
というわけで、岩崎宏美さんは、大ブレイク期よりも40代以降が良いんじゃないか…と思って聴いたのがこれ。というか、若い頃の岩崎さんのレコードは、歌はいいんだけど、詞や曲やアレンジやオケが古くさいザ・歌謡曲なんじゃないかという気がして、どうも気乗りしなくて(^^)。曲も筒美京平さんが多いですしね。このアルバムは、1999年発表のセルフカバー集です。
キャスティングを見ると…作曲は全曲筒美京平さん、作詞は阿久悠さんやらドリアン助川さんやら。ああ、過去のセルフカバー集だからザ・歌謡曲なキャスティングになっちゃうのか。ミュージシャンは…マニピュレーターは松武秀樹さん、ギター松原正樹、ベース高水健司、ストリングスは金原ストリングスなどなど。日本のスタジオミュージシャン勢ぞろい、聴く前から音が想像できるぞ(^^;)。もうこれ、作曲家はメロコード譜だけ作ったらアレンジャーに丸投げ、アレンジャーはマスターリズムだけ作ったらミュージシャン丸投げ、そしてスタジオで初めてスコアを見たミュージシャンが半セッションのせーので録音…という流れ作業なんでしょうね。
で、予想通り、そういう音でした。詞も曲も既製品、アレンジも80年代日本の歌謡曲のスタジオワーク的な古くささ(というかやっつけ仕事っぽいT_T)、演奏もリードシートだけを見てプレイしたセッションという感じ。レコーディングミキサーの音作りも、ゲートドラムとか、ヴォーカルダブルとか、昭和歌謡フュージョン的な古くささ(- -*)。う~ん、なんというか、
名ヴォーカリストを生かしきれないというか、心のない産業界主導の商業音楽の典型という感じ。昔、音楽業界に関わっていた時、こういうテキトー仕事を有難がって崇めているディレクターやら業界人のあまりの多さに、「こいつら馬鹿じゃねえの」と思ったものでした。しかし…
最後の
「日暮れのマティーニ」、これだけ別格!!オケはピアノトリオwithストリングス。ピアノとアレンジは島健さんです。ジャズです。ストリングスアレンジも、他の曲のやっつけシンセのパッドなんかと大違い。演奏も、歌を受けるオブリの作り方ひとつとってもレベルが違う。この曲のためだけに、僕はこのCDを手放せずにいます。結局、岩崎宏美さんという人は、美空ひばりの頃から続いている、日本のレコード産業界が作った「歌い手さん」として生きてきた人で、だから、用意されたものの上で唄うばかりで、生バンドと一緒に音楽を作り上げた事がない人なのかも。あれだけの歌唱力やプロフェッショナルな意識を持ってる人ですから、もし島さんのクラスのプレイヤーさんと本気で1年とか2年とか音楽を作りに行ったら、素晴らしい物を作れるのだろうに…と思ってしまいました。日本のザ・芸能音楽業界のダメさ加減と、真剣に音楽を追求してきたミュージシャンの実力の高さ。この差をまざまざと見せつけられたようなCDでした(なんか、岩崎宏美さんのレビューになってないぞ)。。
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