このアルバム、全曲アレンジのポイントを解説したいぐらいに、見事なアレンジのオンパレードですが、中でも死ぬまでにお願いだから一度は聴いてほしいと思う曲が、"For All We Know"。ほとんどピアノ伴奏のみ(最後にヒューバート・ロウズのフルートとストリングスが少しだけ入る)で、ダニー・ハサウェイが歌い上げるのですが、ロバータ・フラックの極限まで音数を減らしたピアノのアレンジも、ハサウェイのヴォーカルのフェイクラインも、信じられない完成度。そしてあのダニーさんの素晴らしすぎる歌ときたら、文句のつけどころがありません。アレンジって、楽器間のアンサンブルだけじゃないんですよね。で、最初にこの演奏を聴いたとき、僕は鳥肌立ちまくり、涙まで出てきちゃいました。 もうひとつ、このアルバムの背後には、AOR的なカラーを感じます。フュージョンの苦手な僕ですが(^^;)、しかしポピュラー音楽に進出した時のフュージョンは素晴らしくなる時があります。フュージョン系のミュージシャンが進出する前のアメリカのチャート音楽と、それ以降の音楽を聴き比べると…9度以上の和声、様々な和声進行への探求、リハーモニゼーションのレベルなど、大人と子供ほどの差を感じます。テクニックのための音楽に陥りがちなフュージョンがソウルという音楽と結びつくと、互いの弱点を補ってとんでもなく良い音楽になった。ニュー・ソウルには、こういう側面もあったんじゃないかと。 そして、アルバム最後のしっとりした"MOOD"の素晴らしい曲を聴きながら、ため息をつきながら感動している僕なのでした(^^)。超おススメ!!