『はっぴいえんど』

Happyend.jpg 頭脳警察に感激した中学生の頃の僕は、「洋楽がカッコよくて邦楽はダサい」と思っていたのが一変、黎明期の日本のロックバンドを色々とあさりり始めたのでした。そんな中はっぴいえんどは、黎明期の日本のロックの代名詞的な扱いのバンド。細野晴臣、松本隆、大瀧詠一、鈴木茂の4人のメンバー全員が、以降の日本のポップス・シーンで大活躍。中学生の頃、僕は友人に大プッシュされてこのレコードを聴いたんですが、あまりに持ち上げて語られるものだから、「へえ~、そんなにすごいロックバンドなのか、頭脳警察や外道あたりよりもすごいのかなあ」と、聴く前からどんどん「ものすごいロック」という妄想を膨らませてしまい、それが間違いの始まり(^^;)。。

 「ロック」って色々ありますよね。ビーチボーイズだってロックで語られる事がありますし。でも、中学生の頃の僕にとってのロックは、やっぱり「熱い」「はやい」「はげしい」というのが絶対条件の音楽だと思ってたんです。ところがはっぴいえんどは、アップテンポの曲は全然なし、ヴォーカルもエモーショナルとは言いがたい、バンドも丁寧すぎるぐらいに丁寧でグルーヴしません。僕が思っている「ロック」的な条件に合うところがなかったのです。正直言うと、ちょっと肩透かしを食らった感じ。はっぴいえんどは神格化されすぎてる、と思ってしまったのでした(^^;)。
 もしかすると、リアルタイムで聴いた人と、僕みたいな後追いの人では、感想が変わってくるのかも知れません。この頃ぐらいから日本のポップスやニュー・ミュージックが洋楽コピー状態になりましたが(そのまえはムード歌謡とか演歌とか、和洋折衷みたいなものが多かった)、リアルタイムで体験した人は「おお、洋楽を洋楽のバンドと同じ感じで演奏するバンドが現れた!」なんて感じたのかも。僕的には、フォーク調の2曲目「かくれんぼ」とB面に入っている「朝」、そして「はっぴいえんど」のアコースティック・ギターがアルペジオするファーストコーラスあたりが、すごく好きなんです。つまり、いいと思うところが、アコースティックでフォークな部分ばかり(^^;)。だから、僕にとってのはっぴいえんどは、ロックではなく、「日本のバンド・フォークの元祖」ぐらいな感じなのでした。

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『Walter Malosetti / Tributo a Django Reinhardt 』

Walter Malosetti _Tributo a Django Reinhardt  日本のロックのハナシから閑話休題。最近、せっかくジャズギターを勉強なさっている方のブログとお友達にならせていただきましたので、最近聴いたジャズギターのCDの話題などを。

 ワルテル・マロセッティ、アルゼンチンのジャズ・ギタリストです。僕はどうしても「アルゼンチン」の「ジャズ」とかきいてしまうと、ついついアルゼンチン独特のジャズを期待してしまうんですが、そういうところはまったくありません。古き良きアメリカのジャズから、モダン・ジャズの超オーソドックスなあたりのジャズという感じで、いってみれば超王道のジャズギター。チャーリー・クリスチャン、ジャンゴ・ラインハルト、そしてジム・ホールという、フュージョン要素のまったくない、あの王道です。ジャズ・ギターなので、ド派手でアクロバティックな感じはないんですが、実はメロディーとベースと和音を同時に演奏している、とっても難しいアレです。やっぱりギターは、単旋律だけやコードだけじゃなく、こういうひとりオーケストラをやってほしいです(^^)。しかも、ジャズだからけっこうアドリブが入ってるので、なおさらすごいと思ってしまいます。実は数年前から、ひまをみつけてはジャズギターをひそかに練習してるんですが、週に1~2回ぐらいでは全然うまくなりませんですね(^^;)。練習する時は、いつも前回のおさらいで終わっちゃう。そうやって自分でやってるものだから、こういうギターのむずかしさは痛いほどわかります。ギターよりピアノの方がぜったい楽だよなあ…。

 このアルバム、タイトルは「ジャンゴ・ラインハルトに捧ぐ」ですが、ビレリ・ラグレーンみたいに思いっきりジャンゴな感じなわけじゃなくって、実際にはもうちょっとモダンで、60年代ぐらいのジャズ・ギターみたいな感じ。編成は何曲かの例外をのぞいて、ギター・ベース・ドラムのトリオ。いや~、素晴らしいなあ。「いかにもジャズ・ギター」という感じなので、ジム・ホールとかジョー・パスとかを聴いて、すでに満足している人は、わざわざこのアルバムに手を出す必要はないかも。そういう意味でいうと、オリジナルのコピーだけをしているアメリカ外のミュージシャンって、模倣者であってまだ自分に辿りついていない人に見えるのかも知れません。そういえば、僕がピアノを演奏していた頃の日本のジャズ・シーンがそんな感じでした。オリジナリティにあふれる凄い人が、「でたらめ」とか「意味不明」とかいわれちゃうという悲しい状況でしたが、しかし海外に行くと評価が正反対で、オーソドックスなジャズをやってる日本人プレイヤーは「なんでアメリカの真似してるの?」といわれちゃうという。。まあそんなわけで、ジャズ・ギターの王道が好きな方には大ビンゴ、でもそれ以上を求めるならちょっと物足りないかも知れません。僕には大ストライク、ジャズギターファンの方には超おススメです(^^)。

『頭脳警察/3』

ZunouKeisatsu3.jpg 僕が70年代を体験したのは幼少期。だから、よく分かってません。でも年上の方から話をきくと、日本の70年代は暗く鬱屈としたムードだったみたい。冷戦下で核戦争が現実問題としてあり(最近テレビのドキュメンタリーで見たんですが、キューバ危機の時、本当に核ミサイル発射ボタンを押す寸前まで行っていたというのを知ってビビりました(゚ロ゚;ノ)ノ。まあ、キューバ危機は1962年の話ですけど ̄ー ̄)、終末思想が不安を煽って、暴走族が社会問題、映画では「仁義なき戦い」がヒット。あれ、若い頃に見た時は一種のアクション映画かスリラーみたいな感覚で見てましたが、映画的な演出はあるにせよ実話なんですよね。暴力団問題がテレビの中じゃなくってえらい身近な出来事だった時代。70年代の音楽は最高ですけど、時代そのものは決して明るいムードじゃなかったんでしょうね。

 というわけで、頭脳警察のサードです。敗戦から冷戦、その中での安全保障条約をめぐる政治闘争という流れは、日本がアメリカ文化を受け入れるか否かという歴史でもあったように思います。今では洋楽の模倣が大前提となった日本の音楽シーンですが、70年代当時は日本人が英米文化であるロックをやるという事自体が、既にひとつの大決断だったんじゃないかと。そんな中、日本のロック黎明期のバンド・頭脳警察がやった事がカッコ良かった。政治色が強いとか、反社会的とか、そんなこんなでファーストもセカンドも発売禁止となってしまった頭脳警察なので、このサードではそういう面は控えめにして(とはいえ「指名手配された犯人は殺人許可証を持っていた」とか、充分きわどい曲が並びますが^^;)、ロックな部分が思いっきり前に来ます。これが、音楽の作りはロックだけど、詞は洋楽のコピーとかそういうんじゃなくって、主張そのものです。ロックの直線的な疾走感を活用して自分の言葉を叩きつけてくる!!詞に共感できるかというと微妙ですが(^^)、自分が本当に思っている事を、変な計算をしないでストレートに伝える「ロック」な感じが僕は好きです(^^)。1曲目「ふざけるんじゃねえよ」は名曲!ザクザクしたエレキギターの音やヴォーカルの吐き捨てるような歌い方がカッコいい!!そして、「まわりを気にして生きるよりゃ一人で…」で始まる歌詞。なんて事ないひと言ですけど、同調圧力の激しい今の日本で、この言葉をいうのはなかなか大変なんじゃないでしょうか。また、この言葉をいえるような生き方をしている日本人が、今どれだけいるでしょうか。それを言ってしまう所に惹かれます。

 言葉って、本当は、減らしていくんじゃなくて増やしていかないと正解に辿りつけないんですよね。ところが今の日本は逆で、なんでもかんでもすぐにタブー視して発言を控えちゃう、どんどん言葉を減らしちゃう、自分と少しでも考えが違うとすぐ叩いちゃう、そんなわけでモノも言えない。ロックですら、自分の考えを伝えているものがほとんどない気がしてしまうんですよね。ロックだろ?ハードなビートミュージックをわざわざ選んだんだから、「君を大事にしたい」とかよりも、もっと熱く伝えたいものがあったんじゃないの?そんなわけで、言いにくいことでも「俺はこう思うぞ」と自分の言葉で話す頭脳警察は、やっぱり好きだなあ(^^)。セカンド同様、このサードも素晴らし~~~~です!


『頭脳警察/2nd Album』

ZunouKeisatsu_2nd.jpg 中学生とか高校生の頃って、わけもなく苛立ってしまうというか、えらく漠然とした不安に押しつぶされそうになるとか、そういう時ってありませんでしたか?社会が理不尽だらけ、搾取されている感覚すらあるのに、自力ではどうしようもない。そんな中学生の時に、このCDを聴いて、訳も分からないままに興奮していました。頭脳警察!ファーストアルバムは3億円事件のモンタージュ写真をジャケット表紙に使って発売禁止(^^;)、そしてこのセカンドも政治色が強烈で速攻で発売禁止。僕が飛びついたのは、CD化の時でした。

 頭脳警察がデビューした時代は、70年安保の頃。太平洋戦争に負けた日本はアメリカ統制下に入りましたが、そこからの独立を果たす代わりに、日米安全保障条約をアメリカと結びます。植民地主義の延長にある世界体制を築こうとしていた枢軸国からみて、戦敗国の処理は課題でした。1次大戦では戦勝国のフランスがドイツに天文学的な賠償金を課し、これがドイツ国民に「ふざけんなよ」という感情を生み出し、ナチの台頭を呼び込んでしまいました。この反省から、アメリカは9条を含む平和憲法などを設けて日本支配を行いました。いまになってアメリカが9条制定を悔やんでいるというのは、なんとも皮肉なハナシですが( ̄∀ ̄牛)。しかし、この安保条約が建前とは裏腹に実質的には極東方面アメリカ支部という属国契約でありかつ不平等条約であった点が日本国民からすると大いに問題に映るところで(最初の頃なんか「日本の内乱に米軍が出動できる」というとんでもない条項まであった)、それに反対した学生運動が激化したのが60年安保と70年安保。そうした70年代安保闘争の学生運動のうちで人気となったのが、邦楽ロックの頭脳警察。いや~、説明長すぎましたね(^^;)。でも、そういう中から出てきたロックだからこそ、今の日本の産業ロックとはメッセージの強さや叫びの情熱が全然違います!

 頭脳警察の代表曲「銃を取れ」は、学生運動のアジテーション・ソング。それは同時に、どうにもならない鬱屈したフラストレーションの捌け口にもなっていたんじゃないでしょうか。今のロックには感じられない叫びがあります。そして、なんというのかなあ…学校がデモで閉鎖、権力に押し切られ、バリケードの中で鬱屈とした思いをしている人たちには、こういう歌があってくれたのは救いだったのかもという気がするんですよね。ファズで歪んだレスポールの図太い音は、今聴いてもカッコいい!!「なんでこんななんだよ。黙ってていいのか?政治はよくわからないとか言ってていいのか?おい、立ち上がれよ!」みたいなアジテーションは、産業ロックやチャート・ミュージックではとうてい聞くことの出来ないもの。主張に同意出来るかどうかはさておいて、日本の70年代という時代の雰囲気を見事に捉えた稀有なレコードだと思います。日本のロックのレコードとしても、間違いなくベスト10に入る1枚じゃないでしょうか?!


書籍『音楽行動の心理学』 ルードルフ.E.ラドシー/J.デーヴィッド.ボイル

Ongakukoudou_no_Sinrigaku.jpg 心理学って、面白くないですか?僕が最初に興味を持ったのはフロイトとかユングでしたが、あれはいまの心理学とは別ものだそうで。今の心理学につながるのはゲシュタルト心理学あたりからで、その辺の本は読み始めたが最後、面白くって止められなくなってしまいます(^^)。

 さて、この本は、ぼくが音大生のころに出会った本。古本屋でみつけました。なんか難しそうだな~と思いつつも、もくじを見て興味津々。「どうして振動数の違いが音の高低として感じられるか」みたいないかにも心理学的なところじゃなくって、「何によって音響は音楽になるのか?」とか「良い音楽とはなにか」とか、こういう所に興味を惹かれました。そしてしばらくはこの本に夢中。しかしこの本、雑学的なものではなく、学術的にちゃんとした本なのでなかなか難解、理解するために何回も読みました。何回も読んだという事は、それだけ面白かったと思うんですよね~。でもって、この本を読んだ後、自分の音楽観が変わってしまったのでした。ぼくは現代音楽専攻の上に夜はジャズの演奏のバイトもやっていたような人間だったので、音大生という音楽を専門に学んでいる友人たちの中でも柔軟な音楽観を持っていた方だと思うんです。それでもこの本を読んだ後は、いかに自分がかたよった音楽観を持っていたか…と感じさせられてしまいました。地動説が主流の時代に地動説を信じている、みたいな感じ?現実は違うのに、習慣とか時代の風潮に流されちゃってる自分を痛感させられた、みたいな感覚でした。

 僕がゲシュタルト心理学と最初に出会ったのもこの本。この出会いが、現在のデザイナー業に繋がっているのだから、人生なんてわかりませんね(^^)。音楽だけを追求してきた、ある意味で音楽馬鹿なぼくみたいな人間が読むと、目からウロコな事がいっぱい書かれていると思います。音楽を深く追求してみたい人には、超おススメ!!数千円でこれだけの濃い内容に触れられるなんて、買って損はないと思います。…お、アマゾンだと数百円で買えるみたいだ。中古盤もそうですが、ものすごい手間暇かけて作られた素晴らしい交響曲のCDが数百円で売られていたりすると、安く買えるのはうれしいんだけど、人生をついやして必死に作り上げた作曲家や演奏家に悪い気がして、ちょっと複雑な気持ちになります。モノの本当の価値と値段って、ぜんぜん比例しないんですよね。。


『Diego Schissi Quinteto / Tongos』

Diego Schissi Tongos
 こちらは、2010年発表のディエゴ・スキッシ・クインテットのアルバム。現代のアルゼンチンのタンゴ系のプレイヤー/コンポーザーの中では、アタマ半分ぐらい抜けた存在に感じます。古典すぎず、かといって古典無視でもないし、モダンや時には前衛っぽくもあるけど行き過ぎないし、このあたりのバランスがすばらしいっす(^^)。

 ことし(2016年)発表のアルバム『TIMBA』に比べると、全体のまとまりがないというか、部分部分はカッコいいんだけど、全体がガシッとしていない感じ。色々な作曲技法が使えるものの、それをまとめきれていないというか、「あれもこれも出来るよ~」みたいなところで終わってしまっている感じがします。いやいや、じゅうぶんカッコいいんですけどね、なんせ今年の新作が素晴らしすぎた(^^)。というわけで、素晴らしいんだけど最高傑作ではない、みたいな感じでしょうか。でも、ピアソラ以降のモダン・タンゴを聴いた事がない人にとっては、じゅうぶん驚かれるような素晴らしい内容だと思います。

 この人を聴いていて思うのは、タンゴのほかにジャズも勉強したんだろうな、という事。そんでもって、ある意味では古風になりがちなタンゴの和声を、モダンなサウンドにすり替えていきます。今のタンゴのカッコよさは、ジャズの50~60年代とか、ロックの67~72年とか、その頃ぐらいのカッコよさを感じます。リアルタイムのタンゴ/アルゼンチン音楽の情報収集はなかなか大変かと思いますが、ここはドップリはまっても損のない、素晴らしい音楽だと思います(^^)。


『Diego Schissi Quinteto / TIMBA』

Diego Schissi Quinteto - TIMBA  ディエゴ・スキッシと読みます。ピアニストです。今年(2016年)発表、超リアル・タイムの、アルゼンチンのモダンタンゴです!いまのところ今年買ったアルバムの中でナンバーワンの作品かも?!

 冒頭、はげしい不協和音から始まり、一気にタンゴになだれ込んでいきます。おお~、かっこいい(^^)。そして、短めの曲がダアッと並ぶんですが、バンドネオンとコントラバスだけの曲があったり大編成の曲もあったりで、これがすべて小楽章のようにつながっていって、1枚のアルバムでひとつの作品みたいに感じます。これはよかったなあ。そうそう、音がぶ厚いので圧倒されますが、編成はピアノ、バンドネオン、バイオリン、ギター、コントラバスというわけで、いたって普通のタンゴバンド編成。

 タンゴって、タンゴっぽい曲の作り方やアンサンブルのさせ方みたいなものがあるんだろうな、と感じます。それが何なのかといわれると困るんだけど(^^;)。たとえばコード進行とかだと、モダンタンゴの名曲(「アディオス・ノニーノ」とか「鮫」とか)とそっくりなコード進行が、どのアーティストの新曲にも出てきますしね。それって、「タンゴ」と名乗る以上、どこかにタンゴ的なものを感じて作っているわけで、それが良さでもあるし、縛りにもなっている気がします。そんな制約のなか、今のタンゴのどのあたりが進化しているかというと、楽曲の様式と和声の範囲が、けっこう進んでいる感じがします。和声で言えば、このアルバムだと、けっこうジャズっぽい和声も出てくるし、不協和音も無調もあり。ソングフォームは、ジャズみたいなコーラス形式を取らずに、クラシックのように起承転結をつけていく所は、今のタンゴをジャズやポップスやフラメンコなどの他のワールドミュージックよりも一段高いものにしているように感じます。聴いていて、「ああ、こういうソングフォームというのがありうるのか」と、ちょっと感動したところが随所にありました(^^)。

 個人的な感想を言えば、2010年代の現時点でいうと、いつの間にやらエンターテイメントになってしまった今のジャズやロックに比べると、タンゴの方が全然挑戦的で面白い音楽に感じます。客に媚びず、自分がカッコいいと思う音楽を突き進んでいる感じ。音楽はこうあって欲しいですよね(^^)。日本に住む僕にとっての問題は、たぶん言語の壁、流通の壁、メディアの壁なんじゃないかと。今の日本で、タンゴの新情報を伝えてくれるメディアなんて「ラティーナ」ぐらいしかないですしね。ラティーナ、楽しみに読んでたんですが、近所の本屋がつぶれちゃったのでどうしよう。。そんなわけで、日本ではあまり聴かれる事もないまま消え去ってしまう1枚なのかも知れませんが、これは聴いて損のない、超優秀な現在進行形の音楽だと思います!!


『DUO EL BALCON』

DuoElBarcon.jpg ブエナ・ビスタとおなじ中南米つながりということで。アルゼンチンのフォルクローレで、ギターと女性ヴォーカルのデュオです。去年(2015年)発表されたデビュー作で、「エル・バルコン」と読むみたいっす。いや~、これは素朴ですばらしい歌!!歌って元来こういうものですよね、今の日本の商業ベッタリで加工バリバリの歌が異常なんだよなあ。。

 アルゼンチンのフォルクローレって、編成は色々ありますが、シンプルにギターと歌だけというものもひとつの型。そしてこのギターが、日本のフォークみたいにコードジャカジャカじゃなくって、クラシックとかフラメンコとかボッサとかも吸収していて、みんなかなりうまいです。それで、日本とかアメリカみたいに、レコードありきじゃなくって、実際に庭先やカフェなんかで、肉声と生演奏で自分たちが思っている言葉を口ずさむというが、南米のフォルクローレ全般に感じる印象です。この夫婦デュオのグループ名も、ふたりのバルコニーで曲を作ってメロディーを口づさんで…という風に出来た音楽だから、こういう名前になったそうで。いや~、歌ってこういうものですよね、本来は!リバーブですらほとんどかかっていないこのCD、自宅録音なんじゃないかとすら思っちゃうんですけど、それが、本当に生きている人が、自分の言葉や自分の指で奏でた音で伝えているというふうに感じられて、素晴らしい(^^)。素朴だけど、ギターも歌も素晴らしくって、しかもそれが見世物として凄いんじゃなくって、日々の日常にしっかり結びついている感じでいいなあ。

 日本で、バンドやら何やらでドカドカやって、稚拙な上に「そんなこと思ってもいないだろ」みたいな言葉を聴かされて続けて、僕は歌が嫌いになった気がします。でも、アルゼンチンとかのラテンアメリカ方面って、こういう生活に密着した歌の文化がけっこう生きているんですよね。なんでもかんでも金が前提になっちゃった日本やアメリカでは少なくなっちゃった種類の音楽だけど、そういうものとは全く別の価値観の上で、本当に素直に「一緒に買い物行こうか」とか「いまの鳥、絶対なんか喋ったよね」とか、そういうところにあるものって、僕はすごく好きです。人間の幸せって、実はそういう所にあるんじゃないかと。歌が好きな人には、超おススメです!!


『BUENA VISTA SOCIAL CLUB』

BuenaVista.jpg ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブです!キューバ音楽のミュージシャンと、アメリカのルーツミュージックをベースにした音楽を作っているギター/ヴォーカルのライ・クーダーが作ったバンド!超好きだったし、世界中に大量のファンがいると思うのですが、とうとう解散してしまいました。僕は3月に解散来日公演に行ってきました。このCDの頃とはメンバーも結構変わってましたが、よかった~(^^)。このCDは、音楽的には思いっきりカリブ海の歌音楽がベース…というか、大半はキューバ音楽そのもの。少しだけアメリカのルーツミュージックも入ってますが、どちらにしても、フュージョンして新しい音楽を作り出したというものではなくって、ラテンアメリカのルーツミュージックの紹介、という側面が強かったんじゃないかと。発表は1997年。

 僕はキューバ音楽が結構好き。でも全然くわしくなくって、50年代とかの古いやつはそれなりに聴いてたんですけど、80年代以降は全然でした。そんな中、いきなりワールドミュージック界隈で爆発的にヒットしたこのCDには、「お、今のキューバ音楽って、どんな感じなのかな?」という感じで手を出しました。結果としては…大昔のキューバ音楽とあんまり変わってません。もちろん新しい録音なので音はいいんですが、正直言って僕程度のライトユーザーには50年代のキューバ音楽との違いがまったく分からず。実際、そんなに変わってないのかも知れません。でも、そこが良い!キューバにしてもジャマイカにしてもコロンビアにしても、政治はともかく音楽や市民生活は50年代(どころか20年代?)からあんまり変わってないのかも知れませんね。

 キューバ音楽を知らない人にうまく説明できるかどうか分からないんですが、古い日本のキャバレーで掛かってたコンガとかの入ったラテンっぽい音楽、と言えばイメージしやすいかな?…たとえが悪いですね(^^;ゞ。。で、キューバの音楽は、リズムや形式によって名前がついてたりします。まず、キューバの歌音楽で一番多いのは、「ソン」というもの。前半はけっこう他のラテン系の歌音楽とあんまり変わらないんですが、後半でリードヴォーカルとコーラスが掛け合いになる「モントゥーノ」というパートを持つものが多いです。アフリカの民族音楽にも同じ形式があるので、これは奴隷としてアフリカ系民族が連れてこられた時の名残かも。日本では「ルンバ」なんて言われる事もありますが、キューバでルンバというと、もうちょっと違う曲種を指すんだそうで。この辺は僕はよく分かってません(^^;)。次に、キューバのダンス音楽で有名なものが「ダンソン」。たぶん、ダンスソングという事じゃないかと。(*ころん様より、コメント欄に有り難い書き込みをいただきました(^^)。引用させていただきます。「ダンソン(DANZON、ダンソーンが近い発音)ですが、元々は器楽曲で、ダンス音楽なのは間違いありませんが、ダンスソングというワケではございません」との事。なるほど~!)これがいかにも「ラテンムード歌謡!」って感じで、古臭いです(^^)。でもこの古臭さが、中米の直射日光と古い木造りの小屋みたいな匂いがしてきて、いい(なんだそりゃ)!!このCDでは、ルーベン・ゴンザレスのピアノをメインにした"Puero Nuero"というダンソンが入ってますが、めっちゃムーディーで、まぶしい太陽光線と薄暗い室内の両方を感じるような音楽、大好きです(^^)。他にも、ボレロ(世界中に広まった3拍子のスペイン舞踊が有名ですが、キューバのボレロはなぜか4拍子が多くって、しかも舞曲には思えない)とか、グァヒーラとか、いろいろ入ってます。キューバ音楽の入門として、大推薦の1枚と思います!そうそう、解説があると100倍楽しめると思うので、ぜひぶ厚い日本語解説のついたものをおススメします(^^)。
 あと、アルバム後半には、アメリカン・ルーツ・ミュージックも少し入ってます。ここがライ・クーダーのカラーなんでしょうね。ライ・クーダーは、アメリカのミュージシャンといっても、アメリカ南部からラテン文化周辺のルーツミュージックに寄った人なので、「ジャズ」をやっていても、今ぼくたちがすぐに想像するようなジャズじゃないです。まるでハワイアンのようなジャズ。ブルースでも同じで、あの戦前の暗くうねるアレじゃなくって、白人のカントリーみたいなブルースをやります。考えてみたら、こういうジャズやブルースって、僕はライ・クーダーがやったものばかりで知っているのですが、ライ・クーダーがいつも「ブルース」と言って演奏するあの明るいブルースは、どこがルーツなんでしょうか?知っている方がいましたら、どうぞ教えてください!!

 というわけで、真剣に聴きこむ音楽というよりも、のんびりゆったり楽しむ音楽と思います。キューバ音楽や、カリブ海の楽園的なムードを楽しみたい方は、ぜひ!!庭やベランダでのんびりビールでも飲みながら聴いたら最高じゃないかと(^^)。


書籍『12音による作曲技法』 ヨーゼフ・ルーファー著 入野義郎訳

12onniyoru sakkyokugihou シェーンベルクのディスクを久々にいくつか聴きましたが、さすがは大作曲家だと改めて思わされました。シェーンベルクといえば12音技法という作曲法が代名詞となっていますが、その作曲技法を紹介した本がこれ!ちなみに、日本語訳をした入野義郎さんという方は作曲家で、日本人の12音技法を用いた作曲家としてはたぶん一番有名な人です(^^)。

 とにかく古い本なので、入手は困難かも。でも、12音技法について書かれた本で日本語に翻訳されたものはこれしかないので、音大の図書館で読むか、高くても中古を買うっきゃないっす。この本、書かれた年代が古いもので、漢字は読みづらいし、今とは常識が違くって「悟性」みたいな観念が出てきたりして、読むのに苦労するかも。でも、作曲技法的に関する部分はけっこうざっくりしていて分かりやすいです。もしバッハの作曲技法や対位法や19世紀のロマン派音楽の作曲法が理解できているなら、6章から読み始めても大丈夫。12音技法って、概略だけは他の作曲関係の本でも、音楽辞典にも、いろいろ書かれてますよね。基本形、反行形、逆行形、逆行形の反行形、という例のヤツです。でも、実際に作曲しようとすると、「和声はどうなるの?」とか「リズムは?」とか、それだけではとても使い物にならないというか、疑問だらけ。それがこの本では、7章にリズムと和声に関して書いてあります!!ここがこの本の最初の重要な所(^^)。そしてもうひとつ。12音技法って、とってもシステマティックかと思いきや、かなり単純な法則なので、「これでどうやって音列を組織化すればいいの?」と途方に暮れてしまうわけですが、この本ではシェーンベルクの実際の曲を分析して、当人がどうやって曲を作り上げたかが解説されてます(^^)。いや~、こういう本って、実際の譜例を出してくれるといちばん理解しやすいというか、具体的なのでありがたいです。

 というわけで、12音技法を本当に作曲に役立てようと思ったら、これはマスト本じゃないでしょか!!




プロフィール

Bach Bach

Author:Bach Bach
神戸住まい、奥さんとネコと暮らす音楽好きです(ノ^-^)ノ
音大は卒業したのですが、成績はトホホ状態でした(*゚ー゚)

ずっとつきあってきたCDやビデオの備忘録をつけようと思い、ブログをはじめてみました。
プロでも評論家でもありませんので、たいした事は書けないかも知れませんが、いい音楽、いい映画、いい本などを探している方の参考にでもなれば、大変嬉しく思います(ノ^-^)ノ

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 今月号のintoxicateに載っていた1枚。「Vyacheslav Artyomov」、ロシアの作曲家は名前が読めなくってムズカシイ。。「ヴャチェスラーフ・アルチョーモフ」と読むらしいです。伝説の「フレンニコフの7人」のひとりとの事ですが、それって何かすら僕は知らず(^^;)。作風的には初期は新古典的、後に民族的な様式、十二音技法や、複調性、ミニマルなんかも用いたみたい。ロシアの前衛は強烈なものが多いので、聴いてみたいです。アマゾンで買おうと思ったらダウンロード版しかなかった(;_;)。 少し前に取りあげたエリザベス・コットンですが、ライブ盤なんてあるのか?!これは聴きたい… オスマン時代から現代までのトルコ音楽のガイド本みたいです。おおお~、これは絶対に読もう!! レコ芸に載っていた近藤譲さんの新譜、室内楽作品集みたい。好きな作曲家なんで聴きたいんですが、持っている2枚のALM盤と4曲かぶってるので悩み中…
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