
アメリカン・ロックは、音楽全体の中ではもちろんのこと、ロックの中ですらそれほどひいきのジャンルじゃないんですが、スプリングスティーンさんのアルバムを改めて聞き直したら止まらなくなっちゃいました(^^;)。いや~、とにかく詩がいい!またその詩を語る声の渋さ生々しさがいい!アコースティックギターのシンプルな響きがいい!これは95年発表、僕が好きなフォークギター弾き語り系のスプリングスティーンのアルバムです(^^)。
でも、90年代は、僕はもうロックやポピュラーをほとんど聴かなくなっちゃってて、このアルバムはリアルタイムでは聴いてませんでした。ジャケットもあまり好きじゃなかったし。ただ、10年ぐらいたって車でラジオを聴いていたときに、ふとこのアルバムの1曲目が掛かったのです。「あれ、ブルース・スプリングスティーンじゃないか?アコースティックギターの弾き語りをやらせると、やっぱり抜群にいいなあ。でもこの曲、『ネブラスカ』には入って無かった気がするぞ…」。で、曲が終わった後にDJが言ったタイトルは「ザ・ゴースト・オブ・トム・ジョード」。なるほど、「怒りの葡萄」を題材にしてるのか、そのセンスにも感心しました。でも、取りあげて持ち上げるほどでもないかな?これは僕が大人になっちゃっただけかも(^^)。
音楽的には、『ネブラスカ』の弾き語りを、『トンネル・オブ・ラブ』的にアレンジした感じ。詩の世界観は、やっぱり『ネブラスカ』的な、ひとつひとつの歌が物語になっていて、短編小説を読んでいるような感じ。ただ、シンセを使うとやっぱり音が平均化されちゃうというか、音の情報量が減っちゃうし、ニュアンスは画一的になっちゃうし、テレビドラマのやっつけBGMみたいに聴こえちゃうし…というわけで、ネブラスカには届かない感じかな?
さて、なんで僕は1曲目「ザ・ゴースト・オブ・トム・ジョード」に、そんなに心を動かされたのか。これは詩でも演奏でもなくって、コード進行の工夫にありました。非常に単純な和声進行、その和音も凝ったものじゃなくって、いわゆる「ギターコードを押さえてアルペジオ」という、どれもこれも同じというフォークギターの退屈極まるやり方なんですが…トニックに戻す直前のドミナントが1拍だけ。フォークギターのコードチェンジというのは1小節か2拍という単位でチェンジするものだという先入観がボクの中にあって、1拍だけというやり方を聴いた事がなかったもので、ものすごく新鮮だったのです。いきなりグッと主調に戻るので、シーンの展開が速いのです。また、1拍でも聴き手はドミナントのあの「ずれ戻る」感じを認識できるんだな、と新たな発見が。これがコロンブスの卵、スバラシかった(^^)。以降、他の人のほかの曲でも、このやり方をちょくちょく聴くことになったので、意外とフォークロック方面の人の間で話題になった曲なのかも。
というわけで、『トンネル・オブ・ラブ』以降のスプリングスティーンさんはこれしか聴いてないんですが、これは良かったです。フォーク路線のスプリングスティーンさんが好きなら、当たりの1枚と思います。
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