『帰ってきたウルトラマン オリジナル・サウンドトラック』

KaettekitaUltraman.jpg ドビュッシーのホルンの使い方を聴いていたら、自分は管弦楽ではオーボエとホルンの使い方がうまい作曲家さんが好きなんじゃないか…という事に気づきました。特にホルンなんですが、自分がホルンをいいと思った最初の体験ってなんなんだろうかと考えていたら…たぶん、「帰ってきたウルトラマン」なんじゃないかと(^^)。世代的に、昭和のウルトラマンシリーズは大ビンゴ。子供のころ、テレビにかじりついてみてました(^^)。シリーズ中ダントツで好きだったのはウルトラセブンで、音楽もウルトラセブンのオーケストラのBGMが一番好き。セブンは僕のオーケストラ原体験だったんじゃないかと思います。そのスコアを書いたのが冬木透さんという作曲家で、ウルトラセブン以降のウルトラマンのスコアはしばらくこの人。というわけで、音楽はウルトラセブン以降も秀作ぞろいで、「ウルトラセブン」「帰ってきたウルトラマン」「ウルトラマンエース」のスコアは、どれも好きです(^^)。そして、ホルンに関して言うと、「帰ってきたウルトラマン」がとびぬけて素晴らしい!でもウルトラマンって、肝心のドラマが「帰ってきたウルトラマン」あたりからどんどん駄目になっていって、「ウルトラマンエース」は第3クール以降は見るに堪えず、ウルトラマンタロウまで来ると子供から見てもあまりにアホ臭すぎて観るのをやめちゃった(^^;)。。

 帰ってきたウルトラマンでは、登場する防衛軍MATが決死の覚悟で悲壮感たっぷりに出撃する時に流れる「ワンダバダバ…」のBGMとか、苦戦していたウルトラマンが形勢逆転して優勢になった時に流れる爽快なテーマ(次週予告でも流れてました^^)あたりがすばらし~!あと、自分の意思ではウルトラマンに変身できない主人公が、とうとうウルトラマンになった瞬間に流れる「ダ~ン、ダラッダッダー!!!」という曲も、キタ━━━ヽ(`・ω・´ )ノ━━━!!って感じで大好きでした(この音楽が脳内再生できる人は、僕の友達です^^)。このサントラを聴くと、ウルトラセブンに比べると、実験性は少なくなって、けっこう木管室内楽的なものとか、クラシックに寄った感じの曲が多いんだな、と感じました。それにしても、聴いたことのあるメロディのオンパレード。どれだけ観てたんだよ(^^;)。そしてホルン大フューチャー曲は、物語のエピローグ部分で、夕日を見て「平和が訪れた」みたいなときにかかる曲が一番印象的。次週予告と同じメロディなんですが、楽器を入れ替えるだけでこんなに変わっちゃうんだから、楽器の力って凄いです。そういえば、ウルトラセブンの最終回もホルンの効果が絶大だったな…。

 少し残念なのは、ちいさい頃に持っていた新マンのドーナツ盤レコードのB面に「基地は海底波間に隠れ…」という歌い出しで始まる歌が入ってたんです。曲のタイトルも覚えてないし、たぶん劇中でも使われなかったんですが、これが大好きで、オープニングテーマよりもよく聴いてたほど。特に、エンディング部分のティンパニーとストリングスの緊張感がツボ。このCDには、その曲が入ってないんです。それさえ収録されてたら完璧だったのになあ。それにしても、懐かしくて童心に帰ってしまいました。


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スコア「ドビュッシー:海」 

score_debussy_laMer.jpg でもって、これがドビュッシーの大名曲「海」のスコアです。自筆譜ではなく、マックス・ポンマー校訂したものを、見やすく打ち出した感じ。僕が持っているのは音楽之友社が出しているハンディサイズのものなんですが、なんでフルスコアを大判でなく、こんな小さなサイズのものを選んで買ったかというと、CDを聴きながら追いたいから(^^)。

 「海」を含めたドビュッシーの音楽は、大名曲というだけでなく、音楽の作曲技法の大転換点にもなっているので、響きがそれまでの音楽と全然違います。いまだって、やっぱりこういうサウンドと曲の構成の仕方は少ない方。だからサウンドもいまだ新鮮で圧倒されるんですが、でもそのサウンドって、エフェクター買ってきて聞き覚えのない音を造ってるんじゃなくって、ベートーヴェンとかと同じ管弦楽という編成から出てくる音が、これだけ違う色彩感の音を生みだしてるんですよね。その謎を知りたかったら、理論書を読むよりもスコアを見た方が早い(^^)。冒頭16小節の音の重なり方を見て聴いて感じて考えるだけでも、感動しちゃうとおもいます(^^)。しかも、あの音の洪水に浸りながら、ソファにもたれて読みたいわけです。だからハンドサイズ(^^)。

 いま、音楽って、使い捨てのように次から次に聴かれては忘れられていくじゃないですか。でも、そういう大量消費社会の消耗品としての音楽よりも、生涯かけて10曲ぐらいを書き上げるような気合いで書かれた音楽の方が、完成度が段違いに高いと思うんですよね。聴く方にすれば、ネットやスマホの普及で情報の洪水の中で忙しくなっちゃうんじゃなくって、そういう安易なものは全部切り捨て、夜は本を読んだりよい音楽を聴いたりという方が、全然優雅で落ち着いたいい人生になる気が(^^)。何となく1~2度聴いて忘れちゃうんではなく、背景も知って、スコアも見て、理解して、心から感動して…という方が、どれだけ贅沢かと。とっかえひっかえで100も200も掴むより、厳選した10とか20を深くじっくりというのもいいと思うんです…今までたくさんCDのレビューしておいて、説得力ないか(^^;)。
 クラシックのいい所は、それだけ深く入れるだけの懐の深さが実際にあるという所。楽譜が苦手でも、深く読めなくても、クラシックの楽譜を追うと、どういう楽器がどういうふうに重なっていて、どんな感じで音が動いていてというのがグラフィカルに見えるので、なんとなく構造が見えてきたり、聴こえ方が変わってきたりすると思います。さすがにこのサイズだと音符が見にくい所がありますけど(^^)。


『ブレーズ指揮・ニューフィルハーモニア管弦楽団 / ドビュッシー:海、牧神の午後への前奏曲、ほか』

Boulez conducts debussy 学生時代は貧乏なくせに好奇心は旺盛だったもので、色んなCDやLPを聴きたいし買いたかったです。というわけで、クラシックのCDは、なるべく同じ曲はダブらないように、オケやプレイヤーを厳選し、なるべく色んなオケやプレイヤーを聴くように散らし、そして中古を中心に安値で買って買える枚数を1枚でも多くする事を心掛けてました(*゚∀゚*)。でも、フランス音楽だけは別。ドビュッシーやラヴェル、メシアンあたりは、同じ曲でも指揮者違いやオケ違いで、何枚も買ってしまいました。中でもドビュッシーの「海」は、1枚や2枚で収まるものではなく、ブレーズ指揮のものだけでも2枚持ってたりします。1枚は、前回の記事で書いたクリーヴランド管弦楽団のもの。もう1枚がこれで、CBSから出たニュー・フィルハーモニア管弦楽団のものです。ブレーズがドビュッシーの棒を振ったという事で、昔はけっこう話題になった盤でした。収録は、「海」「牧神の午後への前奏曲」「ノクチュルヌ」「遊戯」というわけで8割ぐらい被ってますが、こちらは「牧神の午後」が入っているのが大きい(^^)。ちょっと、この2枚を比較してみようかと。

 まず、「海」で言うと、僕はこちらの方が好き(^^)。理由は、サウンドの色彩感がこちらのほうが強烈に感じるからです。なんというのかな…理由は、多分オーケストラの実力差とかそういうんじゃなくって、ホールの広さの違いとか、録音の差とか、そういうところの差じゃないかと。いや、まえのグラモフォン盤のクリーヴランド管弦楽団の録音の方が、ホールもいい所っぽいし、音もリッチだし、一般的に言えば録音もいいんじゃないかと思うんです。でも、いわゆる「オーケストラのいい音」「ホールのいい音」になっちゃってて、ドビュッシーのスコアに書かれていた色んな色彩が負けちゃってる気がしちゃうのです。それに比べると、こちらのCDの方が、管弦が弾き分けた音色とか表現がすごくよく伝わる感じ。たとえば、レントのトレモロで始まる冒頭から、あのピチカートの美しい音が入ってくるまでが、こちらの録音では鮮明。一方、クリーブランド版ではほとんど聞こえない(;_;)。。…まあスコア上はピアニッシモなので、クリーブランドの演奏は正しいと思うんですが、やっぱり美しい始まりだけに、ドビュッシーの書いた音符自体も感じたかったりして(^^)。。

 次に、「夜想曲」の3番「シレーヌ」でいうと、これが逆。クリーヴランド版の方が、管弦と合唱の混ざりがよくっていいです。こちらの盤は合唱が完全に右寄り、これはオンマイクの弊害が出た感じでしょうか。こちらの合唱団はジョン・オールディス合唱団なんですが、ひとりひとりの声を聞き分けられるぐらいにマイクが近いんですよね。というわけで、クレジットを見てみると…ああ、「夜想曲」だけ、スタジオ録音でした。こういう音楽はスタジオで録音しちゃだめだよ。。やっぱり合唱やオケってホールのアコースティックが大事ですよね。弦や合唱をスタジオで録音する悲劇は、子供の頃に「銀河鉄道999」で痛感して以来、ほとんどトラウマです(^^;)。

 というわけで、曲がほとんどダブっているというのに一長一短あるものだから、僕はどちらのCDも手放せないでいます(^^;)。一般的にはクリーヴランド版の方が高く評価されそうですが、「海」のスコアや演奏表現の妙を感じたいなら、CBS録音のニューフィル版も捨てがたいです。あ、そうそう、こちらにだけ入っている「牧神の午後への前奏曲」というのは、音楽の歴史を勉強していると絶対出てくるぐらいの重要曲です。僕はあんまり好きじゃないけど。


『ブーレーズ指揮・クリーヴランド管弦楽団 / ドビュッシー:海・夜想曲・遊戯 他』

Boulez_Debussy_Yasoukyoku_umi.jpg 続きまして、ドビュッシーの管弦楽曲です。僕は、ドビュッシーに関してはこのCDの指揮者であるブーレーズに教育して貰ったような所があります(^^)。このCDには、「夜想曲」「クラリネットと管弦楽のためのラプソディ1番」「遊戯」「海」が入っていますが、特に人に薦めたいのが「夜想曲」の3番と、「海」です!

 まず、「夜想曲」。3楽章からなるこの作品で、ザ・フランス音楽と僕が感じるのは、3楽章の「シレーヌ」。この楽章だけ女声合唱がつくんですが、この和声感覚はヤバいです、鳥肌ものの浮遊感覚!ドイツ音楽にはあり得ないこの4度積みの声の重なりの悦楽は、聴いていてゾワゾワきてしまいます。合唱のヤバさって、弦よりも互いの音が綺麗に溶け込む所だと感じます。そしてそれがこのインターバルで重なると…暗さとか悲しみとかとは無縁、かといって能天気かというとそうじゃなくって…もうこの感覚は、音を体験しないと伝わらないかも。この和声感覚は、ラヴェルの超傑作「ダフニスとクロエ」の冒頭に思いっきり繋がっていきますが、これが元祖だったんじゃないかと思うんですよね。いや~、これを聴くためだけでも、このCDは手に入れる価値があります!ぜったい、いいオーディオで聴くべき!
 続いて、ドビュッシーの管弦楽曲と言って真っ先に出てくるのは「海」!フランスのこの4度和声音楽が来るまでは、クラシックはドイツの機能和声音楽の「緊張」→「解決」の独壇場。フォーレやサティをきっかけに、「印象主義」なんていうその瞬間のサウンドの色彩感覚で表現しちゃう音楽が出始めてきて、当時のサロンなんかで印象主義の絵画あたりと結びついて、そして管弦楽として一気に開花したのがこのドビュッシーの「海」というわけです。スタートがあってゴールにたどり着くというドラマではなく、どこに向うでもなくただ漂っているようなこの浮遊感、フワーッとはじまってフワーッと色々な色彩が立ち現われていくこの悦楽…この音楽を聴いている間だけ、すごい音に囲まれて、本当に極楽に入るようです。もう、ずっとこの悦楽に浸っていたい…。音楽が好きだというなら、ドビュッシーの「海」を聴いた事がないなんて許されないというぐらいの超重要曲、聴いた事がない人は、いますぐいいオーディオ装置で名演を聴きましょう!

 そして、指揮者のブレーズとフランス音楽について。今、僕たちは、このCDにも収められている「遊戯」とかのフランス音楽の名曲を当たり前のように楽しめてますが、ほんの少し前の時代は、そんな事なかったんですよね。音楽パトロンから離れて以降の時代のクラシックは、人気興業を目指すことにならざるを得ない面があるので、人気曲はどんどん演奏されるし、不人気曲は誰も取りあげない…な~んてことになっちゃったりします。そうなると、いい曲かどうかではなく、人気曲かどうかで判断されちゃったり。これは他のジャンルでもそういう所があって、ジャズの演奏の場だと「枯葉」はどうしても要求されるし、タンゴだと「ラ・クンパルシータ」は要求されちゃいます。でも、それよりも色んな点で優れてると思える曲が、「大衆への人気」の点から取りあげられずに埋もれていったり…。そういう中で、戦後フランスの大指揮者になったブレーズは(作曲家としても有名ですが^^;)、フランス音楽に光を当てて、いい音楽を発掘して、そのどこが良いかを言葉で説明していったのです。ドビュッシーやラヴェルの音楽についてのブレーズの説明は、さすが作曲家だけあって説得力がスゴい。フランス音楽の今の興隆は、ブレーズの尽力が大きかったと思います。有名な論文もあるんですが、僕はそれを音大の図書館でコピーしたものしか持っていないので、ここで紹介できなくて残念。そうそう、「海」に関しては、メシアンによるアナリーゼが素晴らしいんですが、これも大学でコピーしたものしか持ってない(^^;)。また、趣味で音楽を聴いて楽しむなら楽理まで入り込む必要なないと思うんですが、そういう方にとって、このCDの2枚目が素晴らしい!ドビュッシー、マーラー、ヴェーベルンという音楽の近現代の大きな流れを、ブーレーズが解説してくれています(=^▽^=)。ただ、輸入盤だとこれがフランス語なので大変。でも日本盤は、全訳を載せてくれてます。これは、近現代が好きな人には絶対に聴いてみてほしい名講義です!!


『エマール(pf) / ドビュッシー:前奏曲集 第1巻&2巻』

Aimad_debussy_prelude.jpg 古い巨匠によるドビュッシーのピアノ演奏について書いたので、比較的新しいピアニストによる、ドビュッシーの演奏を聴いてみようかな(^^)。え~っと(ゴソゴソ)…お、こんなの持ってたっけ?2012年発売みたいだから、けっこう最近買ったのか。

 僕がドビュッシーのピアノ曲と言ってまず思い浮かべるのは「映像」2つと「版画」ですが、このCDで取りあげられた「前奏曲集」1巻&2巻もメッチャ有名です。「音と香りは夕暮れの大気に漂う」「亜麻色の髪の乙女」あたりは、聴いたら「あ、これ聴いたことある」って思うんじゃないかと。で、やっぱりドビュッシー的な「おお~、気持ちい!!」という響きの雨あられ、やっぱりいいなあ。。和声の色彩感覚が凄いので、聴き始めて5分もすると、ピアノだけの演奏だなんて思えなくなってきます(^^)。というわけで、ドビュッシーの音楽が好きなら、この「前奏曲集」も間違いなく当たりじゃないかと。

 そして、演奏。このCDのプレイヤーさんはピエール・ロラン・エマール(Pieere-Laurent Aimard)という人。名前の通りフランス人ピアニストなので、フランス音楽はホームゲーム。このピアニストで僕が覚えている演奏は、ブーレーズ指揮ロンドン響によるバルトークの弦・打・チェレで、2台ピアノのひとりがこの人でした。でも、その演奏のピアノをあんまりよく覚えてない(*゚∀゚*)。というわけで、このCDだけで言うと…技術は見事、リズムやダイナミクス方面の表現も素晴らしいんですが、音色の表現がもうひと声かな?いや、すっごくうまいと思うんですが、ギーゼキングの直後に聴いたのがマズかった。。ギーゼキングの見事な音色表現に比べると、物足りないです(^^;)。なんか、録音が部屋のエコーをいっぱい拾ってて、良くも悪くもずっと「ぼわ~ん」としてるんです。それは気持ちよくもあるんだけど、全部それだと…なんだか、音色表現を自分でコントロールするんじゃなくって、録音でごまかしているのかなって、だんだん思えてきちゃいました。ドビュッシーの曲って、リストみたいに超高速のパッセージが出てくるわけじゃないから難しくないように思われがちだけど、実は指使いが結構難しかったりするし、色彩感覚が命みたいな音楽なので混ぜる音のブレンド具合を考えて指の強さまで順位付けしなくちゃいけないし、そうなるとタッチもペダルも死ぬほど重要になってくるので(;_;)、ピアニストなら誰しも「にじんだような音で録音して貰ってごまかしちゃえ」と悪魔のささやきが聴こえちゃう気がするんですよね(&p゚ω゚*)。でもやっぱりそういう考えをしていいのは僕みたいなシロウトまでであって、ドイツ・グラモフォンからCDを発表するレベルまで来てる人がそれをやってはいけないんじゃないかと。音のふくよかさが部屋のエコー頼りになって、ギーゼキングみたいにタッチやペダルの神業で色んな音色を使い分けているわけではない…と感じてしまいました。
 でも、ピアニストを擁護すると、音色の狭さはピアニストの責任だけじゃなくって、ピアノの影響もあるかもしれません。当たってるかどうかわかりませんが、CDで聴くかぎりは、明るく堅い比較的新しめのスタンウェイDみたいな印象。ここ30年ぐらいのスタンウェイって、ニューヨークもハンブルグも(もちろんメンテ状況や個体差は馬鹿に出来ないほどあると思うんですが)、誰がどうやって演奏してもある程度ちゃんと音が出る代わりに、だれがどうやって弾いても似たような音になりがちな感じがします。これって、僕みたいなヘタクソピアニストには超絶に有り難いんですが(指が綺麗に入らなくても、ハンマーが綺麗に落ちてくれる^^)、うまい人にとっては歯がゆい所もあるかも。「タッチを変えても変えても同じようなリッチな音しか出ねえ!ここはもっと素朴にしたいんだよおお…」みたいな(^^)。ピアノに限らず、最近の楽器って、アマが弾いてもそれなりの音が出るように作ってあるものが多いですが、プロ用に「演奏は難しいかも知れないけど、テクさえあれば色んな音を引き出せる!」みたいな方向のものも作ってもいいんじゃないかとも思ったりします。



『ギーゼキング(pf) / ドビュッシー:映像、版画 ほか』

gieseking_debussy_images.jpg クラシックといえば8割方ドイツなんじゃないかというほどドイツ優勢。それに対抗できる独特な語法を編み出した文化というと、真っ先に上がるのがフランス。去年の末、スランス音楽のパイオニアとして、フォーレという作曲家のディスクを何枚か紹介しました。でも、フォーレやサティはたしかにパイオニアとは思うんですが、でもフランスの代表的作曲家というと、ちょっと違う気がします。じゃ、誰が代表かと考えると…やっぱりラヴェルかドビュッシーになるんじゃないかと。特にドビュッシーは、ドイツ音楽とは違う4度堆積和声とか、長調でも短調でもない旋法の使用とか、以後のフランス音楽のこの流れを決定づける作品を連続で書き残したので、ひとりという事になるとドビュッシーが代表格かも。ラヴェルは、時代によって作風がけっこう変わったりするんでね( ̄ー ̄)。

 ドビュッシーには管弦楽にも室内楽にも名曲がたくさんありますが、これはピアノ独奏です。ドビュッシーのピアノ曲というと"Images"(映像)とか"Estampes"(版画)、それに前奏曲集あたりが有名。特に、「映像」と「版画」は、この手のフランス音楽に「印象主義」という名称を与える決定打になった作品。というのは、ドイツの音楽が、始まりがあって、劇的な出来事があって、山あり谷ありで最後に物語の結末につく…みたいなドラマティックな展開なのに対し、ドビュッシーの音楽はあまり変化せず、その瞬間瞬間の音の色んな音の重なり方の「感じ」「印象」が支配的、という意味で、「印象主義」と言われるんですね。特に、「映像1集」に入っている「水の反映」は、何故これらの音楽が「印象主義」と呼ばれるのかがすぐ分かるぐらいに色彩感が凄いです!!油絵というより、水彩画の鮮やかさに近いでしょうか。このディスクには、この2曲が入ってます。一応、収録曲を書いておくと…
・映像 第1集
・映像 第2集
・ピアノのために
・版画
・英雄的な子守歌
・ハイドン讃

 そしてこのディスク。1953年の録音、演奏はあの伝説のピアニスト、ワルター・ギーゼキングです!ギーゼキングという人、特殊な練習をしなくても、どんなピアノ曲でも演奏できたといわれてます。また、初見もべらぼうに強くて、楽譜をしばらく眺めたらすぐに暗譜出来てしまうほどだったそうで。これって、要するにソルフェージュ能力が圧倒的に優れているんだと思いますが(この辺の事は、以前に紹介したグールドについての分析本に詳しく書いてありました^^)、つまりは音と運動のイメージを先に全部作ってしまってから演奏に入るんでしょうね。そして、印象主義のスコアから感じるものをふわーっとした音で演奏してしまう、ギーゼキングの演奏能力&イメージングが凄い!!ピアノって、指の上では鍵盤を叩いて以降はもう音色をコントロールできないじゃないですか。音色のコントロールが、直接弦に触れて演奏しているギターなんかと比べると、それは泣きたくなるほど(;_;)。つまり、色んな音を混ぜてニュアンスを作る方向には優れてるけど、1音を色々な音色で弾き分けるのがかなり難しい楽器がピアノ。なのに、ギーゼキングはピアノから色々な音色を引き出してしまいます。このマジックはペダルにあるのは分かってるんですが、それにしてもここまで色彩感覚が凄いと、本当にマジックです。鮮やか過ぎ、美しすぎる…。また、太いのに重くなくって丸いこの音の感じは、戦前ベヒシュタインかな?いいな~、こういうピアノ触ってみたいな~。。
 ただ、録音が古いので、録音の音が良くないです。「サー」っていうノイズがとか、鮮明さとかが、ちょっとね…。でも、「伝説の巨匠」の見事な演奏と、フランス音楽がいよいよ独自性を持ち始めた時の代表曲のふたつを同時に楽しめる感動的なCD。これは多くの人に推薦したいです。必聴!!


映画『告発の行方』

KokuhatunoYukue.jpg ジョディ・フォスター主演の、法廷闘争ものの映画です。当時アメリカで問題になっていたレイプ犯罪を題材にして、レイプシーンを熱演したジョディ・フォスターが何かの映画賞を取ってました。1988年の作品です。

 ジョディ・フォスターがレイプされるシーンを売り物にしているような気がして(実際そういう計算も少なからずあったとは思うんですが…)、また「アメリカの社会問題を扱ってる」と言われても別にそれを見ようという気も起きなくって、公開当時はあんまり観る気になれませんでした。でもこの前たまたまテレビでやってまして、観てたら最後まで見ちゃいました(^^)。法廷闘争ものは、推理小説のような面白さがあってるので、やっぱり面白いですね~。
 事件は、あるバーで起きます。マリファナやって酒を飲んでいて、露出の多い服を着ていた女が、男たちに犯されます。最初はちゃんと口説いてたんですが、女の方が酔って踊り出すし、胸の谷間は見えちゃってるし、そうなると男からしたら「なんかやれちゃいそうじゃね?」みたいになって、酒場全体もお祭りムードになってきて、ゲーム気分でレイプにまでエスカレートしちゃう。女は必死に抵抗して、3人に犯されたところでようやく店の外に逃げ出します。これを法廷で争う事になるんですが、女側にも問題はあるし、立証や証言を取るのが難しいし…みたいな展開。
 この「不利な状況からどうやって勝訴に持ち込めるのか」という所が、法廷闘争ものの映画の面白さ。物語の軸もゴールもはっきりしているから、分かりやすくていい(^^)。そして、社会ドラマ云々の部分は…ちょっとピンとこなかった(゚∀゚*)エヘヘ。というか、あまり同意できなかったな~。あんな露出多くてニヤニヤして体くねらせてバーで踊ってたら、そりゃ誘われるだろうし、じゃあなんでそういう描写をしたかというと、明らかに男が悪いレイプ事件だったらドラマが成立しなくなるからなんじゃないかと思ってしまった。。これを社会ドラマとして提示したいなら掘り下げが浅い気がするし、じゃ娯楽映画かというと、そうしてしまってはまずいテーマだし、ちょっと微妙かな?でも、当時のアメリカだと充分に説得力のあるテーマだったのかも知れません。レイプシーンは扇情的には描かれておらず、その瞬間は女性目線から恐怖を覚えるような演出で描かれています。ここは良かったです。そうしないと、社会ドラマではなくポルノになっちゃいますもんね。
 というわけで、見始めたら最後まで見ちゃう映画でしたが、一度見たらもういい…かな?そうそう、ジョディ・フォスターと言えば、僕にとっては「タクシードライバー」ですが、世間的にはこれか「羊たちの沈黙」なのかな?…今気づきましたが、犯罪的な映画ばっかりだぞ(∵`)。


『Yngwie Malmsteen / Inspiration』

YngwieMalmsteenInspiration.jpg ひとつ前の記事で書いた、ディープ・パープルの"pictures of home" を、メタルの速弾きギタリストで一世を風靡したイングヴェイ・マルムスティーンがプレイしたアルバムというのは、これ。ハードロックの名曲のカバーアルバムで、ディープ・パープルのナンバーからは"pictures of home" "child in time" "demon's eye"、パープルのギタリストだったリッチー・ブラックモアの結成したレインボーのナンバーから"gates of babylon"が入ってます。イングヴェイって、パープルの延長みたいな曲をいっぱい書いてますが、ツェッペリンやサバスじゃなくって、パープル路線の方が好みだったんでしょうね。ジミヘンもカバーしてましたが、これは僕には駄目。というか、イングヴェイに限らず、ジミヘンのカバーでカッコいいものって、ほとんど聴いた事がないです。

 うまいです!ギターはもちろんですが、ヴォーカルもバンドもうまい!!ギターの引き立て役じゃなくって、バンド自体のまとまりが良いです!あと、有名な曲だけ取りあげて、メタルのフォームでやる…という事はなくって、ハードロックの良さをリスペクトした演奏をしつつ、メタルのカッコよさもちゃんと織り込んでいた所がよかったです。80年代中ごろ~90年代アタマのメタルって、コマーシャルなものか、逆にマニア専門のニッチなものに両極化していて、バランスが悪いと感じていたんですが(な~んて言ってますが、考えてみたらいろいろ言えるほど聴いてませんでした^^;)、これは良かったです。イングヴェイでは前に『TRILIGY』というアルバムの感想を書きましたが、僕はその少し後ぐらいでメタルを聴かなくなっちゃって、このアルバムを聴いたのは発売よりずっと後。メタルの人がロックとかハードロック寄りになっていくと、普通になりすぎちゃってむしろつまらなくなっちゃう事が多いと感じていたのですが、これは例外、良かったです(^^)。60~70年代のロック全盛期が好きな人でも、楽しめるアルバムかと思います。演奏は、60~70年代のハードロックより明らかにうまいし、表現もメタルやフュージョンにありがちな指先だけの上っ面な感じじゃなくって素晴らしいっす。イングヴェイ・マルムスティーンって、この後はどういう音楽をやったのかなあ。メタルに戻ったり、逆に古いロックを探り始めてたらあんまり興味ないけど、そうではない道を歩んでたとしたら面白そうだなあ。でも、いまさらロックギタリストのその後を追う気にもなれなかったりして(´・ω・`)。


『DEEP PURPLE / MACHINE HEAD』

DeepPurpleMachineHead.jpg ロックの名盤ガイドには絶対出てる1枚、ディープ・パープルのマシンヘッドです。でも、若い頃、これの良さが全然わからなかった(>_<)。「これがディープ・パープルの最高傑作だって?ウソだろ、耳腐ってんじゃねえの…」みたいな。今でもそう思うんですが、これを聴くなら"live in japan" が同じ曲を結構やっているうえに演奏のクオリティも音のクオリティも断然いいので、そっちを推したいっす。で、ライブを気に入ったなら、そのメイキングやリハーサルを聴くつもりでこれも…みたいな感じで丁度いいんじゃないかと。バンドでいうと、演奏が堅すぎ、合わせも足りなさすぎで、バンドがまとまってません。個人個人もえらく慎重に演奏してる感じ。凄いプレイヤーがいっぱいいるバンドなのに、全然躍動してません。録音でいうと…なんだこの音、これより古いディープ・パープルのレコードは良い音してるのに、なんでこんなしょぼいんだろうか。どの楽器も、全部音が詰まっちゃってます。ヴォーカルなんて潰れたみたいな音、ドラムなんてスネアもシンバルも「ボチャッ」みたいな音になっちゃってて、まるで迫力がありません。まったく同じ体験を、僕はレインボーのファーストでしたことがあるぞ…。これはミュートどうこうじゃなくって、録音の問題なんだろうな…。
 で、超久しぶりに聴いてみると…若い頃に思っていたほどの「ダメだこりゃ」感はありませんでした。"highway star" とか"pictures of home" とか"space truckin'"とか、カッコいい曲がいっぱい入ってました。恥ずかしい話ですが、"pictures of home" なんて、イングヴェイ・マルムスティーンが良い演奏をしていたので、いつの間にか僕の中ではイングヴェイの曲みたいに記憶がすり替わってました(*゚∀゚*)アハハ。この曲も、バンドが躍動すれば全然カッコよかったんだろうな。イングヴェイのプレイを聴くまで、まるで注目してなかったです。というわけで、演奏が躍動してないのと、録音の悪さのダブルパンチが激痛。ここから何度かリハを重ねて、録音もちゃんとしたらもっと名盤になってたかもしれない…あ、それが「ライブ・イン・ジャパン」なのか(^^)。

『DEEP PURPLE / LIVE IN JAPAN』

DeepPurple_MadeInJapan.jpg ハード・ロックには異常に燃えるライブ盤がいくつもありますが、これなんてその代表格じゃないでしょうか!これは凄い、超燃えます!!ただ、LP2枚組で出たこのアルバム、僕はいつも最後まで聴き通せない(*゚∀゚*)アハハ。。

 アルバム冒頭、サウンドチェックをしてる所から、だんだんリズムが出てきて、オルガンが「ギュワ~ン」って和音を奏でて、ギターがイントロのリズムを放り込んできて、一気にハードロックの大名曲"highway star"になだれ込みます。うおおお、かっこいいい~~~!!!で、ものすごいオルガンソロにギターソロ…たぶん5~6分だと思うんですが、聴いている感覚としては一瞬の出来事、一気に駆け抜けます。いや~、これはいいっすよ、これを体験した事のない人は、爺さんも小学生も必聴!!そして2曲目"Child in time" は、すごく静かな所から始まって、オルガンとギターのソロを軸にどんどん盛り上がって、最後に第1主題に落とすという、まるで1楽章形式のソナタのような曲。これも、演奏も曲もメッチャクチャ素晴らしい!!音楽的な挑戦もいい!LPだとこれで1枚目のA面終了なんですが、まずここまでは神がかった大名演、すっげ~!!

 問題はここからで…B面は大有名曲"smoke on the water" から始まるんですが、そもそも僕はこの曲をいいと思った事がないので、演奏うんぬんの前にパス。以下、似たような型にハマった曲と演奏が続いて…途中で聴くのをやめてしまうパターンです。う~ん、またしてもスコーピオンズの"Love at the First Sting" 現象か、ハードロック期のディープパープルはこのパターンが多いな~。たぶん、作曲のやり方のパターンが少なすぎることが飽きちゃう原因かも。みんなうまいし、ファーストやセカンドを聴く限り、決してひとつの事しかできない人たちではないと思えるだけに、個人的にはハードロックという言葉に縛られ過ぎないでバンドを発展させてほしかった。…いや、でもこれだけ熱い音楽を聞かせてくれたんだから、そんなないものねだりをしちゃダメですね(^^)。もしかしたら、LP2枚じゃなくって、1枚にまとめて出していたら文句なしの大傑作アルバムになってたかも。でも、今だと"DELUXE EDITION" なんていうのも出てるのか…聴き通せないと言っておきながら、"SPEED KING" だけでも聴いてみたいな~。


『DEEP PURPLE / BURN』

DeepPurple_Burn.jpg 連休だというのに、部屋にこもって仕事三昧です(;_;)。よ~し、ロックでも流してスカッとするか!!(ゴソゴソ)・・・
お、こんなの出てきた、ディープ・パープル「紫の炎」です!!微妙な邦題はさておいて、ハードロック好きな人だったら、これを聴いてない人なんていないだろうアルバム!なんといっても、アルバムタイトルになったA面1曲目"BURN" が熱い、超カッコいい!!30を超えても40を超えても、これがかかると「おお!!」と燃えるのは僕だけじゃないハズ(^^)。"Highway star"、"Child in time"、そして"Burn" は、ディープ・パープルに限らず、ハードロック全体を見ても屈指の名曲・名演(^^)。"Burn"なんて、リフはカッコいいし、オルガン・ソロもギター・ソロもカッコいい!ヴォーカルもすっごくいい!しかし、それ以上に燃えるところがボクにはありまして…Aメロ中のドラム、すげええええええ!!リズムキープなんて全然しない(いや、リズム感としては感動しちゃうぐらいにタイトなんですが)、ほとんどドラムソロ並みに叩きまくってます。メトロノーム係の8ビートや16ビートのドラムなんてつまらない、ジャズみたいに複雑で刺激的なアクセントを作ってほしい…とロックドラムには常々感じている僕にとって、これはドツボ!!超カッコいいです!!

 でも、これだけ好きなクセに、じゃあディープ・パープルのアルバムで何が一番好きかというと、断トツでファースト(^^)。まあこれは音楽性自体がハードロック期とは全然違うから別にして、ハードロック期のもので好きなものというと『イン・ロック』と『ライブ・イン・ジャパン』。なんで大好きな"BURN" が入っているこのアルバムが愛聴盤にならないかというと…僕的には"Burn"しかピンと来ないからなのでした(*゚∀゚*)アハハ。だから、A面1曲目を掛けて「うおお~」となった後、アルバムが進むにつれてだんだん冷めていって…途中で止めちゃう。あり得ないぐらいにテンションが上がって、あっという間に冷めてしまうこの現象を、僕はスコーピオンズの"Love at the First sting" 現象と呼んでます。。でも1曲目だけは、テンションあげたいときに今もたまに聴きます。やっぱりカッコいいなあ。


プロフィール

Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです(ノ^-^)ノ
音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。
プロでも評論家でもありませんので、たいした事は書けないかも知れませんが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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最近気になってるCDとか本とか映画とか
 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!! レコ芸に載っていた近藤譲さんの新譜、室内楽作品集みたい。好きな作曲家なんで聴きたいんですが、持っている2枚のALM盤と4曲かぶってるので悩み中…
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