このレコード、本当はマイルス・デイヴィスのリーダー作なんて声もあります。モダンジャズのコンボの定番としては、テーマ→アドリブ→テーマみたいな順で演奏して、リーダーがテーマのメロディを演奏するのが普通なんですが、テーマをトランペットのマイルスが吹いてたりして。でも、1曲目の「枯葉」も2曲目の「Love for Sale」も、マイルスに次いで演奏するアルト・サックスのキャノンボール・アダレイのアドリブがすごい!!自由自在な歌いまわし、みごとなアーティキュレーション!この譜面にかけないような自由自在なリズム感覚とフレージングは、ジャズのアドリブ・ソロの極致というか、ここまで歌えるサックスって、ちょっと他にいないです。リズムを取りながらソロも取らないといけなくって、ついでにクレッシェンドは使えないピアノややギターには絶対に出来ないアドリブソロです。いいなあ。なるほどこれをマイルスじゃなくてキャノンボールのリーダー作としたのも納得(^^)。ジャズのアドリブを勉強したい人は、このレコードのキャノンボールのソロはぜったいに聴くべきじゃないかと。
ただ、若いころは、このレコードがあんまり好きじゃなかったんです。音楽自体は、凝ったコンポジションもアレンジもなくて、コーラスごとにソロを回してオシマイというだけなので、自分の番でどれぐらいいいソロを取れるかというだけの音楽。起承転結もないし、そうすると曲なんかどの曲を演奏したって変わらないですしね。2曲目のコール・ポーターの「Love for Sale」なんて、曲を活かそうと思えばすごくいい曲に仕上げられるバラードと思うんですが、ただコード進行とメロディがあるだけのハードバップになっちゃってます。というわけで、「決められた様式の中での出来栄えを楽しむ」という、短歌のようにその世界をマニアックに好きな人じゃないと、あんまり面白くないかも。でも、それってジャズのハードバップというジャンル全体に言える事でもあるので、ソロの出来栄えを楽しめるようになると、ジャズを聴かない人でも、モダンジャズ悦楽の扉を開けることが出来るかも(^^)。