
チャーリー・パーカーはダイアル、サヴォイ、ヴァーブという3つのレーベルに録音を残してますが、一番古いのがダイアルでの吹き込み。10インチ盤全盛のころなので、LPやCD時代になると収録時間の都合なんかから再編集されることになって、これで色んな編集がいっぱい出てきて、どうやって聴いたら良いかがよく分からない事態に(;_;)。音大生の頃の僕も混乱しました。LP時代でいちばんいいのは1から7までナンバリングされた全集を買う事だったんでしょうが、それだと何番が一番いいのかとか、買い始めたら結局全部買う羽目になるんだろうけどそれは嫌だなとか、ダイアルのセッションが一番古いから一番音が悪いだろうから後にすべきなんじゃなかろうかとか、ジャケットがあまりに古臭くって購買意欲が削がれたとか(^^;)、色々考えたもんでした。結局、ジャズバンドで一緒になって仲良くしていただいたアルトサックスの先輩ミュージシャンから、7枚ばら売りの完全盤のなかの1枚を聴かせてもらったのが最初。録音こそモノラルでしたが、意外と音がつぶれてなかったのは驚きで、しかもウッドベースもちゃんと聴こえるバランスの良さにビックリ。
これはダイアルの録音を全部収録したCD4枚組。中古なら、今はそんなに高くないみたいなので、よく分からないんだったらこれを買っちゃうのが確実かも。僕はそのクチで、先輩から聴かせて貰った1枚が良かったので、「これは全部聴くべきだな」と思ってゲットしたのでした。4枚組のCDとかって、買った後に家に持って帰る時のワクワク感がスゴイですよね(^^)。演奏は、初期パーカーだからまだ発展途上・・・という事は全然なくって、完成されてます。完璧です。いや~これはすごいわ。。よく、「チャーリー・パーカーの演奏はムズカシイ」「よくわからない」なんて言われますが、音楽そのものはいかにもエンターテイメントなジャズなので、難しいという事はまったくないです。むしろ、アドリブの肥大したハード・バップ以降のモダンジャズよりはよっぽど親しみやすい音楽だと思います。じゃあ、なんで昔の日本のジャズ評論家たちが口をそろえてそう言ったかというと、ジャズ喫茶文化に生きていたモダンジャズの日本のリスナー特有の「ソロをエラそうに語るために聴く」みたいな視点で聴くと、とってもシステマチックだから、歌うより先にバカテクが前面に来る時があって「何を考えてこういうソロをしてるんだろう」と思っちゃうんじゃないかと思うんですよね。それは、メロディを口ずさむように歌い上げるタイプのアドリブ演奏とは違います。僕的には、パーカーの演奏はすごく歌ってると思いますが、同時に
ジャズでのアドリブのシステムを完成させたパイオニアという側面もあって、時としてこのシステムの中でどれだけ高速に演奏できるか、というところに行く時もたしかにあります。
ここが評論家さんを困惑させると同時に、ジャズマンたちをいまだに熱狂させ続けてるんだと思います。「チュニジアの夜」のオープンパート頭で無伴奏で一気に吹き倒すところがあるんですが、ビバップでよく聞かれるこういう所でもあまりにすごくって「うわ、すげええええ」ってなっちゃいます。暗いキャバレーで演奏していた天才が、レコードを通じて世界的有名になる事になったのが、このダイアル録音なんだと思います。ジャズ好きな人なら、マストです!!
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