命を共にさせて」「思うのはあなたの事だけ」みたいな、今のポピュラーとあんまり変わらない感じです。で、これは日本人の僕が聴くと間違いなく「音楽」「歌」というジャンル分けをしてしまうんですが、これはインドでは「詩」「朗読」という扱いなんだそうで。そういえば、インドって、音楽単独という事はあんまりないですよね。踊りとセットだったり。実際、
ガザルというのはウルドゥー語で朗読される定型詩の事なんだそうで(ウルドゥー語というのはパキスタンの国語でありかつインドの公用語のひとつ)。で、音楽そのものはというと…イメージで言えば、ラヴィ・シャンカールみたいなゴリゴリのインド古典芸術音楽と、インドネシアの宮廷ガムランの中間ぐらいな感じ。リズムの中核はインド音楽のリズムの中核にあるタブラが変幻自在に動くんですが、音自体は
小型オルガンとサーランギーの音がほとんどドローンのように鳴り響いていて、この心地よさが尋常でない!!この部分と、さっき言ったような優雅な歌唱が「宮廷ガムラン」みたいな印象に繋がるんでしょうね(^^)。ちょっと他の音楽では味わえないムードなのです。
民族音楽というのは、毛嫌いする人が結構多いジャンルの気がします。しかし、同じジャンルならCDを50枚も100枚も聴き続けるのに、他のジャンルはまったく知らないというのはあまりにもったいない。インド音楽はイラン音楽と同じで、西洋のクラシックに優るとも劣らないぐらいに高度な音楽。音楽の頂上に位置するもののひとつといってもいいぐらいの素晴らしすぎる人類の財産と思います。このマッタリとした感じ、たまらんです。
超おススメ!!
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