
惜しい人の他界のあいつぐ音楽界ですが、今年一番ショックだったのは、ブラジルのパーカッション奏者であるナナ・バスコンセロスの他界かも。エグベルト・ジスモンチとの来日公演が決まっていて、絶対に行こうと思っていたところでの訃報。うあああ、この人は生で見てみたかったよお(・_・、)。このCDは、1980年に発表されたバスコンセロスのリーダー作で、盟友ジスモンチと、ストリングスが入ってます。
ナナ・バスコンセロスのパーカッションを区分けすればマルチ・パーカッションになると思いますが、南米だからといって典型的なラテン・パーカッションのセットというわけでもなくて、ビリンバウとタブラ、それにカバサあたりが中心。あと、声をタブラのように「デュルディデュダラ…」みたいに高速で使うのも、けっこうよく聴きます。帰ってきたウルトラマンの「ワンダバ」の3倍は速いです(^^)。あれって、インド音楽の打楽器のレッスンで使う、声の楽譜というやつなんだろうか。そして、
ビリンバウとタブラの細かすぎる高速プレイが圧巻、神業です。打楽器が好きな人なら、もうこれだけでノックアウトなんじゃないかと。これが、フュージョン的な「技術だけ」プレイヤーじゃなくって、表現力がヤバすぎ。曲も芸術的でカッコよくって、音楽としていい!どちらも民族音楽色の強い楽器ですが、これほどのものが「民族音楽は拒否」みたいな理由だけで聴かれないのだとしたらあまりにもったいないので、ぜひ聴いて欲しいなあ。
しかし、プレイ志向が強いパーカッションのプレイは、飽きが来るのも確か。そこをうまい事やっているのが、ギターのジスモンチと、ストリングスです。アルバム冒頭はビリンバウの演奏から入り、これがどんどんスーパープレイと化していって…というのは、プレイヤー志向にある音楽ではよくある事ですが、そこからオーケストラの演奏を挟み込んで西洋音楽とブラジルを平行に扱って、最後にビリンバウに戻す、みたいな事をやってます。おおお、カッコいい!この辺は、ジスモンチのアルバムのやり口と似ているので、もしかしたらジスモンチのアレンジなのかも知れません。
でも、ブラジル音楽の芸術音楽への踏み込みは、僕の中では、ジスモンチとバスコンセロスで最後。あとの人は、よくってジスモンチやバスコンセロスのプレイの模倣どまりで、プレイとしては凄いのもあるんですが(というか、すごいものだらけ^^;)、音楽的には「まだドミソかよ」みたいなお手軽ポップスの延長にあるような音楽が多くってつまらない。ジスモンチやバスコンセロスのプレイだけじゃなくて、音楽を受け継いだり発展させたりする人が出なかったら、ブラジル音楽もそれまでだろうなあ。…いや、それが簡単に出るようなものでないから、バスコンセロスが偉大なんでしょうね。
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