
近現代の作曲家で、以降の音楽にもっとも影響を与えた作曲家といえば
シェーンベルクじゃなかろうか?!無調音楽、12音音楽などなど、シェーンベルク以前にはほとんど聴くことの出来なかった音楽がここからはじまり、以降のセリー音楽の源流になり、たぶん今のさまざまな実験音楽も…とにかく現代音楽のルーツとなった超重要人物、最先端で難解な、スゴイ人なのです!僕は、シェーンベルクは12音音楽にいってしまうちょっと前の、無調音楽にちょっとだけロマン派音楽の匂いが残っているあたりが一番好きでして、
ロマン派から無調、そして12音へというシェーンベルクの変化を存分に味わえるのが、このCDというわけです(^^)。
シェーンベルクさん、最初は
ブラームスとかワーグナーとか
マーラーみたいな重厚なドイツ音楽みたいなのを書いていました。その代表作が、このCDにも収録されている
「浄められた夜」。作品4なので、本当に初期ですね。これがいい曲なんです(^^)。
シェーンベルクは難解でちょっと…という方は、ぜひ「浄夜」を聴いてみて下さい!じつに官能的な、上質のロマン派音楽です(^^)。そうそう、この曲、じつは標題音楽でして、デーメルという詩人の詩からインスピレーションを受けて作られてます。もともと弦楽6重奏だったそうですが、ぼくが聴いたCDは全部大編成だな~(ホリガー指揮のものとか、カラヤン指揮のものとか)。
ここから、シェーンベルクの作風は少しずつ変わっていきます。無調といわれる音楽を書きはじめるんですが、このあたりのシェーンベルクの音楽は名作の宝庫。まずは、
「3つのピアノ曲」。作品11なので、これも比較的初期の作品なんですが、ロマン派な感じと無調のミックスみたいな感じ。調的感覚がないわけではないんですが、なんというのかなあ…センタートーンはあるけど、長調とか短調とか、あるいはそれらのモードとか、そういうんじゃないんですよね。もっと対位法的というか、それぞれの旋律の関係性でむすばれた音楽、みたいな。だからあえて調か無調かと言われれば無調という事になるんでしょうが、これが恐ろしくいい曲(^^)。曲の構造がしっかりしているからなんでしょうね。ただ、この曲にはバレンボイムの数段上を行く快演がありまして…それはまたいつか紹介します。そうそう、このCDですが、おもしろい事に、最後に「3つのピアノ曲」の第2番のプゾーニ編曲版が入ってます。これは、他では聴いた事がなかったもので、ちょっと驚きました。
これとまったく同じ年に書かれた
「5つの管弦楽曲」、これもまた素晴らしい!管弦楽ではあるんですが、これも「3つのピアノ曲」の似たような音楽で、しかし管弦曲のカラフルな響きがあるものだから、ゾクしてしまいます。そして、「浄夜」と違って、ドイツ音楽的なドラマがまるでなく、6つの楽章のそれぞれがすごく短くて(2分とか5分とか、もう管弦楽とは思えないぐらいに短いっす^^;)、無調的印象主義とでも呼びたくなるような感じ。いや~、これもカッコいいっす。こういうのを聴いていると、長調か短調の音楽ばかりを聴いている自分が馬鹿におもえてくる…。
その2年後に書かれたピアノ独奏曲
「6つのピアノ小品」。ここまで来るとロマン派の香りなんて全然なし。しかも、どの曲も長くて70秒と、短いっす(^^)。なんで短いのかは分からないんですが、この傾向はシェーンベルクの高弟ヴェーベルンもそうなので、そういうコンセプトが当時のセリー音楽にはあったのかも知れません。ただ、「無調」という言葉から想像する音とはちょっと違うと思います。無調といっても、♭9 とか♯5 が出てくるという感じだし、対位法的な線と線の構造が実によくできているもので、デタラメに聴こえるどころか恐ろしく合理的なかんじで美しい。これも素晴らしいです!
というわけで、ロマン派、無調、12音と変化していったシェーンベルクのキャリアを1枚で楽しめるこのCD、おススメです!!