喜多直毅カルテットの"WINTER IN A VISION" に並んで、今年買った1枚の中でぶっ飛んだ作品をもうひとつ。前の喜多直毅さんの記事で、「即興色の強い音楽でバンドがこれだけまとまっている日本のグループは久々」なんて書きましたが、その時に思い描いていたグループとはEXIAS-J(しかしいまだに読み方が分かりません^^;)。そして、そのEXIAS-J でギターを演奏している近藤秀秋さんの作品。今年(2015年)発表。アコースティック・ギターのアルバムです。
EXIAS-J のアヴァンギャルドなサウンドの印象があまりに強くって、この人はそういう人かと思ってました。良くも悪くも高柳系というかPSF系というか。しかし最近の僕はそういうのを卒業しかけちゃったんですが、CDジャーナルの「オリジナル以外にピアソラやマイルスやベルクも演奏しているが、すべての曲が近藤の曲のように感じられる」というレビューにやられた(^^)。ある曲の演奏を聴いて、曲じゃなくてプレイヤーの個性に耳が行くというのは相当なんじゃないかと思ったわけです。だって、グールドやキース・ジャレットの演奏ですら、それを聴いて「これはまるでプレイヤー自身の曲のようだ」なんてなかなか思わないじゃないですか。しかも、ベルクのアルテンベルク歌曲集をギターで演奏するって、すごくないかい?そして…
いや~、聴いていて怖くなるほどゾクゾク来てしまいました、今年は日本人アーティストの作品の当たり年です(^^)。クラシックからジャズからいろんなモダンを取り込んで完成させたような独創性が凄い!喜多さんの音楽を「タンゴのはるか先を行ってる」と書きましたが、この人はクラシックやジャズを吸収したうえでその先を行っている感じ。ギターの6本(10弦ギターも演奏しているみたいです)の弦がものすごいアンサンブルをしていて、
近藤和声とでも呼びたくなるような音の重ね方から生まれる複雑なサウンドが強烈 。アヴァンギャルドなんて呼ぶのが失礼なぐらいの完成度のギター音楽です。うまいというより(いや、もちろんうまいんですけど)、独自のギターシステムを完成させちゃっているんじゃないかという凄さなんですよね。というわけで、アルバムを通して魅了されまくりましたが、腐っても音大を卒業させて貰った僕が特筆したいのは、やっぱりアルバム後半でカルテット演奏されたベルクのアルテンベルク歌曲集。サウンドを含め独特の音楽になっていて、クライマックスからいきなり主題に戻る瞬間の戦慄感は原曲を上回るほどの凄さ!!!いや~、アレンジもアンサンブルもプレイヤー個々人の演奏も含め、硬派の現代音楽をこれほど見事に料理できるバンドなんて、世界でも聴いたことがないです。
難点をあげるとすれば、複雑な和声にいれ込み過ぎているというか、もっと単純でいいからグイグイ疾走してくれる部分がもう少しほしかった。ディープすぎて聴いていて神経がすり減ってしまうというか…いや、これほどの芸術作品に注文を付けるなんて失礼ですね。
現代音楽やフリージャズが好きな人ならマストアイテム、月並みな音楽に飽き飽きしている人に大推薦の独創性を持つアルバム でした(^^)。
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