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心に残った音楽♪

おすすめCDの紹介のほか、本や映画の感想などを (*^ー゜)v

 

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『パーセル:ハープシコード作品集 オリヴィエ・ボーモン (hsc)』

Purcell_HarpsichordSuite.jpg アンビエント系というか、そっち系を聴いていたら、イギリスのバロック音楽を聴きたくなってしまいました(^^;)。イギリスのバロックと言えばこの人、ヘンリー・パーセルです!!

 イギリスと言えば、クラシック不毛の地。それは、歴史的にもイギリスに先に住んでいた民族が北に追いやられて、イタリアやフランスからイギリスに渡った人たちがイギリス宮廷の中心になっていったから、確かに文化的にも風下なんですよね。そんなイギリスのクラシック系の作曲家で、ダントツで好きなのが17世紀バロックのパーセル。17世のイギリスと言えば、「エリザベス朝期の音楽」なんて言われるぐらいに、ヨーロッパ本土のバロックとは少し色の変わったものなんですが、パーセルの音楽は、ヨーロッパ本土のバロックとイギリス音楽が混じったような独特の音楽を創っていまして、僕は大好きなのです。

 で、なんでアンビエント系を聴いていたらイギリス・バロックを聴きたくなったのかというと…イギリスバロックがアンビエント系という事はありません。ただ、現在よくある音楽とは向いている方向が違うというか、あまり演奏の表現力に重きを置いた音楽という感じではないんですよね。その混み入った職人技のような音の構造に宇宙を見る…みたいな感じ(あくまで私の印象です^^;人の表現としての音楽という方向を向いていない所が、ほんの少しだけアンビエントに通じるのかも)。もう、自分がそれまで知っていた音楽とは全然違うものがここにある、という感じだったのです。

 そしてこのCDは、8曲からなる「ハープシコード組曲」を含む、パーセルのハープシコード作品集です!すごく楽しみにして聴いたんですが…う~~~ん、僕にとっては、ちょっと演奏が速い。もっとズッシリゆったりと、パーセルの音世界を聴かせてほしかったです。まあこれは完全に僕の趣味の話なんですけどね(^^)。Olivier Baumont というチェンバロ奏者(ハープシコードの別名がチェンバロと言います)は結構有名な古楽演奏家らしいんですが、バロックを演奏するには呼吸が浅すぎるんじゃないかという気がしてしまいました。。
 とはいえ、かなり楽譜を研究して録音に望んだり、17~18世紀のハープシコードを用いたり、相当な気合いで作られたCDだと思います。決してイージーな録音ではない、凄く良く出来た作品。ただ、僕がパーセルに感じている魅力と、この演奏家の捉えるパーセルが違った…という事なのかな?古楽系だと、リュート系の奏者は自分と感性が合う人が多いんですが、クラヴサンは自分と合わない人が結構いるんですよね、なぜか。。もしかすると、ピアノと違って音の減衰が速いものだから、待ちきれなくなって速く演奏しちゃうのかなあ。



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『POPOL VUH / HOSIANNA MANTRA』

PopolVuh_Mantra.jpg 久々に聴いた「ファラオの庭で」が素晴らしすぎたもので、他にポポル・ヴーのCDを持ってないかとガサガサ探した所…おお、ありました!これもポポル・ヴーの名盤との誉れ高い「ホシアナ・マントラ」です!!「ファラオの庭」と同じ72年発表、サードアルバムです。

 前作との違いは、シンセサイザーに代わってピアノが大フューチャーな所。こうなると印象が全然変わっちゃうんじゃないかと思うんですが、これが不思議とあまり印象の違いを感じません。つまり…このゆったりとした音のあり方に特徴があるんであって、僕は音の響きという表層的な所に、この音楽のアイデンティティを感じていないのかも。ピアノ、エコーバリバリで遠くで響くヴォーカル(ヴォーカルが一番遠くにいるバンドって珍しいかも)、オーボエ、ヴァイオリン、タンブーラ…もう、楽器編成を見るだけでもセンスの良さが分かります。この静かな音楽が単なるニューエイジ的なBGMに聴こえない所には、聴いている人をゆったりした気分にさせたいとかそういう事じゃなくって、この音楽の背景に、「音でこういう世界観を齎したい」みたいな強い何かを感じたり、またオーボエをフロントに持ってくる事にもあらわれている、西洋音楽の壮大な背景がこの音楽から見える所にあるのではないかと。

 ただ、個人的には、ヴォーカルがただの気持ちいい要員に聴こえちゃって、これがニューエイジ的なイージーなセンスに見えちゃいました。あと、エレキギターがチープに感じちゃって、ギターとヴォーカルはいない方が良かった。この2点がマイナスで、いいレコードだとは思うんだけど、「ファラオの庭にて」みたいに、人に絶対薦めたいとか、そういうレベルには届いてない感じ。好きか嫌いかで言えば好きだから取っておこうとは思うんですが、お金に困ったら売ってもいいかな(^^)。でもやっぱり、環境音楽的な静かな音楽であっても、背景にあるものが深いから安っぽく聴こえない点はスバラシイ。でも僕的には、ポポル・ヴーにチャレンジするなら、「ファラオの庭」を先にする事をおススメします(^^)。



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『POPOL VUH / in den garten pharaos』

PopolVuh_Pharaos.jpg ちょっと前、ジャズ系の音楽を紹介しようと思ってたのに、BGMっぽい音楽の紹介が続いてしまった(^^;)。でも、アンビエントとかBGM的な音楽は決して嫌いではないので、それはそれでいいかと、棚をゴソゴソと探してみると…いや~、ロックの棚から懐かしいのが出てきました!!ジャーマン・プログレッシヴ・ロックです!!1972年発表、ポポル・ヴ―の2nd「ファラノの庭にて」です!!

 音の中心にあるのは、透き通った音のシンセサイザー、タブラを含むパーカッション、そして水や風の音などの環境音。若い頃にこのCDを聴いた時には、変化しない感じもしたし、やっぱりBGMとか環境音楽の類なんだな、と思ったんですが、前回の近藤等則さんのCDを聴いた後に聴くと…いやあ、とんでもなかった。緩やかではあるけれど、BGMや環境音楽どころか、実は相当に構成的。しかし、ファラオという言葉から想定されるような中東の感じはあんまりない^^;、きっと遥か昔とか、遠い世界とか、そういう所に対する遠大なイメージとか音楽のあり方とかが「ファラオの庭」という所に繋がっているんじゃないかと。音も「気持ち良ければそれでいい」とかそういうんじゃなくって、背景に教会音楽や他の音楽からの引用を感じるし、すごく意味ある音楽に聴こえてきます。
 シンセサイザーはムーグなんですが、まるでデジタルシンセのような透明感のある音で、不思議な事にこれがぜんぜんチープに感じない。タブラやパーカッションは唯一の意思ある演奏という感じで、がっつり叩いていたりするんですが、全然うるさくない。起伏はあるんですが、あくまで緩いです。コーラスもそうで、すごく遠くで風の音のようにうっすら聴こえるだけ。つまり、ほとんどの音が背景的な感じで、互いが主張するというよりも、互いが背景と化して混ざり合っている。しかし全体は意志を持って動いている感じなのです。いやあ、これはBGMとか環境音楽とは到底呼べないな。。B面に入っている"VUH" で、15分以上をかけて緩やかながらもうねる様に響いていた音の彼方から笛が聴こえてきた時は、ゾクッとくるような感動を覚えてしまいました。

 昔、このCDを買った時は、フリージャズとか現代音楽とかガッツリ系の音楽が大好きだったもので、ちょっと肩透かしを食った気分でした。でも、何かが残る感じで、これは手放しちゃいけない気がして、ずっと持ってました。そして、何年かに1回、思い出したようにこのCDを聴くんですが、聴くたびにどんどん好きになっていく感じです。きっと、自分の音楽の知識とか、色んなものが増すたびに、良さが分かってくるものなのかも知れません。ロックを軽音楽と侮るなかれ、これはスバラシイ作品でした!!おススメ!!


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『DEREK BAILEY / DUO & TRIO IMPROVISATION』

DerekBailey_DuoTrio.jpg 近藤等則さんがフリーをやっていた頃のレコード。イギリスのフリー・インプロヴィゼーションを代表するギタリストであるデレク・ベイリーさんが来日した際に作られたレコードです。仕掛け人は、間章さんという音楽評論家。この人に関しては、いずれ取りあげられたらと思います。

 30~40年ぐらい前は、レコード屋に行くと、コーナー分けはポピュラー、ジャズ、クラシック、その他、みたいな感じでした。この中でジャズという音楽の特徴を挙げるとしたら、即興という所はキーワード。えらく大雑把な説明ですが(^^)、まあそんな事もあって、芸術方面での即興音楽というと、少なからずジャズの影響が強い物でした。フリーフォームになると尚更で、ロック方面のフリーなんて全然ないし、あっても聴けたものじゃなかったですが、ジャズのフリーは結構すごいのもありました。しかしデレク・ベイリーさんというのは、このジャズという匂いを全く感じさせないというか、実験音楽的な傾向にあるミュージシャン。僕のまったくの主観なんですが、ベイリーさんは即興で抽象的に演奏する事自体が目的であって、音がどうであるかとか、そんなのはどうでも良かったんじゃないかと。このレコードのライナ―ノートに、ベイリーさんのこんな言葉が書いてあります。

「あらゆる典範や記憶から身をそらした時に―それは否定という事ではありません―もっと全体的なあらゆる秩序を超えた秩序―それを人は無秩序というのかも知れない―がその人の生を照らし生そのものを提示してゆくという事にあります。」

 つまり、絵画のアクションペインティングの音楽版みたいな感じでしょうか。思うがままに絵の具のしぶきをべチャッと紙の上に描くような音楽。音楽家自身が音を秩序づけるわけじゃなくて、勝手に音を出して、それが何らかの秩序とか表現とかを得ているかどうかは、聴き手とか、あるいはもっと大きな所に委ねてしまおう、という事なんでしょうね。あっていい発想というか、なくちゃいけない音楽のひとつだと思います。

 ただ、これが…ここに集められた日本人ミュージシャンと全然かみ合わない。。最初の一歩だったので仕方なかったとは思うんですが、根底にあるものを深く合わせてからやるとか、そういう所に無配慮というか、そういう所をすごく軽く考えるというのがフリーのダメな所と思います。これ、日本人ミュージシャンの方も、ただセッションだと思って参加しただけなんじゃなかろうか。同じ事がベイリーさんにも言えて、日本人ミュージシャンが即興をどう考えているかとか考えた上で挑んだだろうか。いや~、とてもそうとは思えないなあ。例えば、吉沢元治さんという素晴らしいベーシストと、ベイリーさんの演奏。どちらもポリシーのある、良い演奏をしているように感じるんですが(しかし録音が素っ気ない音なので、魅力が半減して聴こえちゃっているのが残念)、とにかくかみ合わない。
 まあ、それはいい方で、近藤さんとかになると…いやあ、相性どころか、この人単独でもダメ。結局、近藤さんというんはフリーがヘタなひとで、実は生トランペットでマイルスのようなジャズ・セッションをやっている時が一番カッコいい人なんじゃないかと思ってしまうわけです。考えてみたら、絵画でも音楽でも、前衛的な事をやっておきながら良い物にしようと思ったら、それは普通の絵画や音楽をやるよりもよほど難しいわけで、それをフリーでやる事自体が目的化しているようではいい音楽になるはずもないですよね。結論としては、幾らフリーと言っても、フリーに対する考え方が違う同士がやったらうまく行くはずもない…そういうセッションだったんじゃないかと。

 な~んていいながら、まるで現代絵画のアクションペインティングのようなベイリーさんの音楽、僕は結構好きで、たまに聴きたくなります。ある意味で、本気で音楽に入っていったらいつかは通過しなくちゃいけない音楽のひとつだと思う。でも、これが音楽の到達点というのも違う気がする。そして、ベイリーさんのレコードを1枚…といったら、少なくとも僕にとっては、これじゃない。このレコードが作られたり再発されたりするたびに、それなりに大きい所とか有名な評論家さんが関わるからやたらと取り上げられる1枚ですが、再発している所自体がどれぐらいこの手の音楽を理解できているかというと、かなり怪しい(再発するタイトルがかなりセンス無いというか、インチキくさい^^;)。日本の前衛ジャズにとっても、ベイリーさんにとっても、大した1枚じゃないと思います。音楽を考える大切なきっかけにはなっても、愛聴盤にはならない1枚でした。


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『浅川マキ / ONE』

AsagawaMaki_one.jpg 近藤等則さんともあろう人を悪く言ってばかりというのも何なので、ちょっと聴きなおしてみたいな…と思ってゴソゴソやったんですが、近藤さんのリーダーアルバムが全然残ってない(T_T)。きっと売ったんだな…。でも、近藤さんでいいと思った演奏があったな、たしか…あったあった、浅川マキさんの「ONE」というアルバムです!僕がこのアルバムを知ったのは、2曲目「あの男がピアノを弾いた」が、亡くなったサックス奏者・阿部薫さんに捧げられたいう話を聞いたからでした。そして買う決心をしたのは、メンバーが素晴らしいから。

 浅川マキさんというのは、アングラな、まるで演劇系かというようなヴォーカリストで、ジャズ系のミュージシャンをこよなく愛していて、ジャズマンをバックにしたCDをたくさん作っています。しかし本人のヴォーカルは全然ジャズじゃない(^^)。ついでに歌も、どちらかというと下手。でもすごく味があって、この味をどう感じるかで評価が真っ二つに分かれる気がします。僕はというと…歌は好きじゃないんだけど、やろうとしている事とか、詩の内容とかはすごく分かる気がして、すごく惜しい感じがする人です(^^;)。アングラ文化の抱えていた色んなものを背負っているとか、そういう音楽以外の部分も含めてのアーティストなんでしょうね。

 そしてこのCDも、メンバーのチョイスの時点で、浅川さんの素晴らしいセンスが爆発!山下洋輔さん(ピアノ)、川端民生さん(ウッドベース)、近藤等則さん(トランペット)のトリオです。で、このドラムレスのトリオのジャジーなプレイが素晴らしい。1曲目「午後」なんて、まさにシャンソンか舞台用の歌のような構成的な曲なんですが、ここでの山下さんのピアノも、近藤さんのミュート・トランペットも絶品!!山下さんって、武田和命さんのレコードでもメインストリームなジャズ・バラッドを演奏していましたが、この人、実はフリーよりもバラード系のジャズの方が上手なんじゃないかと思います。近藤さんの演奏は…僕的には、今まで聴いたレコードの中で、このレコードでのソロ演奏が近藤等則さんのベストパフォーマンスと思っています。スピード感が素晴らしい!!

 しかし、5曲目だけ編成が変わって、山内テツさんのギター(山内さんって、ロックバンドの「フリー」に参加していたエレキベースの人と同一人物?)のエレキギターと、近藤さんのトランペット。この両者がフリーに演奏する中で、浅川さんが歌詞を朗々と歌い上げるんですが、なんというかなあ、楽器のふたりの演奏が酷い(>_<)。フリージャズ大好き人間の僕ですが、フリーなら何でもいいというわけではないんですよねえ。やっぱり近藤さんって、フリーが下手な人なんだと思う。

 70年代の日本のアングラな舞台や音楽が持っていた空気感が、凄く良く出た作品だと思います。上手いかどうかとかではなくって、この世界観に浸れるかどうか、そういう作品なんじゃないかと。これに浸れるなら、そうとういい感じのアルバムじゃないかと思います!僕はアタマ3曲だけリピートの口です(^^)。



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映画『時をかける少女』( 細田守監督・アニメ版)

TokiwoKakeruShoujo.jpg 先週観た「おおかみこどもの雨と雪」というアニメ映画が素晴らしかったものだから、同じ映画監督さんが撮ったというアニメ映画をテレビで見ました。昔、原田知世さん主演の角川映画か何かで同じタイトルの映画がありましたが、それと同じ原作だったりするのかな?原田さんの映画自体を観ていないので分かりませんが、あの人はメチャクチャかわいかったのと同時に、ちょっと音痴だっ(以下自粛)。。(*加筆:コメント欄より、「最近の原田さんはうたがうまい」旨の書き込みをいただきました。え?マジで?と思い、YouTubeで最近発売になったCDの発売記念イベントでの歌というものを聴いたところ…おおお!!すごくいい!!原田さん、申し訳ありませんでしたm(_ _)m)。

 映画の内容は、自由自在にタイムスリップ出来るようになった少女を中心としたコメディタッチな展開から、次第にシリアスな感じになるというビルドゥングスロマンというか青春映画というか、そんな感じ。あくまで個人的な感想ですが、青春映画なら、もう少し青春映画的なキュンと来るような所が欲しかったです。また、成長物語ならそれはそれでかなり物足りない感じ。恋愛ものだとしたら…これはきっと子供が見てキュンとなるための映画でしょうから、私が語ってはいけませんね(^^;)。。また、タイムパラドックスという設定を活かしたストーリーかというと、それも活かし切れていないという感じでしょうか。タイムパラドックスものでは、アニメなら『うる星やつら2』という映画がメチャクチャ面白かったなあ。大人向けの映画では『猿の惑星』でしょうか。『いつかどこかで』は、名が扱いされている割にはちょっとチープでした。。
 ただ、男子高校生が、女子生徒の前で(言葉遣いや、胸のボタンをあけるなんて感じで)一生懸命背伸びして男ぶっている感じとかは、「ああ、高校生だな」という感じで、ちょっと好感が持てるというか、懐かしい感じがしました。でもああいうのって、若いからいいんであって、オッサンになってそういう振る舞いをすると「うぜえ奴だな」としかならないんですよね(^^;)。。

 まあそんな感じで、僕にはちょっと合わない映画でしたが、きっと中高生ぐらいの試聴を想定した軽めの青春映画だと思うので、そういう年齢の人が見たら違う感想になるのでしょうね。オッサンが見る映画じゃなかった。。



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『近藤等則 / plays Standards~あなたは恋を知らない』

KONDOTosinori_standards.jpg ひとつ前のグラスパーさんと同じで、音楽自体は良いのに、宣伝文句と実際の音楽のギャップから賛否両論が起きそうなCD、近藤等則さんの新作です(^^;)。イタリアのエラルド・ベルノッキというDJが作った、スタンダードを題材としたバックトラックの上で、近藤さんがエレキ・トランペットを吹くというもの。クラブ系アンビエントと思って聴けば、けっこう気持ちい良い作品と思います。問題は…

 若い頃の近藤等則さんは、日本では土取さんとか阿部薫さんとか、海外ではピーター・ブロッツマンさんとかといった硬派なジャズの人たちと活動していたものだから、そのイメージがいまも残っている気がします。しかしこれが、近藤さんにとっても聴衆にとってもマイナスになってるんじゃないかと。この20年ぐらい、近藤さんがやりたいのは硬派な音楽じゃなくって、もっと軽い音楽なんじゃないかと。IMAなんてバンドも、震災か何かの時に出したCDも、挑発的でカッコいい事を言ってたけど、実際の音楽はものっすごいチープだったし(^^;)。最近出たタワーレコードの雑誌では「俺はこの作品でも戦っている」とか言ってましたが、この作品で近藤さんがやっている事と言えば、作ってもらったバックトラックの上で簡単なメロディを吹いているだけ。この人、言っている事とやっている事が違う。こうなってくると、結局「カッコいいこと言ってるのはプロモーション用のポーズなんじゃないの?」と思ってしまうわけです。フリージャズの頃も、私は近藤さんの演奏を良いと思った事は残念ながら一度もないです。ただ演奏しているだけで、なによりこの人の音には内容がないという所が僕にはきつかった。今回のCDも、「バーカスベリーを仕込む場所が」とか「シルキーな近未来的なサウンドが」とか言ってますが、そんなの初めてエレキギターを手にした中学生がエフェクターをあれこれいじって「おお、カッコいい音になった」と喜んでるのと同じレベルだと思うんですけど(^^;)。。毎度こんなのばかりなので、昔から知っている人はさすがに底の浅さを見抜いちゃってるんじゃないかなあ。

 でも、単にこのCDがBGMとしてどうかと言われると、けっこういい作品だと思います。僕はクラブ系アンビエントとして、気持ちいいと思いました。でもこれ…実質的にはイタリアのトラックメイカーさんの作品だと思います。。



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『Robert Glasper Experiment / Black Radio』

RobertGlasper_BlackRadio.jpg 2012年発表、第55回グラミー賞最優秀R&Bアルバムを取ったロバート・グラスパーのアルバムです。ちなみに、グラスパーさんはピアニスト。先日も来日公演してましたね。

 僕的な感覚で言うと、これは今風にアレンジし直したAOR。完全にその枠です。90年代後半ぐらいから、ポピュラー音楽にジャズを少しだけブレンドするものが「カッコいい音楽」として増えていたように思います。メロディー・ガルドーとかもそうだし、TLCとかにもそういうアレンジ曲があった気がします。クラブシーンでもそうだったし、たしかにジャズ的なニュアンスを混ぜるというのは、普通のポピュラーを作曲するよりは少しめんどくさいし、サウンドは複雑化してニュアンスも増すので、それをクールと感じる感性は分かる気がするんですよね。僕もカッコいいと思う。いろんな意味を含めて、このアルバムが「R&B」というジャンルとなったのはものすごく納得。けっこう洗練された都市音楽的なセンスです。そういうものとして、僕はこの音楽が好きです。100点です!

 ただ…グラスパーさんは賛否両論を呼んだアーティストで、その多くはこれをジャズと繋げて語ろうとした事で起きた気がします。グラスパーさん本人というより、それを語る人たちが起こした問題、みたいな。僕的にいうと、これを「ジャズ」という次元で語ろうとする事自体がセンスがないと感じてしまうなあ。使われている音楽語法がジャズっぽいとかそういう事じゃなくって、やっぱりこれはBGMですからね。それをジャズと言ってしまったら、コアな音楽ファンが「そりゃ違うだろ」と怒ったって当然というもんです。いいじゃないですか、別に無理にジャズに繋げなくても。皮肉でもなんでもなしに、20~25歳ぐらいの人が聴く、都会的な夜のBGMとして、最高の音楽と思います。それから、これをマジメに高尚な音楽っぽく語っている評論家さんを結構見かけますが…いくらなんでもそりゃないだろ、センス疑うわ(^^;)。あくまで軽音楽ですよ、どう聴いたって。



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映画『おおかみこどもの雨と雪』

Ookamikodomo.jpg 昨日、テレビの金曜ロードショーでこの映画をやっていまして、アニメだと思って軽く見ていたらとんでもない、素晴らしくってずっと見てしまいました(^^)。内容は、狼男と結ばれた女性が、狼男と死別してからがんばって子供ふたりを育てるというもの。

 僕個人の感想としては、オオカミ云々は、この映画の内容からすると、さして重要な事ではないと思いました。そういった意味で、「狼男と…ああ、ガキくさいテーマだな」と早々に切り捨ててしまうのは勿体ないです(^^)。重要な点(そして恐らく本当のテーマ)は、女性という生のあり方。大学で好きな人と会い、それぞれに思いやりと愛情があり、愛し合い、死別する。忘れ形見の子供を、女手ひとつで育てる。生きるか死ぬかを賭けて懸命に植えた野菜が簡単に枯れてしまい、打ちのめされる。それでも子供と向き合い、自分の生活を犠牲にして子供を懸命に育てる。…いやあ、見ていて涙が出てしまいました。

 僕自身に子供がいたとして、ここまで子供の為に生きられるか。また、自分が女性だとして、男性に対してこういう愛のむけ方を出来るか。これを「笑止」「リアルでない」とばかりに非難する書き込みをネットで幾つか見つけましたが、それはそのように受け止める人の方に問題があるのでは?幼児虐待なんかのニュースは毎日のようにテレビから流れてきますが、そういう現状を含めて、愛のあり方を問うているのではないかと私は思いました。ただ、最後のオチのつけ方が慌ただしいというか、もう少しテーマが分かりやすく伝わるような締め方もあったような気もします。ちょっと尻切れトンボっぽかった。

 あと、内容ではなく、技術的な事になってしまいますが、表情の書き方が素晴らしいと感じました!いや~、絵で描く人の表情で、あそこまで色々な感情を表現出来てしまうのか…表情に関しては、宮崎駿監督を凌駕する素晴らしさだったと思います。ジャパニメーションって、侮れないなあ。今年見た映画では、「スタンド・バイ・ミー」に次ぐ第2位(いかに地上波再放送でしか映画を見なくなったかが分かっちゃうけど^^;)、素晴らしかった~!


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『J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲 グレン・グールド(pf)』(1981年録音盤)

Gould_Goldberg81.jpg グールドは、自分の衝撃のデビュー作で取り上げたバッハのゴールドベルク変奏曲を、自分の最後の録音でも取り上げ、録音し直しました。もうこの事自体がドラマチックというか、因縁めいたものを感じますが、こういう小説的な読み解きはちょっとハズカシイというか、あまり音楽には関係ないですね(^^;)。

 このCDがリリースされた時、音楽誌はこぞってこの作品を取り上げました。でも、学生時代の僕はそういうのが嫌いな人間だった。ほら、ローリングストーンズが新作を出したり、有名な歌舞伎役者が新作を披露したり、名の売れた人が何かをやると、いいとか悪いとかじゃなくって、大きく取り上げられるじゃないですか。取り上げられるだけならまだしも、大体絶賛される。こういうのが「あの大御所の新作が悪いわけがない」みたいな判断不能状態に批評家が陥っているみたいで、大嫌いだったんですよね。そういう反感と、「50にもなって、ピアノ最高峰のクラシックなんてろくに演奏出来たもんじゃないだろう」という憶測があって、発売当時、僕はこのCDを買わなかった。しかし…失敗でした(^^;)。。グールドを持ち上げる回りの環境は商売っ気満々の嫌な世界だったけど、グールド本人はそんな低俗なもんじゃなかったのでした。

 グールドさんは、あまり同じ曲を録音し直したりしない人です(あんまり好きじゃないと言いつつ、グールドさんのCDかなり持ってます^^)。でも、なんで大絶賛された曲を再録音したのか。グールドさんが自分の死期を悟っていたかどうかは分かりませんが、デビュー時と死ぬ直前とで、自分が音楽的にどれぐらい成長したのかというのを確かめたかったという事かも知れません。大センセーショナルとなった55年録音盤が故に固定されてしまったグールドさんのパブリックイメージを壊したいという事もあったかも。そしてこの盤、もちろん曲によるんですが、基本的にすごくゆったりと演奏しています。ああ、この方が実際のゴールドベルク本来の着想にあってるんでしょうね。録音も新しいだけあって、グールドさんのタッチが潰れてしまっていずに綺麗。ダイナミクスとアーティキュレーションに関しては…グールドさんというのは、変人扱いされてますが実際には相当に知的な人で、演奏に入るより前に、メッチャクチャ入念に解釈を考えていると思うんですよ。ただ、演奏に入るとまるでチャーリーパーカーというか、頭で考えるんじゃなくって感じたままで演奏しちゃうんじゃないかと。ジャズマンみたいに演奏しながら「ア~アア~」とか歌っちゃってますしね(^^)。。複雑な対位法を構築的に表現する頭脳と同時に、演奏に対しては本能を優先してたんじゃないかという気がします。グールドの速度感や表現の背景には、こういう普通ではない所があるのかも。リアルタイムなグールド世代でない僕には、大センセーションとなった55年ゴールドベルクよりも、この81年録音ゴールドベルクの方が好きだなあ。



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『J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲 グレン・グールド(pf)』(1955年録音盤)

Gould_goldberg55.jpg 現代のクラシックピアノの天才・グールドの実質的なデビュー作であり、出世作であり、一般的にも大名盤と言われている1枚です。「グールドって有名だけど、ものすごくたくさんCDが出ているので何から買っていいのか分からない」みたいな方がいましたら、多分最初に買うべきCDはこれ!

 しかし私、音大まで出たクセに、グールドの凄さがイマイチわかっていない人間でして^^;、まあそういうグールド信者ではない人間としての感想なんぞを。まず、ピアノ界で「天才」というと、ホロヴィッツでもケンプでもパッと聴きでもものすごい数の音符をものすごい勢いで、しかも情熱的に、劇的に演奏するのが普通。そうなるとショパンとかリストとかのロマン派音楽を劇的に演奏するのが普通だと思うんです。僕の大好きなアルゲリッチもこういう方向で、音大の同級生の多くも、この方向を目指す人が多かったです。ところがグールドは、そういうロマン派音楽が大嫌い(^^;)。で、デビュー作に選んだ曲が、バッハの中でもよりによってゴールドベルク。バッハの音楽というのは、ベートーヴェンやリストなんかのクラシックや、現在のジャズやポピュラーと違って、かなり数理的な音楽で、その音楽はなんというのかなあ…素晴らしい構造の背景に音の構造の神秘を見るような、なんかそういう非人間的な感じがあると思うんですよ。だから、ジャズやポピュラーの人がバッハを好き勝手にエモーショナルに演奏するのとは違って、クラシックの世界だと「バッハが何をしたかったのか」を深く考えて、それを実現しようとするもんです。ある時代以降は、楽器まで当時の古楽器で再現しようとする人もいるほどです。ゴールドベルク変奏曲は、2度、3度、4度…と、厳格な規則の中で変奏される、バッハ曲の中でもけっこう厳格な作品のひとつで、こういう曲を演奏したら、普通は「バッハ」とか曲そのものとかに注目が集まるんじゃないかと。ところが、このレコードで名も知らぬプレイヤーが一気に注目されることになったというのは、実はとんでもない事なんじゃないかと。だから、僕や僕の旧友みたいに「グールドはよく分からん」という人が一定数出るのも、ある意味では自然かも。

 しかし、話はここで終わらない(^^)。このゴールドベルク、とんでもないスピードで、えらく数理的な曲をクールに演奏し切ってしまう場所がいくつかあります。しかしその疾走感というのがロマン派音楽的な感情的な表現というのではなくて、一気に行ってしまう!ちゃんとバッハしている上でものすごい疾走感なのです。これがセンセーションだったんじゃないかと。また、それが普通とはちょっと違う、あたらしい物だったので、そこが天才的に映ったんじゃないかと。

 でも、僕らの世代の、しかもクラシックの専門教育をしている所に入ってまでヒーヒー勉強していた僕や級友の多くが、なぜ「アルゲリッチは凄いけどグールドはよく分からん」となったのか。第1に、この録音がでてから、ゴールドベルク演奏の基準のひとつがこの録音になっちゃったから、この演奏の斬新さを斬新と思わなくなっていた。第2に、聴いている僕たちが、ロマン派的な感情爆発のわかりやすく凄い演奏に走っちゃって、このレコードで起こっている事の意味とかぜんぜん考えてなかった(笑)。第3に、グールド自身が後年にやるようになったように、クラシックの人もスタジオで何十テイクも録音してそれを編集できるようになっちゃったから、これほど高い技術のものでも凄いと思わなくなっちゃった。なんというか…超絶的な技術を要求する器楽のリサイタルに行くと分かると思うんですが、ピアノとかギターみたいな間違えないのがムズカシイ楽器だと、ノーミスなんてまずない。歴史的録音なんて言われる古い録音を聴くと分かりますが、安全なテンポで、表現もある程度抑えてミスしないように演奏している物か、危険領域でトライして幾つか傷があるというのが普通です。ところが、ミスしてもあとで編集というのが当たり前の時代になっちゃったから、ここまで凄い速度の演奏の一発録音を凄いと思わなくなっちゃった。今となっては、修正しまくった録音に慣れすぎちゃって、聴衆の人は、高いお金を出してリサイタルに行って、間違い探しをしている状況になっているわけです(笑)。。結果、ピアノを演奏しない人よりはノーミスの大変さが分かる僕ですら、このすごい技術の演奏の録音に感動できなくなっちゃった、という事なんじゃないかと。

 それでも、クラシック・ピアノの歴史を揺るがす決定的なレコードであったことは間違いありません。好き嫌いではなく、これを聴かずして他のクラシックピアノのCDを買うのは順序が違います。確実に持っておきたい1枚だと思います!



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『グレン・グールドの生涯』 オットー・フリードリック

GlennGould_life.jpg 現代のクラシック・ピア二ストには、とんでもない天才が3人いまして、その筆頭がグレン・グールド。グールドに比肩する人を挙げるとすると、少し前の時代ならとリストとかショパン、大昔はモーツアルトという事になるんじゃないかと。リストやショパンやモーツアルトは自演の録音が残っていないので比較できませんが、ある時代の中で周りから極端に飛び抜けた存在という意味では、彼らに匹敵するほどの衝撃だったんじゃないかと思います。どの人も、「楽譜を見た直後に、いきなり暗譜で一音も間違えずに演奏してしまった」とか「人の演奏を聴いた後に、その曲を全く同じように演奏した」とか、信じられないような逸話を持っている人ばかりです。。この本は、ピアノの世紀の天才・グールドの伝記本で、巻末のディスコグラフィーを入れると600ページを超える極めつけのグールド本です。ページ数は多いものの、読みはじめたら面白すぎて一気に読んでしまいました(^^)。。

 グールドというのは、少し変わった人としても有名で、すごく神経症的な所があるし、奇行といっていいような行動もあったみたいです。自分の肩にポンと手を置いたピアノメーカーの人を相手にとんでもない額の訴訟を起こすとかね(^^;)。。天才でかつ異常行動を起こす点だけでも、面白い本になるに決まってるんですが、しかしこの本、面白おかしく伝える為に書かれたんじゃなくって、50歳で死んでしまった彼の遺品を整理する為に、遺族が「この楽譜はどういう価値を持つものなのか」とか、そういうのをはっきりさせる為に、色々と調べて貰うために伝記執筆を依頼したというシロモノ。だから、嘘偽りがなくって、美辞麗句ばかりじゃなくて結構グールドさんの痛い所も克明に描かれていて、そこがドキュメンタリーとして面白いです。しかし私は、音大にまで進んだくせに、このピアニストの良さがいまだに分からない有り様で(でも言い訳させてもらうと、アルゲリッチは凄いけどグールドはどうなのという級友は結構いた^^;)、読んでないといけないこの本を最近まで読んでなかった。。で、読み始めて…いやあ、凄い人生だ。。もう、子供の頃の逸話からして異常、最初から絶対音感はあるわ、10歳までにバッハの平均律クラヴィア1巻全曲をマスターしているわ、会話しながら他の音も聴く事が出来るわで、才能のあり方が人より優れているんじゃなくって、人と違う。天才とはかくあるべしという感じでビビりまくりでした。。グールドさん、天才とまで称された人なのに、しかも全盛期と言っても良い30過ぎという年齢で人前で演奏するのを突如やめてしまったんです。で、以降はひたすら録音生活に入っちゃった。リサイタルを止める理由のひとつになったであろう、マスコミの手ひどいバッシングには読んでいて腹が立ちましたヽ(`д´)ノ。。なんで評論家というのは、いつの時代も上から目線でエラそうにモノを言えるのか…。

 おっと話が逸れました、これはひとりの音楽家を追った伝記としては、最良のもののひとつじゃないかと思います。読んでいて面白すぎて、一気に読んじゃいました(^^)。クラシックファンのみならず、音楽ファンなら必読!!
 あと、少し思ったのは…クラシックって、最初に聴きはじめる頃って、どの曲がどういう位置づけにあるかとか、ぜんぜん分からないじゃないですか。誰かの協奏曲の第1番と第2番だと何が違うかとか、どういう位置づけにあるものなのかとか。そういう、クラシック界では常識(場合によっては、評論家は得意げに名曲扱いしてるけど、プレイヤー側からは「解ってねえな」と思っている曲もあるわけです^^)みたいな豆知識がかなり理解できるようになる本でもあると思いました。グールドさん、性格が思いっきりアーティストというか、大変繊細でわずかな妥協も許さないみたいな所があるので、共演者にもマスコミにもレコード会社の人にも遠慮せずにずけずけ言うから(^^)。。というわけで、グールドファンやクラシックファンのみならず、クラシック・ピアノの世界に入ってみたいけど何から聴いたら全然分からない…みたいな人にもおススメです!!



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『R.シュトラウス:アルプス交響曲、ドン・ファン アシュケナージ指揮、クリーヴランド管弦楽団』

Rstrauss_Alpensinfonie.jpg リヒャルト・シュトラウスのアルプス交響曲です。R.シュトラウスというと、僕にとっては何をおいても「変容」なんですが、あれが素晴らしすぎたもので他の曲もいろいろ漁った頃があったのです(^^)。このCDも、そんな時に買った1枚。

 R.シュトラウス(ああ、「R」をつけるのが面倒になってきた。他に「J」がいるからつけているんですが、次から省略します!)は、末期ロマン派を生きた作曲家で、「交響詩」と呼ばれる表題つきの音楽を作る事で有名。表題つきというのは、例えば「ミツバチの飛ぶ田園」みたいな表題がついていて、音楽はその表題を表現することになる…みたいな感じ。クラシックの場合、音楽は音楽以上でも以下でもないという考えがあって、表題はつけずに「ソナタ第1番」とか、音楽の形式と作品番号だけを示す事が多い。それと比べると、標題音楽というのは現在のポピュラー音楽に近い所があります。映画音楽なんて、まさにそのシーンの何かを音楽で描写するので標題音楽的になってくるわけです。映画「銀河鉄道999」のサントラなんて僕は大好きですが、あれに作曲家は「交響詩・銀河鉄道999」なんていうタイトルをつけています。

 でもって、この「アルプス交響曲」です。名前は「交響曲」なんですが、すべての曲に表題がついていて、これはもう「交響詩」といっていいんじゃないかと。表題を追っていくと、音楽は「夜」→「日の出」→「登り道」→「森へ入る」…みたいな感じで、アルプス山脈を登っていく感じで進んでいきます。で、多くの人が思い浮かべたように…途中で嵐が来ちゃったりするわけですよ(^^;)。。音のイメージも、今のハリウッド映画のサントラとそっくり。というか、それは順序が逆で、ハリウッド映画の管弦曲の方が、シュトラウスの交響詩あたりを参考にして作られているんでしょうね。みなロマン派音楽ですし、ほとんど常套句になっている表現もあります。しかしさすがは本家本元、シュトラウスの交響詩はものすごく良く出来てます!
 ただし、僕個人は、こういうロマン派ベッタリの音楽は調的にもサウンド的にも安定しすぎていて、若い頃は「ああ、またこのクラシックの典型パターンか」という感じで好きじゃなかった。だから、買いはしたんですが、これを聴いたのは25年ぶりぐらい(n^。^)。で、久々に聴いて思ったのは…「ああ、映画音楽だわ」という、昔と全く同じ感想。ただし、僕個人がものすごく気に入ったのは、最初と最後を飾る「夜」。最初は短調で、不穏なムード漂いまくり。で、これが途中で一瞬同主調転調するんですが(スンマセン、私は絶対音感がないもので、合ってるかどうかわからないんですが、最初のベース音がBbだとしたら(Cかも)、Bbm→Bbにダイレクトで移調する感じ)。これがレント(すごくゆったりした感じ)ぐらいのテンポで演奏されるんですが、たったこれだけの仕込みなのに、ものすごく雰囲気があっていい!!僕的には最初の3分と最後の1分の為の音楽ですね。ハッピーエンドで終わらせてもよかったのに、最後に夜に戻したセンスも粋だと思います。そうそう、このマイナーからメジャーへの同主調転調というのは、「暗い→明るい」という感じになるので、ハリウッド系の映画の「閉じ込められた→明るい所に出た」みたいなシーンでやたらと多用されたりします(^^)。

 もう1曲の「ドン・ファン」。これはまさに「交響詩」とつけられた曲で、シュトラウスの交響詩の中でも初期のもの。単一楽章で20分ぐらいの曲なんですが、色んな女性とロマンチックな恋をして、最後には悲劇的な死を迎えるという流れで音楽が進んでいきます。この流れを知らないで音だけ聴いていると「よく分からない形式の音楽だなあ」で終わっちゃうと思うので注意が必要っす(^^)。これはアルプス交響曲より有名な曲だと思うんですが、たしかに音楽で物語を語ってしまうというのは、当時は斬新だったのかも知れませんね。

 アシュケナージ指揮のこの演奏について。以前、ピアニストとしてのアシュケナージの記事を書いた事があります。曲はショパン、演奏困難な曲をいとも簡単にサラッと演奏してしまうわけです(^^)。で、この傾向はこの演奏にも言えて、もっと溜めてドッカ~ンとしても良さそうなものなんですけど、けっこうサラッと演奏するんですよね。これはアシュケナージさんの音楽家としての傾向なんでしょうね。ただ、アルプス交響曲は重く感情的にやりすぎるとなんだかダサくなる気がするので、このぐらいの抑揚が適度な感じでよいのかも、な~んて思って聴いていました。でも情感たっぷりに演奏するとどうなるのかも聴いて比較してみたい気もするけど、そこまで好きな曲でもないので、一生やらないだろうな(^^;)。

 「変容」ほどの独創性はないんですが、むしろこういうものの方がシュトラウスらしい音楽なのかも知れません。僕個人にとっては、部分的には「おおお!」となる所はあるものの、全体として安定しすぎで物足りない音楽なんですが、劇的なロマン派音楽が好きな人にはツボに入る人も絶対にいる作品の気がします。実際、今もよく演奏され、録音も多いレパートリーですしね。とにかく、スコアの完成度は半端ない。これを書けと言われたら、僕なら仕事を止めて1~2年ぐらいこの作曲だけに専念しないととても書ききれない気がします(^^;)。それぐらいの情熱と完成度を持つスコアであることは間違いないっす!!



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Author:Bach Bach
狭いながらも居心地のいい宿で、奥さんとペット数匹と仲良く暮らしている音楽好きです。若いころに音楽を学びましたが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたレコード/CDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。趣味で書いている程度のものですが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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