
日本にPヴァインというインディー系のレーベルがありまして、昔ここはブルースのレコードばかり出してました。しかも、アメリカですら出されないような発掘音源とか廃盤レコードも出すほどのマニアックぶり。ネットの普及していない80年代、アメリカ本国ですら手に入らないタイトルの宝庫なものだから、ブルース好きのアメリカ人は日本に来たがった人も多かったそうです。
ZZトップなんて、来日時にPヴァインのレコードを大量に買い込んでいったそうで。
Pヴァインのレコードの中でも、「これは聴いてみたい」と痛切に思ったのがこれ。もともとはテキサスにあったアイヴォリーというレーベルから出たレコードに、完全テイクや未発表テイクを加えてリリースされたものです。僕がどこに喰いついたかというと、まずは、このホップ・ウイルソンという人の演奏スタイル。ジャケットから想像するに、
ブルースなのに、平置きにしたスティール・ギターをボトルネック奏法で演奏していたのです。普通のギターをボトルネックで演奏するブルースは聴いていたのですが、こういうハワイアンみたいなスタイルは見た事が無かったので興味津々。もうひとつは、レコードのタイトルとキャッチコピー。アルバムタイトルの「ヒューストン・ゲットーのブルース」、これにヤラれました。ブルースといえばまずは南部だと思うんですが、僕のイメージでは泥道、遮断機のない踏切、古い南部の木造りの酒場とか、そういうイメージ。そして、レコードの帯に書いてあったコピーが凄かった。「ブルース史上、最もブルーな凍りつくブルースを歌ったひとり」「怒りと悲痛さが見え隠れするスティール・ギター」。う~ん、ブルース好きなら、ここまで書かれたら聴くしかないじゃないですか!
1曲目は"Black Cat Bone" か、たしかヴードゥーや南部では、猫の骨を呪いに使うんだよな。そんなかんじでワクワクしながら針を落とすと…うわあ、陽気なバンドブルースが次々出てきた_| ̄|○。勝手にしゃがれた渋いうなり声を想像していた僕は、ちょっとがっかり。そりゃそうですよね、「もっとも凍てつくブルース」と書いてあったのに、どう聴いてもご陽気なアップテンポのブルース・セッションが出てくるんだから…。スライド・スティール・ギターも、言われなければ普通のギターのスライドと見分けがつかないようなサウンドで、肩透かしを食った気分(;_;)。
でも、気を持ち直して好意的に捉えると、レコードB面は、たしかにヘヴィー系のバンド・ブルースとして、けっこうカッコよかった曲が入ってました。"I Done Got Over" はスローブルースで、ブルース独特のフワーッとした憂鬱さがいい感じ。いちばん良かったのは、ふたつのテイクが入っていたピアノ入りのスローブルース
"Merry Christmas Darling" 、これはいい!グッときました。ただしテイク2はホップ・ウイルソンのソロに入ったところでフェードアウト(^^;)…途中で誰かが落ちちゃったのかな?そうそう、このレコードの編成はスライドギター、ギター、ピアノ、ベース、ドラムです。そして、スローブルースはどれもピアノが素晴らしい!!ピアノブルースって、悲しいようなすがすがしいような独特の味わいがあって、ツボに入るとたまらんです(^^)。
というわけで、「ブルース史上、最もブルーな凍りつくブルース」とか、そういう言葉に踊らされると肩透かしを食うかも。でも、「
アップもあればスローもあるヒューストンのゲットーのバーで演奏されていたバンドブルースを聴いてみたい」ぐらいの感じで捉えれば、いいレコードかも(o^ー^o)b。。
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