
日本盤のタイトルは、「限りなき探究」。ミロスラフ・ヴィトゥスのリーダー作です。
ウェザー・リポートのファーストアルバムに感動した僕は、名作と言われていたウェザー・リポートのアルバムに何枚か手を伸ばしたんですが、ちょっと退屈でつまんなかった(^ ^;)。もしかすると、ウェザー・リポートが凄いんじゃなくって、ショーターと、ベースのミロスラフ・ヴィトゥスが凄かったんじゃないかと疑い始めました。ショーターは前から好きだったので、問題はヴィトゥス。そして、中古盤屋でついにこんなレコードを見つけた若い頃の僕は、1曲目からぶっ飛んでしまいました!!いやあ、ジャズのウッドベースって、いかにソロを回してもらったとしても結局は低音部担当の縁の下の力持ちだよな…と思っていたのが、
ウッドベースって、アルコなしでここまで出来ちゃう凄い楽器だったのかとひっくり返ってしまいました。感覚的には、フュージョンというより、新主流派ジャズの熱い音楽を聴いている感じ。でも、これをジャズと呼ぶかフュージョンと呼ぶかなんて、たいした問題じゃないのかも。
これは大名作。
メンバーは、ジョー・ヘンダーソン(ts)、ジョン・マクローリン(g)、ハービー・ハンコック(ep)、ジャック・デジョネットまたはジョー・チェンバース(dr)。新主流派の名プレイヤーがこれだけ揃えば、そりゃ指先のスピード合戦じゃなく、音楽をカッコよく鳴らせるわけですね。。あれほど褒めておきながら、ウェザー・リポートのファーストよりもこっちの方がカッコいいぞ。。
曲はしっかりしているし、演奏のインタープレイの密度は濃いし、プレイヤー個々の演奏の技術力は高いし、素晴らしい名盤だと思います。そして、リーダーだからというだけでなく、ヴィトゥスさんがマジですごい。
あと、久々にこの大傑作を聴いていて、ひとつ思った事が。このアルバムで、ハービー・ハンコックはエレピを演奏しています(僕が持っているLPのクレジットにはピアノとだけ書いてあったので注意)。このエレピの音の特徴というものが、フュージョンの方向性を決めたのかも知れません。単純に、ピアノよりもディケイが長いし、ヴィブラート効果も入りますし、アタックは少ないですし。共演相手の音が変われば、演奏も変わると思うんですよね。ジャズが点と点をうまく重ねていく音楽だったとすれば、フュージョンはエレピの「ワ~~~~~ン」という長い音の上で、他の楽器がスパスパとたくさんの音を入れていきやすかったのかも。これが、フュージョンの音楽の傾向を、「プレイしまくる」か「エレピやシンセの音自体を聴かせる」かの両極に導いたのかも知れません。そして、エレピの音は元がアコースティックであるものをピックアップで拾っているだけなので、けっこう複雑で意外と生々しいのに対し、デジタルシンセの音となるといきなり情報量の少ない単純なものになっちゃいます。フュージョンがエレピからデジタルシンセへの移行期に、音楽がいきなりつまんなくなっちゃったのは、ここも原因かも。音楽って音を聴きながら演奏するものなので、出音ってやっぱり大事なんだな~、と改めて思ったのでした(^^)。
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