
でも中学生の時にリアルタイムでヒットしてたスプリングスティーンさんのアルバムは、『明日なき暴走』ではなくって、これでした。『ボーン・イン・ザ・USA』、84年発表です。ものすごい売れ方をしていたので、セールス的にはスプリングスティーンさん最大のヒット作なのかも。しかし、ロックならハードロック系が好きだった僕には、普通のロックっぽいこういう音楽の良さが分かりませんでした(^^;)。
中学生だったので、英語のリスニングなんてとうてい無理。これで、音から得る情報ばかりが多くなっちゃったわけですが、そうなるとこの単純な音楽は退屈(^^;)。例えば、冒頭の3曲を取ると…「ボーン・イン・ザ・USA」は、例の2小節のリフだけで5分近く(^^;)。2~3曲目も単純なリフと、僕の大嫌いな「ズンズンズンチャッチャッ…」という退屈なドラムの8ビート。リピートばかりで変化しないので、8小節演奏できれば1曲演奏出来ちゃうんじゃないかというぐらい単純。ディープパープルとかジミヘンとかに出会ったばかりの少年にとって、これは退屈でした。ところが、『明日なき暴走』の記事に書いたように、詩の良さに気づきはじめると、見え方がちょっと変わりました。このアルバムで最初に詩が素晴らしいと気づいたのが「グローリー・デイズ」と「マイ・ホームタウン」の2曲。特に、
「マイ・ホームタウンは」は詩人としてのスプリングスティーンの最高傑作じゃなかろうかというぐらいに素晴らしかった!!
さて、今このアルバムを聴いて思うのは、音楽や詩やジャケットを通して伝わってくるメッセージ性や美的感覚です。中学生の時は、このジャケットが凄くダサく見えたんですよね。でも今見ると、すごくいろんなものを表現している、いいジャケだと思います。アメリカの国旗を「これ見よがしにはってセンスねえな」と思ったんですが、これがだんだん愛憎入り混じる感情で見つめる祖国というニュアンスに見えてきます。その前にいるのは、スーツの男ではなく、Tシャツにジーパンの男。ベルトなんかに男の美的感覚があらわれていますが、1本何万円も出して買うファッションジーンズではなくて、薄汚れ、Tシャツもはみ出し、帽子なんてかなりぼろい。工場労働者とか、そういうアメリカの労働者階級の象徴として配されているように見えます。ハイスクール時代はアメフトかなんかやってて、ルックスも悪くなくってそれなりにモテたんだけど、社会に出れば工場労働者で…みたいな背景が見えちゃう(あ、これはベルトのセンスのほか、アルバム収録の「グローリー・デイズ」の歌詞の影響かも^^;)。やっぱり、僕から見えるスプリングスティーンさんは、労働者階級とか、資本主義社会に生きる市民の心情を伝えた詩人、という感じ。ただ、それがロックのビートに乗せられると、音楽面ではちょっと退屈。じつはフォークギター弾き語りぐらいの方が、このだみ声で渋い声も言葉も伝わりやすいんじゃないかと思ったのですが…そういうアルバムがあるんですよね。そっち方面のアルバムについては、また次回にでも(^^)。
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