グレイトフル・デッドで1枚といえばやっぱりこのアルバム。ライブ・バンドである
グレイトフル・デッド最高傑作の呼び声高いライブ盤です。1969年発表!
とくに行くあてもなくジャム・セッションを繰り返してる、いつものグレイトフル・デッドです。それはそうなんだけど、1曲目の
「DARK STAR」の、のびのびとしたギターのサステインが気持ちいい…。うしろでピロピロ鳴ってるオルガンが気持ちいい…。ああ~気持ちいい。盛り上がることもなく、ゆるやかな波が押したり引いたり、雲の上に乗ってふわふわしてるみたい。そして、聴いていた事すら忘れていた頃に、いきなりトゥッティが決まってびっくり(^^;)。
60年代後半のアメリカのサイケな映画もポワーンとしたのが多いので、アモン・デュールのファーストや
ピンク・フロイドのセカンドのサイケデリック感覚がバッド・トリップだとしたら、これはマリファナのボワーッと気持ちよくなっちゃう系のトリップ感覚に近いんだろうな…な~んて思いながら聴いてました。似たようなボワーンと漂うようなトリップ感だと、ジェファーソン・エアプレインの「ホワイト・ラビット」とか、
ビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーのファーストとか…ああみんなサンフランシスコだ。僕はドラッグを推奨する気もないし、自分でやる事もないですが、気持ちよくなっちゃう系のドラッグのトリップ感覚を音楽で体験するとしたら、これは絶好の1枚なのかも知れません。音楽って、感覚の覚醒度だけを基準にしていえば、意識覚醒を目指す系と、意識低下を目指す系のふたつがあると思うんですが、これは後者。でもいま日本でよく耳にする音楽は、ジャズでもロックでも基本的に前者、だから分かりづらかったのかも。そして、日本でのデッドの評価を見るに、きっと良さがスッと分からなかったのって僕だけじゃないんでしょうね。良いの反対が悪いという考え方をしてしまうと、意識覚醒を目指す音楽を良いと感じたら意識低下を目指す音楽は悪く感じても不思議じゃないですし。そういえば、ロックやジャズがカッコいいと思ってた子供のころ、モーツァルトや演歌がつまらないと感じた理屈ってこれの気がする。そんなわけで、
仏教音楽やトランスミュージックが好きな人だったら、なんて事なく「あ、いいじゃん」なんて思うのかも知れません。
若いころからどこかしっくりこなかったグレイトフル・デッドが、「要するにバッドトリップじゃなくて気持ちよくトリップする系のドラッグ・ミュージックなんじゃないか」と思ったとたんに、突然気持ちよく感じてしまったのは、面白い体験でした。音楽が分かるって、判断基準が分かるということなのかも知れませんね。西海岸サイケを代表する1枚だと思います。
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