
西城秀樹さんが他界してしまうとは…僕は70~80年代の歌謡曲がけっこう好きで、歌手別にベスト盤をけっこう持ってます。中学時代の友人の中に歌謡曲をシングル盤でコレクションしている強者がいますが、それはお金がいくらあっても足りない…めっちゃくちゃ楽しそうですけどね(^^)。僕が西城秀樹さんで持ってるのはこの3枚組CD。西城さんのベスト盤はいっぱい出てるので、僕的には「情熱の嵐」「激しい恋」「傷だらけのローラ」「ブーメラン ストリート」「YOUNG MAN」「ギャランドゥ」「漂流者たち」が入ってるものなら何でも良かったんですが、最後の「漂流者たち」がハードル高くて、これが入ってるものが少ないのです。というわけで、西城さんのベストはずっと買えないままだったんですが、5年ぐらい前、中古家具屋を覗いていた時にこの3枚組CDを発見、「漂流者たち」が入っていたので即買いでした。「ゴールデン・ベスト・デラックス」…タイトルがクソダサいですけど、そこは目をつぶりました。
この3枚組ベスト盤、かなり新しい曲も入っていて、それはぜんぜん知らない…。やっぱり70年代が西城さんの全盛期だと思います。そしてその頃の秀樹さんの曲は
、ロック風歌謡曲が多いです。この「ロック風歌謡曲」というジャンル、僕は他に沢田研二さんなんかを知っていますが、ジュリーはバックが井上堯之バンドだったりしてかなり本格的だったのに、西城秀樹は70年代歌謡曲のチープでデタラメな感じ。でも、西城さんは手抜きせずに熱唱、しかもうまいしかっこいい。普通にロックバンドンのヴォーカルで通用しそうです。声はハスキーだけどどこか甘さがあって女殺しっぽい、ヴィブラートもきれい。歌謡曲を歌うアイドルの中で、西城秀樹さん、中森明菜さん、岩崎宏美さんあたりは本当に歌がうまいと思います。
そして、
かなり恥ずかしい歌謡曲まで歌わされても手を抜かない西城さんの、ある意味で冗談の通じない生真面目さや熱さ、ここに魅力を感じます。子どものころ、「8時だヨ!全員集合」というコント番組が大好きでして、西城秀樹さんは番組の常連でした。このコント番組、司会進行役のドリフターズがもともバンドだったこともあるのか、音楽とコントをうまくミックスした番組作りでした。僕はコントの間の歌の時間になると、裏番組のゴレンジャーにチャンネルを変えていたんですが、西城秀樹やキャンディーズなんかの好きな歌手の時だけはチャンネルを変えませんでした。バックのビッグバンドも当日ゲネだけで本番という感じの演奏、客席もコントのセットチェンジがてらのつなぎの歌コーナー。それでもヒデキは手を抜かずに熱唱するのです。「ロックがやりたいんだ、ライブがやりたいんだ」という本人の熱い思いと、音楽をよく分かってないチープな日本の音楽産業界との間のギャップの間に生きた人だったのかも知れません。
間違いなく、70年代なかばから80年代初頭までの歌謡曲の世界の主役のひとり。テレビにヒデキやジュリーや岩崎宏美が出ていた頃の日本のチャートミュージックは、業界はポンコツでも歌い手は素晴らしかっなあ。子どもの頃の楽しい思い出のひとつです。あらためて、ご冥福をお祈りします。
(2022年7月追記) 最近、わけあって西城秀樹さんの「南十字星」という曲を聴いたんですが、タイトルは覚えてるものの、どの曲か記憶がない…というわけで、久々に持っている3枚組ベスト盤を聴きなおしました。ああこれか、それにしても久々にきいたらめっちゃいい曲じゃん!作曲は水谷公生さんか、そりゃいい曲になって全く不思議じゃないですね。というわけで、本来の目的を忘れて、思わずCD3枚を全部聴きなおしちゃいました。
リアルタイムの一部しか体験していない僕ですら、西城秀樹さんの全盛期って70年代だと思います。「情熱の嵐」「傷だらけのローラ」「ブーメラン・ストリート」「ボタンをはずせ」「YOUNG MAN」、みんな70年代ですもんね。ところがCDを聴きなおすと、
音楽自体は全盛期の70年代より人気の陰った80年代以降が素晴らしくて、思わず聞き惚れてしまいました。
「エンドレス・サマー」、「眠れぬ夜」、「ジプシー」、「漂流者たち」、「哀しみのStill」、「心で聞いたバラード」…どれも素晴らしいです。作家は、濱田金吾、後藤次利、井上大輔、もんたよしのり、水谷公生…ああ、作家のチョイスの時点ですでに素晴らしいんですね。そして
どの作曲家も丁寧に曲を書きあげていました。ここが70年代前半のスピード重視の依頼作曲との違いでしょうか。単純にコード進行ひとつとっても絶対どこかに工夫が入ってるし、アレンジもサウンドも洗練されています。そういえば、チェッカーズも売れなくなってからの方がいい曲が多かったなあ。もちろん、それもヴォーカリストとしての西城さんが素晴らしさあってのもので、80年代以降にも退屈な曲もあったんですが、それすらヴォーカルの力で持って行ってしまう、みたいな。ヒデキ感激です。
そんなヴォーカリストとしての力量を思い知ったものも。WINKがカバーしてヒットした「愛が止まらない」を孫カバーしてるんですが、これがWINKなんて吹っ飛ぶ素晴らしさでした。こんなにいい曲でいい詞だったのか…ヴォーカルの力量で、曲の良しあしまで変わってしまう例ですね、ヒデキすげえ。
晩年の西城さんは闘病生活を続けていたそうですが、チャート音楽で、ここまでルックスも歌唱力もスター性も揃った男性ヴォーカリストって、今後もなかなか出ないのでしょうね。当時だって沢田研二さんと西城秀樹さんだけが図抜けていた感じありましたし、60年代にも80年代にも、そういう人っていなかった気がしますしね。本当に惜しい人を亡くしたと思います。