
かつて大ヒットした東宝映画版の金田一耕介シリーズの最終作です。
金田一と言えば、僕の中では石坂浩二& 市川崑監督の東宝映画版が最高と思ってます。このシリーズ、僕の幼少時に公開されていて、中学生ぐらいの友達のお兄さんあたりではすごく話題になってました。そんなわけで、友達の家に映画のパンフレットがあったんです。たしか「女王蜂」だったと思うんですが、そこにかなりえぐい惨殺シーンが映っていて、怖くて見れませんでした(^^;)。中学生ぐらいの時かな、その女王蜂をテレビでやっていて見たんですが、これが結構面白かった!で、音大生の頃にビデオ屋で1作目の「犬神家の一族」から見たんですが、こんどは3作目の「女王蜂」以降がつまらない。結局、シリーズ5作目の本作は、見るには見たんですが、あるシーンを除いてはよく覚えてない(^^;)。ただ、良かったような気がしたので、この前久々にビデオ屋に行ったついでに改めて借りてみたのですが…いや~とんでもなく素晴らしかった!!これは金田一映画どころか
日本映画の傑作のひとつじゃないでしょうか!!カメラワークや影の使い方などの映画術は文句なし!出演した役者さんの演技も、石坂浩二さんのほか、
佐久間良子さんと桜田淳子さんの演技が素晴らしかった!!音楽ブログ的な注目点としては、
桜田淳子さんの"It's only Paper moon"の歌がめっちゃうまい!!本当にうまいです。こんなに歌のうまい人だったのか、知らんかった。それから、子どもの頃、桜田淳子さんは猿みたいな顔だと思っていたのですが(^^;)、この映画で見るとすっげえ美人です!!これも驚きました。

物語はグロテスクな連続猟奇殺人を中心に展開されます。それを名探偵金田一が追っていくわけですが、だんだん昔の日本の複雑な姻戚関係や、かつての悲しい出来事が複雑に入り組んでいることがわかってきます。誰が誰の親で、その親が誰と再婚し、誰が生まれ、その運命がどうなったか。名前だけ出てくる人も結構いて、追っかけるだけで大変。でも、それだけでもかなり面白い(^^)。すごく複雑なので、2回目3回目と繰り返し見るたびに、どんどん理解が深まっていく楽しさもありました(昔、「仁義なき戦い」で同じような体験あり^^)。しかし、僕がこの映画にジーンときたところはそこじゃなくってですね…
悲劇の連続殺人の裏にある人間ドラマ、これが素晴らしい!!ただの犯罪トリックを解く推理小説とか、猟奇殺人というスリラー部分はほとんどオカズで、この映画の中心は深い人間ドラマだと強く感じました。連続殺人という重すぎる罪を犯さざるを得なくなった犯人の苦しみや悲しみが、本当に悲しい。犯人だって、出来れば人なんて殺したくないんですよね。しかし殺さざるを得なくなった所に苦しみがある。ここを描くために、かなり早い段階で謎解きシーンが始まりますが、この謎解きで明かされることになる悲劇にジーンと来てしまいました。特に、犯人を因果にしばりつけることになった
写真の銀板のくだりは、泣いてしまいました。。ここは物語だけじゃなくて、カメラの構図や演出も素晴らしかった!!また、犯人の悲劇を憐れんで、金田一が問題の
銀板をそっと
処分するシーンは心を打たれました。
ひとつだけ気になったシーンが(以下ネタバレを含みますので白文字にしてあります!!)。
問題の写真が撮られてしまうシーンですが、昔の記憶では、すごく暗くてよく分からなかった記憶があるんです。で、いざ写真を撮影する瞬間だけ、フラッシュが光って一瞬だけその決定的瞬間が見える。昔はこれが凄く素晴らしい演出だと感じたんですが、今回DVDで見たところ、フラッシュが光る瞬間以外にもそのシーンがばっちり見えます。いや~、これは昔は倫理コードに引っかかるので暗くしていたのをDVD化にあたって明るくしたのか、それとも僕の記憶違いか。仮に修正したのだとしたら、この映画最大の演出が台無しになってしまったように感じるので、これは残念。 なんといっても市川監督なので、単なる犯罪トリック映画ではなくて人間ドラマとして見せたのが素晴らしかった!!あまりに素晴らしかったので、もう4回も繰り返し見ております。そうそう、金田一映画には、もうひとつ傑作がありまして、それは次回に(^^)。。