このレコードは、ひとつ前の記事で紹介したサヴォイ・レーベルの時期のチャーリー・パーカーの録音よりちょっと後で、ヴァーブ期の録音です。時代でいうと、「Genius of Charlie Parker」が1945~48年の録音で、こっちは1952~53年。せいぜい5年ぐらいしか空いてないようにも思うんですが、この間にパーカーさんにとって大ダメージになる出来事があったみたい。ドラッグやら酒やらやりたい放題のパーカーは結婚も何回もしてるみたいですが、最後の奥さんとの間にはパーカーが可愛いがりまくった女の子が生まれたのに、この子が肺炎で死んじゃった(;_;)。ここからパーカーは人が変わったみたいになって、ステージに行くと言って家を出たままステージに来ずに楽器も無くなってる、ステージで泥酔、自殺未遂などなど、グッチャグチャ。パーカーは1955年に心不全で死にますが、晩年はドラッグを含め心身ともにボロボロ。パーカーが好きなサックス奏者の友人が、「50年代のパーカーはダメ」といっていたのを覚えてます。 このアルバムは、そんなボロボロな50年代のパーカーの録音ですが、そういう情報を知った上で改めて聴くと・・・いや~、とてもそんな状態とは思えないっす(^^;)。でも、こういうパーカーの演奏がジャズのサックスの手本となって以降のジャズの歴史が発展していったもので、王道に聴こえちゃうというか、普通に聴こえちゃうところはあるかも(^^;)。あと、パーカーの代名詞の超高速テンポの曲が入ってないので、全体的にまったりして聴こえます。でも、BGMとして聴かずに、パーカーのソロだけをきちんと追って聴くと・・・いや~曲がミドルテンポでもパーカーのソロ自体は16分なんて当たり前にガンガン入ってくるので速度感があるし、かといってアーティキュレーションも見事だし、やっぱりうまいわ。。別テイクとかもいっぱい入ってるので聴いてて多少ダレるかも知れませんが、アルバム最後の2曲「Now's the Time」と「Confirmation」は今も良く演奏されるビバップの大名曲、しかもサックスのアドリブソロは見事としか言いようがないです。ワンホーン(パーカー以外の管楽器奏者の参加がない)、パーカーにしては新しい時代の吹きこみなので録音がいい、共演者がマックス・ローチやハンク・ジョーンズなどの名プレイヤー揃いなんていうあたりが、このアルバムが評価される理由なのかも。ジャズの中でも永遠に語り継がれる天才チャーリー・パーカーが残した最後の好演がこのアルバムなんでしょうね。